2022年7月30日土曜日

フェスタサマーミューザ2022 NHK交響楽団 ≪エキサイティング!渋谷から熱風が襲来!≫

2022-07-30 @ミューザ川崎シンフォニーホール


下野竜也:指揮
NHK交響楽団
三浦文彰:バイオリン*

J.S.バッハ(レーガー編):「おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け」BWV622
ブルッフ:バイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26*
ベートーべン:交響曲第7番イ長調 作品92
--------------------------
ヴュータン:アメリカの思い出 「ヤンキー・ドゥードゥル」Op. 17*
ベートーベン:歌劇「フィデリオ」から行進曲



僕が知る限り、フェスタサマーミューザ(FSM)でのN響の出番は毎年7月末〜8月初の土曜日16時と決まっている。N響人気で黄金日程が組まれているのだろう。

今日は、前方・側方を見る限り満員盛況で、普段はほどんど空席のオルガン際の最上層二段目まで、まるでえんどう豆のさやを開いたように鈴生りだった。

それがホールの鳴りに影響したかどうか知らないけど、N響にしては響きが良くない。アンサンブルも悪い。

冒頭の14型による弦楽合奏が響いてこず、この(僕の耳にとっての)意外な変調はブルッフでもベト7でも変わらなかった。

昨日の読響の方が音色、響き、熱量、圧力全てが優っていたように思う。

FSMではどのオケもエース級を揃えていると思う。
今日は篠崎・郷古の2人コンマス体制だったが…。

バイオリン協奏曲も、独奏バイオリンの音圧もオケとの協奏感も物足りない。
ベートーベン交響曲第7番にも気分が乗れず仕舞いだった。

独奏バイオリンのアンコール曲「ヤンキー〜」を聴くのはこれで4回目だが、いずれも三浦君で聴いた。曲弾きのようで面白いのだけど、またか!の感拭えず。アンコール・レパートリーを開拓してほしいね。

♪2022-112/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-026

2022年7月29日金曜日

フェスタサマーミューザ2022 読売日本交響楽団 ≪告別と絶筆。一期一会のシンフォニー≫

2022-07-29 @ミューザ川崎シンフォニーホール



井上道義:指揮
読売日本交響楽団

ハイドン:交響曲第45番「告別」
ブルックナー:交響曲第9番ニ短調 WAB109(ノヴァーク版)


コンマス(コンミス)はバイオリン界の百済観音・日下紗矢子(立ち姿も姿勢もボウイングも美しい。)。
チェロ首席は遠藤女史と華が揃った。
そして再度ブルックナー(前回は8番)を取り上げたのは井上道義御大。
3年前のフェスタサマーミューザ・読響とまるで同じ景色だ。
満を持して臨むという決意表明は面子にも現れているよ。

オルガン部分に大きなスクリーン。
何かやるな!今回は魚釣りではなさそう。
いつも”音楽外”パフォーマンスも楽しみな道義御大である。

前座はハイドン「告別」となれば、やることは決まっているが、今回は譜面台に蝋燭代わりのLEDランプ。
終楽章でひとりずつスイッチ切って出てゆくが、その際に、大スクリーンには団員の普段の姿が映写されて思わぬ余興を楽しんだ。そっちばかり気持ちが行って音楽どころじゃなかったけど。

「告別」の編成は弦24+管5という極小編成。尤もハイドンによる初演は12人だったそうだ。

後半のブルックナー第9番はなんと弦16型。
この極端な差も道義演出だろう。

ブル9は何度も聴いても好きにはなれないけど、派手な”管弦楽”としての楽しみはある。
特に、この季節、どこのホールも良く鳴る。ミューザは元々良く鳴る。道義御大もブルックナーやるなら最高のホールだと言っている。

今日の読響の出来がまた格別に良くて、管弦の交わりの美味なること!
至れり尽くせりの道義流サービスに大満足!

♪2022-111/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-025

2022年7月28日木曜日

フェスタサマーミューザ2022 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 ≪恩師バーンスタインの傑作とともに≫

2022-07-28 @ミューザ川崎シンフォニーホール



大植英次:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

バーンスタイン(C.ハーモン編):組曲「キャンディード」から
バーンスタイン:ディヴェルティメント
バーンスタイン:「ウエスト・サイド・ストーリー」から「シンフォニック・ダンス」
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」組曲(1919年版)


個人的には今日がフェスタサマーミューザの開幕。
大植英次という好漢にとても好感を持っている。

いつも、登場した時から、もう、テンションとエネルギーの塊だ。

そして、特にロマン派を演奏するときは、大抵どこかで癖のある大植印を刻む。それが楽しみでもある。

今日のミューザも良く鳴った。
弦も管打も明るくていい。

弦の編成は、多分、12-10-8-6-5だったと思う。
バーンスタインから3曲。そして「火の鳥」というプログラムでは、もう少し大きな編成でも良かったのでは思うが、演奏に不足を感じたからではない。
迫力があったし、乱れない。

4曲をすべて暗譜で振った。
恩師バーンスタインの作品はもう自家薬籠中のものとなっているのだろう。

全体が外連味いっぱいの作品群だから、今日は、格別、大植印を経験することはなかった。この上独自な味付けはできないだろう。

フェスタサマーミューザ2022は良い出だしだった!

♪2022-110/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-024

ランチタイムコンサート〜音楽史の旅②

2022-07-28 @かなっくホール


ビルマン聡平:バイオリン
司会・解説:飯田有抄(音楽ファシリテーター)

J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ第1番卜短調 BWV1001から第1楽章
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・組曲第3番ホ長調 BWV1006
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・組曲第2番短調 BWV1004から第5曲シャコンヌ



かなっくホールのランチタイムコンサート。音楽史の旅2回目もJ.S.バッハ。

今日は、渡辺美穂の急遽の代理で旅の途中下車でビルマン聡平氏が登場。終わったらその脚で浜松へ行くって。ご苦労様。
無伴奏作品から組曲3番とメインはシャコンヌ。

その第一声。
なんて、素晴らしい音だ。

ちょうど、20日に吉野町市民プラザで聴いた大江薫くんの抜き出たような響き方と同じだった。

かなっくホールは元々音の良いホールなのだけど、最近は気候のせいか一層よく鳴っている。

聡平氏は新日フィルの第2バイオリン首席であると同時にかなっくホール専属の弦楽四重奏団カシオペイア・クァルテットのメンバーでもあるので、このホールで聴くのは初めてではないが、無伴奏を聴くのは初めて。
それが、ホンに良く響く。手触り・肌触りが伝わってくる。

無伴奏ものは演奏家の個性が明確に出て、そこが面白い。
長い間、いろんな人の演奏を聴いて、なんとなく最大公約数的なイメージが出来上がっていて、そこに収まるなら良い演奏だという訳でもないけど落ち着く。
最近では石田組長で聴いたが、かなり個性的(尤も当然ながら毎回同じではない。)。その演奏に比べるとずっと安心して聴けたな。
まあ、とにかく、よく響くので、バイオリンが鳴っているというだけでも楽しかったよ。

♪2022-109/♪かなっくホール-07

2022年7月25日月曜日

東京都交響楽団 第956回 定期演奏会Bシリーズ

2022-07-25 @サントリーホール


アラン・ギルバート:指揮
東京都交響楽団

モーツァルト:交響曲第39番変ホ長調K.543
モーツァルト:交響曲第40番ト短調K.550
モーツァルト:交響曲第41番ハ長調K.551《ジュピター》


モーツァルト後期3大交響曲。
7月に入って35-38番と続き、今日は39-40-41番で上がりだ。

「運命」でも弦16型でやる都響の事だから、モーツァルトも大編成かと思いきや、今日は12型(12-12-8-6-4)と、常識的な編成。

この季節はどこのホールも比較的よく鳴っている。
サントリーホールも珍しくよく響いた。

管楽器が控えめなので、弦楽合奏のようにも聴こえたが、今日の都響は弦が美しい。
3曲通じてアレグロ楽章はテンポ速めで軽妙。
中間楽章は中低域弦が少ないのにしっかりと厚味のある響きを聴かせて心地良し。

41番の冒頭の節回しにAギルバートの独自色が出ていたが、個人的には違和感あり。

さて、全体として好ましい演奏だったけど、アレグロの小気味良いテンポが弦全体として揃っていなかったのではないか。Vn1がリードするリズムに比べてその他の弦の刻みが同期していないような…。

全員が完璧に合わせることは、やろうとすればできるのだろうが、そこに指揮者の興味がなく、ぼんやりとした響きを優先したのか?

41番を聴くとモーツァルト弦楽四重奏曲第14番K387を思い出す。
終楽章にジュピターの動機を使って、Vn2以下の3人が超速ユニゾンで駆け上がるところが魅力的で、昔、ジュリアード弦楽四重奏団で初めて聴いた時に、機械的なくらいピタッと合った演奏にゾクゾクした経験があり、ジュピターを聴く度に思い出す。そう言う演奏もできたと思うのだけど。そういう演奏を聴きたかった。

♪2022-108/♪サントリーホール-13

2022年7月20日水曜日

横浜18区コンサート 第Ⅱ期 大江薫(バイオリン)× 東京フィルハーモニー交響楽団メンバー(弦楽五重奏)

2022-07-20 @吉野町市民プラザ




東京フィルハーモニー交響楽団メンバー
(弦楽五重奏)
 バイオリン1:近藤薫[コンサートマスター]
 バイオリン2:戸上眞里[首席奏者]
 ビオラ:須田祥子[首席奏者]
 チェロ:黒川実咲[フォアシュピーラー]
 コントラバス:片岡夢児[首席奏者]

大江馨:バイオリン*

モーツァルト:ディヴェルティメント長調 K.136から第1楽章
ドボルザーク:弦楽五重奏曲第2番ト長調 Op.77から第1楽章
(以上弦楽五重奏)
チャイコフスキー:バイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
(弦楽五重奏伴奏版)
----------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ第3番ラルゴ*



今回の会場は京急なら最寄駅から10分+徒歩数分という便利な場所だが初めて。
中に入ったパッと見はいかにも多目的小ホールという感じで、アコースティック音楽には不向きだろうと思った…がどっこい。

最初に弦楽五重奏でモーツァルトの喜遊曲K136が始まった途端その心配は杞憂だたと分かった。なんて素晴らしい音。

東フィルの面子も腕利きが揃っているけど、ホールの響きの良さも与って効果大。
この五重奏が値打ちものだったが、惜しいことに2曲とも断章。

それにしても、このメンバーに今日ほど近接して聴いたことがなかったが、いずれも生々しく美しく、アンサンブルの妙を実感!

大江馨君を初めて聴いたのは8年前の神奈川フィル・フレッシュコンサート。阪田知樹君と一緒だった。
脱線するが、この新人応援の機会から他にもいろんな演奏家が育っているのを知っているので楽しみな演奏会ではある。

さて、いよいよ大江君が登場してチャイコが始まった。

東フィル五重奏はいよいよ美しい。
たった5人でオケのパートを何の不自然さもなく(編曲がとても良い)、最初から、こういう音楽だったかのように大江君を支えた。

その大江君は、いつものように口跡明瞭。ソリストらしく音量も豊か。それでいて蚊の泣くような最弱音も丁寧で綺麗だ。
近くで聴いたので一層、彼らの呼吸に惹き込まれた。
あまり見事な演奏だったので、1楽章の後に大きな拍手が起こったのは、楽章間で拍手しない慣行を知らない人がいたからかも知れないが、あれを聴けば拍手でしょ!僕も拍手したかったし、6人が笑顔で客席に会釈したのはとても良かった。大満足!

♪2022-107/♪吉野町市民プラザ-01

2022年7月16日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第379回定期演奏会

2022-07-16 @県民ホール



沼尻竜典:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調 Op.65


「つぼ八」ならぬ「タコ8」か。
前回聴いたのが16年インバル+都響だから随分久しぶり。この間CDなどでも全く聴いていなかった。

ショスタコの作品には大好き!と言うものが少数あるけど、それ以外は積極的に聴こうともしないので、定期演奏会はお仕着せで聴く良い機会だ。

とはいえ、交響曲に限定すれば演奏されるのはその4割が5番なので、例えば8番など6年ぶりと言うことになる。

こと程左様に馴染みが薄いのに、そこここにショスタコの独特の旋律がひっきりなしに顔を出す。文字で言えば書き癖のようなものか。

帰宅後作業しながら…途中居眠りも…彼の弦楽四重奏曲全15曲を掛け流して気付いた。

SQ8番の第3楽章はチェロ協奏曲1番の第1楽章と一緒!
9番の第2楽章も酷似している。

…てな具合に、ショスタコの音楽ってJazz組曲のようなメロディックなものを別にすれば、調性の外れ具合が同じように聴こえる。

は、ともかく。
神奈川フィルの演奏は力強かった。
1週間前の音楽堂定期も素晴らしかったが、今回も力が入っていた。

4月に音楽監督に就任して以来、沼さんは短時間で神フィルの人心を収攬したようだ。隅々までコントロールして、団員の気持ちが一つになっているように見える。

惜しむらくは、個人的好みかもしれないが、高域管の出番が多いがこれが耳障りだった。ま、他のオケでも似たようなものだが。

♪2022-106/♪県民ホール-10

2022年7月15日金曜日

音楽堂アフタヌーンコンサート2022前期 〜ロマン派の系譜〜辻彩奈 & 阪田知樹 デュオ・リサイタル

2022-07-15 @県立音楽堂



辻彩奈:バイオリン
阪田知樹:ピアノ

シューベルト:バイオリンとピアノのためのソナチネ第1番ニ長調 D384 op137-1
ブラームス:バイオリン・ソナタ第2番イ長調 op100
クララ・シューマン:3つのロマンス op22
R.シューマン:バイオリン・ソナタ第2番ニ短調 op121
------------------------
R.シューマン:3つのロマンス op94から第2番


両者ともデビューしたてから聴いている。個別で聴くことが多く、2人の共演は今年の東京春祭以来2回目だ。

目下全国ツアー中で、今日は5公演目(全10公演)だそうな。

その折り返し点でプログラムが変わってシューマンの2番ソナタは、初出しだったと言う。

シューベルト、ブラームス、クララ&ロベルト・シューマンという絶好の組合わせだった。

遊び、のない、本格的な、成長の通過点を刻むといった感じの全力投球リサイタル。
特に、彼らも難曲だと言っていたシューマンの2番は、滅多に取り上げられないと思う。ブラームスをトリに据えるのかと思ったいたが、彼らの演奏を聴くと、さすがのブラームス2番ソナタも軽い。

音楽堂の響きの良さも手伝ったが、辻のバイオリンの音色はいつも確実に明瞭だ。ピアノも輝かしく絡んで、ドイツロマン派の王道を十分に味わった。

クララの3つのロマンスも珍しいが、アンコールに亭主ロベルトのロマンスを取り上げたのも趣向が徹底して良かったのと、夫妻の愛の交歓も窺えてヨシ。

♪2022-105/♪神奈川県立音楽堂-08

2022年7月13日水曜日

オペラ:ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」

2022-07-13 @新国立劇場



大野和士:指揮
【演 出】ケイティ・ミッチェル
【美 術】リジー・クラッチャン
【衣 裳】クロエ・ランフォード
【照 明】ジェイムズ・ファーンコム
【振 付】ジョセフ・アルフォード
【演出補】ジル・リコ
【舞台監督】髙橋尚史

【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【ペレアス】ベルナール・リヒター
【メリザンド】カレン・ヴルシュ
【ゴロー】ロラン・ナウリ
【アルケル】妻屋秀和
【ジュヌヴィエーヴ】浜田理恵
【イニョルド】九嶋香奈枝(7/6公演は前川依子)
【医師】河野鉄平

クロード・アシル・ドビュッシー
ペレアスとメリザンド<新制作>

全5幕〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約3時間25分
 第1部 Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ幕   105分
  休憩                  30分
 第2部  Ⅳ.Ⅴ幕         70分


よく分からないけど面白さは期待以上だった。
生経験はデュトワ+N響(2014)の演奏会形式のみ。
専らパリ/オペラ座(2012)とエクサン・プロバンス音楽祭2016の録画を楽しんできた。

今回は、プロバンス版と演出も美術も全く同じ。
冒頭に少し違いを感じたがそれさえ自信がない。

そもそも、本作に<物語>はあるのか?
ケイティ・ミッチェルの演出は完全な読替えだ。
それも夢落ちなので、アンフェアな気もするが、曖昧模糊とした進行にそれなりの整合性を持たせるには効果的ではあった。

要は、マリッジブルーに襲われた乙女の脈絡のない漠とした不安・恐れだ。そこに合理性を求める必要はないと思う。


何が良かったか。

もう、ドビュッシーの音楽に尽きる。
僅かな幕間を除き鳴り続ける声とオケの頼りないの音の流れによる無限旋律は泡沫の夢そのもののようだ。

これを大野和士+東フィルが見事に美しく響かせる。

余談ながら、東フィルの演奏を2日で3度聴いた事になるが全てに驚きの出来栄え。

歌手陣も上出来。
ペレアス役Bリヒターは初めて。
メリザンド役KヴィルシュはN響でも聴いたのだけどすっかり忘れていた。
ゴロー役Lナウリは録画でずいぶん聴いていたが生は格別。

さて、予てからの疑問。なぜ「ペレ・メリ」なのか?内容からすれば「ゴロ・メリ」の方が相応しいのではないか?

原作を尊重しただけかもしれないが、タイトルロールが2人とも死んでしまうオペラは極めて稀だが、ドビュッシーは、ひょっとしてこの作品に「トリスタンとイゾルデ」を重ねていたのかもしれない。だとすれば、やはり「ペレアスとメリザンド」でなくっちゃ…。

♪2022-104/♪新国立劇場-10

2022年7月12日火曜日

東京フィル第973回サントリー定期シリーズ

2022-07-12 @サントリーホール


出口大地:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
木嶋真優:バイオリン*

ハチャトゥリアン:バレエ音楽『ガイーヌ』から
 アイシェの目覚めと踊り
 山岳民族の踊り
 ガイーヌのアダージョ
 剣の舞
 レズギンカ
ハチャトゥリアン:バイオリン協奏曲*
ハチャトゥリアン:交響曲第2番『鐘』
---------------------------
Vnアンコール⇒木嶋の弁「クランク(鶴)は紛争による虐殺が起こっていたアルメニアでコミタスが祈りを込めて平和を願って作った民謡。その後Aイグデスマンのモチーフを織り交ぜながら自分で舞台で即興で演奏したもの。」


東フィル定期年間全8回中今回はちょっと異色…というのも、出口大地って指揮者は全く知らなかった。
ハチャトゥリアン指揮者コンクールで1位ほか受賞というのがどれほどのものか知らないけど、少なくともハチャ〜の音楽解釈については一頭地抜きん出た人なのだろう。
そうだとしても、ハチャ〜の音楽ばかりで定期に組むというのは違和感があった。

が、始まってみると、東フィルが実に快調だ。

この日、新国立劇場「蝶々夫人」でピットに入って名演を聴かせたのも東フィルだけど、初台が終わってサントリーホールに駆け付けた訳ではあるまい。大所帯の東フィルならではの活躍ぶり。水準の高さにちょっと驚く!

この日は、サントリーホールとも思えない響きの良さ。夏場に小雨でエアコンフル回転のせいか。

独奏バイオリンの木嶋真優は、これまでのところなかなか心惹かれるに至らなかったが、昨年のショスタコーヴィチ協奏曲(藤岡+日フィル)が素晴らしかったので、今回は楽しみだったが、期待以上の激しさ!
ドイツロマン派などよりロシアものが向いているのかな。

交響曲2番は、多分、初聴き。
スラブっぽい、民族舞曲などを織り込んで哀愁を感じさせる音楽…かと思いきや全然違った。
妙に刺激的な部分はあって、55分の長尺を退屈させず聴かせたが、今日に限れば音楽の面白さというより、木嶋と東フィルの巧さに感心して聴き入っていた。

♪2022-103/♪サントリーホール-12

プッチーニ「蝶々夫人」 高校生のためのオペラ鑑賞教室 2022

2022-07-12 @新国立劇場



阪哲朗:指揮
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【合 唱】新国立劇場合唱団
【演 出】栗山民也
【美 術】島次郎
【衣 裳】前田文子
【照 明】勝柴次朗

【蝶々夫人】木下美穂子
【ピンカートン】村上公太
【シャープレス】成田博之
【スズキ】小林由佳
【ゴロー】糸賀修平
【ボンゾ】伊藤貴之
【神官】上野裕之
【ヤマドリ】高橋正尚
【ケート】佐藤路子

プッチーニ:オペラ「蝶々夫人」
〜高校生のためのオペラ鑑賞教室
全2幕〈イタリア語上演/日本語&英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間35分
第Ⅰ幕50分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕80分


国立劇場の歌舞伎観賞教室も同様だが、新国のオペラも本格的で手抜きなし。
歌手陣も今回は木下美穂子(蝶々夫人)、成田博之(ピンカートン)、小林由佳(スズキ)など一流が登場するのは嬉しい。

しかし、高校生の団体鑑賞が目的なので、一般客は余りの席があれば買えるという次第で、良席は得難い。
特に今回は、1階席は全滅で、正面席となると4階しか空いてなかった。

かくして、初めて新国の4階の最後列という文字どおり天井桟敷に座った。
4階席全部ではないと思うが正面席は急斜面なので座ると足が床に届かない!その為、足置きバーがあるのには驚いた。


しかし、もっと重要なことで驚いたのはオケも歌声も実にクリアで音圧に殆ど不足を感じない。

予てから音響効果の点で首都圏最高のホールだと思っていたが、4階席でも実感できた。

とはいえ、舞台は遥か遠い。劇に没入には至らず。
それでも音楽を聴いているだけでも楽しい。

舞台下手上部に翻っている筈の星条旗が4階席からは見えなかった。キーアイテムなのに。演出面で要工夫だ。

♪2022-102/♪新国立劇場-09

2022年7月11日月曜日

新日本フィルハーモニー交響楽団 第642回定期演奏会<サントリーホール・シリーズ>

2022-07-11 @サントリーホール



クリスティアン・アルミンク:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
合唱指揮:冨平恭平
合唱:二期会合唱団
合唱指揮:加藤洋朗
合唱:流山少年少女合唱団・柏少年少女合唱団

ソプラノ:今井実希
テノール:清水徹太郎
バリトン:晴雅彦

バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 BB 114
オルフ:カルミナ・ブラーナ


「カルミナ・ブラーナ」を聴きたくて出かけた。

直近は昨秋の東響/ウルバンスキで上出来だったが、コロナ対応か合唱(新国立劇場合唱団50弱+児童合唱10)が迫力不足。

その前がNHK音楽祭2018N響/Pヤルヴィで、この時は新国立劇場合唱団80+児童合唱50。独唱もペレチャッコ等素晴らしいメンバーだった。当分これを超えるものは聴けないかも。

今日の合唱は二期会40+児童20なので、P席を全部潰した割にスカスカの合唱団。まだ業界基準に縛られているのか。腹に響くような音の洪水に塗れる喜びはなかった。

一方で、オケはとても良かった。
6月のデュトワ、5月の井上道と、惚れ惚れする演奏が続いている。

今日も、リハは行き届いて枝葉末節まで息が合っていた。

強いて言えば、テンポが全体に遅かった。
過去いろんなオケで聴いているが、いずれも60分前後だった(手持ちのCDも1時間。Youtubeで見てもほぼ60分だ。)。

今回は冒頭からあれ?遅い!と思ったが、全曲70分は緊張感の持続がちと難しい局面もあり。
合唱の迫力不足とテンポに疑問は残った。

♪2022-101/♪サントリーホール-11

2022年7月9日土曜日

音楽堂シリーズ「モーツァルト+(プラス)」第24回

2022-07-09 @県立音楽堂



沼尻竜典(音楽監督):指揮
神奈川フィルハーモニー交響楽団
上村文乃:チェロ*

グルダ:チェロと管楽オーケストラのための協奏曲
モーツァルト:ディヴェルティメント K.138
モーツァルト:交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」
----アンコール----
モーツァルト:歌劇「魔笛」から夜の女王のアリア with Vc*


沼さんのプレトークには間に合わなかったが、ひょっとしてプログラムの構成に言及があったかもしれない。惜しいことをした。

グルダ「チェロと管楽オーケストラのための協奏曲」は初聴き…だと思う。上村のチェロの音色は、1月にミューザで聴いた際と同様の太く硬い音だったが、今回はマイクで拾って大掛かりにスピーカーから拡声したので極めて明瞭。爆音と言ってもいいかも。

オケの方はJazzオケと言ってもいい編成で、DrumSet付きリズムセクションに弦バス2本以外弦はなし。管のみの編成だ。アコースティックギターにも拡声装置付き。

A.L.WebberにVariationという傑作があるが、その編成を大きくした感じ。音楽は、ジャズ、ポップス、クラシック混在の面白さ。


チェロの演奏はかなり超絶技巧風で、上村文乃の達者ぶりに感心した。彼女の硬い音もこの音楽には誠に効果的だった。


次のモーツァルト「ディヴェルティメントK138」は10型弦楽オケ。管なし。

ここで、神フィルの弦の美しさが際立った。

最後はモーツァルト「プラハ」で、ここでようやく管・弦・打が揃うという段取りだ。

そして、近年腕を上げている神フィルもここまでの高みに達したかという感動があった。

アンコールは、もう帰ったかと思っていた村上も再登場して、オケと共に「夜の女王のアリア」を演奏した。
ソプラノ部分をチェロが受け持つ趣向だ。これが実に面白い。

至れり尽くせりといった感のある軽妙な番組編成に心地よくやられて快感!

♪2022-091/♪神奈川県立音楽堂-07

2022年7月8日金曜日

7月歌舞伎鑑賞教室(第102回 歌舞伎鑑賞教室)

2022-07-08 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた

河竹黙阿弥=作
新歌舞伎十八番の内
『紅葉狩』(もみじがり)
常磐津連中/竹本連中/長唄連中
国立劇場美術係=美術

●「解説 歌舞伎のみかた」
 解説 中村萬太郎/尾上緑

●『紅葉狩』
余吾将軍平維茂⇒尾上松緑
更科姫実ハ戸隠山の鬼女⇒中村梅枝
侍女野菊⇒中村玉太郎
従者左源太⇒尾上左近
従者右源太⇒坂東亀蔵/中村萬太郎
山神⇒中村萬太郎/坂東亀蔵
局田毎⇒市川高麗蔵
        ほか


今日は社会人の為の鑑賞教室で19時の開演。昼間の高校生相手の鑑賞教室に付き物のピチピチギャルなどは全然いない。寧ろ和服のお姐さんが多かった。

2階最前列に好みの席が取れなかったので、珍しく1階席のそれも花道のすぐ右側に座った。ミーハーのおばちゃんたちの大好きな席だ。手を伸ばせば、役者に触れそう。
尤も、結果的には(本来なら一番高価な席だけど)前の席に戸隠の鬼みたいにデカいのが鎮座ましまして視界すこぶる悪い。やはり歌舞伎は2階最前列がいい。

社会人の為、という触れ込みだし、開演時刻が遅いという事もあってか、ほぼ満席状態だった。

「紅葉狩」は亜流も含めると3回目なのだけど、恥ずかしながら、全く何にも記憶にございません…でした。

簡単な歌舞伎解説があって、愈々開演すると舞台は見事な紅葉の満開だ。これほど派手な舞台は珍しい。
そして普通は御簾の中で演奏する竹本(義太夫節)などの音曲が表舞台にズラリと並んだ。常磐津連中、竹本連中、長唄連中と賑やかなこと(三方掛合というらしい。)。

ということは、芝居の方も舞踊主体だ。

しかし、終盤は、梅枝扮するの更科姫が誠に恐ろしい面構えの戸隠山の鬼女に変化し、松緑の平維茂と激しく切り結ぶという見どころもあり、勝負が付かないまま双方睨み合って見得を切って終わる。

いつもお姫様の梅枝の不気味な隈取りをした鬼の姿と舞台ではまず聞けない本来の男の地声が怖かったな。

♪2022-099/♪国立劇場-06

横浜バロック室内合奏団定期演奏会102回 〜イタリアの輝き

2022-07-08 @ひまわりの郷



横浜バロック室内合奏団
 バイオリン:小笠原伸子♯/有馬希和子/茂原大朗/藤村陽子
 ビオラ:田中玲/眞中望美
 チェロ:間瀬利雄
 コントラバス:大西雄ニ
 チェンバロ:山口範子

ピアノ:京増修史*

ビバルディ:「四季」全曲♯
レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲
 Ⅰイタリアーナ
 Ⅱ宮廷のアリア
 Ⅲシチリアーナ
 Ⅳパッサカリア
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調K488*
----アンコール----
モーツァルト(リスト編):アヴェ・ヴェルム・コルプス(Pfソロ)*



「イタリアの輝き」特集(モーツァルトもあり)がホンに輝かしくて良かった。
耳タコの「四季」だが、独奏入れて総勢8〜9人の演奏をほぼ、かぶりつきで聴くと実に生々しくて新鮮だ。

レスピーギの「リュートの為の古風な舞曲とアリア/第3組曲」は大好物。
原曲は16-17世紀の作らしいが、現代にも通ずるカンツォーネの源流なんだろうな。どの旋律も美しい。
組曲は3つあるが「第3組曲」以外は生では聴いたことがない。一度全曲通しで聴いてみたい。

モーツァルトピアノ協奏曲第23番はモーツァルト、イタリア旅行の産物なのかな。

流麗な指捌きによるピアノ独奏は京増修史くん。
先のショパン・コンクールで2次予選に進んだ才人だ。

既に安倍ちゃんの事件は報道され、容体を心配しながら聴いた。演奏する側もにもなんらかの影響があったかもしれないが、もちろんそんな素振りもなくむしろ心に染み渡るような演奏だった。

彼が弾いたアンコールを僕は「安倍・ヴェルム・コルプス」だと思いながら聴いたよ。

♪2022-098/♪ひまわりの郷-3

2022年7月5日火曜日

石田泰尚スペシャル 熱狂の夜 第3夜《カルテット》アメリカ

2022-07-04 @ミューザ川崎シンフォニーホール



YAMATO String Quartet
 石田泰尚:1stバイオリン
 執行恒宏:2ndバイオリン
 榎戸崇浩:ビオラ
 阪田宏彰:チェロ

ピアソラ:アディオス・ノニーノ
ドボルザーク:弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」ヘ長調 op.96 B.179
伊福部昭:ゴジラ
スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」ホ短調
ピアソラ:革命家
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ジミ・ヘンドリクス:リトルウイング
バーンスタイン:ウエストサイドストーリー
ソーラン節


折りしもアメリカ独立記念日に「アメリカ」を2つも聴いた。ま、偶然なのだろうけど。
「無伴奏」⇒「デュエット」の次は「トリオ」でしょ!と言いたいが、なぜか一つ飛ばして今日は第3夜にして「カルテット」。

石田組長も「カルテットでこんなに多く来てくれるとは…」と謝辞。
確かに全5夜のうち、一番敷居が高いかもしれない。しかし、広いミューザの第4層まで埋め尽くした熱心な石田ファンのおばちゃん達にとっては、無伴奏も協奏曲もカルテットも関係ないだろう。

今日のメンバーはYAMATO SQ。
長く演っているだけあって、息が合うとかいうより、完全に石田風の音楽になっている。

前半にドボルザークの「アメリカ」、後半にスメタナの「わが生涯より」と、昔のEPで言えば両A面みたいな豪華版だった。

いつもながら、丁寧で繊細で美しい。

「アメ〜」、「我が〜」を聴いていても、クラシック音楽という意識がぼやけてイージーリスニングみたいだ。

本篇の5曲、いずれも楽しめたが、個人的にはアンコールの2曲目、バーンスタインの「ウエストサイド物語」メドレーが出色の出来。

その冒頭が本日2度目の「アメリカ」から始まるのも心憎い。
優れた編曲にも感心したよ。

♪2022-097/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-23