2017-03-09 @東京芸術劇場大ホール
飯守泰次郎:指揮
東京都交響楽団
ベートーベン:序曲「レオーレ」第3番 op.72b
ベートーベン:交響曲第8番ヘ長調 op.93
ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
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アンコール
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
今日の芸術劇場の都響はあれこれ不満があって、全てが都響のせいではないが、イマイチだった。
第1曲目のレオノーレの出だしが飯守御大の呼吸と合っていない。その後もどうも木管とバイオリンが合わず、バイオリンの方が少し遅れて、揃うまでに少し時間がかかった。
アンサンブルの達人みたいな都響にしてはどうも様子がおかしい。
テンポのズレはすぐ修正されたが、どうにも修正できないのが音響だ。
レオノーレにしてもベートーベンの第8番にしても管弦楽がドカーンと大きな音を発して始まるのだけど、その響が固く締まっていない。ボワーンと緩い。
芸術劇場の音響については前からどうも変だと思っていたが、それは席が音源から遠いためかもしれないと留保していた。
それが前回は2階最前列で聴いたが、やはり、スッキリせず、ひょっとしてステージ上の音はステージ上で空回りして客席に飛んでくる割合が低いのではないかと思った。
今回は1階席の10列目の中央という縦横のど真ん中で聴いたが、その疑いはますます濃厚にというか、もはや確信に近いものとなった。
ベートーベンの8番のメヌエットの中程(トリオ)ではホルン、木管、バイオリンと数を増してアンサンブルが厚く変化しながら主題を奏で、これにチェロが3連音符で伴奏をつけるのだけど、今日の飯守御大はこの部分をチェロ首席が1人で弾くように指示した(のだろう。現に汗をかいていたのは独りだけだったから。)。ところが、ここでチェロは完全にメロディー楽器の攻勢に埋もれてしまい、3連符が部分的にしか聴こえてこない。
いくら独りでもかなり奮闘ぶりが見えたからわざわざ聴こえないような小さな音で弾いているはずがない。飯守御大には聴こえている音が10列目に届かないのだ。音は虚空に吸い込まれてゆくが如しであった。
休憩を挟んで、ワーグナー・アワーだ。
こちらは都響も調子が出てきたのか、あるいは御大の得意分野で指示が行き届いていたのか、壮大なワーグナー・ワールドを楽しめた。アンコールは、やっぱり、というべきか。昨夏のミューザ川崎シンフォニーホールでの東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団とのワーグナー中心のコンサートでもアンコールに演奏してくれた華々しい「ローエングリーン」第3幕への前奏曲で盛り上がった。
ただ、やはり、いつもの飯守御大の笑顔が少なかったのはやはり、演奏に悔いが残ったか、あるいは、オケの響がイマイチ抜けていないという不満があったからだろうか。でもホールのことなら何度もここで指揮をしているだろうからやはり演奏に燃焼できなかったのかもしれない。
僕にとっても、これまでで一番がっかりした都響だった。
帰宅後、Youtubeでベト8メヌエットの演奏動画を幾つか確認したが、第一プルト(首席と次席の2人)のみで弾いている動画を1つ発見したが、ほかに確認できたものはいずれもチェロパート全体でこの3連音符を弾いていた。
楽譜を見てもトリオのチェロパートを1人で弾くという指示は見当たらない。すると、もともと、飯守御大のアイデアに無理があったのか。
しかし、先月、飯守+神奈川フィルで同じベト8を聴いたのだけど、その時もメヌエットのトリオ部分を首席1人に弾かせていたはず。それでもアンサンブルの響に何の違和感もないばかりか素晴らしい演奏だった。
この演奏を前提に、都響でも首席独りに弾かせたのかもしれない。
しかし、音響効果の優れたみなとみらいホールと異なって芸術劇場はステージそのものがデッドスポット!なのでうまく響かなかった…のではないかな。
♪2017-036/♪東京芸術劇場大ホール-01