2017年3月26日日曜日

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2017-名手たちによる室内楽の極み 〜モーツァルト、ベートーベン、シューベルト〜

2017-03-26 @東京文化会館


バイオリン:長原幸太*、岡本誠司
ビオラ:鈴木康浩
チェロ:上森祥平*、富岡廉太郎

モーツァルト:バイオリンとビオラのための二重奏曲 第1番 ト長調 K.423*
ベートーベン:弦楽三重奏曲 第3番 ニ長調 Op.9-2*
シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調 D.956

昨年もほぼ同様のメンバーによる演奏会を聴きに行ったが、そのときは、弦楽三重奏のほか、むしろピアノ四重奏がメインに据えられた。昨年のキャッチコピーは「若き名手たちによる室内楽の極み」だったから、1年経って、もう若くなくなったようだ。
確かにこのメンバー、既にオケの(客演)首席クラスなのだから、若手というより中堅だ。

今回は弦楽のみの二重奏、三重奏、五重奏と並べたからには、断章程度でいいから四重奏曲も入れてほしかったな。弦の厚みが増すと音楽がどう変わってゆくのか、興味深かったのに。

モーツァルトは音楽も、編成も軽妙でまあオードブルといったところか。
ベートーベンはピアノ三重奏曲は番号付きだけでも11曲、弦楽四重奏曲は番号付きだけでも16曲作っているのに、弦楽3重奏曲は番号付きが作品3の第1番と作品9の3曲(第2番〜第4番)。ほかに作品8のセレナードのみだ。少ないことより、作品番号があまりに若いのに驚く。20歳代に着手して僅かな作品を残してその後は弦楽三重奏曲には興味を失ったのだろうな。
やはり、弦楽四重奏曲という鉄壁の編成を手に入れたら三重奏には戻れなかったのかもしれない。
今日の第3番はナマでは初聴きだったが、モーツァルト同様あまり重苦しくなく気楽に聴ける作品だった。

最後のシューベルトの五重奏曲はシューベルトにとっても最後の室内楽作品だったようだ。31歳の11月になくなっているが、その年の夏に作曲された。
ハ長調の作品だけど、冒頭は暗い。長調に変わっても長くは続かず感情の起伏が激しい。第2楽章もなんとも物悲しい。3連符の伴奏で煽り立てるような慟哭が続いて、やがて、断末魔の喘ぎのような音楽が続いてご臨終かと思うと第3楽章はリズミカルで荒々しく始まるが、中間部(トリオかな)はまた物静かでさびしい曲調だ。終楽章もけっして明朗ではないけど、ここにきてシューベルトらしさが溢れている。

この五重奏は弦楽四重奏の編成にビオラが加わる形が通例なのになんとチェロを加えて、つまりバイオリン2、ビオラ1、チェロ2という編成だ。低音部が充実しているので、それが第3楽章など元気のいい部分には奏功しているけど、あまり低域で別々の音を重ねると響がモゴモゴしてしまうし、さりとてユニゾンは時に効果的だけど終始だど低域が強調されすぎる。第2楽章の物悲しい場面ではその弊害が出たような気がした。2本のチェロの弾き分けがよく聴こえなかったのが残念だった。

♪2017-47/♪東京文化会館-03