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2020年11月10日火曜日

75BTVN2020ピリオド楽器オーケストラ「第九」❷演奏会

 2020-10-05 @みなとみらいホール


渡辺祐介:指揮

オルケストル・アヴァン=ギャルド
クール・ド・オルケストル・アヴァン=ギャルド

川口成彦Fp*
藤谷佳奈枝Sp
山下牧子Al
中嶋克彦Tn
黒田祐貴Br


ベートーベン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番ト長調*
ベートーベン:交響曲第9番ニ短調「合唱付」/他
-----Enc---------------
ベートーベン:6つのメヌエット WoO.10から第2番*


10月の<驚愕の第九>に続く第2弾が<革新の第九>だ。

キワモノめいた惹句だが、中身は至って真面目。
ベートーベン生存時代の演奏を聴かせようというものだ。

「ピリオド楽器」も「古楽」も曖昧な表現だが、可能な限りその時代(period/ピリオド)に迫ろうというものだ。

今日は、「第九」の演奏に先立って「プロメテウスの創造物」序曲とピアノ協奏曲第4番(いずれもベートーベン)を、先頃第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで2位になった川口くんが”ピアノ”ではなくその時代のピアノというべき”フォルテピアノ”で参加するという豪華版。

金管はバルブがない。
木管はリアルウッド。
弦はガット。
バイオリン・ビオラに顎あて・肩あてなし。
チェロはピンなし。
奏法はノンビブラート。


フォルテピアノは初めて聴いた訳ではないがオケと協奏曲というのは初めて。

さすがに音が小さいが耳を済ませて聴いているうちに、ああ、これがベートーベンの時代の音楽なんだと、何やら不思議な懐かしさを感じた。

古楽アプローチによる宗教曲などはたまに聴くがコンサートプログラムは初めて。

ガット弦・ノンビブラートならではのシャキシャキした響きが実に心地よい。スチールは音楽をダメにしたんじゃないか、と途中思ったりもした。

「オルケストル・アヴァン=ギャルド」なるオケの実態は解説を読んでもよく分からないが、今回の為のニワカ仕立てではなさそうだ。BCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)のメンバーを中心にN響などの若手名手で構成されている。

これが実にうまい。

尤も福川名人にもナチュラルホルンは難しそうだったが、あの楽器ではモダン楽器のような撥音の明瞭さを期待すべきではないのだろう。

初めての指揮者・渡辺祐介もよく統率して、嫌味がない。

一方、2楽章の終わり方などフワッと消えるようで、これが洒落ていた。

4楽章はレシタティーヴォに個性が出るところだが、とても自然で好感。 

今年2回目の「第九」だった。
声楽入りの本格的「第九」は最初だったが、いきなり真打登場の感あり。

前・みなとみらいホール館長の池辺晋一郎が駄洒落混じりの解説。どうでもいいような中身だったが、この企画・監修はいい仕事をしてくれた。

♪2020-059/♪みなとみらいホール-19

2018年12月27日木曜日

N響スペシャル「第九」 ---「第九」❻

2018-12-27 @サントリーホール


マレク・ヤノフスキ:指揮
NHK交響楽団
東京オペラシンガーズ:合唱

勝山雅世:オルガン*
藤谷佳奈枝:ソプラノ
加納悦子:メゾ・ソプラノ
ロバート・ディーン・スミス:テノール
アルベルト・ドーメン:バリトン

ブクステフーデ:前奏曲 ニ長調*
J.S.バッハ:パストラーレ ヘ長調 BWV590 ― 第1楽章*
ギルマン:オルガン・ソナタ 第1番 ニ短調 作品42 ― 第3楽章*
ベートーベン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125

ヤノフスキ+N響は過去3回聴いてすべて好感したので期待大。

だが、彼がプログラムの解説で第3楽章こそ最重要と書いているのは説明不足で余計なことだった。確かに第3楽章は極めて美しい緩徐楽章に違いないが、この記述だけだと偉大なる終楽章の位置付けはどうなるのか、などと不安が生ずる。
「第九」は第1楽章、第2楽章、終楽章がアレグロ、ヴィバーチェ、プレストなど超速テンポなので、そこに挟まれたアダージョが荒れ野に咲く花のように高潔な美しさを誇っているが、さりとて、他楽章がなければ第3楽章の美しさも際立つことはなかった。
さあ、これから「第九」を聴くぞ、と心待ちしている観客を混乱させるだけだから書かない方が良かった。

オケの規模は昨日の都響と同じ弦16型(全員で60人)の大規模編成。
合唱団は91人と比較的小規模だが、舞台後方席(P席)を全部潰して並んだ。今季「第九」は6回目だが、うち舞台後方席がない県民ホールでの神奈川フィルを除けば過去4回中4回とも合唱団は舞台のオケの後ろに並んだ。
オルガンの前の観客席を潰して合唱団を並べたのはN響が初めてだ。これは効果的で、オケもゆったり舞台を占拠できる。何より、P席は舞台よりずっと高い位置にあるので、客席からは見上げる事になる。すると、合唱は高いところからストレートに観客席に向かってくる…ような視覚効果があって、それが迫力を高める。

第1楽章冒頭、原始の雲を切り裂くようにバイオリンがきらめいたのは読響だ。N響の場合はバイオリンは曙光が射すように穏やかに登場して、これはまた新しいドラマが始まることを予感させた。

N響の弦の響きは重厚だ。
それでいて細部まで機敏。
メリハリがあってさすが格違いのアンサンブル。

2楽章は反復省略なしで今季聴いた6本の「第九」中演奏時間は最長(13分33秒)。因みに最速記録は都響の10分7秒(繰り返しの省略のためでもある。)。
<最重要>な割に第3楽章はキビキビして13分強で、逆に今季最速。因みに最長は都響の14分55秒。
終楽章もアップテンポで22分33秒。
全体として正味62分はコンパクトな方だ。

楽章毎の時間配分はザネッティ指揮の読響によく似ている。

いくつかのフレージングにヤノフスキが独自色を発揮した。
第3楽章の管と弦の掛け合い。
後述する終楽章のレシタティーヴォ。そのあとのバリトン独唱の出だしなど。

その最たるものが、終楽章低弦のレシタティーヴォ。
チェロとコントラバスの呼吸がヤノフスキと一致していない。今季既に5回目の第九なのにまだピシッと合わないのはヤノフスキの呼吸が独自すぎだからだ。また都響同様10人もの多人数で息を合わせるのも難しいだろう。

やや不満も残ったが合奏力は群を抜いているので、読響に90点をつけたからにはN響は95点!
でも、もう一度聴いてみたいのはどちらかと言われれば、ザネッティ+読響だなあ。

♪2018-179/♪サントリーホール-16