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2024年2月7日水曜日

令和6年2月文楽公演第2部

2024-02-06 @日本青年館ホール



第二部 (15:15開演〜17:30)
●艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
 酒屋の段
 中 三輪太夫/清友
 切 錣太夫/宗助
 奥 呂勢太夫/清治

●戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)
 廓噺の段
   藤太夫・靖太夫・碩太夫/
   燕三・清𠀋・清公・燕二郎

 人形▶丁稚長太⇒玉彦
    半兵衛女房⇒文昇
    美濃屋三勝⇒清十郎
    娘お通⇒和登
    舅半兵衛⇒勘壽
    五人組の頭⇒亀次
    親宗岸⇒玉也
    嫁お園⇒勘十郎
    茜屋半七⇒清五郎
    -----------------------------
    浪花次郎作⇒玉佳
    吾妻与四郎⇒玉勢
    かむろ⇒一輔




4年半ぶりに「艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)」を観た。
前回は、半七と芸者・三勝(さんかつ)との心中道行があったが、今回は「酒屋の段」のみ。
それで、少し印象が変わったが、これはこれで、むしろスッキリと面白い。

冒頭、店の留守を任された丁稚の能天気さ。
そこに酒を買いに来た子連れの女。
頼まれて酒を運んでやる丁稚。
この謎めいた場面から始まる。

半七の父、半兵衛が代官所から戻り、丁稚がなぜか子供を背負って店に戻る。
そこに離縁されたお半七の女房お園が父親とともに茜屋を訪ねてから話は急展開する。
ただ、この時点でもまだ半七・三勝は登場しないというのが凝った作劇だ。

実話に基づいているというが、誰一人真の悪人はいないのに、歯車が少し欠けたか、登場人物の人生が狂ってゆくさま哀れ也。

♪2024-022/♪日本青年館ホール-2

2023年10月15日日曜日

文楽協会創立60周年記念 人形浄瑠璃文楽 「桂川連理柵」

2023-10-15 @県立青少年センター



演目解説…豊竹芳穂太夫

桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
 石部宿屋の段(今回は省略)
     
 六角堂の段
     豊竹亘太夫/鶴沢清公

 帯屋の段
     前⇒豊竹藤太夫/竹澤宗助
     切⇒竹本錣太夫/鶴澤藤蔵
 道行朧の桂川
     お半:豊竹芳穂太夫
     長右衛門:竹本小住大夫
     豊竹薫大夫/
     鶴澤清馗・鶴澤清公・鶴澤清方     


  人形▶女房お絹⇒吉田勘彌
     弟儀兵衛⇒吉田玉志
     丁稚長吉⇒吉田玉勢
     母おとせ⇒吉田簑一郎
     親繁斎⇒吉田勘市
     帯屋長右衛門⇒吉田玉也
     娘お半⇒吉田簑紫郎
     下男⇒大ぜい

     望月太明蔵社中









文楽の世話ものと言えば、「お半・長右衛門=桂川連理柵」、「お初・徳兵衛=曾根崎心中」、「お染・久松=新版歌祭文」など心中ものをすぐ思い浮かべるのは、多分、このジャンルに傑作が多いからではないか?

大抵は、だらしのない男が墓穴を掘って女性を道連れにする話だ。

「桂川連理柵かつらがわれんりのしがらみ」の主人公、帯屋の主人・長右衛門(38歳くらい)は養父・繁斎や隣家の信濃屋にも恩を受けており、女房お絹もよくできた女性だ。しかし、旅先で、偶然一緒になった信濃屋の娘お半…コレがなんと14歳…と床を一つにし、妊娠させてしまう。
商売上の失敗やら繁斎の子連れ後妻にいじめ抜かれ、にっちもさっちもゆかなくなって、「桂川で死にます」と書き置きを残して出て行ったお半の後を追い、身投げをする。

2まわりも若い、それも14歳(数え)のほんの子どもと過ちを犯し挙句入水するなんて、あほらし!という気もするが、実は、それほど荒唐な話でもなく、丁寧に味わえば、それなりの説得力があって、そのような道行になるのも納得はできる。


全編悲劇に終始するかと思えばそうではなく、三段中(今回は、先立つ「石部宿屋の段」が省略された。)最も長尺の「帯屋の段」は、後半、笑いがとまらない。

つまりは、非常にうまくできた話なのでいつまで経っても人気が衰えないのだろう。

余談:枝雀の落語「どうらんの幸助」では、この「帯屋の段」が面白く取り入れられて実におかしい。



♪2023-174/♪県立青少年センター-1

2022年12月16日金曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 国立劇場第54回 文楽鑑賞教室 「絵本太功記」夕顔棚の段/尼崎の段

2022-12-16@国立劇場



●解説 文楽の魅力
 豊竹亘太夫/鶴澤清公

●絵本太功記えほんたいこうき
 夕顔棚の段
  亘太夫/清公
 尼ヶ崎の段
前 睦太夫/勝平
後 靖太夫/清馗


************************
人形役割
母さつき⇒ 吉田玉也
妻 操⇒ 吉田蓑一郎
嫁初菊⇒ 桐竹紋吉
旅の僧実は真柴久吉⇒ 吉田文哉
武智光秀⇒ 吉田玉志
武智十次郎⇒ 吉田簑太郎
加藤正清⇒ 吉田和馬


鑑賞教室だから、本篇の前に20分程度の解説がある。初めての人には有益だろうが、毎回のように欠かさず行っている者にはあまり驚きもないが、解説してくれる太夫や三味線方の人柄が伝わるのは面白い。
実際、この世界では、太夫は豊竹・竹本、三味線は鶴澤がほとんどで竹澤・野澤・豊澤はほんの僅か。人形は吉田・桐竹で圧倒する。だから、人間国宝やベテラン級はともかくとして中堅以下はなかなか名前と顔が一致しない。
今日の豊竹亘太夫や鶴澤清公は名前はよく知っていても、顔がなかなか一致しないのだけど、これから暫く?は覚えているだろう。

さて、「絵本太功記」は3度目だったが、いつも、「夕顔棚の段」と「尼ヶ崎の段」だ。

主人公光秀、その母、その妻、その子の思いが、絡み合うものの最後には互いを理解し、許しあう大団円が待つ…というのが、たいていの物語なのだけど、これは違う。
だからいつもスッキリしない。
これはたぶん全十四段の話のうち十段目だけを取り出しているからではないか?

こういう良いとこどりの見方(=見取り狂言<>通し狂言)では手軽でいいとしても誤った見方をしてしまう恐れがある。
…ということを、同日この後に観た「本朝廿四孝」で痛感した。

♪2022-193/♪国立劇場-12

2021年12月6日月曜日

国立劇場開場55周年記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年12月公演

2021-12-06@国立劇場




国立劇場開場55周年記念
仮名手本忠臣蔵 (かなでほんちゅうしんぐら)
 桃井館本蔵松切の段
 下馬先進物の段
 殿中刃傷の段
 塩谷判官切腹の段
 城明渡しの段
 道行旅路の嫁入


桃井館本葳松切の段
 竹本小住太夫/鶴澤清丈
下馬先進物の段
 竹本南都太夫/竹澤團吾
殿中刃傷の段
 豊竹靖太夫/野澤錦糸
塩谷判官切腹の段
 竹本織太夫/鶴澤燕三
城明渡しの段
 竹本碩太夫/鶴澤清允
道行旅路の嫁入
 小浪:豊竹呂勢太夫/鶴澤清志郎
 戸無瀬:豊竹咲寿太夫/鶴澤清公
 豊竹亘太夫/野澤錦吾
 竹本聖太夫/鶴澤燕二郎
 豊竹薫太夫/鶴澤清方

*****************************
人形役割
桃井若狭助⇒ 吉田玉佳
加古川本蔵⇒ 吉田勘市
妻戸無瀬⇒    豊松清十郎
娘小浪⇒ 吉田簑紫郎
高師直⇒ 吉田玉助
鷺坂伴內⇒    桐竹紋秀
塩谷判官⇒  吉田簑二郎
早野勘平⇒  吉田玉路
茶道珍才⇒  吉田蓑悠
原郷右衛門⇒ 桐竹亀次
石堂右馬丞⇒ 吉田玉輝
薬師寺次郎左衛門⇒吉田文哉
大星カ弥⇒  吉田簑太郎
大星由良助⇒ 吉田玉志
顔世卿前⇒  桐竹紋吉
その他 大ぜい

今から5年前の2016年。国立劇場では開場50年記念に、歌舞伎は3部(1か月公演X3回)、文楽の方は2部(昼夜公演)構成で全段通し「仮名手本忠臣蔵」をやった。
それが僕の文楽の初見で以後病みつきになった。

2019年には大阪の国立文楽劇場の開場35年で春・夏・秋に3部に分けて全段通しをやった。これも観に行った。

そして、今年は国立劇場開場55年記念の年だ。

そこで、記念の公演という訳だが、今回は、二、三、四、八段目からの抜粋だ。これは寂しい。

四段目のほかにも面白い七段目、九段目がない。これでは見どころは切腹の段のみというのも辛い。

それにどういう訳か、今回は太夫・三味線・人形ともに重鎮が出ていない。普通なら人間国宝級全員とは言わずとも出演するものだ。ましてや記念の公演なのに。
ま、今日の出演者の中では、個人的には織太夫とか呂勢太夫は好きだけど。
どれにしては寂しい公演だった。

同時に別興行で観賞教室をやっているがこっちの方が面白かった!


♪2021-146/♪国立劇場-11

2019年2月15日金曜日

人形浄瑠璃文楽平成31年02月公演 第1部

2019-02-15 @国立劇場


第一部
桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
 石部宿屋の段
     芳穂太夫・亘太夫/
     野澤勝平・野澤錦吾
 六角堂の段
     希太夫・咲寿太夫・
     文字栄太夫/竹澤團吾
 帯屋の段
     前⇒呂勢太夫/鶴澤清治
     切⇒咲太夫/鶴澤燕三
 道行朧の桂川
     織太夫・睦太夫・小住太夫・
     亘太夫・碩太夫/竹澤宗助・
     鶴澤清馗・鶴澤清公・鶴澤燕二郎・
     鶴澤清允

  人形▶豊松清十郎・桐竹紋吉・吉田文昇・
     吉田玉男・吉田勘彌・吉田勘壽・
     吉田玉輝

「桂川連理柵」は「帯屋の段」が有名で、歌舞伎でもここだけ取り出したのを観ているが、今回はその前後も合わせて全4段。

話せば長い物語を端折りまくって記せば…。

帯屋の主人長右衛門(38歳)養子である。帯屋隠居の後妻のおとせ(とその連れ子儀兵衛)は、儀兵衛に店の跡を継がせようという魂胆から長右衛門に何かと辛く当たる。

一方、帯屋の丁稚長吉は隣家の信濃屋の娘お半(14歳)に夢中。お半は長吉など眼中になく、帯屋の跡取り、長右衛門を恋い慕っている。

儀兵衛はお半が長右衛門に宛てた恋文を入手したを幸いに、また、長右衛門が女房お絹の実弟のために密かに用立てた百両が店の金庫から消えていることを発見し、加えて自分たちがくすねた五十両も長右衛門の窃取だと言い長右衛門を責め立てる。
さらに、長右衛門が旅先で、長吉に言い寄られて困っているお半を我が寝所に入れた為に犯した一夜の過ちの結果、お半が妊娠してしまったことや、長吉の悪巧みでお客から預かった宝剣が見当たらなくなったことなどが重なり合い、長右衛門は八方塞がりになる。

そうこうしている間に、お半も、不義の子を宿した以上生きてはゆけないと長右衛門に書き置きを残し桂川に向かう。
もう、死を覚悟していた長右衛門だったが、お半が桂川で入水するということを知って、彼は昔の情死事件を思い起こさずにはおられなかった。
15年前に当時惚れ合った芸妓と桂川で心中しようと誓ったものの自分1人生き残ってしまった長右衛門は、これこそ天の啓示とばかり今度こそ情死を全うせんとお半の後を追うのだった。

…と長いあらすじを書いてしまった。これ以上短くすると、自分で思い出すときに役に立たないだろう。それにせっかく書いたから消さないでおこう。
実際の話はもっと入り組んでいる。

人生のほんのちょっとしたゆき違いが、運悪く重なり繋がることで、人の運命を転がし、それが雪だるまのように膨れ上がってしまうと、もう誰にも止めることはできなくなる。

現在進行形の柵(しがらみ)が、長右衛門にとってコントロール不能にまでがんじがらめに心を縛り尽くした時、ふと蘇る15年前の同じ桂川での心中未遂事件!

長右衛門にとっては、お半と桂川で心中することは、むしろ暗闇の中で見えた曙光なのかもしれない。
また、<14歳のお半>、<15年前の事件>と並べると、お半は芸妓の生まれ変わりか、あるいは芸妓が生んだ長右衛門の子供であったのかもしれない…と観客に余韻を残して幕を閉じるこの哀しい物語にはぐったりと胸を打たれる。

余談ながら、備忘録代わりに書いておこう。
人形を3人で操る場合の主遣い(おもづかい)は黒衣衣装ではなく顔を見せて演ずるのが普通だが、今回「石部宿屋の段」と「六角堂の段」では主遣いも、左遣い、足遣い同様、黒衣衣装だった(今回の公演第2部の「大経師昔暦」の「大経師内の段」も)。
不思議に思って、国立劇場に尋ねたら、極力人形に集中してもらうための演出で、昔から行われているるのだそうだ。黒頭巾をとったら弟子だった、ということはないそうだ。ま、そうでしょ。

余談その2
上方落語「どうらんの幸助」は、大阪の義太夫稽古処で「桂川連理の柵」ー「帯屋の段」のうち、後妻のおとせが長右衛門の嫁をいじめている部分を外から漏れ聞いたどうらんの幸助(喧嘩仲裁を楽しみとしている老人)が、本当の話だと勘違いして、これはほっておけないと、京都柳の馬場・押小路の帯屋に喧嘩納めにゆく、というとんでもない話でヒジョーにおかしい。

♪2019-016/♪国立劇場-03

2018年5月17日木曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年5月公演 第2部「彦山権現誓助剣」

2018-05-17 @国立劇場


彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
●須磨浦の段
  お菊⇒竹本三輪太夫
  内匠⇒豊竹始太夫
  友平⇒竹本小住太夫
  弥三松⇒豊竹咲寿太夫/鶴澤清友
 
●瓢簞棚の段 
 中 豊竹希太夫/鶴澤寛太郎
 奥 竹本津駒太夫/鶴澤藤蔵・鶴澤清公 

●杉坂墓所の段
 口 豊竹亘太夫/野澤錦吾
 奥 豊竹靖太夫/野沢錦糸
 
●毛谷村六助住家の段
 中 豊竹睦太夫/野沢勝平
 奥 竹本千歳太夫/豊澤富助

人形役割
  娘お菊⇒吉田勘彌
  弥三松⇒吉田簑太郎
  友平 ⇒吉田文昇
  内匠 ⇒吉田玉志
  佐五平⇒吉田玉勢
  お園 ⇒吉田和生
  伝五右衛門⇒吉田玉佳
  六助 ⇒吉田玉男
  母お幸⇒桐竹勘壽
 ほか

一昨日、鑑賞したばかりだが、頭に入っていない部分があって、気になってもう一度観ることにした。

「毛谷村」の段で、お園は父の決めた許婚六助に出会い、急に女らしく振る舞うようになるのだが、夕飯の支度をする時にかまどに火吹き竹で息を送る際に、あまりに慌てていて尺八を口にするシーンが歌舞伎にはある。

最初の鑑賞の際、ボーッとしていて、それに気づかなかった。果たして尺八の場面はあったのかなかったのか、それが気になってならない。それで、第1部の鑑賞日に第2部のチケットがあるかどうか調べたら幸いなことに良い席が残っていたので即GETした。

ところが、朝から第1部4時間超を観た後に、続いて第2部を観るというのはなかなかしんどいものがある。
いよいよというところまで来てまたもや注意散漫になってしまった。
「彦山権現誓助剣」は休憩込みで4時間37分もあるので、最後の毛谷村迄行きつく頃は相当疲れが溜まっていたのだ。

結局、火吹き竹の場面は確認できずじまいだった。
六助がお園や姑の見送りを受け、梅の枝と椿の枝を背中に挿してもらって仇討ちに出かけるところは観ていたのだけど。どうも、その瞬間、エアポケットに落ち込んだみたいだ。

ま、2回観たので、全体像ははっきりしてきたので良かったけど。

しかし、朝から通せば9時間37分だ。
休憩が合計90分。第1部と第2部の間の切り替えの時間が38分あったとはいえ、1日で2部とも観るというのはかなりの体力勝負だ。

♪2018-056/♪国立劇場-08

https://beelogbee.blogspot.jp/2018/05/305-2.html

2018年5月15日火曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年5月公演 第2部「彦山権現誓助剣」

2018-05-15 @国立劇場


彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
●須磨浦の段
 お菊⇒竹本三輪太夫
 内匠⇒豊竹始太夫
 友平⇒竹本小住太夫
 弥三松⇒豊竹咲寿太夫
 /鶴澤清友
 
●瓢簞棚の段 
 中 豊竹希太夫/鶴澤寛太郎
 奥 竹本津駒太夫/鶴澤藤蔵・鶴澤清公 

●杉坂墓所の段
 口 豊竹亘太夫/野澤錦吾
 奥 豊竹靖太夫/野沢錦糸
 
●毛谷村六助住家の段
 中 豊竹睦太夫/野沢勝平
 奥 竹本千歳太夫/豊澤富助

人形役割
  娘お菊⇒吉田勘彌
  弥三松⇒吉田簑太郎
  友平 ⇒吉田文昇
  内匠 ⇒吉田玉志
  佐五平⇒吉田玉勢
  お園 ⇒吉田和生
  伝五右衛門⇒吉田玉佳
  六助 ⇒吉田玉男
  母お幸⇒桐竹勘壽
  ほか

今月の文楽公演は第1部が吉田玉助襲名披露公演で出演陣もなかなか豪華だ。ま、そちらはあとの楽しみにして、まずは第2部から出かけた。
演目は「彦山権現誓助剣」。本来十一段構成から六段目から九段目までの半通し上演だ。
このうち、九段目に当たる「毛谷村六助住家の段」は、歌舞伎では何度か観ている。歌舞伎では、大抵「毛谷村」としてこの段だけが単独で上演され、稀にその前段の「杉坂墓所の段」も置かれる場合があるが、今回の文楽公演のように四段・半通しは多分ないのだろう。

「須磨浦の段」と「瓢箪棚の段」を前置することで話がわかりやすくなったかと言えば、どうもそうでもなかった。むしろ、複雑になって全体像を掴みにくかったように思うが、それは、これら前二段を観るのが初めてだったからかもしれない。

物語性はともかく、「瓢箪棚の段」は、単独でもなかなか見どころがある。全体を通したヒロインであるお園が初めてここで登場し、仇役との対決場面だ。

お園は武術指南の娘として生まれたので武術全般に通じているだけでなく、180cmという偉丈夫(偉丈婦?)で怪力の持ち主でもある。鎖鎌まで使う剣戟、棚から遣い手もろとも人形が飛び降りる演出など、これはなかなかの見どころだ。

その彼女が「毛谷村六助住家の段」で、親が決めた彼女の許嫁でめっぽう剣術の巧い六助に出会い、その途端、しおらしくなり何くれとなく世話を焼くが、つい怪力の地が出てしまうところは、歌舞伎でも滑稽シーンが連続する楽しいところだ。

この「毛谷村」の「奥」を語ったのが千歳太夫。
人形は六助を吉田玉男、お園を吉田和生が遣った。
うまい下手は判断付けかねるが、みんな熱演で良かった。

♪2018-054/♪国立劇場-06

2017年12月13日水曜日

12月文楽鑑賞教室「日高川入相花王」ほか

2017-12-13 @国立劇場


●日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)
     渡し場の段


豊竹芳穂太夫
豊竹靖太夫
豊竹咲寿太夫
豊竹亘太夫
竹本碩太夫

鶴澤清丈
鶴澤友之助
鶴澤清公
野澤錦吾
鶴澤清允

<人形>
吉田簑紫郎
吉田文哉

●解説 文楽の魅力

豊竹希太夫
鶴澤寛太郎
吉田玉誉

●傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)
     新口村の段

口 竹本小住太夫
  鶴澤清公
前 豊竹呂勢太夫
  鶴澤燕三

後 竹本千歳太夫
  豊澤富助

<人形>
吉田勘一
桐竹勘次郎
吉田勘彌
豊松清十郎
吉田玉男 ほか


文楽の「鑑賞教室」は初めてだった。
文楽鑑賞歴は短いものの熱心に足を運び、家でもビデオ鑑賞したりしてだいぶ勉強が行き届いてきたので、学生向けの解説は既に承知のことばかり…と思いきや色々と学ぶところは多かった。

文楽は、三味線・義太夫・人形遣いの3つの分野で成り立っているが、それぞれの分野から解説者が立った。歌舞伎の鑑賞教室だと歌舞伎役者の若手が説明に立つが、彼らは大舞台で喋るのが商売だからうまくて当たり前。それに比べると文楽の場合は太夫は声を使う仕事とは言え、喋るというより語るのだからだいぶ違う。ましてや三味線も人形遣いも一言も発さないのが本来であるから、舞台に立って解説をするというのは慣れない仕事だろう。それにしてはいずれもなかなか上手な説明だった。

配ってくれた解説のパンフレットも簡潔にまとめてあってこれからも重宝しそうだ。


「日高川入相花王〜渡し場の段」は安珍・清姫の物語だ。清姫が愛しい安珍とその婚約者を追って日高川の渡し場まで来るが、船頭は先に渡した安珍からお金をもらって清姫が来ても船に乗せないでくれと言われているので必死に頼む清姫の願いを拒絶する。

嫉妬に狂った清姫はついに大蛇になり日高川を泳いで安珍の後を追う…という場面だが、ここで、有名な「角出しのガブ」という頭が使われる。知識として走っていたが、ホンモノを見たのは初めてだ。きれいな娘の顔が一瞬にして口が裂け、目が充血して角膜が黄金色に変わり、頭からは角が出る。よくできているが、コワイ。


「傾城恋飛脚」は近松の「冥途の飛脚」を後年菅専助、若竹笛躬が改作したもので、2月に観た「冥途の飛脚」の最終段は「道行き相合かご」で、かごを帰した梅川と忠兵衛がこれから忠兵衛の故郷<新口村>の親に逢いにゆこうとするところで終わるが、「傾城恋飛脚」では、この段を「新口村の段」に改作して、雨の場を雪に変え、忠兵衛は父親に会えるのだが追手が近づいてきたということで終わる。この趣向がとても良いというので、「冥途の飛脚」の公演でも「新口村の段」を取り入れているものもあると聞くが観たことはない。

鑑賞教室ということで、2本とも1段(場)のみだったが、気軽な文楽鑑賞を楽しむことができた。

♪2017-201/♪国立劇場-20

2017年8月2日水曜日

夏休み文楽特別公演 第三部「夏祭浪花鑑」

2017-08-02 @国立文楽劇場


並木千柳、三好松洛竹田小出雲合作:夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)

●︎住吉鳥居前(すみよしとりいまえ)の段
 豊竹咲寿太夫/竹沢團吾
 豊竹睦太夫/竹澤宗助
●釣船三婦内(つりふねさぶうち)の段
 竹本小住太夫/鶴澤清公
 竹本千歳太夫/豊澤富助
●長町裏(ながまちうら)の段
 豊竹咲甫太夫・竹本津駒太夫/鶴澤寛治

◎人形
 桐竹勘壽・吉田玉輝・吉田簑助・吉田玉也・桐竹勘十郎・吉田幸助

第2部は長尺だったが、こちらは3段構成約2時間。

江戸の侠客には馴染みが深いが、大阪も変わらないのが面白い。しかも姐さん方の筋の通し方が半端じゃない。引き受けたからには「一寸」も引かない。引けば「顔が立たない」。面目を無くせば生きているのは恥ずかしい。

最後「長町裏の段」は陰惨な場面。その終盤、三味線も義太夫もピタリと止まって、かすかな祭り囃子の笛が聞こえる中、歌舞伎でいうだんまり状態での殺し合いが不気味だ。
そして、やむを得ず仕事を終えた団七が、血しぶきまみれの身体に水を浴びて気持ちを切り替え、祭りの喧騒の中にひっそり紛れて消える、この幕切れの粋なこと。

♪2017-134/♪国立文楽劇場-2

2017年6月30日金曜日

国立文楽劇場文楽既成者研修発表会 第5回(17回) 文楽若手会

2017-06-30 @国立劇場


●寿柱立万歳 (ことぶきはしらだてまんざい)
 豊竹睦太夫・豊竹靖太夫・竹本小住太夫
 鶴澤寛太郎・野澤錦吾・鶴澤燕二郎・鶴澤清允
 (人形役割)
 太夫⇒吉田簑太郎
 才三⇒桐竹紋臣 

●菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
◎車曳の段
 竹本小住太夫・豊竹咲寿太夫・豊竹睦太夫・
 豊竹亘太夫・豊竹靖太夫/鶴澤清丈
◎寺入りの段
 豊竹亘太夫/鶴澤清公
◎寺子屋の段
 豊竹芳穂太夫・豊竹希太夫/鶴澤清馗・豊澤龍爾
 (人形役割)
 梅王丸⇒吉田簑太郎
 桜丸⇒吉田玉誉
 杉王丸⇒吉田簑之
 松王丸⇒吉田玉翔
 左大臣時平⇒吉田文哉
 よだれくり⇒吉田玉路
 菅秀才⇒桐竹勘昇
 女房戸浪⇒桐竹紋吉
 女房千代⇒吉田簑紫郎
 武部源蔵⇒桐竹紋秀
 春藤玄蕃⇒吉田玉彦
      ほか

「文楽若手会」って初めて存在を知ったが、東京では今年が第5回目で、本場大阪では17回目だそうだ。
「若手」の定義がどこにも書いてない。公演チラシには副題で「文楽既成者研修発表会」とある。これもよく分からない。
太夫の中で最高の格にある豊竹咲太夫のイケメン弟子で例示すると、咲甫太夫は非若手、咲寿大夫は若手に名を連ねているのでこの辺が区切りらしい。

出演者の顔ぶれを見ると、太夫、三味線、人形遣いとも、本公演でも見かける顔が並んでいるので、研修発表会と言いながら結構本格的なものだ。特に文楽に関しては昨年12月に初めて舞台を経験したド素人の僕からはみんな大した技量を備えているように思える。

内容は、5月文楽公演と基本的に同じで、「茶筅酒の段」、「喧嘩の段」、「訴訟の段」、「桜丸切腹の段」が省略され、冒頭に「車曳の段」が加わっていた。
好みで言えば、「車曳の段」はカットしてもいいが「桜丸切腹の段」がなかったのは残念だ。これが演じられることで、「寺子屋の段」、とくに終盤の松王丸夫妻の嘆きが広がりを見せるのだと思っている。

5月の本公演での呂太夫の襲名披露「寺入りの段」や唯一人<キリ>を務める、咲太夫の「寺子屋の段」を思い浮かべると、多分、まだまだ大きな違いがあるのだろうが、僕の鑑賞眼では十分に面白く楽しめた。

♪2017-110/♪国立劇場-11