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2021年11月24日水曜日

オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World リヒャルト・ワーグナー ニュルンベルクのマイスタージンガー<新制作>

2021-11-24 @新国立劇場



【指 揮】大野和士
【演 出】イェンス=ダニエル・ヘルツォーク
【美 術】マティス・ナイトハルト
【衣 裳】シビル・ゲデケ
【照 明】ファビオ・アントーチ
【振 付】ラムセス・ジグル
【演出補】ハイコ・ヘンチェル
【舞台監督】髙橋尚史

【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団、二期会合唱団
【管弦楽】東京都交響楽団
【協力】日本ワーグナー協会


ハンス・ザックス⇒トーマス・ヨハネス・マイヤー
ファイト・ポーグナー⇒ギド・イェンティンス
クンツ・フォーゲルゲザング⇒村上公太
コンラート・ナハティガル⇒与那城敬
ジクストゥス・ベックメッサー⇒アドリアン・エレート
フリッツ・コートナー⇒青山貴
バルタザール・ツォルン⇒秋谷直之
ウルリヒ・アイスリンガー⇒鈴木准
アウグスティン・モーザー⇒菅野敦
ヘルマン・オルテル⇒大沼徹
ハンス・シュヴァルツ⇒長谷川顯
ハンス・フォルツ⇒妻屋秀和
ヴァルター・フォン・シュトルツィング⇒シュテファン・フィンケ
ダーヴィット⇒伊藤達人
エーファ⇒林正子
マグダレーネ⇒山下牧子
夜警⇒志村文彦

リヒャルト・ワーグナー
ニュルンベルクのマイスタージンガー<新制作>
全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約5時間55分
第Ⅰ幕 95分
 休憩 30分
第Ⅱ幕 70分
 休憩 30分
第Ⅲ幕130分


途中の休憩込みで5時間55分という超大作。
中でも一番の心配は第3幕の130分間だ。

幕間から開演を待ち、終演後のカーテンコールを経て整列退場まで所要見込みは150分間。

この間に”自然”が我を呼ばねばいいがと祈るような気持ちだったが、できるだけ水を断ち、膝から足下まで防寒して臨んだら、これが無問題・無事観了!


二番目の心配は演出だ。

新国立劇場のサイトに演出家のコメント動画でニュルンベルクを「劇場に設定」したとあったので、やれやれまた劇中劇かと心配していたが、日本版ではだいぶ志を曲げたようだ。

新国立劇場の本来の額縁の中に拵えられた劇場額縁。その中にさらに劇場という3重構造は徹底されなかったので、見かけは気にせずワグナーの台本どおりに脳内転換して楽しんだ。

とはいえ、危なっかしい問題を孕んだ作品。

歌合戦の商品に娘を差し出すとは何たる不埒。
芸術の名を借りたドイツ至上主義が後々ナチズムとの関係を指弾されている。
明示的に示されないがユダヤ人を虚仮にして侮辱する不愉快さ。

ワーグナー唯一の喜劇とされるがこれは笑えない。

しかし、今回の演出版ではラストのアイデアが、それらの鬱憤を晴らす鉄槌となった。


残念ながら全体がそのような方向を目指して設計されていないので(歌詞を変えない限り無理)、不整合で唐突感は拭えないが、フツーの終わり方よりはずっとマシだ。

歌でも光ったエーファ役の林正子が本当に美味しいところを拐った。

音楽はいい。
話に納得できなくとも音楽にはやられた。
とりわけ、3幕の耳に馴染んだ旋律が、合唱を伴い、客席2階バルコニーに陣取ったバンダのラッパを従えて堂々と演奏されるところでは、震えが来た。

♪2021-137/♪新国立劇場-11

2018年1月24日水曜日

オペラ「こうもり」

2018-01-24 @新国立劇場


指揮⇒アルフレート・エシュヴェ
演出⇒ハインツ・ツェドニク
美術・衣裳⇒オラフ・ツォンベック
振付⇒マリア・ルイーズ・ヤスカ
照明⇒立田雄士

合唱⇒新国立劇場合唱団
管弦楽⇒東京交響楽団

ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン⇒アドリアン・エレート
ロザリンデ⇒エリーザベト・フレヒル
フランク⇒ハンス・ペーター・カンマーラ
オルロフスキー公爵⇒ステファニー・アタナソフ
アルフレード⇒村上公太
ファルケ博士⇒クレメンス・ザンダー
アデーレ⇒ジェニファー・オローリン
ブリント博士⇒大久保光哉
フロッシュ⇒フランツ・スラーダ
イーダ⇒鵜木絵里

J.シュトラウスⅡ:全3幕〈ドイツ語上演/字幕付〉

昨秋、日生劇場で観た二期会の「こうもり」も楽しめたけど、あれやこれや演出や舞台美術の面で不満が残った。ナマの舞台としてはその時が初めてだったので、まあ、こんなものなのかもなあ…と飲み込んでおいたのだけど、今日は、なんたって新国立での公演だ。少なくとも二期会公演を上回ることを期待して臨んだが、いやはやその違いは大きかった。

歌唱力の違いはよく分からないが、舞台のセットや衣裳、美術全般がだいぶ違う。よくできている。

なにより違いを感じたのは演出の巧さだ。オペラはやっぱり演出の比重が高い。とりわけ、「こうもり」のような作品はセリフ劇の要素が強く、ストレート・プレイとしての喜劇に近いので、演ずる役者たちも歌が巧いだけでは務まらない。また、第3幕で重要な役割を果たす看守のフロッシュには歌が無い。この為に同役は歌手ではなく喜劇役者が演ずることが多い(本公演でもこの役は俳優が、二期会の公演ではイッセー尾形が、それぞれ演じた。)そうだ。

「喜歌劇」とか「オペレッタ」とも呼ばれる分野の作品がいずれも「こうもり」のような性格なのかどうかは知らないけど、少なくとも「こうもり」は<芝居>の要素が強い。それだけに演出の巧拙がオペラとしても出来栄えを左右するのだろう。

その芝居もコントのような部分が多く、第3幕は爆笑モノだった。この辺の芝居は二期会のものとはぜんぜん異なる。手持ちのウィーン歌劇場のビデオとも異なる。まさにどんな芝居にするかは演出次第なのだ。

喜劇としてもとても楽しめるが、やはり音楽がいい。
ロザリンデの元愛人アルフレードはテノール歌手という役どころなので、劇中「星は光ぬ」を歌ったりするのも面白い。
第1幕の中ほどのロザリンデ、アイゼンシュタイン、アデーレの三重唱は悲しげで美しいメロディーだ。3人共今夜のパーティに行くことは隠して心にもない嘆きを歌うが、段々と本音が出てきて陽気な音楽に変わってゆくところも傑作だ。

ともかく、オペラでこんなに笑ったことは初めて。
この演出、この歌手・役者でもう一度観たいものだ。

♪2018-009/♪新国立劇場-01