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2017年7月23日日曜日

フェスタサマーミューザ2017 特別参加公演 オーケストラ・アンサンブル金沢 ≪パイプオルガンとオーケストラの饗宴≫

2017-07-23 @ミューザ川崎シンフォニーホール


井上道義:指揮
ルドヴィート・カンタ:チェロ#
ティエリー・エスケシュ:オルガン*
オーケストラ・アンサンブル金沢

エスケシュ:与えられたテーマによる即興演奏(オルガンのみ)*
シューベルト:交響曲第7番ロ短調「未完成」D.759#
サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番イ短調 op.33
エスケシュ:オルガン協奏曲(2016年度オーケストラ・アンサンブル金沢委嘱作品)*
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アンコール
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番から サラバンド#

エスケシュという作曲家・オルガニストは初聴き。
最初に、井上道義が、伊福部昭の「ゴジラ」から有名なテーマとシューベルト「未完成」の冒頭のメロディをピアニカで鳴らし、それをエスケシュが聴き取って、この2つの旋律を元にしたパイプオルガンの即興演奏をした。これがなかなか面白く出来上がった。もちろん、事前に打ち合わせをしていたのだろうけど。

その後のプログラムは理解不能な組合せ。

シューベルトの「未完成」はまあ良かったかな。
オケは総勢40名程度なので、各パートの旋律線がよく分かるのがいい。もちろん、少人数であるためにシンフォニックサウンドは期待できない。しかし、作曲された当時のオケの規模は、多分こんなものなのだろう。我々は、今、モダン楽器で相当拡大された規模のオケで豊かな弦の共鳴を普通に楽しんでいるので、こういう室内アンサンブルでは頭の切り替えをしなくてはならない。

次のサン=サーンスのチェロ協奏曲は生では初聴きだった。
シューマンのチェロ協奏曲同様3部構成だが単一楽章として演奏される。こういう非常にロマンチックかつドラマチックな音楽は、もう少し規模の大きいオケの方が一層味わい深いだろうと思った。

最後に、冒頭の即興演奏をしたエスケシュの作曲によるオルガン協奏曲をエスケシュ自身のオルガン独奏で演奏した。これが、どんな音楽だったか思い出せないが、走り書きのメモに悪評は書いていないところをみると、現代音楽にしてはそれなりに楽しめたのだろう。

それにしても、今日のミューザの客席は、舞台回りと最上層にお客が1人も入っていない。ミューザの職員に聞いたら、チケットを売らなかったのだそうだ。集客に不安があったのだろうが、せっかくのホールが客席側から見るとガラガラの印象で寂しい。
フェスタサマーミューザのコンサートは毎回がリーズナブルな料金設定だが、このアンサンブル金沢は特別参加という位置づけで、在京オケの料金とは別建てで、特に安価な設定だったから、売ればお客が入ったのではないか。
尤も、「当日券あります」という告知があったところをみるとあれでも売れ残っていたのだ。

ま、名の売れたスタープレーヤーも出なかったし、プログラムが地味過ぎたな。

♪2017-126/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-15

2015年9月18日金曜日

辻井伸行 with 井上道義&オーケストラ・アンサンブル金沢 《悲しみのモーツァルト》

2015-09-18 @ミューザ川崎シンフォニーホール

井上道義:指揮
辻井伸行:ピアノ*
オーケストラ・アンサンブル金沢

モーツァルト: 
交響曲第25番 ト短調 K.183
ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466*
交響曲第40番 ト短調 K.550
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アンコール
モーツァルト:トルコ行進曲(辻井編?)*
リスト:コンソレーション第3番*
モーツァルト:2つの行進曲ニ長調から第1番
武満徹:「3つの映画音楽」からワルツ<映画「他人の顔」>


5月の「熱狂の日」でオーケストラ・アンサンブル金沢の音の良さに魅せられて、機会があったら是非再度聴きたいと思っていた。
加えて人気の辻井伸行のピアノで、おまけにモーツァルトのマイナー曲ばかりという、ある意味ポピュリズムに訴えた品揃えのコンサートだともいえるが、僕も大いに心動かされたクチだ。

曲目はいずれもお気に入りばかり。
僕のiTunesライブラリには、モーツァルトのフォルダーの中に「ピアノ協奏曲短調」というプレイリストと「交響曲短調」というプレイリストが作ってある。いずれも2曲ずつしかない(それほどモーツァルトの短調作品は少ない。ピアノ協奏曲は27曲中、交響曲は41曲中、各2曲)。
時々、モーツァルトの疾走する悲しさ、とやらに浸りたい時があるのだ。
そのプレイリスト4曲中の3曲が演奏されるとあっては期待せずにはおれない。

ところが、オーケストラの第1声にちょいと不安を感じた。
いつもの聴き慣れたオーケストラの音ではないぞ。

なぜか?
一つには、編成が極めて小さい。バイオリン1、2とビオラはいずれも3プルト(6人)ずつ。チェロは4人、コンバスは2人。これに管楽器がオーボエ、ファゴット、ホルン各2人、曲によってフルート1人、トランペット2人が加わる。
こんなコンパクトな編成だから、各パートは明瞭に響く。
しかし、なんといっても弦楽器の数が少ないので楽器の共鳴効果(交響!)が期待できなく、硬めの音になってしまう。

では、5月に聴いたバッハの演奏はどうだったのか?
あの時の音はもっとやわらかな響だったように思う。

席は1階上手最前列センター寄りだった。
最前列でオケを聴くなんてできたら避けたいのだけど、ミューザの1階の座席配置は舞台に向かって3ブロックが扇型に並んでいるので、左右ブロックは最前列の最も内側でも指揮者への距離はセンターブロックの5列目に相当するので、まあ、室内オーケストラを聴くには前過ぎるとは思わなかったのだが、ひょっとして、この距離のせいもあったかもしれない。
つまり、楽器の共鳴効果の問題だけではなく、ホールの残響効果もこの席では十分ではなかったのだろう。
5月の国際フォーラムではオケまでの距離が十分あったのがサウンドをまろやかにしたのかもしれない。


一方で、ピアノの音も随分乾いた音なのだけど、これが実にクリアで粒立って小気味よく響いた。こういう音ならずっと聴いていたいような生理的にも快感がある。
この日、開演直前までピアノの調律が行われていた。
まあ、そんなに珍しいことではないけど、調律というより辻井くんの好みに整音していたのかもしれないな。

ともかく、どのホールでは、どういう編成の場合、どの辺で聴くか、難しいことだ。

音響は別とすれば、やはり鍛えぬかれたアンサンブル、という感じだ。少数だから、音楽の決めどころがピタッと合う。これは気持ちが良い。

いずれの作品も耳に馴染みすぎているせいか、あまり「疾走する悲しみ」は感じなかったけど、それが良かったかもしれない。浪花節みたいなモーツァルトはらしくないもの。


さて、辻井くん。
何にも見えないはずなのに、ピアノの前に座ったら手さぐりする様子もなく、正確に弾きだすのにはまったく驚く。
彼には心の中で何が見えているのだろう。

演奏が終わると、三方、四方に深々と何度も頭を下げる様子には、ちょいと胸を打たれた。

が、果たして、本当にうまいのだろうか。
弾き方がちょっと乱暴な感じもしたけど、どうなのかなあ。
国際コンクールにも優勝し(名誉賞だったという話も聞くが)、海外一流オケとの共演もこなしているのだから、相当の腕前なんだろうけど。

音楽に限らないけど、また辻井くんだけに限らないけど、作品というコンテンツが世に出た途端、それはストーリーを帯びることになる。
彼の場合は、全盲のピアニストで、若くて、可愛らしい表情なので、一層強力なストーリーが生まれる。
ストーリーは聴き手一人ひとりの中で妄想のごとく肥大化する。

佐村河内事件が突きつけた問題は、このコンテンツにまとわりつくストーリーがコンテンツ本体の評価を歪めるということを証明した。
辻井くんの場合も聴衆の妄想が彼の音楽性(の評価)を狂わせないように要注意だ。

館内の歓声は絶叫の嵐だ。
隣席のご婦人は僕の耳元でブラボー!の嬌声を張り上げ、しまいには立ち上がって(辻井くんには見えないのだけど)叫んでいた。
トリの40番が終わった時はえらくおとなしくしていたけど。

ある意味、異常な熱気だった。
音楽とは別の世界の熱気だ。

♪2015-88/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-19

2015年5月3日日曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2015 No.243 祈りのバロック~バッハによる喜びのマニフィカト

2015-05-03 @東京国際フォーラムC

井上道義:指揮
小林沙羅:ソプラノ
熊田祥子:ソプラノ
相田麻純:メゾ・ソプラノ
髙畠伸吾:テノール
森雅史:バス
松原混声合唱団
清水敬一:合唱指揮

オーケストラ・アンサンブル金沢

J.S.バッハ:カンタータ BWV147から
「心と口と行いと生活で」、
コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
J.S.バッハ:マニフィカト ニ長調 BWV243


まずは、(教会)カンタータとマニフィカトの違いについておさらい。
と言っても詳しくはないのだけど、俄勉強で。

カンタータは器楽伴奏付き声楽(合唱)曲で、合唱、コラール、アリア、レシタティーヴォで構成される。
テキストは主に聖書(ドイツ語)。教会での祈祷用以外のものは世俗カンタータと言われる。
バッハもは現存するだけで200曲もの教会カンタータを作曲しているが、20曲程度の世俗カンタータも作っているようだ。
ちなみにバッハの作品番号であるBWV1番から200番までが教会カンタータだ。

マニフィカトは、ルカ福音書のマリア賛歌から歌詞をとり,冒頭の語(「たたえ奉る」の意)を題とした聖歌及び多声楽曲。
カトリックでは聖務日課の中心となるが、バッハの属したルター派教会(プロテスタント)でも歌われるそうで、バッハは1曲だけ残している。
そのBWV243「マニフィカト ニ長調」は歌詞はラテン語。
アリア(デュエットやトリオによるものも含む。)と合唱だけで、カンタータのようなレシタティーヴォもコラールもない。

で、「合唱」と「コラール」がどう違うのか、実はよく分からないのだけど「コラール」は祈祷会衆も一緒に歌ったものだというから、多分、「合唱」は聖歌隊だけで歌った部分を言うのではないかと思う。
今日では、教会でこれを聴くことがなくもっぱらコンサートで聴くのであって、聴衆は「コラール」に参加する訳ではないから結果的には「合唱」も「コラール」も同じではないかと思うのだけど、自信がない。

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アンサンブル金沢はTV放送で聴いたことがあるがナマは初めて。
ガッハの3曲のうち知っているのは、コラール「主よ、人の望みの喜びよ」だけだったが、これとて、全曲を聴いたのは今回が初めてだった。

声楽を伴う曲、特にバロック(以前)の作品は普通のオーケストラ定期ではほとんど取り上げられないから。

今回、「熱狂の日」ではこのジャンルの作品をまとめて聴けたのはとても良かった。

さて、初めて聴いたアンサンブル金沢。何てきれいな響だ。チョッとびっくりしたよ。故岩城宏之の丹精の結果なのだろうか。
使用楽器もソロ歌手も現代風な編成で聴きやすかったせいもあるだろうけど、予想を裏切るきれいなアンサンブルは、前日聴いたバッハ・コレギウム・ジャパンよりずっと良かった。

今回は訳詞カード(というより曲目リストのようなものだけど曲毎に何が歌われているかが分かるようになっていた。)も無料で配られたので、初めて聴く曲も内容理解に困ることはなかった。

アンサンブル金沢は、機会は少ないが首都圏でもコンサートをやるようだから、是非とも聴きにゆきたい。

♪2015-39/♪東京国際フォーラム-03