2019年10月29日火曜日

横浜音祭り2019 横浜18区コンサート 〜大江薫バイオリン〜

2019-10-29 @かなっくホール


大江薫:バイオリン
管弦楽:カメラータかなっく

ベートーベン:バイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番ヘ長調 作品50
ベートーベン:バイオリン協奏曲ニ長調 作品61

大江薫くんが我が家の近所のかなっくホールでベートーベンのバイオリン協奏曲を弾くのは嬉しいが、オケは?カメラータ・かなっく!って何?聞いたことないぞ。

横浜音祭の一環なので、今回の演奏会のために急遽集めた少人数オケだと思っていたら、なんと常設の(主にかなっくホールで演奏活動している)オケで、代表がN響の名物コンマス篠崎史紀の息子で神奈川フィル首席ティンパニー奏者の篠崎史門。メンバーは総勢30人強だった。まずはそれにびっくりした。

かなっくホールは我が家から文字どおり<最寄り>のホールだが、その名を冠したオケがあるとは灯台下暗しだ。

室内楽程度のオケを想定して買った席は、結果的にステージに近すぎて、独奏を聴くには良かったが、オケはもう原音そのままで全体に硬かったが、やむを得ない。

また、大江くんのバイオリンの音色も実に明瞭。当然、音圧高く、息遣いのようなフレーズも聴き取れて臨場感が半端ではない。

さて、協奏曲中、独奏者が名人芸を披露する<カデンツァ>が、今回の演奏では珍しい版が用いられた。
この作品で、ベートーベンはそれを独奏者の腕に任せて自らは書いていない。それで、多くのバイオリンの名人達が作曲したものが残されていて、現在ではそのうちのどれかを採用しており、自ら作曲するとか即興演奏することはないようだ。
そのうちの一つと言っていいか、変わり種としてベートーベン自身がバイオリン協奏曲をピアノ協奏曲に編曲し、その際に自ら書いたカデンツァがある。これはピアノ独奏にティンパニーが加わる。
それを元のバイオリン協奏曲でも使えるようにピアノの独奏部分をバイオリン用に編曲している例がある。

実は昨年5月のN響定期(P.ヤルヴィ指揮、バイオリン独奏⇒C.テツラフ)でベートーベンのバイオリン協奏曲を聴いた際に、テツラフが採用したのが、このカデンツァで、ピアノ版をバイオリン用に編曲したのもテツラフ自身だった。
その事情がN響定期演奏会の会場に掲示してあった。

今回、大江くんが採用したカデンツァもまさにテツラフが演奏したものと同じだった。ただ、ピアノ版からバイオリン版への編曲を誰がしたのかは分からない。会場張り紙には編曲者までは書いてなかった。

問題のN響定期の演奏を録画放映した「クラシック音楽館」の録画を見直したら、そのカデンツァの由緒を史門君のパパが解説してたのは妙な暗合で面白い。

♪2019-166/♪かなっくホール-01

2019年10月28日月曜日

ハマのJACK 第44回定期演奏会 オール・プロコフィエフ・プログラム

2019-10-28 @みなとみらいホール


三又治彦:Vn(N響)*1
白井篤:Vn(N響)*2
中村翔太郎:Va(N響)*3
海野幹雄:Vc(JACK)*4
松井理史:Cb(JACK)*5
海野春絵:Pf*6
山根孝司:Cl(N響)*7
吉村結実:Ob(N響)*8
横手梓:Pf*9

≪オール・プロコフィエフ・プログラム≫
「横浜で演奏された演目から」
①10の小品 Op12から<プレリュード> *6
②4つの小品 Op4から<悪魔的暗示> *6

「日本からアメリカ・パリへ」
物語を日本でよみバレエの構想を思いつく
 ③3つのオレンジへの恋から<行進曲>*2、9
 ④五重奏 Op39「ぶらんこ」*1、3、5、7、8

祖国ロシアへ…ヒット作品・子供がテーマの曲.戦争避難先で…
⑤バレエ「ロメオとジュリエット」OP75から<モンターギュ家とキャピュレット家>*9
⑥子供のための音楽 Op65から<行進曲>*4
⑦弦楽四重奏曲第2番 Op92<カバルダの主題による>*1、2、3、4
⑧無伴奏チェロソナタ嬰ハ短調 Op134 *4
----------
アンコール
ヘブライの主題による序曲 *1、2、3、4、7、9

ハマのJACKのメンバーはほぼN響の首席・次席級で構成。
いつも一人の作曲家を特集しているが今回はプロコフィエフ。
プロコでは集客が心配…そのとおりになってえらく少なくて、聴いている側も申し訳ない気分。
が、始まると、かぶりつき席でみっちりと耳慣れぬ曲を楽しんだ。

知っていたのは2曲③⑤だけ。
小品ばかりだが、横浜に縁のある作品から順に聴いて少しプロコフィエフに開眼できたような気もする。

「ぶらんこ」④はバレエ団の演奏家の5人に合わせて書かれたバイオリン、ビオラ、チェロ、オーボエ、クラリネットという変わった編成。

ピアノ独奏曲①②も弦楽四重奏⑦も無伴奏チェロ曲⑥⑧も初聴き。

ナマだから面白く聴いたがCDではどうだろう。あまり楽しめそうでもないなあ。

♪2019-165/♪みなとみらいホール-48

2019年10月27日日曜日

横浜交響楽団第698回定期演奏会

2019-10-27 @県立音楽堂


飛永悠佑輝
横浜交響楽団
横響合唱団

横森由衣:Sp 
松浦恵:Al 
渡辺大:Tn 
竹内利樹:Br 

ヘンデル:オラトリオ「メサイア」から 
<第2部中27、28、34〜36を除く>
モーツァルト編曲版

横響(横浜交響楽団)は日本最古のアマオケ。
プロを含んでも3番目に古い老舗で、年間8回も定期をやっているのは他に例がないのではないか。
故に今日は698回目。
ある意味日本一のアマオケだが、日本一上手とは言えないけどなぁ。でも意欲的な取り組みは他の模範になるだろう。

‪今日はヘンデルの「メサイア」ほぼ全曲(5曲カット)だが、何とモーツァルトの編曲版で、これは多分極めて稀な「メサイア」ではないかな?‬
‪と言っても、原曲との違いは、僕にはほとんど分からなかった。‬
‪管楽器が少し多めらしく、その分華やかにはなっている。‬
‪指揮と独唱はプロ。

字幕なしが悩ましいが、おおよその物語は分かっているから、まあ、こんなことを歌っているんだろうな、と想像しながら聴いているが、むしろ字幕がない方が純粋に音楽に入り込めるかもしれない。

♪2019-164/♪県立音楽堂-2

2019年10月26日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第351回横浜定期演奏会

2019-10-26 @みなとみらいホール

ピエタリ・インキネン[首席指揮者]
日本フィルハーモニー交響楽団
アレクセイ・ヴォロディン:ピアノ*

ベートーベン:交響曲第1番ハ長調 op.21 
ベートーベン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調 op.15* 
ドボルザーク:交響曲第8番ト長調 op.88 B.163
-------------
ショパン:子犬のワルツ*
ラフマニノフ:前奏曲集作品32-12*
ドボルザーク:スラブ舞曲作品72-6

インキネンの指揮でベートーベンの交響曲第1番とピアノ協奏曲第1番というちょっと珍しくて、前半のプログラムにしては豪華な組み合わせが嬉しい。

初聴きのヴォロディン。教科書どおりでカチッと仕上げた感じだったが、ベートーベンでは遊びようもないだろう。物足りなかったか、アンコールでは2曲で超絶技巧ぶりを発揮。
子犬のワルツは過去に聴いた最速を更新した。よくまあ、あんなに速く指が動くものだ。

ドボルザークの8番は哀調を十分歌わせて美しい。
弦の透明感は先週の東フィル定期と良い勝負か。ただし、全体として管楽器が控えめな感じだった。

インキネンの意図なのだろうが、終楽章のホルン(フォルテのトリル)のいななきがなかったのは寂しい。ここはやはり泥臭く決めて欲しい。こういう風に綺麗にまとめた8番は珍しいのではないか。換言すれば物足りなかったのだけど。

♪2019-163/♪みなとみらいホール-47

2019年10月25日金曜日

横浜バロック室内合奏団定期演奏会92回 ウィーンの流れ〜モーツァルトからシューベルト

2019-10-25 @みなとみらいホール


Vn小笠原伸子* **、齋藤亜紀*、有馬希和子* **、志摩かなえ*
Va中島久美* **、佐藤裕希子*
Vc中垣文子* **、間瀬利雄*
Cb大西雄二* **
Ob戸田智子*、藤本茉菜美*
Cl鈴木生子**
Fg山上貴司**
Hr岡村陽* **、浅井春香*

Ob近藤菜実子*
Cl芳賀史徳*
Hr嵯峨郁恵*
Fg中田小弥香*

モーツァルト:弦楽四重奏曲第6番変ロ長調K159
モーツァルト:オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲変ホ長調K297b*
シューベルト:八重奏曲へ長調 作品166**


一番大きな編成でも19人だったが、これが今季最大編成だそうな。
すっきりとした小編成で音楽の見通しが良く、耳に心地良い音楽ばかりで、ホンに癒される。‬

‪リーダーの小笠原女史の人柄のせいもあるのだろうが、横バロの定期演奏会はいつもアト・ホームな雰囲気のサロンコンサート風。

‪オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲は珍しい…というか、初めて聴いたような気がしていたが、帰宅後記録をたぐると2006年にラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンで聴いていた。ま、そんな昔のことを覚えているはずもないよ。

ともかく、これが一番楽しめた。ところが、この作品はモーツァルトの自筆譜が残っていないなどの理由で真正な作品かどうかについては大いに疑われているようだ。ところが、それでも名曲であるという点に関しては疑われていないようで、多くの名人が録音を残している。

シューベルトの八重奏曲(バイオリン2、ビオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、オーボエ、ファゴット)はモーツァルトのオーボエ〜協奏曲からオーボエを抜いて弦楽器を5部(各部1台)にした8重奏だが、‬モーツァルトの作品から50年弱経過後の作品なので、同じウィーンの流れと言ってもだいぶ様子が異なる。古典派とロマン派の違いというより、偽物の疑いがあるにしても、両者?の才能の違いがはっきりと現れているような気がした。シューベルトがあらゆる分野でモーツァルトより劣っているとも思えないけど、管楽器を含む室内楽の面白さには欠けるように思った。何度か聴けば印象も変わるかもしれないのでいい加減な感想だけど。

♪2019-162/♪みなとみらいホール-46

2019年10月17日木曜日

東京フィル第128回東京オペラシティ定期シリーズ

2019-10-17 @東京オペラシティコンサートホール


ミハイル・プレトニョフ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団:男声合唱*
イルカー・アルカユーリック:テノール*

ビゼー:交響曲第1番ハ長調
リスト:ファウスト交響曲 LW-G12(S.108)*

ビゼーの交響曲1番は、初めて聴いた若い頃に第2楽章のオーボエの物悲しい旋律にすっかりやられて繰り返しCDを回した記憶があるが、ナマは随分久しぶり。
東フィルの演奏は僕の耳にはもう全く破綻のない見事なもので大いに満足した。

メインがリストのファウスト交響曲で、その名前は知っていたが、今回が初聴きだ。これが凄い作品だ。

プログラムには演奏予定時間70分と書いてあったが、実演奏は80分に及んだ。
その70分を過ぎた頃にオルガニスト、テノール独唱、男声合唱がしずしず入場。それまででもう十分圧倒されていたが、ラスト10分は彼らが加わって更に上回る迫力。そして天国的な終幕が用意されており、ほとほと感心した。リスト恐るべし。そして東フィルも恐るべし。

イルカー・アルカユーリック(テノール独唱)の出番は短いが、ステージの一番奥から突き刺すような高音を響かせていた。それに男前である。精悍だが同時に甘いマスクで、イスタンブール生まれ、ウィーン育ちのオーストリア人だそうだ。顔立ちはちょっとドミンゴに似たところもあり、間違いなく、多くの女性に取り囲まれているだろうが、失敗しないでね。

今季の席はかなりステージに近いので(強烈な音圧にタジタジとなることが多いので次季はもっと後方に変更手続き済みだが)、それぞれの楽器の音が実に良く聴こえるがみんな巧いのに驚く。ホールの音響も良いのだけど、東フィルは間違いなく腕前もいい。

♪2019-161/♪東京オペラシティコンサートホール-05

みなとみらいアフタヌーンコンサート2019後期 〜「ウィーン、我が夢の街」 フランツ・バルトロイ チェロ・リサイタル

2019-10-17@みなとみらいホール


フランツ・バルトロメイ:チェロ*
後藤泉:ピアノ

J.S.バッハ:ビオラ・ダ・ガンバソナタ第3番ト短調 BWV1029(チェロ編)
メンデルスゾーン:チェロソナタ第2番ニ長調 op.58
シューマン:アダージョとアレグロ op.70
ブルッフ:コル・ニドライ op.47
サン=サーンス:白鳥
クライスラー:愛の悲しみ/美しきロスマリン
ジーツィンスキー:ウィーン我が夢の街 
--------------
シベリウス:悲しきワルツ
カザルス:鳥の歌

3年半前に同じみなとみらいホールで聴いた。
ウィーンフィルで首席ソロ・チェロを39年勤めたそうだ。
音色は美しいし、腕は確かで、危なげがないというのは失礼だが、模範演奏のように完璧な感じがする。派手派手しいものは何にもなくて、気持ち良く名曲を楽しんだ。

アフタヌーンコンサート2019後期全5回のうちのひとつとして聴いたが、個別ならもういいかな。ちょっと名曲コンサート過ぎて面白みには欠けたなあ。

♪2019-160/♪みなとみらいホール-45

令和元年度(第74回)文化庁芸術祭協賛 国立演芸場開場四十周年記念10月中席

2019-10-16@国立演芸場


落語            桃月庵こはく⇒たらちね
落語            古今亭志ん丸⇒源平盛衰記
曲芸            翁家社中 
落語            隅田川馬石⇒粗忽の釘
落語            柳家小里ん⇒笠碁
 ―仲入り―
漫才            ニックス
落語            林家彦いち⇒反対俥
奇術            伊藤夢葉
落語            五街道雲助⇒幾代餅

前座を別にして、3人目くらいからは真打が口座に上がるのだから、ちょいと気持ちを引き付けて欲しいが、このところだめだ。
仲入り休憩を含んで3時間15分くらいの長丁場なので、始まってから1時間以内に聴く気にさせてくれないとダメだ。
それができないと、結局最後まで不満を引きずることになる。

今日なんか、落語の演目はいずれも古典の秀作ばかり。誰がやっても面白くなるのじゃないかと…までは思わないけど、もうちょっとなあ…。


♪2019-158/♪国立演芸場-14

2019年10月16日水曜日

東京都交響楽団 第889回 定期演奏会Bシリーズ

2019-10-16 @サントリーホール


小泉和裕:指揮
東京都交響楽団

ワーグナー:ジークフリート牧歌
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調 WAB107(ノヴァーク版)

前日の読響に続いて今日もサントリーホールで。
今回は正規の定期会員としての演奏会だからいつもの好位置。
RBとは雲泥の良い響き。

で、ジークフリート牧歌も心地良かったしブルックナー第7番も前半は破綻なく美しい。

が、せっかくのお楽しみと言える3楽章以降がつまらなかった。
前半は我慢の一字でここからがカタルシスなのに。

管の編成は指示どおりだったのだろうか。それとも増強?
とにかくプカプカドンドンとうるさい。
2楽章までの精密さが吹き飛んでしまってガヤガヤし始めた。
弦も釣られたように雑な感じになった。
まあ、そういう音楽の作りになっているとも言えるけど、そこを透明感を維持してかつ強力な音圧で聴きたい。

♪2019-159/♪サントリーホール-07

2019年10月15日火曜日

読売日本交響楽団第626回名曲シリーズ

2019-10-15 @サントリーホール


ユーリ・テミルカーノフ:指揮
読売日本交響楽団
エマニュエル・チェクナヴォリアン:バイオリン*

シベリウス:バイオリン協奏曲ニ短調 作品47*
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 作品64
--------------
成田為三:浜辺の歌*

昨日みなとみらいホールで聴いた読響の同じプログラムを今日はサントリーで聴いた。

演奏は昨日と変わりのない熱演だったが、まずもって席が悪くて全然入魂できなかった。

今日は来月の横浜定期が他のコンサートとバッティングして聴きにゆけないのでこの演奏会に振り替えた。どうせなら違うプログラムの会にしたかったが、どの日もダブっていて、昨日・今日の同一プログラムになってしまった。

それはいいとしても、振替えなので席は選べず、同じS席ランクではあるが、随分久しぶりのバルコニー席だった。これはやむを得ない。チケット捨てるよりマシだ。

1Fでいえば4列目くらいなので音源には近いがオケは視野の右半分だ。

音の方は左耳にももちろん入ってくるが8割方右耳に入ってくる。しかも、オーケストラを横から聴いている。
それを脳内で正面から聴く音楽に想像変換するのはやはりかなりのストレスだ。

二つ目。
サントリーは聴感上良席エリアが狭い。
当然今日の席では良い響きは期待できず、案の定、チャイコ終楽章などバイオリン高音域がキンキンゴロゴロと唸っていた。
みなとみらいでは大抵いつも良い演奏を聴かせてくれる読響も実力はこんな程度か、とガッカリ。ま、席が悪いんだ。正面から聴いていたら、遜色なかったろうに。

どの席で聴くか、これは極めて重要。

♪2019-157/♪サントリーホール-06

2019年10月14日月曜日

読売日本交響楽団第115回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2019-10-14 @みなとみらいホール


ユーリ・テミルカーノフ:指揮
読売日本交響楽団
エマニュエル・チェクナヴォリアン:バイオリン*

シベリウス:バイオリン協奏曲ニ短調 作品47*
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 作品64
--------------
成田為三:浜辺の歌*

コンサートマスター(厳密にはミストレス)は日下紗矢子とうれしい配役。痩身・長身で長い腕が繰り出すボウイングが美しい。

E・チェクナヴァリアン(初聴き)の独奏でシベリウスのバイオリン協奏曲。これが実に良かった。なんとも明瞭・明晰な撥音で、気持ちがいい演奏だ。
情緒的にならず本格の味わい。
テルミカーノフ読響もぴったり寄り添って好感。

後半チャイコ5も堂々たる仕上がりに大満足。


♪2019-156/♪みなとみらいホール-44

2019年10月13日日曜日

名曲全集第150回 ジョナサン・ノットの「未完成」

2019-10-13 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ジョナサン・ノット:指揮
東京交響楽団
ヴァーヴァラ:ピアノ*

アイヴズ:答えのない質問
シューベルト:交響曲第7番「未完成」
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番*
-------------
ブラームス:6つの小品 作品118から第2曲「間奏曲」*

台風19号の余波で開催が危ぶまれたが、10分遅れでもやったのは良かった。いつもよりお客の入りが悪かったのはやむを得まい。

当初は、アイヴズ作品にシューベルト「未完成」を続けて演奏するという木に竹継ぐような…ノットの悪癖に嫌気がさしていた。真面目にやれ!

しかし、初聴きのアイヴズ「答えのない質問」が予期に反してとても真面目な作品で興味深い。徹底的な弱奏を基調とする中に木管が思いがけない答えを用意する。静に始まり静に終わり…間をおかず「未完成」が始まるとそれはシューベルトとアイヴズの世界の混交状態。聴き慣れた旋律が今日は愛おしい。

不思議な感覚のまま入り込んだ第2楽章など、まさに先ほどのアイヴズが再現されているかのようだ。こんな印象的な「未完成」は初めて聴いた。ノットの外連味が今回に限っては功を奏して静寂で接続された両作品がともに味わい深いものとなった。

ヴァーヴァラ(初聴)の独奏でブラームス:ピアノ協奏曲第1番。協奏曲なのに弦の編成は14型から16型に拡大。

ピアノがえらく力強い。
オケも分厚い。
その分、前半2曲のような精緻な透明感は損なわれた。
協奏曲だし14型のままでも良かったのではないかと思うもののそれではあの迫力は出せなかったかもしれない。

厚切りフィレステーキを食べたような満腹感。
加えてアンコールのブラームス間奏曲118-2が心憎い選曲と名演。

♪2019-155/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-21

2019年10月11日金曜日

新日本フィル:#26ルビー<アフタヌーン コンサート・シリーズ>

2019-10-11 @すみだトリフォニーホール


上岡敏之:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

シューベルト:交響曲第2番変ロ長調 D125
シューベルト:交響曲第3番ニ長調 D200
バルトーク:管弦楽のための協奏曲 Sz. 116

今季の新日本フィルはシューベルト交響曲を全曲やるみたいで、9月4番、今回2・3番、来月1番、2月5番、7月8番。これに他の定期を合わせて全曲完成だ。
先月の4番も聴く機会が少ないく、圧倒的に5番以降が多い。
昔のことは記憶もいい加減だが、今日の2・3番は初聴きだったかも。

弦編成は10型という珍しい小規模。
2曲ともシューベルト17〜8歳頃の作品で、その頃ハイドンもモツも亡くなっており、ベートーベンを聴いていたはずだが、作風はハイドンに少し情緒をまぶしサロン音楽のような軽めの仕上がりだ。

これらの対比でバルトークが一層面白かった。
弦楽器の編成が14型(第1バイオリンが14人)に拡がって音の厚みが違う。

管弦楽のための協奏曲というだけあって、特に管楽器の出番が多い。技術的にも演奏が難しいようだ。
そこを、このオケのメンバーは難なくこなして面白い。
弦と管との混ざり合う響きも良い具合で、いつも上岡マジックに乗せられたようで、感心してしまう。

オマケにこのホール、響きが良いのが難点かも!


♪2019-154/♪すみだトリフォニーホール-03

2019年10月7日月曜日

東京都交響楽団 第888回 定期演奏会Aシリーズ

2019-10-07 @東京文化会館


マルク・ミンコフスキ:指揮
東京都交響楽団

シューマン:交響曲第4番ニ短調 op.120(1841年初稿版) 
チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 op.74《悲愴》

シューマンは程よく纏まって好感。
チャイコフスキーは緩急強弱のメリハリ付けて暴力的な位の怒濤の悲愴でガサついて煩いがともかく醜女の深情けに押し倒された感じ。
ホルンのミュート?朝顔が割れているのかと思ったよ。

ところで第3楽章が終わると拍手したくなる。
今夏、仙台フィルの第3楽章単独演奏を聴いて以来そういう衝動に駆られる(その日の演奏会では、アンコールに「悲愴」の第3楽章だけを演奏したので、その楽章の終わり=曲の終わりということで、その日集まった観客はおそらく初めて第3楽章の終わりに拍手をする経験をした。これが案外快感であった。)。
第3楽章以外の残る3楽章はいずれも元気なく終わるのでどうも拍手に馴染みにくいが第3楽章の勇壮な終わり方はここでこそ、大向こうを聞きたい・聞かせたいという唯一のポイントだから。

♪2019-153/♪東京文化会館-08

10月歌舞伎公演「通し狂言 天竺徳兵衛韓噺」

2019-10-07 @国立劇場


天竺徳兵衛/座頭徳市/斯波左衛門⇒中村芝翫
梅津掃部⇒中村又五郎
梅津奥方葛城⇒市川高麗蔵
山名時五郎/奴鹿蔵⇒中村歌昇
下部磯平⇒大谷廣太郎
銀杏の前⇒中村米吉
佐々木桂之介⇒中村橋之助
侍女袖垣⇒中村梅花
石割源吾/笹野才造⇒中村松江
吉岡宗観/細川政元⇒坂東彌十郎
宗観妻夕浪⇒中村東蔵
          ほか

四世鶴屋南北=作
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「天竺徳兵衛韓噺」(てんじくとくべえいこくばなし)
 三幕六場
 国立劇場美術係=美術

序幕  北野天満宮鳥居前の場
   同         別当所広間の場
二幕目 吉岡宗観邸の場
   同         裏手水門の場
大詰  梅津掃部館の場
   同         奥座敷庭先の場

国立劇場での通し狂言としては20年ぶりだそうだが、17年前に猿之助の「天竺徳兵衛新噺」(明治座)を観ていたので、変だなと思ったが、よく読めば「韓噺〜いこくばなし」と「新噺〜いまようばなし」との違いがある。

今回のは「いまよう」ではないのだから、古くからある噺で本家なのだろう。

大蝦蟇が出てきたり妖術を使ったりと外連味たっぷりの娯楽作とはいえ、猿之助と芝翫ではだいぶキャラが違う。

たまたま両方の舞台に異なる役で出ている米吉も二つの演目は噺が違うとプログラムに書いているが、その違いはもはや思い出せず、猿之助版の方が遥かに面白かったことは思い出しながら芝翫版を観たのでイマイチ気合が入らなかった。



♪2019-152/♪国立劇場-13

2019年10月6日日曜日

東京二期会オペラ「蝶々夫人」

2019-10-06 @東京文化会館


指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:宮本亜門
装置:ボリス・クドルチカ
衣裳:髙田賢三
照明:マルク・ハインツ
映像:バルテック・マシス 
合唱指揮:河原哲也
演出助手:澤田康子/島田彌六
舞台監督:村田健輔
公演監督:大島幾雄

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:二期会合唱団

蝶々夫人⇒大村博美
スズキ⇒花房英里子
ケート⇒田崎美香
ピンカートン⇒小原啓楼
シャープレス⇒久保和範
ゴロー⇒高田正人
ヤマドリ⇒大川博
ボンゾ⇒三戸大久
神官⇒白岩洵

プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」
全3幕〈イタリア語上演/字幕付〉

予定上演時間:約2時間45分
第Ⅰ幕 55分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕、第Ⅲ幕 85分

宮本亜門新演出の二期会公演。
大村博美への期待と新演出の不安は外れなかった。

今年4回目の「蝶々夫人」でいずれも其々に楽しんだが、大村・蝶々こそ今年の「蝶々」のシメにふさわしかった。

一方で、宮本亜門の新演出*は観客の気を散らせた。
終始、物語の傍観者であるが、物語に絡みようのない無言の青年の存在はドラマ没入の邪魔でしかなかった。

また、えらく簡素な舞台で、作り物はスカスカの小屋ひとつ。
場面切り替えはカーテンに映像投射のみ。
その結果、声の反射板になるべき装置がないので、歌唱は迫力に欠けた。これでは客席後方や上層階には十分届かなかったのではないか。
僕は1階前方中央という好位置だったが、それでも物足りなかった。そんな悪条件の下でもひとり大村博美の群を抜く声量がハンデを跳ね返していたのは凄い。

また、彼女の演技力にも唸った。2幕の最後、オケがゆったりと伴奏する中、夫ピンカートンの帰国3年後に、蝶々さんの想いが叶ってピンカートン一行(気の毒なことにアメリカの本妻を随行して。)が家を訪ねてくる前夜。
セリフも歌もなく、万感の思いを胸に、ひたすら夜明けを待つ場面。大村の目は真っ赤に充血し、大粒の涙が頬を伝う。もう、なり切っている!確かに18歳の蝶々さんがそこに居た。それを見て心揺さぶられない者はいないだろう。

人種差別、女性蔑視などの問題を含んだ「蝶々夫人」だが、初演後115年を経た今なお観客の胸を打つのは美しい音楽のせいだけではなく、蝶々さんの純粋な生き方(ある意味、サムライの凛々しさがある。)は古今東西を問わず普遍的な美しさがあるからだろう。


*蝶々さんとピンカートンの間にできた子供は蝶々さんの死後ピンカートンに引き取られ、アメリカで育つ…までは原作どおり。新演出は、アメリカに帰国後30年の現在、ピンカートンは死を迎え、今32歳となった青年(蝶々さんの遺児)が残された父の手紙によって初めて両親のラブストーリーを知る、という内容に膨らませてあり、冒頭にこの事情を示す寸劇が演じられ、本編から終幕までずっと青年は舞台のどこかから両親の出会いから蝶々さんの自決までの3年間の出来事を覗き見ているという仕掛け。

♪2019-151/♪東京文化会館-07