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2017年9月11日月曜日

東京都交響楽団 第840回 定期演奏会Bシリーズ

2017-09-11 @サントリーホール


大野和士:指揮
ペーター・ダイクストラ:合唱指揮
東京都交響楽団
スウェーデン放送合唱団

ソプラノ:林正子
テノール:吉田浩之
バリトン:ディートリヒ・ヘンシェル

ハイドン:オラトリオ《天地創造》 Hob.XXI:2

今年1月の都響B定期以来、サントリーホールは改修工事中で、都響B定期もその間はオペラシティコンサートホールで引っ越し公演が続いたが、よくやく元の居場所に戻った。
ホールの改修は定期的な補修が中心で、構造的には1-2階の間にエレベータができたとか、トイレが広くなったとか書いてあるが、コンサートホールとしては本質的なことではない。
座席の布地の張替えとか舞台の張替えは見た目にも明らかだ。


それで音響にどういう影響が出るのかは分からない。第一、今期から席を変えてだいぶ前に出たので迫力はあるが、ホールトーンなのか、包まれるような残響は感じなかった。どちらがいいかは、音楽にもよるので難しいところだ。

さて、今日はハイドンの「天地創造」。
今年の都響の目玉だ。
去年の「熱狂の日」で聴いたのがたぶん初めてのナマ演奏(シンフォニア・ヴァルソヴィア+ローザンヌ声楽アンサンブル)だったはず。その時も、ハイドンにしては面白味に欠けると思ったが、今回も同様だった。やはり同じハイドンのオラトリオ「四季」に比べて愉しさが違うな。
旧約の創世記の物語に、まずは素直になれないのだから仕方がない。

とは言え、今回の合唱団は、一昨年10月の都響定期で、モーツァルトの「レクイエム」で見事な合唱を聴かせてくれたスウェーデン放送合唱団だ。
声楽に関してはまったくの素人だけど、彼らの精緻なアンサンブルを超える合唱を聴いたことがない。
あまり有名ではないと思うが、昨年の熱狂の日で聴いた女3男8のア・カペラグループ「アンサンブル・ジャック・モデルヌ」もすぐれものだったが、アンサンブルの規模がだいぶ違うので比較はできない。

そして都響は御大・大野和士が指揮を取った。

大野マエストロが初めてこの曲を聴いた時(中学生時代らしい)に、第2曲めの「光あれ!」でハ短調から転調してハ長調の和音がガーンと鳴るところで頭が真っ白になるほど感動したと言っていたが、注意深く聴いていたけど、どうもその大切な部分はうまく行ったようには思えなかった。
とは言え、声楽ソリストも合唱もオケも超大曲に挑んで高水準の出来ではなかったかと思う。

「天地創造」が面白さに欠けると思うのは専ら個人的趣味によるもので、演奏が悪かったとは全然思わない。また機会があれば聴いて、耳に馴染んでくると面白さが分かるようになるかもしれない。

♪2017-147/♪サントリーホール-02

2015年10月16日金曜日

東京都交響楽団第796回 定期演奏会Bシリーズ

2015-10-16 @サントリーホール


ペーター・ダイクストラ(スウェーデン放送合唱団首席指揮者):指揮
クリスティーナ・ハンソン:ソプラノ
クリスティーナ・ハマーストレム:アルト
コニー・ティマンダー:テノール
ヨアン・シンクラー:バス

合唱:スウェーデン放送合唱団
東京都交響楽団

リゲティ:ルクス・エテルナ (1966)(無伴奏混声合唱)
シェーンベルク:地には平和を op.13 (混声合唱と管弦楽)
モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626 (ジュスマイヤー版)
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アンコール
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ長調 K.618(無伴奏混声合唱)


今夏、フェスタサマーミューザで十数年ぶり?に都響を聴いてあまりにもうまいのに驚いて、後期シーズンから会員になって今日が初めての定期演奏会だった。

とはいえ、この日のプログラムでは都響の管弦楽の魅力が十分発揮されるものとはいえないなあ、と内心はあまり期待せずにでかけたが、とんでもなかった。

リゲティという現代作曲家の作品は何度か聴いていて一度も面白いと思ったことはないのだけど、この日のトップバッター「ルクス・エテルナ」(永遠の光)という宗教曲は無伴奏混声合唱曲で、当然調性はなく、不協和音が主体だけど、時折協和的な和音らしきものが覗かせる。全体的にリズムを感じさせずひたすら音が流れて続けているが、最後は無音の7小節で終曲する。

「無音の7小節で締め括られる」とプログラムの解説に書いてあったが、それって何?と思うけど、確かに、最後に無音が必要な場合はある。
通常は指揮者が余韻として溜めている僅かな時間で、観客もこれを最後まで共有しようと努める。とても大切な無音の音楽とも言える。
リゲティはそれを指揮者に委ねず、自らが7小節と決めた訳だ。
そこまで演奏家を縛らなくともいいと思うけど、この不思議な音楽は嫌な感じはしなかった。

一つは、合唱団のレベルの高さもあったからだろう。
スウェーデン放送合唱団というのは、知らなかったけど、世界のトップアンサンブルなのだそうだ。
指揮者のペーター・ダイクストラはこの合唱団の首席指揮者でもあり、合唱指揮者としては相当名の売れた人らしい。

シェーンベルクの「地には平和を」は調性を持つらしいが(ニ長調の主和音で終わるらしいから、ニ長調という調性を持っているといえるのかな)、実際にはそれ(機能和声)は拡大されて、無調的な部分もある。というか、むしろ、ところどころに調性が感じられる。

この曲もリゲティの無伴奏曲と同じく明確なリズム感が全体を支えるということはなく、どちらかと言えば平板に流れてゆき、劇的緊張感には乏しかった。
作曲時は無伴奏合唱曲だったらしいが、あまりにも音取りが難しく歌手たちが歌えないこともあって、管弦楽伴奏部分が付けられたそうだ。

最後は、モーツァルトだ。
レクイエムは何度かナマで聴いているが、管弦楽も合唱団もおそらく、今回が一番小編成だった。

しかし、キビキビとしたアップテンポな指揮ぶりとボリューム感のある合唱団、そして小規模ながら透明感のある都響の管弦楽が本領を発揮して、実に聴き応えのあるレクイエムになった。

第4曲目に当たる「トゥーバ・ミルム」(驚くべきラッパ)はトロンボーンのソロで始まりその上にバス(声楽)ソロが重なるのだけど、いやこのトロンボーンの見事なこと。完璧なピッチコントロールだ。スライドトロンボーンなのにどうしてこうもツボがピタッと決まるんだろうと驚いた。こんなにきれいなトロンボーンソロを聴いたのも初めてだ。

とにかく、過去最高のレクイエムを聴くことができて、久しぶりに大満足のコンサートだった。


♪2015-103/♪サントリーホール-05