2017年3月30日木曜日

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2017-偉大な芸術家の思い出に~堀正文、イェンス=ペーター・マインツ、清水和音

2017-03-30 @東京文化会館


バイオリン:堀正文
チェロ:イェンス=ペーター・マインツ
ピアノ:清水和音

ハイドン:ピアノ三重奏曲 第25番 ト長調 Hob.XV:25 《ジプシー・ロンド》
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.49
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 op.50 《偉大な芸術家の思い出に》

メンデルスゾーンとチャイコフスキーのピアノ・トリオの組み合わせなんて個人的には理想的だ。最近ちょっと傷心を愉しんでいるので癒しにぴったり。
でも2週間前に同じ場所で聴いたベルリンフィル三重奏程の調和は不足。また、10日前の山根君らの演奏程にも琴線を震わせなかった。達者に軽く弾くのが、これらの作品に抱いているイメージと異なるので期待を外されてしまうのかも。 

今日のコンサートはどうもチェロの音が明確ではなかった。やはり、チェロの場合は正面からせいぜい±15度くらいに収まらないとだめなんじゃないかと思った。ほぼ正面に楽器を見ないと(先日の多重奏も然り)音楽に入ってゆくのが難しい。今日の演奏は特にそういう感じだった。

♪2017-48/♪東京文化会館-04

2017年3月26日日曜日

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2017-名手たちによる室内楽の極み 〜モーツァルト、ベートーベン、シューベルト〜

2017-03-26 @東京文化会館


バイオリン:長原幸太*、岡本誠司
ビオラ:鈴木康浩
チェロ:上森祥平*、富岡廉太郎

モーツァルト:バイオリンとビオラのための二重奏曲 第1番 ト長調 K.423*
ベートーベン:弦楽三重奏曲 第3番 ニ長調 Op.9-2*
シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調 D.956

昨年もほぼ同様のメンバーによる演奏会を聴きに行ったが、そのときは、弦楽三重奏のほか、むしろピアノ四重奏がメインに据えられた。昨年のキャッチコピーは「若き名手たちによる室内楽の極み」だったから、1年経って、もう若くなくなったようだ。
確かにこのメンバー、既にオケの(客演)首席クラスなのだから、若手というより中堅だ。

今回は弦楽のみの二重奏、三重奏、五重奏と並べたからには、断章程度でいいから四重奏曲も入れてほしかったな。弦の厚みが増すと音楽がどう変わってゆくのか、興味深かったのに。

モーツァルトは音楽も、編成も軽妙でまあオードブルといったところか。
ベートーベンはピアノ三重奏曲は番号付きだけでも11曲、弦楽四重奏曲は番号付きだけでも16曲作っているのに、弦楽3重奏曲は番号付きが作品3の第1番と作品9の3曲(第2番〜第4番)。ほかに作品8のセレナードのみだ。少ないことより、作品番号があまりに若いのに驚く。20歳代に着手して僅かな作品を残してその後は弦楽三重奏曲には興味を失ったのだろうな。
やはり、弦楽四重奏曲という鉄壁の編成を手に入れたら三重奏には戻れなかったのかもしれない。
今日の第3番はナマでは初聴きだったが、モーツァルト同様あまり重苦しくなく気楽に聴ける作品だった。

最後のシューベルトの五重奏曲はシューベルトにとっても最後の室内楽作品だったようだ。31歳の11月になくなっているが、その年の夏に作曲された。
ハ長調の作品だけど、冒頭は暗い。長調に変わっても長くは続かず感情の起伏が激しい。第2楽章もなんとも物悲しい。3連符の伴奏で煽り立てるような慟哭が続いて、やがて、断末魔の喘ぎのような音楽が続いてご臨終かと思うと第3楽章はリズミカルで荒々しく始まるが、中間部(トリオかな)はまた物静かでさびしい曲調だ。終楽章もけっして明朗ではないけど、ここにきてシューベルトらしさが溢れている。

この五重奏は弦楽四重奏の編成にビオラが加わる形が通例なのになんとチェロを加えて、つまりバイオリン2、ビオラ1、チェロ2という編成だ。低音部が充実しているので、それが第3楽章など元気のいい部分には奏功しているけど、あまり低域で別々の音を重ねると響がモゴモゴしてしまうし、さりとてユニゾンは時に効果的だけど終始だど低域が強調されすぎる。第2楽章の物悲しい場面ではその弊害が出たような気がした。2本のチェロの弾き分けがよく聴こえなかったのが残念だった。

♪2017-47/♪東京文化会館-03

2017年3月25日土曜日

第6回音大フェスティバル・オーケストラ演奏会

2017-03-25 @ミューザ川崎シンフォニーホール


高関健:指揮

音楽大学フェスティバル・オーケストラ(首都圏9音楽大学+九州2音楽大学選抜オーケストラ)

【参加音楽大学】上野学園大学、国立音楽大学、昭和音楽大学、洗足学園音楽大学、東京音楽大学、東京藝術大学、東邦音楽大学、桐朋学園大学、武蔵野音楽大学、平成音楽大学(熊本)、大分県立芸術文化短期大学(大分)

ドビュッシー:交響詩「海」
マーラー:交響曲 第6番 イ短調 「悲劇的」

首都圏9音大に今年は熊本・大分の音大も含む計11音大から選抜されたメンバーによる合同オケ。指揮は高関健。メインはマーラー第6番。

ウリは超特大編成。コンバス10本はここでしか聴けない。
終楽章のもたつきが惜しいが、合同オケの難しさをよく克服して長大曲をやり遂げた。

管打楽器は楽器のデパートみたいに数多くの種類が登場する。
ティンパニー2組はそう珍しくもないが、シンバル4組計8枚が同時に鳴らされるのは他に知らない。

6番の演奏でよく取り上げられる第2-3楽章の演奏順番問題。今回はマーラー協会の2010年の最新発表に従ってアンダンテ(A)〜スケルツォ(S)の順で演奏された。

しかし先月のパーヴォ+N響ではS〜Aの順だったし、一昨年前のインキネン+日フィルも同様だった。が同じ年の金聖響+神奈川フィルでは今日と同じくA〜S順だった。CDなどでは古い録音ではS〜Aの方が多いのではないだろうか。

まあ、どっちにしてもその後の終楽章だけで30分(全80分強)もあるので、その直前にスケルツォがこようとアンダンテが来ようと、終楽章の手前で音楽は一旦仕切り直しされるのでその順序はどっちでもいいような気もする。
さて、その終楽章。この長時間の緊張を維持するのが演奏する側も聴く方も本当に難しい。
でもいわば俄仕立ての合同オケにしてはよくやった。来年も期待しよう。

♪2017-046/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-04

2017年3月20日月曜日

横浜芸術アクション事業 山根一仁、上野通明、北村朋幹 ピアノ・トリオの夕べ

2017-03-20 @みなとみらいホール


山根一仁:バイオリン
上野通明:チェロ
北村朋幹:ピアノ

ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調「偉大な芸術家の思い出のために」Op.50
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アンコール
ドボルザーク:ピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」第3楽章

山根一仁Vnと上野通明Vcは95年生まれ、北村朋幹Pfは91年生まれという若いトリオ。
山根と北村は数年前にオケの定期で協奏曲を聴いている。
上野は多分初めて。

この3人の組合せはによる公開演奏は2回目、一晩の演奏会としては初めてだそうだがそんな危うさは感じさせない。

1曲めのラヴェルは精緻なガラス細工みたいで静なる異種格闘技の感あり。
メインはチャイコの「偉大な芸術家の思い出のために」。50分近い壮大にして華麗な大傑作で、やや荒っぽさも感じたが迫力に関してはこれまでで一番だった。
これは、3列目で聴いたからでもあるけど、おそらく最後列でも440席の小ホールでは十分によく鳴り響いていたはずだ。
各楽器の繊細なピアニシモからトゥッティの最強音までのダイナミックレンジの広いこと。これぞかぶりつきで室内楽を聴く醍醐味だ。

ちょいと残念だったこと。
第2楽章(終楽章)の第2部のそのまた最終盤、残り1分ほどから始まる葬送行進曲ではピアノの重々しい伴奏で、第1楽章の主題がチェロとバイオリンが交代で歌う最後の聴かせどころだが、ここで上野くんの指が音をほんの僅か外した。半音の半音の更に半音くらいか。遠くで聴いていたら気づかなかったかもしれないが前から3列目だと否応なく耳に入った。尤もそれまでにバイオリンも少し怪しい部分はあったけど、速いテンポの部分では気にもならない。
しかし、ゆったりしたテンポで愈々テーマが再現されるという部分でのチェロのエラーは目立った。すぐ回復したけど、本人も気にして、カーテンコールでも表情が暗かったなあ。多くの国際コンクールで優勝・入賞し、プロのオケとの競演も数々こなしていても、こういうことがあるのだなあ。
でも、このメンバーによるトリオの今後に期待するよ。

♪2017-045/♪みなとみらいホール-13

読響第94回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2017-03-20 @みなとみらいホール


下野竜也:指揮
読売日本交響楽団
三浦文彰:バイオリン*

パッヘルベル:カノン
フィリップ・グラス:バイオリン協奏曲第1番*
ドボルザーク:交響曲第9番「新世界から」
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アンコール
パッハベル(野本洋介編):カノン

首席客員指揮者下野竜也が読響を退任するそうで、今日は最後のステージだった。

パッヘルベル「カノン」(弦楽版)に始まったが、小型のオルガンが指揮者の前に置かれ、その回りをチェロとコンバスが取り囲み、バイオリン、ビオラは舞台の最外周に立ったまま半円形に陣取るという変わった演奏スタイルだった。それが、意表を突く、以外の何かの効果をもたらしたかどうかは分からない。

三浦文彰の独奏バイオリンでフィリップ・グラスのバイオリン協奏曲。彼の独奏による協奏曲は過去にブルッフ、ショスタコ1番、ベートーベンと聴いている。
昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」のテーマのバイオリンを担当したことで、ちょっとブレークしたのかも。
前に、アンコールで聴いた超絶技巧がすごかったので、すごいテクニシャンだという印象が強い。
初聴きのフィリップ・グラスでもそういった技の聴かせどころが満載だったように思うが、元々、ミニマル系の音楽なのでほとんど管弦楽が同じような調子でリズムを刻んでいるから、この音楽をバイオリン<協奏曲>とする必要があったのかという疑問は払拭できなかった。

メインは下野が得意とする「新世界から」。
これが特に良い出来だった。
団員が熱を込めてマエストロの餞けにしようとする気持ちやよし。

アンコールにも工夫があって再度「カノン」が今度は管楽器版で始まり、徐々に打楽器、弦楽器と膨らんで行き、頂点に達すると今度は数人ずつ、下野に手を振りながらステージを離れ、最後は下野とコンマスが上手・下手に消えるという感動的演出の送別会!
「カノン」で始まり「カノン」で終わるというのは、みんな気持ちは繋がっているよというメッセージかも。

♪2017-044/♪みなとみらいホール-12

2017年3月19日日曜日

音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ18 アンドラーシュ・シフ ピアノ・リサイタル 〜ウィーン古典派4人の巨匠たちの最後のソナタ集〜

2017-03-19 @県立音楽堂


アンドラーシュ・シフ:ピアノ

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第18(17)番 ニ長調 K.576
シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960
ハイドン:ピアノ・ソナタ第52番 変ホ長調 Hob. XVI: 52
ベートーベン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 op.111
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アンコール
J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲BWV988から「アリア」
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第16(15)番K545から第1楽章
シューベルト:4つの即興曲 D935から第1曲ヘ短調
    〃   :       〃      第4曲ヘ短調
    〃   :ハンガリー風メロディ ロ短調 D817
    〃   :4つの即興曲 D899から第2曲変ホ長調

モーツァルト、シューベルト、ハイドン、ベートーベンの各最後のソナタ4本立て。最初は音が丸すぎるかと思ったが、段々良く鳴るベーゼンドルファー(持込)と相まって求道者のような佇まいから奏でられる音楽は、独墺音楽の核心を聴いた感あり。

最後のベト32番に深く打たれた感あり…で、もうアンコールはなくて良いと思っていたが、ゴールドベルクの主題が始まった時にはよくぞ弾いてくれたと思った。その後も計6曲の大サービス。3時間の大長編コンサートになった。

昨秋、同じ音楽堂でユジャ・ワンの強烈なピアノを体験したが、2人の音楽はまるで対極に位置するように思える。
しかし、観客の熱狂度においても、シフはユジャ・ワンに負けていなかった。本物に触れた喜びだろう。これぞ、シフくの4時間。

ベーゼンドルファーってピアノソロや室内楽には向いているのではないか。
シャルランが自分のレーベルでLPで出したベートーベンやブラームスのソナタ集のCD復刻版を持っているが、スタインウェイを使っているが、音色は誠にまろやかで好きだが、今日のベーゼンドルファー280VC(ベ社から持込み)はそれに近いまろやかさだった。
YAMAHAが石ならスタインウェイは鉄、そしてベーゼンドルファーは木の響がするよ。大ホールやコンチェルト向きではないと思うけど、音楽堂(1054席)という中規模ホールでのピアノソロでは非常に心地の良い音色だ。手持ちのシフによるシューベルトピアノ・ソナタ全曲を含む作品集は音色まで気にしていなかったけど、よく調べたらベーゼンドルファーを使っていた。

リサイタルにアンコールはつきものとは言え、まさかの6曲。そのうち4曲がシューベルトだった。何か、すごいね。外連味ゼロだが、本物のピアニストという感じがしたし、ほんものの独墺音楽とはこれだと言う感じがした。

♪2017-043/♪神奈川県立音楽堂-03

2017年3月18日土曜日

東京交響楽団 川崎定期演奏会 第58回

2017-03-18 @ミューザ川崎シンフォニーホール


飯森範親:指揮
東京交響楽団

レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ:交響詩「ローマの松」
レスピーギ:交響詩「ローマの祭」

演奏は作曲年順に噴水⇒松⇒祭。
すべてにオルガンが入り、噴水からして大規模編成だが、松からはバンダ(別働隊)も加え、祭で最大規模の管・打楽器だけでも45人。その狂騒ぶりはまさしくお祭り騒ぎ。
でもやっぱり松が好き!

今日の東響は、気のせいかもしれないけど、バイオリン群の高音部の唸りというのか軋みというのか、少し気になるところがあった。

飯森範親という人は顔付きにくせがあるけど、指揮ぶりは外連味がなく正統派の感じがするな。何か、安心感があるよ。

♪2017-042/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-03

2017年3月16日木曜日

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2017-ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽

2017-03-16 @東京文化会館


バイオリン:アンドレアス・ブーシャッツ
チェロ:オラフ・マニンガー
ピアノ:オハッド・ベン=アリ

ラフマニノフ:ピアノ三重奏曲 第1番 ト短調 《悲しみの三重奏曲》
ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 作品8
シューマン:ピアノ三重奏曲 第1番 二短調 作品63

東京・春・音楽祭の一番手。
昨年も聴いた(Vn交替)が、その時はメンデルスゾーンの1番にチャイコフスキーという、もうグイグイ泣かせる組合せで堪能したし、とりわけ、チェロの美音にしびれたことを思い出す。

今年はラフマニノフ、ブラームス、シューマンという渋いプロ。
去年も素晴らしかったが、3人の呼吸が一体となっているのが分かる。
特にシューマンの微妙に揺れるテンポがぴったりなのが実に気持ち良い。そして相変わらずのチェロの音色がいい。

今回も客席からは大歓声が沸き起こった。何度も何度もカーテンコールが繰り返されたが、ステージと客席の一体感が嬉しかったね。

♪2017-41/♪東京文化会館-02

2017年3月15日水曜日

オペラ:ドニゼッティ「ルチア」

2017-03-14 @新国立劇場


指揮:ジャンパオロ・ビザンティ
演出:ジャン=ルイ・グリンダ
美術リュディ・サブーンギ
衣裳ヨルゲ・ヤーラ
照明ローラン・カスタン
舞台監督村田健輔

合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ルチア⇒オルガ・ペレチャッコ=マリオッティ
エドガルド⇒イスマエル・ジョルディ
エンリーコ⇒アルトゥール・ルチンスキー
ライモンド⇒妻屋秀和
アルトゥーロ⇒小原啓楼
アリーサ⇒小林由佳
ノルマンノ⇒菅野敦

オペラ:ドニゼッティ「ルチア」 全2部(3幕)〈イタリア語上演/字幕付〉


ルチアの純粋無垢な愛情が兄の謀略によって打ち砕かれ、ついに狂気に走るところが痛ましく悲しい。
今日のルチア役のO・ペレチャッコの素晴らしい事。
METのライヴビューイングでN・デセイ、A・ネトレプコが主演したディスクを再度見直したが、どちらにも負けてはいない。

狂乱のアリアでは感情移入して胸が締め付けられる思いあり。

これほどの悲劇なのに、ドニゼッティのメロディーは結構明るいのには驚くが、イタリア人気質がつい顔を覗かすのだろうか。

♪2017-039/♪新国立劇場-2

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)五幕七場

2017-03-15 @国立劇場


近松半二ほか=作
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)五幕七場

序幕    相州鎌倉 和田行家屋敷の場
二幕目 相州鎌倉 円覚寺方丈の場
      同    門外の場
三幕目 三州藤川 新関の場
      同    裏手竹藪の場
四幕目 三州岡崎 山田幸兵衛住家の場
大詰      伊賀上野 敵討の場 

唐木政右衛門⇒中村吉右衛門
山田幸兵衛⇒中村歌六
佐々木丹右衛門・奴助平⇒中村又五郎
和田志津馬⇒尾上菊之助
近藤野守之助⇒中村歌昇
捕手頭稲垣半七郎・石留武助⇒中村種之助
幸兵衛娘お袖⇒中村米吉
池添孫八⇒中村隼人
沢井城五郎・夜回り時六⇒中村吉之丞
和田行家⇒嵐橘三郎
沢井股五郎⇒中村錦之助
政右衛門女房お谷⇒中村雀右衛門
幸兵衛女房おつや⇒中村東蔵
ほか


2014年末公演の再演。その時に東京では1970年(国立劇場)以来だという「岡崎」の場を核とする芝居に再構成された。吉右衛門らの熱演で、この芝居は読売演劇大賞を歌舞伎として初めて受賞した。今回は若干構成を変えてあるがやはり、「岡崎」をクライマックスとする作りは同じで、しかも、同じ役者による(場面構成の違いによる配役や端役は異なっていると思うが。)、いわば凱旋公演だ。既に新聞などの劇評では一段と磨きがかかったと概ね好評なので観るのが楽しみだった。

場面構成の変更は、前回は第2幕は「大和郡山誉田家城中の場」だったが、これに代わって「相州鎌倉円覚寺方丈の場」、「同 門外の場」が置かれた。これによって話も鎌倉から伊賀への道順になって「道中双六」らしくなった。

見せ場は「岡崎」での愁嘆場だが、大義の為に敢えて妻子を犠牲にする苦悩の吉右衛門とこの上もない悲劇に見舞われる雀右衛門の葛藤が鬼気迫る。

前回も思ったが、吉右衛門が演ずる唐木政右衛門はとんでもない男だ。仇討ちのためにやむを得ないとは言え、まだ乳飲み子の我が子を刺殺し土間に放り投げるなど、これは納得できない。
残酷さを観るより、ギリシャ悲劇のような悲劇性を観て取るべしという高邁な解説も読んだが、乳飲み子の命より大切な仇討ちはなかろう、とつい思ってしまう。

この「岡崎」の場での政右衛門、否、吉右衛門の心中は極度の追い詰められ鬼と化すのだろう。

息子を殺してその直後に政右衛門の師匠が悪党を切り倒したのを見て褒める「まだお手の内は狂いませぬな、ハハハ〜」のセリフはやっぱりおかしい。この辺りを手直ししてはどうかと思うのだけどな。

米吉のお袖は今回も実にカワユイ!面白い。この悲惨な殺戮のドラマの中で一服の清涼剤だ。
菊之助は相変わらず男前で一段と磨きがかかったようだ。


♪2017-040/♪国立劇場-07

2017年3月14日火曜日

国立劇場開場50周年記念 平成28年度3月中席

2017-03-14 @国立演芸場


《講談》神田松之丞⇒和田平助
《上方落語》笑福亭里光⇒手水回し
《相撲漫談》一矢
《落語》瀧川鯉朝⇒お玉牛
《講談》神田松鯉⇒雪紅茶入れ
   ―  仲入り  ―
《漫才》東京太・ゆめ子
《落語》立川談幸⇒権助魚
《奇術》北見伸&スティファニー
《落語》三遊亭圓遊⇒子別れ

落語ブームだそうだが、若手、中堅とも謙虚に技を磨かなくてはなるまい。
今日は肝心の落語に光るものなし。
トリの園遊は枯れた芸で滑舌は見事だけど早口すぎて気持ちが乗れない。
奇術のステファニーはいつもながら鮮やかだ。

2017-038/♪国立演芸場-05

2017年3月11日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第325回横浜定期演奏会

2017-03-11 @みなとみらいホール


小林研一郎:指揮[桂冠名誉指揮者]
前橋汀子:バイオリン*

日本フィルハーモニー交響楽団

サン=サーンス:序奏とロンド・カプリツィオーソ*
マスネ:タイスの瞑想曲*
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン*
マーラー:交響曲第1番《巨人》
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アンコール
J.S.バッハ:無伴奏バイオリンのための組曲第2番から「サラバンド」
マーラー:交響曲第1番《巨人》から終楽章コーダ

前半は前橋汀子を迎えてVnの名曲集。音色がいい。特にチゴイネル〜の弱音器を付けた音が極上の響。

後半はマーラーの巨人。
演奏の出来はイマイチという感じ。指揮者と団員の呼吸が揃っていないのか、構成感が弱く終楽章に向かっての高揚が不足した。
しかし、終楽章コーダではホルンだけでなく金管全員を立たせたのが効果的で、ようやくにして胸のつかえが降りた。
これはコバケン流「震災鎮魂の咆哮」なり。

東日本大震災6年目の夜のコンサート。

♪2017-037/♪みなとみらいホール-11

2017年3月9日木曜日

東京都交響楽団 第826回 定期演奏会Cシリーズ

2017-03-09 @東京芸術劇場大ホール


飯守泰次郎:指揮
東京都交響楽団

ベートーベン:序曲「レオーレ」第3番 op.72b
ベートーベン:交響曲第8番ヘ長調 op.93
ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
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アンコール
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲

今日の芸術劇場の都響はあれこれ不満があって、全てが都響のせいではないが、イマイチだった。

第1曲目のレオノーレの出だしが飯守御大の呼吸と合っていない。その後もどうも木管とバイオリンが合わず、バイオリンの方が少し遅れて、揃うまでに少し時間がかかった。

アンサンブルの達人みたいな都響にしてはどうも様子がおかしい。
テンポのズレはすぐ修正されたが、どうにも修正できないのが音響だ。
レオノーレにしてもベートーベンの第8番にしても管弦楽がドカーンと大きな音を発して始まるのだけど、その響が固く締まっていない。ボワーンと緩い。

芸術劇場の音響については前からどうも変だと思っていたが、それは席が音源から遠いためかもしれないと留保していた。
それが前回は2階最前列で聴いたが、やはり、スッキリせず、ひょっとしてステージ上の音はステージ上で空回りして客席に飛んでくる割合が低いのではないかと思った。
今回は1階席の10列目の中央という縦横のど真ん中で聴いたが、その疑いはますます濃厚にというか、もはや確信に近いものとなった。

ベートーベンの8番のメヌエットの中程(トリオ)ではホルン、木管、バイオリンと数を増してアンサンブルが厚く変化しながら主題を奏で、これにチェロが3連音符で伴奏をつけるのだけど、今日の飯守御大はこの部分をチェロ首席が1人で弾くように指示した(のだろう。現に汗をかいていたのは独りだけだったから。)。ところが、ここでチェロは完全にメロディー楽器の攻勢に埋もれてしまい、3連符が部分的にしか聴こえてこない。
いくら独りでもかなり奮闘ぶりが見えたからわざわざ聴こえないような小さな音で弾いているはずがない。飯守御大には聴こえている音が10列目に届かないのだ。音は虚空に吸い込まれてゆくが如しであった。

休憩を挟んで、ワーグナー・アワーだ。
こちらは都響も調子が出てきたのか、あるいは御大の得意分野で指示が行き届いていたのか、壮大なワーグナー・ワールドを楽しめた。アンコールは、やっぱり、というべきか。昨夏のミューザ川崎シンフォニーホールでの東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団とのワーグナー中心のコンサートでもアンコールに演奏してくれた華々しい「ローエングリーン」第3幕への前奏曲で盛り上がった。

ただ、やはり、いつもの飯守御大の笑顔が少なかったのはやはり、演奏に悔いが残ったか、あるいは、オケの響がイマイチ抜けていないという不満があったからだろうか。でもホールのことなら何度もここで指揮をしているだろうからやはり演奏に燃焼できなかったのかもしれない。
僕にとっても、これまでで一番がっかりした都響だった。

帰宅後、Youtubeでベト8メヌエットの演奏動画を幾つか確認したが、第一プルト(首席と次席の2人)のみで弾いている動画を1つ発見したが、ほかに確認できたものはいずれもチェロパート全体でこの3連音符を弾いていた。
楽譜を見てもトリオのチェロパートを1人で弾くという指示は見当たらない。すると、もともと、飯守御大のアイデアに無理があったのか。

しかし、先月、飯守+神奈川フィルで同じベト8を聴いたのだけど、その時もメヌエットのトリオ部分を首席1人に弾かせていたはず。それでもアンサンブルの響に何の違和感もないばかりか素晴らしい演奏だった。

この演奏を前提に、都響でも首席独りに弾かせたのかもしれない。
しかし、音響効果の優れたみなとみらいホールと異なって芸術劇場はステージそのものがデッドスポット!なのでうまく響かなかった…のではないかな。

♪2017-036/♪東京芸術劇場大ホール-01

2017年3月8日水曜日

みなとみらいクラシック・マチネ~名手と楽しむヨコハマの午後~金子三勇士ピアノリサイタル

2017-03-08 @みなとみらいホール


金子三勇士:ピアノ

〜オール・リスト・プログラム〜
ハンガリー狂詩曲 第6番 変ニ長調
愛の夢 第3番
ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調
コンソレーション第3番 変二長調
巡礼の年 第2年 イタリアから「ダンテを読んで」
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アンコール
パガニーニによる大練習曲第3番 嬰ト短調「ラ・カンパネッラ」

ハンガリー人の血を引く金子による全リストプロ。
狂詩曲6番、2番など力の籠もった演奏だったが、何より驚いたのはピアノの音が粒立って抜けてゆく事。聴き慣れた会場の同じピアノなのに今日の音は格別。

彼自身、1曲毎マイクを持って解説してくれたが、本篇最終曲を弾く前に「ピアノは弾き込めば弾き込むほど音が良くなり、音量も出るようになります。次の曲ではもう最高潮です!」という趣旨の説明だったが、果たしてそのとおり。

僕が聴いたのは14時からの第2部だったが、この日12時10分からの第1部もあったので、既に良い頃合いになっていたのだろう。また、その幕間にピアノの調整もしたのかもしれない。

ともかくも、今日のみなとみらいホールのスタインウェイの音色の素晴らしさは特筆モノだった。

いつも最高のピアノコンディションで聴きたいものだ。

♪2017-035/♪みなとみらいホール-10

2017年3月7日火曜日

国立劇場開場50周年記念 平成28年度3月上席

2017-03-07 @国立演芸場

林家あんこ⇒転失気
鈴々舎八ゑ馬⇒金明竹
《奇術》花島世津子
柳家三語楼⇒天狗裁き
柳家禽太夫⇒佐野山
春風亭一朝⇒天災
   ―  仲入り  ―
《漫才》すず風にゃん子・金魚
三遊亭歌武蔵⇒後生鰻
《俗曲》柳家小菊
柳家小さん⇒笠碁

今日の寄席はまずまず面白かった。
前座のや林あんこがカワユイ!

花島世津子の奇術はいつもながら巧い。
代役出演の林家禽太夫の相撲の噺が実に巧く今日のピカイチ。
春風亭一朝もまあいつもどおりに巧い。
全身芸の漫才、すず風にゃん子・金魚良し!
俗曲の柳家小菊姐さん色っぽい。

2017-034/♪国立演芸場-04

2017年3月6日月曜日

KAAT竹本駒之助公演第8弾 「一谷嫩軍記〜三段目切『熊谷陣屋』」

2017-03-06 @神奈川芸術劇場


竹本駒之助(たけもと こまのすけ/太夫)
鶴澤津賀寿(つるざわ つがじゅ/ 三味線)

神津武男(こうづ たけお/お話)
早稲田大学演劇博物館 招聘研究員

一谷嫩軍記〜三段目切「熊谷陣屋」

女流義太夫で人間国宝。現在81歳。
素浄瑠璃なので、初心者にはハードルが高かった。
「熊谷陣屋」は歌舞伎では馴染んでいたのでだいたい情景が思い浮かんだが残念ながら名調子も聴き取れない部分が多くて申し訳ない気分だった。

それにしても、KAATの中スタジオは座席が椅子ではなく階段状の席に座布団擬が置いてあるだけなので背もたれがない。これはうっかり船を漕ぐこともできないのは困ったものだ。

♪2017-033/♪神奈川芸術劇場-01

2017年3月4日土曜日

ミューザ川崎ホリデーアフタヌーンコンサート2017前期 ≪小菅優の”現在”を聴く!≫小菅優 ピアノ・リサイタル

2017-03-04 @ミューザ川崎シンフォニーホール


小菅優:ピアノ

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」 作品27-2
ベートーベン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」作品53
武満徹:雨の樹素描Ⅰ、Ⅱ-オリヴィエ・メシアンの追憶に-
リスト:エステ荘の噴水〜巡礼の年第3年から
リスト:バラード第2番
ワーグナー:イゾルデの愛の死
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アンコール
メシアン:8つの前奏曲集第1番「鳩」

旬のピアニストは目下ベートーベン完全制覇中。
という事もあってか彼のソナタ2本(月光・ワルトシュタイン)を大胆にも前半に並べ、後半は武満2本、リスト3本を全く間を空けず弾き切った。満席の観客にも緊張が求められて一種修行空間。

♪2017-032/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-02

2017年3月3日金曜日

ミュージカルアトリエ公演『この森で、天使はバスを降りた~The Spitfire Grill~』

2017-03-03 @洗足学園音楽大学


ミュージカルアトリエ公演『この森で、天使はバスを降りた~The Spitfire Grill~』

■演出・翻訳・訳詞:家田淳(講師)
■音楽・脚本:ジェイムズ・ヴァルク
■歌詞・脚本:フレッド・アレイ
■原作:リー・デイヴィット・ズロートフ
■音楽監督・指揮:篠原真(教授)
■ムーヴメントディレクター・演技アドバイザー:ダイアナ・ボール・石山(准教授)
■照明:町田裕之(PAC)
■美術:松生紘子
■音響:株式会社 タムコ
■舞台監督:堀井基宏(アートクリエイション)
■演奏:洗足学園音楽大学ミュージカルアンサンブル

パーシー:中村実奈都(学3)
ジョー:山川大智(学3)
ハンナ:松本瑞希(学2)
シェルビー:鈴木麻祐理(学2)
ケイレブ:山本隼也(学4)
エフィ:長田珠澄(学2)
ルディ:津覇菜々(学1)
イーライ:廣瀬俊大(学1)


昔観た同名映画が大好きだった。
そのミュージカル版を学生達が上演するというので出掛けた。
人間愛に満ちた物語に終始ジワジワと込み上げるものあり。
若者達が熱心に作り上げる姿にも感動。


♪2017-031/♪洗足学園音楽大学-02