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2022年10月11日火曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 通し狂言「義経千本桜」【Bプロ】三段目

2022-10-11 @国立劇場大劇場


竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言  義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
 国立劇場美術係=美術

三段目
下市村椎の木の場
下市村竹藪小金吾討死の場
下市村釣瓶鮓屋(すし屋)の場


いがみの権太⇒菊之助
主馬小金吾武里⇒萬太郎
猪熊大之進⇒菊市郎
若葉の内侍⇒吉太朗
庄屋作兵衛⇒宇十郎
権太女房小せん⇒吉弥
鮓屋弥左衛門⇒権十郎
弥助実ハ三位中将維盛⇒梅枝
弥左衛門娘お里⇒米吉
弥左衛門女房おくら⇒橘太郎
梶原平三景時⇒又五郎 ほか


「義経千本桜」はそもそも義経は小さな脇役に過ぎないし、三段目に至っては義経のヨノの字も出ない。
ここでの主人公はちょいワルの”いがみの権太”という遊び人だ。

全体は所謂時代物だと思うが、この段だけは世話物風味で完全に浮いている。

が、多分一番面白い。

勿論、権太を演ずるのは菊之助。

一幕物として上演されることが多いのは「鮓屋(すし屋・鮨屋とも)」の場。

今回は”通し”と銘打っているので、前段も上演されたが、「椎の木の場」や「小金吾討死の場」は初めて観た。これが置かれることで「すし屋の場」が立体的になる。

物語は、相も変わらず、首実験や忠義の妻子犠牲だが、ドラマの布石が心憎い。
店先にたくさん並んだすし桶に、
権太は掠め取った金を隠す。
彼を勘当している父は小金吾の首を隠す。

その取り違え?がドラマを急転直下の感動に盛り上げる。

尤も、半世紀もすれば、このような時代錯誤の美意識は世間の批判に屈して観られなくなるかも(オペラも同様)。

菊之助は美形すぎてワルは似合わないように思うが、最近では髪結新三も良かったし、案外コワイ役も面白いかも。

♪2022-148/♪国立劇場-10

2022年10月7日金曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 通し狂言「義経千本桜」【Aプロ】二段目

2022-10-07 @国立劇場大劇場



竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言  義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
 国立劇場美術係=美術

二段目
伏見稲荷鳥居前の場
渡海屋の場
大物浦の場

佐藤忠信実ハ源九郎狐/渡海屋銀平実ハ新中納言知盛
⇒尾上菊之助
武蔵坊弁慶⇒坂東彦三郎
銀平女房お柳実ハ典侍の局⇒中村梅枝
片岡八郎⇒市村竹松
静御前⇒中村米吉
銀平娘お安実ハ安徳帝⇒尾上丑之助
相模五郎⇒市村橘太郎
源義経⇒中村錦之助
 ほか



初代国立劇場さよなら公演。文楽は先月の公演が「〜さよなら公演」だったが、歌舞伎の1番手は今月の「義経千本桜」。二〜三〜四段目を3公演に分けて”通す”。

菊之助が3役を演ずるが、今日の出番は2役。
尤もいずれも”A実はB”なので、事実上4役。
もう今月の国立は菊之助一色だ。

客席は大入りだった。

馴染みの芝居だが、”通し”では初めて。

今日は、舞台が引き締まっていた。
菊之助の初の三役に挑む緊張感が全員に伝わっているのだろう。

彦三郎の大音量と滑舌の良さが心地よい。弁慶がぴったりだった。
静御前の米吉はホンに女性のよう。
丑之助くんも長丁場を立派にお勤め。

♪2022-144/♪国立劇場-09

2021年7月5日月曜日

7月歌舞伎鑑賞教室(第100回 歌舞伎鑑賞教室)

2021-07-05 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた

竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)一幕
  国立劇場美術係=美術

  河連法眼館(かわつらほうげんやかた)の場


●「解説 歌舞伎のみかた」
解説                             
 中村種之助

●『義経千本桜』
佐藤忠信/源九郎狐       中村又五郎
駿河次郎                         中村
松江
亀井六郎                         中村種之助
法眼妻飛鳥                     中村梅花
河連法眼                         嵐橘三郎
源義経                            中村歌昇
静御前                            市川高麗蔵
                                              ほか


そもそも中高生の団体鑑賞の為の公演だが、内容は手抜きなしの本物だ。

好きな席が取りづらいのは止むを得ない。今回は2階の4列目。なのに、単眼鏡を忘れたのは残念。


解説は先月に続いて種之助。巧い。

今回は本編の内容にかなり入り込んだ説明だった 。


「義経千本桜」という長い物語の一場だけを上演するので、先立つ事情などを説明したのは良かった。

「河連法眼館(かわつらほうげんやかた)の場」は何度も観ているが、この芝居の面白さは、早変わりなどの見せ場もあるけど、400歳!の「子狐」の演技で親子の情愛を表現するところで、歌舞伎入門には良いが、さりとて簡単に卒業できる演目でもないなと思う。


♪2021-068/♪国立劇場-05

2020年8月8日土曜日

八月花形歌舞伎 第三部

 2020-08-08 @歌舞伎座


義経千本桜
吉野山(よしのやま)

佐藤忠信実は源九郎狐⇒猿之助
逸見藤太⇒猿弥
静御前⇒七之助


今日はホンに「花形歌舞伎」の看板にふさわしい猿之助・七之助の「義経千本桜-吉野山」。

本来の演題は「道行初音旅(みちゆきはつねのたび)」というそうだ。「道行」は、一般的には道ならぬ恋をした男女の逃避行が多いが、ここでは義経の愛妾「静御前」(七之助)とその家来「佐藤忠信」(本当は狐:猿之助)という主従の道中を描いているのが珍しい。

ほとんど台詞のない舞踊劇だが、特に猿之助の表情がとても雄弁。狐であるからすっぽんから登場。最後も衣装の早変わりで狐の忠信として花道に消えた。

途中に大立ち回りもあって賑やかだ。

筋らしい筋もなく、妙な芝居だけど、型や仕草が満開の桜を背景に華やかだ。

拍手盛大だが、やはりここぞ、というところで「大向こう」の掛け声が欲しい。

世界の演劇に通じている訳ではないけど、「歌舞伎」は舞台と客席が一体となってその相互作用が生み出す芸能として稀有な存在ではないだろうか。

客席側の態度表明が拍手だけ(それもタイミングが難しい。)では寂しいし、芝居が成り立っていないと思う。


帰りに歌舞伎座のお兄さんに「大向こう席」を作るように申し入れをしておいた。
2、3階の上手通路後方に一角を区切って声を掛けたい人たちの専用席を作り、臨席との間はアクリルで仕切れば問題ないはず。真剣に考慮するかな。

♪2020-037/♪歌舞伎座-03

2019年2月26日火曜日

初世尾上辰之助三十三回忌追善 二月大歌舞伎 昼の部

2019-02-26 @歌舞伎座


初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
一 義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)〜すし屋
いがみの権太⇒松緑
弥助実は三位中将維盛⇒菊之助
娘お里⇒梅枝
若葉の内侍⇒新悟
梶原の臣⇒吉之丞
梶原の臣⇒男寅
梶原の臣⇒玉太郎
六代君⇒亀三郎
弥左衛門女房おくら⇒橘太郎
鮓屋弥左衛門⇒團蔵
梶原平三景時⇒芝翫

初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
長谷川 伸 作 / 村上元三 演出
二 暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)
暗闇の丑松⇒菊五郎
丑松女房お米⇒時蔵
浪人潮止当四郎⇒團蔵
料理人作公⇒男女蔵
料理人伝公⇒彦三郎
料理人巳之吉⇒坂東亀蔵
料理人祐次⇒松也
建具職人熊吉⇒萬太郎
建具職人八五郎⇒巳之助
杉屋遣手おくの⇒梅花
湯屋番頭甚太郎⇒橘太郎
お米の母お熊⇒橘三郎
杉屋妓夫三吉⇒片岡亀蔵
岡っ引常松⇒権十郎
四郎兵衛女房お今⇒東蔵
四郎兵衛⇒左團次

三 団子売(だんごうり)
杵造⇒芝翫
お臼⇒孝太郎

「義経千本桜」から「すし屋」の段。
「義経千本桜」は五段続きだそうな。そのうちのいくつかは歌舞伎と文楽で観ていたが、「すし屋」は初めてだった。

凡その筋は知っているものの「すし屋」の前段に当たる「小金吾討死」の話が前に置かれるのかと思ったていたがそうではなく、いきなりの「すし屋」で、少しまごついた。予習しておいてよかったよ。

しかし、権太=松緑、維盛=菊之助の配役は、当代では最適・最好のコンビではなかったか。いずれも初役ということで、多分、厳しい目にはまだ役がこなれていないのだろうが、僕の目には十分楽しめた。この2人で再演を観たいものだ。

「暗闇の丑松」も初見。これは興味深い物語だった。
昭和初期の作品で、新歌舞伎といわれるジャンルだ。
新劇のような凝った構成と演出に唸る。
止むを得ず人を殺め、人混みの中に消えてゆく幕切れは「夏祭浪花鑑」を思わせた。底辺に暮らす無法者となった男や哀れ。

♪2019-023/♪歌舞伎座-01







2018年5月17日木曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年5月公演 第1部「本朝廿四孝」/「義経千本桜」

2018-05-17 @国立劇場


本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
●桔梗原の段
 口 豊竹芳穂太夫/竹澤團吾
 奥 竹本三輪太夫/竹澤團七

●吉田幸助改め五代目吉田玉助襲名披露口上
 桐竹勘十郎・吉田簑助・(吉田幸助改)吉田玉男
 吉田和生・吉田玉男・吉田簑二郎・吉田玉誉・
 吉田玉勢・吉田玉志・吉田玉也・吉田玉輝・吉田玉佳

●景勝下駄の段
 竹本織太夫/鶴澤寛治

<襲名披露狂言>
●勘助住家の段
 前 豊竹呂太夫/鶴澤清介
 後 豊竹呂勢太夫/鶴澤清治

人形役割
 高坂妻唐織⇒吉田簑二郎
 越名妻入江⇒吉田一輔
 慈悲蔵(直江山城之助)⇒吉田玉男
 峰松⇒吉田簑悠
 高坂弾正⇒吉田玉輝
 越名壇上⇒吉田文司
 女房お種⇒吉田和生
 長尾景勝⇒吉田玉也
 横蔵(後に山本勘助)⇒(吉田幸助改)吉田玉男
 勘助の母⇒桐竹勘十郎(勘助住家<前>まで)
     ⇒吉田簑助(勘助住家<後>から) ほか

義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
●道行初音旅
 静御前⇒豊竹咲太夫
 狐忠信⇒竹本織太夫
 竹本津國太夫・竹本南都太夫・豊竹咲寿太夫・
 竹本小住太夫・豊竹亘太夫・竹本碩太夫
 竹本文字太夫
 鶴澤燕三・竹澤宗助・鶴澤清志郎・鶴澤清馗・
 鶴澤清丈・鶴澤友之助・鶴澤清公・鶴澤清胤・
 鶴澤燕二郎

人形役割
 静御前⇒豊松清十郎
 狐忠信⇒桐竹勘十郎

吉田幸助という人形遣いはこれまでも何度か見ているが、顔と名前が一致しない。何しろ、人形使いはほぼ90%?が吉田某で残りの多くが桐竹某で、わずかに豊松という名がある。これは太夫、三味線でも同じ傾向だから姓・名を覚えるのは容易ではない。ついでに言えば、太夫は全員が○○太夫という名前で、かつ、その読み方が「○○だゆう」の場合と「○○たゆう」の場合があるので、ほとんどお手上げだ。

その幸助が五代目*玉助を襲名するというので5月文楽公演の第1部に披露口上が行われ、メインの演目である「本朝廿四孝」のうち「勘助住家の段」で横蔵(後の山本勘助)を遣った。

「本朝廿四孝」は全五段の大作で、今回はその三段目(山本勘助誕生の筋)が演じられた。

どんな話か、あらすじさえ書くこと能わず。
何しろ複雑な伏線が絡み合って、壮大な(武田信玄と上杉謙信)軍記を彷彿とさせる物語だ。

観ているときはそれなりの理解ができるのだけど、徐々に登場人物が多くなり、何某…実はナントカであった、というようなよくある話が一層話を複雑にして、とうとう消化不良のまま終わってしまった。
これは二度三度観なければ合点が行かないだろう。

襲名口上は、桐竹勘十郎、吉田簑助、吉田和生、吉田玉男、吉田蓑次郎など錚々たる布陣だった。
また、襲名狂言では人形を簑助、和生、玉男、勘十郎が、三味線を鶴澤清介、清治が、語りを呂太夫、ロ勢太夫といったベテランが参加して花を添えた。

「義経千本桜〜道行初音旅」は、歌舞伎では当たり前のように観る所作事(舞踊劇)で、これを文楽で観るのは初めてだった。
歌舞伎では(主に)長唄連中が舞台の後ろに大勢並んで踊りの伴奏をするが、文楽でも同様だった。
桜満開の吉野山を描いた背景の前に、前列に三味線が9人、後列に太夫が9人整列した様は見事だ。
人形は静御前(豊松清十郎)と狐忠信(桐竹勘十郎)だけだが、勘十郎は早変わりで忠信と狐を演ずる。

襲名披露とは直接関係のない出し物だけど、見事に美しい華やかな舞台だった。

♪2018-055/♪国立劇場-07

*幸助の父・玉幸は四代目玉助を襲名する前に亡くなったので、今回、四代目が父に追贈され、幸助が五代目を襲名した。

2015年7月27日月曜日

平成27年7月第88回歌舞伎鑑賞教室「義経千本桜」 (平成27年度神奈川県歌舞伎鑑賞教室)

2015-07-27 @県立青少年センター



渡海屋銀平・新中納言知盛⇒ 尾上菊之助
銀平女房お柳・典侍の局⇒ 中村梅枝
九郎判官義経⇒ 中村萬太郎
入江丹蔵⇒ 尾上右近
亀井六郎(尾上菊市郎)⇒ 尾上菊史郎
片岡八郎(尾上菊史郎)⇒
伊勢三郎(市川荒五郎)⇒ 尾上音之助
駿河次郎(尾上音之助)⇒ 市川荒五郎
相模五郎⇒ 坂東亀三郎
武蔵坊弁慶(市川團蔵)⇒ 尾上菊市郎

( )は当初予定された配役。團蔵丈故障のため配役変更

解説 歌舞伎のみかた     
 中村萬太郎                                                    
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
中村吉右衛門=監修
国立劇場美術係=美術

義経千本桜 (よしつねせんぼんざくら)一幕二場 
  渡海屋の場
  大物浦の場



菊之助が鑑賞教室に出演するのが初めてかどうか知らないけどとにかく人気がある。その菊之助が知盛役を初めて演ずるということも今回の鑑賞教室の人気を煽ったようで前人気が高い。おそらく普段は「鑑賞教室」なんて見向きもしなかったコアな歌舞伎ファンも引き寄せたのだろう。
競争率が高い上に予約開始日を間違えて出遅れ、国立劇場でのチケットは入手できなかった。

しかし、7月の鑑賞教室は毎年2日間の神奈川公演があることを今回初めて知って、すぐNET予約にアクセスしてそこそこ良い席を確保できた。

それにしても灯台下暗し。
地元でも歌舞伎鑑賞教室をやっているなんて知らなかったよ(40年ほど前からと聞いてなおびっくり!)。
青少年センターなんて40年前だってもう用はなかったものなあ。

僕が出かけたのは27日の午後の部。つまりこれにて打ち上げという最後の舞台だ。
国立劇場で3日から24日まで、休みなしの1日2公演で44公演。中1日を休んで青少年センターで4公演。計48公演の48番目の芝居を観た訳だ。いまさらでもないけど、演ずる方は大変な重労働だなあ。

しかし、慣れない舞台で演技の間隔も感覚も異なるだろうに、疲れを見せずに熱演してくれたのはまことにありがたい。


さて、知盛を演じた菊之助のセリフ、衣装、立ち居振る舞いが見ものだ。
前半は仮の姿、渡海屋銀平として。後半は幽霊に化けた白装束の~やがて血染めに変わるその変化がまことに歌舞伎らしく、とりわけ、碇を持ち上げ(作り物でもあれほど大きいと重いだろう。)、客席を向いたまま、反っくり返るように海中に没する場面こそクライマックスだが、まことに見事な絵になる。

これまで観てきた菊之助とは別人のような印象を持ったが、良かったのか悪かったのか。
知盛の妻を梅枝が演じてこれもずいぶん評判が高かったが、まあ、そうなのかもしれない。実は、あまり興味を持ってみていなかったので…。

義経は、衣装のせいもあって桃太郎に見えてしようがなかった。
弁慶については後述するように團蔵欠場で拍子抜けの感あり。

ま、歌舞伎の華々しさが見どころの舞台だっただけに、やはり国立劇場の大舞台で観たかった。

弁慶役の團蔵さんが怪我で欠場、これに伴う役者変更は国立劇場での公演が始まる前にアナウンスされていたように思う。
解説本などは刷り上がっているから訂正できず、青少年センターでも会場にその事情が掲示されていた。
手元の解説本に誰がどの役に変わったかというのを書き込んだが、どうも腑に落ちないのは義経の四天王の一人、片岡八郎の役を演ずる役者が埋まらない。

翌日、国立劇場に問い合わせたら、今回は片岡八郎の役をなくして、それに伴い関係する役者のセリフも書き直したのだそうだ。
こんなことってあるのか、とびっくり!
ある意味、貴重な鑑賞経験をさせてもらった。

義経千本桜第二段、三段、四段相関図


♪2015-71/♪県立青少年センター-1