2023年9月29日金曜日

新日本フィル:すみだクラシックへの扉#17

2023-09-29 @すみだトリフォニーホール



阿部加奈子:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
三浦謙司:ピアノ*

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(管弦楽版)
ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調 作品83*
チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 op. 74「悲愴」
---------------------------------
ドビュッシー:忘れられた映像*



1曲目「亡き王女〜」の冒頭のHrソロ(日高名人!)もそれを支える弦も頼りなくて失望。誰も失敗した訳ではないのだけど、恐る恐るのアンサンブル。
確かに、この曲のアタマは難関のようで、他のオケでもこれはいいと思ったことは記憶にないな。帰宅後、N響の演奏ビデオ(Hr福川名人)を視聴したが、やはりどこがきごちない。
オーケストレーションの魔術師ラヴェルでもやり損なったのではないか。

同じくラヴェルのピアノ協奏曲は三浦謙司の独奏。彼のラヴェルは1年前に東響で聴いたが、その時のはっきりしないイメージを今回は払拭して気持ち良く聴いた。

メインの「悲愴」がどうだか。
お初の、阿部加奈子の指揮はかなり<独自>で、聴き慣れた標準的な「悲愴」のイメージとはだいぶ異なって、まあ、よく言えば緩急自在なのだけど、違和感が拭えなかった。何度か聴けば納得できるのかもしれないけど。

第3楽章は非常に元気よくクライマックスを迎えたので、ここでかなり多くの拍手が起こった。ここまでに既に40分経過だし、曲の盛り上がり方からも拍手したいところだ。
完全終曲したと思って拍手した人が多いのだろうけど、確信的に拍手した人もいたのではないか。
「悲愴」は第3楽章でも拍手OKの慣行ができてもいいかなと思うよ。

尤も完全終曲の終わり方にも不満があって、もっと消えゆくようにppppで終わって欲しかった。
また、指揮者の呼吸が掴めなくて拍手のタイミングが難しかった。
最初に出た拍手はフライングではないかと思ったが、では、どこまで待つのか。それを示唆するのも指揮者の仕事だと思う。

2023-163/♪すみだトリフォニーホール-06

2023年9月28日木曜日

ランチタイムコンサート〜音楽史の旅 2023年③ 弦楽三重奏で味わう リスト

2023-09-28 @かなっくホール



TRIO AXIS(トリオアクシス)
 佐久間聡一:バイオリン*
 生野正樹:ビオラ
 奥泉貴圭:チェロ

リスト:愛の夢(弦楽三重奏版)
パガニーニ:24のカプリース Op.1 第24番*
ベートーベン:弦楽三重奏曲第3番ニ長調 Op.9-2


かなっく「音楽史の旅」は従来年5回だったが、今季はホールの改修を控えて、今日の3回目で終了。
全3回のテーマはリスト。
それを担当するのが弦楽トリオ「TRIO AXIS」だが、リストは弦楽トリオを書いていない。ので、やや無理筋のプログラムになったが、ないものはしようがないね。それでも工夫をした変化球も面白かった。

奏者の一人が、そもそも弦楽三重奏曲は作品が少ない。その少ない作品も四重奏に比べて第2バイオリンが無い分他のパートに負担が大きく技術的にも難しいものが多い、と説明していたのが僕の興味をひいて、演奏中も弦楽三重奏についてあれこれ考えたので、聴く方は疎かになってしまった。

「愛の夢」は今日の為に編曲された弦楽三重奏版。
パガニーニはオリジナルのバイオリン無伴奏。
最後にベートーベンの弦楽三重奏曲作品9-2。

そもそも弦楽三重奏をナマで聴くという体験が驚くほど少ない。東京・春祭で数回聴いたほか、このトリオアクシスで数年前に一度聴いたくらい。
ベートーベンの本来の弦楽三重奏曲は3曲しかない(あと2曲はセレナーデと喜遊曲)が、今日の演奏で全3曲を7年かけて聴いたことになった。
3曲ともベートーベン28歳の作品。まるでモーツァルトの作品のようで軽やかで耳馴染みの良い音楽だ。
しかし、ベートーベンは結局その後はこの形式に手を出さなかったのは、やはり、形式として無理があると思ったのだろうな。

♪2023-162/♪かなっくホール-13














-----参考-----------------
ベートーベンの弦楽三重奏曲

弦楽三重奏曲第1番変ホ長調 作品3(全6楽章の喜遊曲)
弦楽三重奏のためのセレナードニ長調 作品8(全7楽章)

弦楽三重奏曲第2番ト長調 作品9-1(全4楽章)
弦楽三重奏曲第3番ニ長調 作品9-2(全4楽章)
弦楽三重奏曲第4番ハ短調 作品9-3(全4楽章)

2023年9月24日日曜日

読売日本交響楽団第128回横浜マチネー名曲シリーズ

2023-09-24 @みなとみらいホール



ギエドレ・シュレキーテ:指揮
読売日本交響楽団
エマニュエル・パユ:フルート*

チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
サン=サーンス:オデレット
サン=サーンス:ロマンス
シャミナード:フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ
バルトーク:管弦楽のための協奏曲







結論を手短に言えば、年に数回遭遇できるかという幸福な体験をした。

コンマスはVn界の百済観音、日下紗矢子だ。もうそれだけでワクワクする。この人の姿勢の良いこと。椅子に掛けていても背筋がピンと伸びている。ボウイングも綺麗でそれだけでも鑑賞に値する。

指揮は初顔のGシュレキーテ。演奏中の表情は見えないが、客席に向かった時は終始明るい笑顔で愛想が良い。いや、指揮も的確だったのだろう。確実に読響メンツの人心を総攬していたようで、1曲終わる度、奏者各人の表情が緩む。

そういう指揮者とコンマスを得て、第1曲がチャイコの「ロメジュリ」の見事なアンサンブルにびっくり。弦16型の大編成だが、60人の弦が一糸乱れず透明感を維持し、読響ブラスは面目躍如。特に、躓きやすいHrが弱音の重奏を美しくハモる。もちろん、木管も打楽器も、全員ノーミスのみならず、管・弦の絶妙な交わりから生まれる甘い響きを久しぶりに聴いた。これは、みなとみらいホールならではの妙なる響だ。

ラストのバルトークは、「ロメジュリ」以上に各部門が活躍し(ま、そういう音楽だ)、息を潜めて緊張の渦に心地良く巻かれた。久しぶりの至福の時だ。


全体の構成は、ちょっと風変わりなプログラムで上述のように最初と最後に弦16型の大編成。そこに挟まれた14分-6分-8分の小品3曲。
この小品3曲はいずれもFlと管弦楽のための作品で10型の小規模編成。
うち最初の2曲はサン=サーンスの作品だが初聴き。シャミナード作も初聴きかと思っていたが、始まると思い出した。全国学生音楽コンクールのFl部門で何度か聴いた曲だ。あの気になる主旋律は、ぞうさんの歌と部分的にそっくりだ。

3曲とも穏やかな音楽で、Fl独奏のパユが見事に明るく、柔らかくて煌めいていた。

兎にも角にも、読響の実力をしかと受け止めた。今月のN響ABCのいずれをも上回る合奏力、個人芸だった。

また、指揮のギエドレ・シュレキーテ。なかなか覚えられそうにもない名前だが、注目してゆこう。

♪2023-161/♪みなとみらいホール-32

2023年9月20日水曜日

第1988回 NHK交響楽団 定期公演 B-1

2023-09-201 @サントリーホール



トン・コープマン:指揮
NHK交響楽団
神田寛明:フルート(N響首席)*

モーツァルト:交響曲第29番イ長調
モーツァルト:フルート協奏曲第2番ニ長調*
モーツァルト:交響曲第39番変ホ長調
-------------------
モーツァルト:歌劇「魔笛」から「私は鳥刺し」*





N響では5日前に弦16型のスペクタクルなワーグナーを楽しんだが、今日は、対極にあるような小編成のモーツァルトだった。

交響曲2曲(29番、39番)はいずれも弦10型。
この2曲に挟まれたフルート協奏曲第2番はさらに小編成で8+6+5+4+2だったと思う。こういう編成を8型とは言わないんだろうな。

ま、ともかく小編成だ。この弦に加わる管も29番と2番はオーボエ2+ホルン2のみ。39番は少し増えて管打で10人。
いずれにせよ滅多に聴けない小編成だ。過去にN響でこんな編成を聴いたことがあるか?思い出せない。

古楽が得意なトン・コープマンの指揮は、やはりN響でだいぶ前に聴いたが、その時もモーツァルトの序曲、フルートとハープのための協奏曲に交響曲と、今日と似たようなプログラムだった。

その時の印象を「刈り込んだ盆栽の如し」と書き残しているのは、我ながら上手い表現だったと思う。
まさに、今日も同様だった。

もとより、軽快な(全作長調)な音楽を、ひょいひょいと流して無理・斑・無駄なくコンパクトに仕上げていたように思う。

最初の音を聴いた時に、ガット弦だろうかと思ったがそうではなかったようだ。ビブラートは極力少ない。というより、この手の音楽ではビブラートをかけるべき箇所がほとんどないように思ったが。
最初の違和感、もう一つ。
少しピッチを下げて調弦しているのかとも思ったけど、これはどうだか分からない。聴いているうちに耳が慣れてなんとも思わなくなったから。

フルート独奏の神田氏もコープマンと同僚に気持ち良く協奏して楽しそうで良かった。そのあと、39番ではオケに加わって、今日のN響はホンに家内労働的調和を見せた。

♪2023-160/♪サントリーホール-18

2023年9月17日日曜日

周防亮介/無伴奏バイオリン・リサイタル

2023-09-17 @東京文化会館


周防亮介:バイオリン

J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ第1番ト短調 BWV1001
イザイ:無伴奏バイオリン・ソナタ第4番ホ短調 作品27-4
エルンスト:庭の千草変奏曲
J.S.バッハ:無伴奏パルティータ第2番ニ短調 BWV1004
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J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ第1番ト短調から「アダージョ」



周防亮介はオケとの共演や室内楽の一員としての演奏は聴いていたが、今回初めてリサイタル〜それも全曲無伴奏を聴いた。期待どおりだった。いや、期待値を超えていたのか。何やら神秘的な音楽の深淵を垣間見たような気がした。
これは無伴奏だったせいもあるだろうな。

バッハが2曲(ソナタ1番、組曲2番)にイザイ4番とエルンスト(庭の千草)。
技術的なことは分からないが、イザイやエルンストは超絶技巧の塊だ。それを(も?)披露する作品であることは間違いない。

この2曲に比べると、バッハも高い技巧が必要とされるのかもしれないが、耳に馴染んでいるせいもあって、技巧が目立つことはない。あるいは、もう感じなくなっている。技巧は音楽に奉仕していると感じさせる。
そしてシャコンヌを含む組曲2番こそ今日の白眉だ。
入念に練習を積んで、今、聴かせることのできる最高の演奏を披露できたのではないか。蚊の滑空の如し最弱音からヤニを飛ばす力強い重音まで、細心の気配りが行き届いて美しい。
もとより、彼のバイオリンの音は、オケとの協奏でも明瞭に際立つので、完全沈黙の客席に存分に響き渡った。

Encは必要なかった。
シャコンヌを聴いた後に、なお何かを聴きたかった人はいただろうか?個人的には蛇足感があった。彼も本当は弾きたくなかったのではないか?

♪2023-159/♪東京文化会館-10

2023年9月15日金曜日

NHK交響楽団1990回C定期 09月公演

2023-09-15 @NHKホール



ファビオ・ルイージ:指揮
NHK交響楽団

ワーグナー/フリーヘル編:楽劇「ニーベルングの指環」 
 -オーケストラル・アドベンチャー-

01前奏曲
02ラインの黄金
03ニーベルング族
04ワルハラ城
05ワルキューレの騎行
06ウォータンの別れと魔の炎の音楽
07森のささやき
08英雄ジークフリート
09ブリュンヒルデの目覚め
10ジークフリートとブリュンヒルデ
11ジークフリートのラインの旅
12ジークフリートの死
13葬送行進曲
14ブリュンヒルデの自己犠牲





「指環」にはいろんな種類のオケ編曲版があり、これまで色々聴いてきたが、フリーヘルの編曲版が一番しっくりくるし、演奏機会もダントツに多い。

N響のC定期は会員ではないので、良席が取れず、いっそ遠くで聴いてみようと、初めてE席で聴いたが、家で上質のCDを聴いている感じかな。まる〜っとまとまっているが、音圧が物足りないし、各楽器の音が紗幕越しで聴くように生々しい明瞭さに欠ける。
それでも、音響的にはさほど不満は感じなかったし、値段は1Fの1/5位だから実にリーズナブルだ。

演奏の出来は、どうか?
やはり距離感から、なかなか音楽に入り込めなかった。これは慣れれば解消できるかもしれないけど…。

いつも、どのオケでも、冒頭の前奏曲で緊張を保つのが難しいようだ。それにN響らしからぬ主要管に数回ミスがあった。

今日の演奏に関しては、先月のヴァイグレ+読響@ミューザには及ばなかったか。聴いた席が天地ほどに異なるので比較は無理があるけど。

♪2023-158/♪NHKホール-07

2023年9月13日水曜日

横浜交響楽団 第726回定期演奏会 【作曲家の円熟】

2023-09-13 @県立音楽堂



平野桂子:指揮
横浜交響楽団

シューマン:交響曲第4番ニ短調 Op.120
ベートーべン:交響曲第5番ハ短調 Op.67「運命」



シューマンは、クララ22歳の誕生日に2番めの交響曲をプレゼントした(その後改訂版の出版が遅れ、交響曲としては最後の第4番となった。)。
そして、今日9月13日はなんとクララ204歳の誕生日である。

横響の演奏会は冒頭、指揮者が簡単なプログラム解説をするのが恒例だ。
今日の指揮者平野桂子嬢は美形であるだけでなく、話の上手な人で、上述の彼女の説明を聞きながら、なんと洒落たプログラムだろうと感心し、元々好きな作品だが、一層熱い期待が高まった。

この第4番は、単一楽章だと書かれたり、4楽章が休み️なしに演奏されるとか、全楽章アタッカが演奏されるなど色々書いてあるのを読むが、今日一緒に演奏されたベートーベンの「運命」の3楽章⇒4楽章のように楽譜上も繋がっている訳でもないし、アタッカ表示もないし(これは僕の手持ちスコアだけに問題かもしれないけど)、聴いている限り(いや、スコアを見ていても)、4つのパートの間は、一呼吸置かれるのが常なのでフツーの4楽章の作品だと思える。
ま、聴いている限りは、単一楽章であろうと4楽章であろうと変わりはないのだけど。

とても、情緒的で、時にメランコリックな旋律が胸を掻きむしるようだ。

後半に「運命」が置かれたのは疑問。
作曲年代の順で演奏した方が興味が深まったのに。部分的に乱れはあったけど、良い演奏だった。

久しぶりの19時開演のせいか、Encもなく、名曲2本90分程度でスッキリ終わって、気分良く帰途に着いた。

♪2023-155/♪県立音楽堂-09

2023年9月10日日曜日

NHK交響楽団1989回A定期 09月公演

2023-09-10 @NHKホール



ファビオ・ルイージ:指揮
NHK交響楽団
マルティン・ヘルムヒェン:ピアノ*

R.シュトラウス:交響詩 「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28
R.シュトラウス:ブルレスケ ニ短調*
R.シュトラウス:交響的幻想曲 「イタリアから」作品16
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シューマン:森の情景 Op.82 第7曲「予言の鳥」*





昨日はN響新楽季のスタートだったけど、日フィルとダブったので、2日目に変えてもらった。席替えをするとひどい場所に当たることが多いが、今回は、本来席とほぼ同じという幸運!
そして、14時開演という、眩しい時刻にNHKホールに入るなんて、ずいぶん久しぶりだった。
1日目なら舞台上に林立するマイクが全く見当たらず、とてもスッキリしている。なんとなく、お客の様子も違って、自己表現に控えめな紳士淑女が多いような気がしたよ。

今日はRシュトラウス尽くし。個人的には、ブラームスの好感度を100としたら、25くらいの作家だけど、5年ぶりに聴いた「ティル~」の「安心・安定」の風格に、やはり、他のオケは時に名演もあるけど、これほど安定して美しいアンサンブルを聴かせるオケはないな…と喜んでいいのか複雑だ。

続く2曲とも、文句の付けようのない演奏で、ひょっとして2日目の方が美演奏をしているのではないかという疑いも…そんな筈ないけど。


「ブルレスケ」は正式には「ブルレスケ Dm ~ピアノと管弦楽のための」というらしいが「ピアノとティンパニーのための」と言ってもいいくらい。ブラームスに心酔していたRシュトラウスが、ブラームス交響曲第4番に触発されて書いたと、前に聴いた時のプログラムに書いてあるが、どこがブラームスぽいか分からない。とにかく難しいらしく、チャイコPf協の初演を弾けないと断ったピアニストに代わって引き受けたくらいの腕前であるHVビューローでさえ、この曲の初演は断ったというから、相当難しいらしいが、聴いている限りではそんな感じはしなかった。

今回の独奏はM.ヘルムヒェンで、以前、都響でベト「皇帝」を爽快に聴かせてくれたので良い印象を持っている。その時にEncで弾いたのが、今回と同じくシューマン:森の情景から「予言の鳥」だった。Rシュトラウスの作品を聴きたかったよ。

最後「交響的幻想曲」が今日の3作中1番初演が早い。21-22歳頃の作品。そして1番の長尺。イタリア旅行での印象を綴ったそうだが、そのせいか、全編、レスピーギの三部作を彷彿とさせる。それでいて、ブラームスぽいところも顔を覗かせて興味深い。最終楽章が「フニクリ・フニクラ」の盗用!で、困ったことになったらしい。
Fルイージとしては誠に得意分野だったのでは。快演だった。

演奏機会が少ないようで、以前これも都響で聴いた1回だけ。専門家の耳には分かり易いのがむしろ物足りないのかもしれないが、もっと演奏機会が増えたもいいと思ったよ。

♪2023-154/♪NHKホール-06

2023年9月9日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第390回横浜定期演奏会

2023-09-09 @みなとみらいホール



園田隆一郎:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
日本フィルハーモニー協会合唱団
砂川涼子:ソプラノ
平野和(やすし):バリトン

ブラームス:ドイツ・レクイエム 作品45




3大レクイエムというと、モツ・ベル・フォーレで確定しているようだ。
4大以上になると、いろいろ候補があって、いまだ確定とまでは言えないらしい。

僕の好みでは、「フォーレ」を降ろしてでも3大に「独レク」を入れたいくらいだから、4大以上の候補にすらほとんど挙げられることがないのが誠に不思議であり、不満だ。

歌詞がラテン語ではないほか、形式が古典的なレクイエムと大きく異なる為に一堂に列せられないのかもしれない。まあ、それならそれで納得できるけど。

とにかく大好きな作品なのだけど、これを生で聴く機会は案外少ない。完全記録?の14年以降では17年の《ノット+東響+東響コーラス》と17年の《ブロムシュテット+ゲヴァントハウス+ウィーン楽友協会合唱団》しかない。尤も、20年以降はコロナのせいで、合唱作品が抑えられてきたという事情もあるだろうけど。

ま、とにかく、6年ぶりに正常な編成(弦12型/合唱103人/オルガン付き)で聴くことができたし、Spが我がマドンナ砂川涼子姫❤️だったことも嬉や。尤も全曲75分中出番は1曲・正味5分程度なのが寂しい。Brの出番は結構あるのだけど。

園田隆一郎の指揮はオペラを中心に結構な回数を聴いているが、ドイツものは初めてだった。とは言え、声楽入りは得意分野のはず。

しかし、上出来とは思えなかったな。
オケや独唱は良かった(Br平野やすしは昨年新日フィル「第九」以来だが、こんなに巧かった!と刮目した。)。

合唱に疑問ありだ。
日フィル協会合唱団創立50年記念の公演だったが、アマチアによくある高域の透明感不足が残念だった。

♪2023-152/♪みなとみらいホール-31

2023年9月8日金曜日

東京都交響楽団 第981回 定期演奏会Bシリーズ

2023-09-08 @サントリーホール



サッシャ・ゲッツェル:指揮
東京都交響楽団
ネマニャ・ラドゥロヴィッチ:バイオリン*

ベートーべン,:バイオリン協奏曲ニ長調 op.61*
コルンゴルト:シンフォニエッタ ロ長調 op.5
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ヤドランカ・ストヤコヴィッチ:あなたはどこに*



先日の都響Aに続いてゲッツェルとラドゥロヴィチの組み合わせ。

まずは、ベートーベンのVn協。ゲッツェルのリードがいいのか、2人の相性がいいのか、久しぶりに聴く古典名曲が柔らかい美音でロマンチックに楽しめた。
ただ、Aプロでの衝撃が大きかったのとサントリーは文化会館ほどには音が飛んでこない(文化会館より1列前なのだけど)ので、やや、物足りなさを感じた。音楽的には第3楽章のテンポが遅すぎたなあ。もっと感情を煽って欲しかった。

この日のラドゥロヴィチは長い髪をポニーテイル状に纏め、丁髷もなかった。それでも十分派手派でしかったが。


コルンゴルト15歳の作「シンフォニエッタ」を聴くのは少なくとも2回目で、前回もゲッツェルの指揮(神奈川フィル)だった。彼はこの曲が好きなんだろう。

15歳の作とは思えない大人びた旋律が繰り出されるが、構成感が不足気味で、長すぎる。つぎはぎの軽音楽を重ねて、どこをとっても受け入れやすいのだけど、それでどうなの?という感じ。

ベートーベンのVn協と同時期の作、交響曲4番なんかと組み合わせたらもっと味わい深く楽しめたのではないか。


♪2023-152/♪サントリーホール-17

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら特別公演 通し狂言「妹背山婦女庭訓」

2023-09-08 @国立劇場大劇場


近松半二=作
通し狂言「妹背山婦女庭訓」<第1部>三幕
(いもせやまおんなていきん)

  戸部銀作=脚本
  高根宏浩=美術

序 幕  春日野小松原の場
二幕目  太宰館花渡しの場
三幕目  吉野川の場

太宰後室定高⇒中村時蔵
蘇我入鹿坂東⇒坂東亀蔵
久我之助清舟⇒中村萬太郎
腰元小菊⇒市村橘太郎
采女の局⇒坂東新悟
太宰息女雛鳥⇒中村梅枝
大判事清澄⇒尾上松緑
       ほか



「妹背山婦女庭訓」は文楽発祥の大作で、文楽では19年に《国立文楽劇場開場35年》の記念興行で、2公演にわたって(10:30〜21:00という長丁場!)通し狂言として演じられたのを初めて観て大いに感心した。もう一度観たいと思っていたが、今回は歌舞伎で観ることができた。

歌舞伎版は初めてだったが、やはり大作なので、何かの記念公演で演じられることが多いようだ。今回は、《初代国立劇場さよなら特別公演》ということで、今月と来月に2公演に分けて通し狂言として演じられる。

核となる場面は「妹山背山の段」で歌舞伎では「吉野川の場」とタイトルが変わっているが、舞台装置は文楽と全く同様で、桜満開の吉野に敵味方に分かれた両家の別荘が、吉野川を挟んで対峙している。その舞台の美しいこと。

文楽でいう、太夫が三味線に合わせて語る「床」は、文楽の「妹山背山の段」と同様上手・下手の両方に設えてある。

文楽では人形の寸法に合わせて舞台も小ぶりだが、歌舞伎では言うまでもなく人間サイズだから、特に豪華に見える。
そして、極めて珍しい両花道を使って舞台全体が立体的に構成してあって、製作陣の意気込みを感ずる。


物語は、説明不可だ。大勢登場し、我が子の首を切ったり、首が嫁入りしたりと荒唐無稽だ。
寛大な気持ちで臨まなければこの話を楽しむことはできない。

♪2023-151/♪国立劇場-09

2023年9月3日日曜日

東京都交響楽団 第979回 定期演奏会Aシリーズ

2023-07-19 @東京文化会館



サッシャ・ゲッツェル:指揮
東京都交響楽団
ネマニャ・ラドゥロヴィッチ:バイオリン*

リャードフ:ポロネーズ ハ長調op.49〜プーシキンの思い出に〜
チャイコフスキー:バイオリン協奏曲ニ長調 op.35*
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 op.64
-------------------
パガニーニ(セドラー編曲):24のカプリース から





❶Sゲッツェル讃
2014年1月に神奈川フィルの首席客演指揮者に就任して以来、2年間の在籍だったが、8回も聴いて、ほぼ、全てに好感を持った。その後、2017年に読響も振り、その年の読響「第九」を代打でかっ飛ばした。
2022年には新国立劇場で「ばらの騎士」で東フィルを振った。
『客席との仕切りが通常より低かったので、ゲッツェルの背中まで見えたが、彼の指揮姿が実に美しい!
その美しい指揮が東フィルから見事な響きを引き出していたように思う。ピットの音とは思えないほど弦の透明感が美しかった。
やはり終盤の三重唱にはゾクゾクしたが、ゲッツェルの見事な棒捌きも大いに寄与したはず。』とその時の感想に書いた。

今日も、Vn協でのコンビネーションの良さがNラドゥロヴィッチの好演を引き出したのだろう。交響曲5番では弦を煽り、盛り上げ、タメを効かせ、下手したら諄くなるところを良い塩梅に抑えていうことなし。都響の16型は成功率低いが今日は功を奏していたよ。
ゲッツェルには男の色気があるな。

❷Nラドゥロヴィッチ讃
最初登場した時、すぐ「異民族」という言葉が浮かんだ。そもそも長身だが、「ラインの黄金」の巨人族みたいな厚底靴を履いて余計に大きい。髪は腰まで届くような長さだが、頭頂には丁髷を結っている。始皇帝が万里の長城を建てさせたのはこういう民族の侵入を防ごうとしたのだな、と想像が羽ばたく。
その見かけの割には愛想を振りまいて人柄は良さそう。

さて、チャイコVn協が始まるや、驚きの美音。丁寧に繰り出されるが力強い。文末処理が見事で、次の章区の繋がりが自然でとても美しい。オケもゲッツェルがよくコントロールして3者一体で、え〜?都響ってこれほど上手かったの?とびっくりだよ。

第1楽章が終わって、ここで僕はもう拍手をしたかったが、独り目立つのも嫌だし…と思っていたら、なんと会場のあちこちから確信的な拍手が巻き起こった。それほど素晴らしかった。

過去、この曲での最高傑作は五嶋龍+Hr響だったが、肉薄したね。いや〜良い音楽を聴きました。

❸余談:
昨日神奈川フィル定期だった。前半は良い出来だったが、後半のブラ2に難があった。はっきり言えばHrの出来がイマイチだった(それだけではないが)。
もし、首席の坂東裕香が乗っていたらもっとずっと良くなったはずだ…。

その坂東裕香が、なんてこった!
今日の都響に客演首席で座っているではないか。Hrはアシスタントを従えた5人体制だった。この曲は第2楽章初めのソロをはじめ1番Hrが、極めて重要な役割を果たしている。そして、今日は美技を披露してくれた。
終演後に指揮者から一番に立つよう促されたのは、もちろん彼女だ。ま、この曲では1番Hrが1番と決まっているみたいだけど…。
ま、複雑な気持ちだ。

https://youtu.be/RAYZoGCrxy8?si=Me-zNSrqTsmsQavU

♪2023-126/♪東京文化会館-08