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2020年11月20日金曜日

11月歌舞伎公演第1部

 2020-11-20 @国立劇場

【第一部】
近松門左衛門=作
国立劇場文芸研究会=補綴
平家女護島(へいけにょごのしま)-俊寛-
            国立劇場美術係=美術

序幕 六波羅清盛館の場
二幕目 鬼界ヶ島の場

平相国入道清盛/俊寛僧都   中村吉右衛門
海女千鳥           中村雀右衛門
俊寛妻東屋/丹左衛門尉基康    尾上菊之助
有王丸                         中村歌昇
菊王丸                           中村種之助
平判官康頼                          中村吉之丞
越中次郎兵衛盛次               嵐橘三郎
丹波少将成経                        中村錦之助
瀬尾太郎兼康                        中村又五郎
能登守教経                          中村歌六



所謂「俊寛」〜鬼界ヶ島。

吉右衛門、菊之助、雀右衛門。
役者が揃ったせいか、コロナ隆盛にも関わらず市松満席近い。

考えてみれば鑑賞・観劇は他人と対面する事は少なく、客は無言で咳払いも粗無い。施設はマメに消毒しているようだし、家に居るより安全?

…とでも思っていなきゃ怖くて観に行けない。

この芝居は、鬼界ヶ島に1人残される俊寛の葛藤が見処だが、放免されないと知った際の地団駄踏む子供じみた態度に比べると船を見送る際の無念さは諦観からか存外おとなしい。

歌舞伎・文楽で何度か観ている中で今回は一番静かな俊寛だったが、あの立場で、あの事情で、人はどんな態度を取るものだろうか、考えさせられた。

吉右衛門は長くこの役を演じながら考え抜いて今の形に至ったのだろうが、これは難しい芝居だなと気付かされた。

それが今日の収穫かな。

♪2020-080/♪国立劇場-10

2020年9月16日水曜日

九月大歌舞伎 第三部

 2020-09-16 @歌舞伎座


双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
引窓

濡髪長五郎⇒吉右衛門
南与兵衛後に南方十次兵衛⇒菊之助
平岡丹平⇒歌昇
三原伝造⇒種之助
お早⇒雀右衛門
お幸⇒東蔵

訳あって人を殺めた関取・濡髪(吉右衛門)が密かに再婚した母お幸(東蔵)に会いに来るが、再婚相手の義理の息子十次兵衛(菊之助)は十手持ちだった。

既に人相書きが出回り、覚悟を決めた濡髪をお幸が引窓の縄で縛る。

十次兵衛は濡髪が義母の実子と知って、縄を切る。
折しも生き物を放つ「放生会」の夜だった。

…と縮めればかくの如し。人情話である。

吉右衛門・東蔵という人間国宝2人に雀右衛門、菊之助と人気の美形が揃って見応え十分。

本来はもっと長い話だが、「引窓」だけでも成立している。


♪2020-051/♪歌舞伎座-05

2019年11月11日月曜日

11月歌舞伎公演「孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ)―日向嶋―」

2019-11-11 @国立劇場


西沢一風・田中千柳=作『大仏殿万代石楚』
若竹笛躬・黒蔵主・中邑阿契=作『嬢景清八嶋日記』から
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ) 四幕五場
   ― 日向嶋 (ひゅうがじま) ―
            国立劇場美術係=美術

序   幕 鎌倉大倉御所の場
二幕目 南都東大寺大仏供養の場
三幕目 手越宿花菱屋の場
四幕目 日向嶋浜辺の場
             日向灘海上の場

悪七兵衛景清⇒中村吉右衛門
源頼朝/花菱屋長⇒中村歌六
肝煎左治太夫⇒中村又五郎
仁田四郎忠常⇒中村松江
三保谷四郎国時⇒中村歌昇
里人実ハ天野四郎⇒中村種之助
玉衣姫⇒中村米吉
里人実ハ土屋郡内⇒中村鷹之資
和田左衛門義盛⇒中村吉之丞
俊乗坊重源/花菱屋遣手おたつ⇒嵐橘三郎
梶原平三景時⇒大谷桂三
秩父庄司重忠⇒中村錦之助
景清娘糸滝⇒中村雀右衛門
花菱屋女房おくま⇒中村東蔵
           ほか

9月の文楽「嬢景清八島日記」に前段2幕を加えた歌舞伎版通し。
時代物に世話物がサンドイッチになった構造。
特に終幕・日向嶋は能の様式も取り入れて多彩な見もの。
吉右衛門、歌六、又五郎、雀右衛門、東蔵とうれしい芸達者が揃った。
最近歌昇がいい。

♪2019-174/♪国立劇場-14

2019年9月10日火曜日

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部

2019-09-10 @歌舞伎座


菅原伝授手習鑑
一、寺子屋(てらこや)
松王丸⇒吉右衛門
園生の前⇒福助
千代⇒菊之助
戸浪⇒児太郎
涎くり与太郎⇒鷹之資
菅秀才⇒丑之助
百姓吾作⇒橘三郎
春藤玄蕃⇒又五郎
武部源蔵⇒幸四郎

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう
武蔵坊弁慶⇒幸四郎
源義経⇒孝太郎
亀井六郎⇒坂東亀蔵
片岡八郎⇒萬太郎
駿河次郎⇒千之助
常陸坊海尊⇒錦吾
富樫左衛門⇒錦之助

三世中村歌六 百回忌追善狂言
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
松浦鎮信⇒歌六
大高源吾⇒又五郎
鵜飼左司馬⇒歌昇
江川文太夫⇒種之助
渕部市右衛門⇒鷹之資
里見幾之亟⇒吉之丞
お縫⇒米吉
宝井其角⇒東蔵

今年の秀山祭夜の部は尻尾まで餡の詰まった鯛焼き3枚。大満足。

「寺子屋」は何度目観ても面白い。
今回は、吉右衛門・又五郎・菊之助・幸四郎と見たい役者が揃った。
忠義の為に我が子の首を差し出すという時代錯誤の物語だが不思議と共感してしまうのは無私の精神で徹底的に人に尽くすことの美しさに抵抗できないからだろうな。山本周五郎の掌編「水戸梅譜」に何十回となく読んでいても、新たに読む度泣けてしまうのも同根だ。

今時ありえないような話をありそうに描くのが役者の腕の見せ所。又五郎以下みんな巧いが、吉右衛門は次元が違う大きさを感じさせる。
菊之助の息子、丑之助は團菊祭で初舞台を踏んだ。あいにく彼の出演した夜の部は観なかったので(後日TVで観劇したが)、僕にとっては今日が初見。團菊祭から4ヶ月。6歳になり菅秀才を演じた様子は初舞台で牛若丸を演じた際の子供っぽさとは様変わりで驚いた。

「勧進帳」は弁慶役が奇数・偶数日で仁左衛門と幸四郎が交代。幸四郎は奇数日は富樫を演ずるというハードな舞台をこなしている。幸四郎の弁慶は経験済みなので仁左衛門で観たかったが諸般の事情で偶数日の今日は幸四郎で。富樫は男前の錦之助だ。

義経が孝太郎(最近放映のNHKで昭和天皇。そっくりだったな。)が義経。ちょい老けた義経だけどこれもよし。終盤、弁慶ら部下を謁見する場面などやはり、義経の貫禄を見せる。

3本立ての中でも「松浦の太鼓」がベスト!
歌六・又五郎・東蔵という地味だが達者な役者。米吉が紅一点で華を添える。
忠臣蔵外伝の一種で、これは以前、幸四郎が松浦の殿様を演じたのを観たが、まるで喜劇仕立てだったが、今回は、なかなかしんみりとさせる。

吉良家の隣屋敷に住まいする松浦鎮信(歌六)の赤穂浪士に寄せる思い、本心を明かせず歌に気持ちを託す忠義の大高源吾(又五郎)、二人の俳諧の師である宝井其角(東蔵)、源吾の妹・お縫(米吉…む、かわゆい!)のそれぞれの熱い想いが空回りする前半から、やがて隣家から聞こえてくる山鹿流陣太鼓の連打。
赤穂浪士に助太刀せんと勇みたつ殿様のもとに吉報を知らせにくる大高源吾。すべてのわだかまりが解け、気持ちが結ばれ、喜び合う面々。
おかしくて笑いながらもどっと泣けてきた。

東蔵は、いつもはたいていおばあさん役だ。立ち役(男役)は滅多に観られないが、何をやらしても巧い。人間国宝だものな。
歌六もいい味だ。又五郎も何を演っても巧いな。

3本とも古臭い話なんだけど。でも面白い。


♪2019-136/♪歌舞伎座-04

2018年12月6日木曜日

12月歌舞伎公演 通し狂言「増補双級巴」〜石川五右衛門〜

2018-12-06 @国立劇場


石川五右衛門⇒ 中村吉右衛門
壬生村の次左衛門⇒ 中村歌六
三好修理太夫長慶⇒ 中村又五郎
此下藤吉郎久吉・真柴筑前守久吉⇒尾上菊之助
大名粂川但馬⇒ 中村松江
大名田島主水/早野弥藤次⇒  中村歌昇
足柄金蔵/大名白須賀民部⇒ 中村種之助
次左衛門娘小冬⇒ 中村米吉
大名天野刑部/小鮒の源五郎⇒ 中村吉之丞
大名星合兵部/三二五郎兵衛⇒ 嵐橘三郎
呉羽中納言氏定/大名六角右京⇒ 大谷桂三
足利義輝⇒ 中村錦之助
傾城芙蓉/五右衛門女房おたき⇒ 中村雀右衛門
義輝御台綾の台⇒ 中村東蔵
                                                ほか

三世瀬川如皐=作
国立劇場文芸研究会=補綴
国立劇場美術係=美術

通し狂言 増補双級巴(ぞうほふたつどもえ)四幕九場
    ―石川五右衛門―
         中村吉右衛門宙乗りにて
             つづら抜け相勤め申し候

発   端 芥川の場
序   幕 壬生村次左衛門内の場
二幕目 第一場  大手並木松原の場
            第二場  松並木行列の場
三幕目 第一場  志賀都足利別館奥御殿の場
            第二場  同                     奥庭の場
            第三場  木屋町二階の場
大  詰    第一場  五右衛門隠家の場
            第二場  藤の森明神捕物の場

今月の国立劇場は役者が豪華。
吉右衛門、歌六、又五郎、菊之助、錦之助、雀右衛門、東蔵ら。

石川五右衛門を題材とするいくつかの作品を素材に三世瀬川如皐が取りまとめた作品(1851年初演)を基に、今回、新たに翻案したそうである。
場面によっては、90年(木屋町二階)、70年(壬生村)、50年(五右衛門隠家)ぶりの発掘という。こういうところが国立劇場らしい。

が、<娯楽>に留めず、石川五右衛門の家族を思う人間味を表現しようとした試みが、次ぎ接いだ前後で五右衛門の様子が異なる印象を齎す結果となり、謂わば木に竹接いだ感じになってしまったのは残念。

が、今回の売り物の一つ、「宙乗葛籠抜け」には驚いた。
花道上を大きな葛籠が宙にぶら下がって2階客席前辺りまできたところで、その中から吉右衛門が飛び出すのは、そういう仕掛けがあることは承知していたけど、実際に眼前で起こって、これは驚いた。目の前で見たのだけど、どういう仕掛けになっていたのか、一瞬の出来事なので、分からなかった。

最後は吉右衛門の大立ち回りだ。
これも、形を見せるものだとはいえ、背中が丸くなったような吉右衛門のひたすらスローモーションの立回りに不安を禁じ得なかった。

役の大きさの割に見せ場の少なかった菊之助、娘役がドンピシャの米吉が1幕で姿を消すなど、欲求不満が残ったものである。

♪2018-162/♪国立劇場-016

2018年9月6日木曜日

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部

2018-09-06 @歌舞伎座


  祇園祭礼信仰記
一、金閣寺
此下東吉実は真柴久吉⇒梅玉
雪姫⇒児太郎
狩野之介直信⇒幸四郎
松永鬼藤太⇒坂東亀蔵
此下家臣春川左近⇒橋之助
同   戸田隼人⇒男寅
同   内海三郎⇒福之助
同   山下主水⇒玉太郎
腰元⇒梅花
腰元⇒歌女之丞
十河軍平実は佐藤正清⇒彌十郎
松永大膳⇒松緑
慶寿院尼⇒福助

  萩原雪夫 作
  今井豊茂 補綴
二、鬼揃紅葉狩(おにぞろいもみじがり)
更科の前実は戸隠山の鬼女⇒幸四郎
平維茂⇒錦之助
侍女かえで⇒高麗蔵
侍女ぬるで⇒米吉
侍女かつら⇒児太郎
侍女もみじ⇒宗之助
従者月郎吾⇒隼人
従者雪郎太⇒廣太郎
男山八幡の末社⇒玉太郎 
男山八幡の末社⇒東蔵

  河竹黙阿弥 作
  天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)
三、河内山(こうちやま)
上州屋質見世
松江邸広間
同  書院
同  玄関先
河内山宗俊⇒吉右衛門
松江出雲守⇒幸四郎
宮崎数馬⇒歌昇
大橋伊織⇒種之助
黒沢要⇒隼人
腰元浪路⇒米吉
北村大膳⇒吉之丞 
高木小左衛門⇒又五郎
和泉屋清兵衛⇒歌六
後家おまき⇒魁春

「金閣寺」、「鬼揃紅葉狩」、「河内山」3本立て。それぞれに歌舞伎らしい作品だ。

「金閣寺」では久し振りに大きな役の松緑を楽しんだ。
児太郎が女形の大役「雪姫」に初役で挑んだ。児太郎はこれまで何度も観ていたけど大きな役は無かったので声の具合に着目したことがなかったから、今日の出来が普段どおりなのか喉の具合が悪かったのか判断できないが、少し嗄れるところが気になった。若いお姫様としてはもう少し済んだ声がほしいが。

その「金閣寺」で、5年近い病休から復帰した中村福助の登場では館内がどっと湧いた。

昼の部の吉右衛門の出番は「河内山」だけだが、声がよく通って良かった。七五調での聴かせどころは最後の二幕目第三場「玄関先の場」だが、ここでは大向うから盛んに掛け声が飛んだ。

こういうところは、歌舞伎が役者と観客とで成り立っている芸だなと実感する。

幸四郎は全作に登場し、夜の部にも出ている。そんなに器用に働いて芸が枯渇しないか?

個人的に好感している米吉くん。今日も良かった。

♪2018-105/♪歌舞伎座-05

2018年2月1日木曜日

二月大歌舞伎 昼の部

2018-02-01 @歌舞伎座


一、春駒祝高麗(はるこまいわいのこうらい)
工藤祐経⇒梅玉
曽我五郎⇒芝翫
大磯の虎⇒梅枝
喜瀬川亀鶴⇒梅丸
化粧坂少将⇒米吉
曽我十郎⇒錦之助
小林朝比奈⇒又五郎
     
二、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣/奥殿
一條大蔵長成⇒染五郎改め幸四郎
常盤御前⇒時蔵
お京⇒孝太郎
吉岡鬼次郎⇒松緑
茶亭与市⇒橘三郎
女小姓⇒宗之助
八剣勘解由⇒歌六
鳴瀬⇒秀太郎
     
三、歌舞伎十八番の内 暫(しばらく)
鎌倉権五郎⇒海老蔵
鹿島入道震斎⇒鴈治郎
那須九郎妹照葉⇒孝太郎
成田五郎⇒右團次
小金丸行綱⇒彦三郎
加茂三郎⇒坂東亀蔵
桂の前⇒尾上右近
大江正広⇒廣松
埴生五郎⇒弘太郎
荏原八郎⇒九團次
足柄左衛門⇒男女蔵
東金太郎⇒市蔵
局常盤木⇒齊入
宝木蔵人⇒家橘
加茂次郎⇒友右衛門
清原武衡⇒左團次
     
北條秀司作・演出
四、井伊大老(いいたいろう)
井伊大老⇒吉右衛門
お静の方⇒雀右衛門
昌子の方⇒高麗蔵
宇津木六之丞⇒吉之丞
老女雲の井⇒歌女之丞
仙英禅師⇒歌六
長野主膳⇒梅玉

高麗屋3代同時襲名披露公演の第2弾、と言っても3人が揃うのは夜の部で、これは3等席以下の切符が取れない。2等席といっても1万5千円だ。これなら日生劇場のS席に回したい。
昼は新・幸四郎が一条大蔵卿に出ただけで新・白鸚も新・染五郎も夜の部だけだ。それに夜の部には高麗屋の3人以外に菊五郎、仁左衛門、玉三郎、猿之助、藤十郎などのスターが登場するので、昼のぶとは比べ物にならない豪華さだ。
昼夜の配役の偏りは大いに不満。
それで料金は同じなんだものなあ。
結局、昼の部だけではなく夜の部も観せようという商魂か。
いや、それだけではなく「仮名手本〜七段目」ではお軽勘平を偶数日と奇数日で、玉三郎+仁左衛門と菊之助+海老蔵というダブルキャストにして、よければ二度とも観てくださいという魂胆であるのが腹立たしい。


その高麗屋の貴重な出番「一條大蔵譚」では新・幸四郎の阿呆ぶりはもっとハジけたかった。この芝居は何回か観ているが、誰が演っても無理があって、面白いと感じたことはない。大義のために阿呆なふりをしているが、ここ一番では正気に戻ってかっこよく見せ問題が片付くとまた阿呆に戻るのだが(もう、戻る必要はないのではないか、という気がしてならないのだけど。)、こういう変化はなんかお客を喜ばせるにはとても安易でどうも気分が乗れない。
ま、ここぞというところで、一條大蔵卿が孔雀の羽を広げるように豪華な衣裳を見せて見得を切るというところが、歌舞伎の華々しいところで、これはこれでいいのだろうけど。

「暫」は前に七之助の「女暫」を観たが、本家?は今日が始めて。海老蔵がさすがの貫禄。長い刀を振り回して大勢の首を跳ねるところは「女暫」で経験していたが、面白い。
「井伊大老」はえらく地味な科白劇だが、2幕途中から登場する吉右衞門と雀右衛門のシットリ芸がいい。

♪2018-013/♪歌舞伎座-01

2017年12月11日月曜日

12月歌舞伎公演「今様三番三」、「通し狂言 隅田春妓女容性―御存梅の由兵衛―」

2017-12-11 @国立劇場


●今様三番三(いまようさんばそう)
   大薩摩連中
   長唄囃子連中

並木五瓶=作
国立劇場文芸研究会=補綴
●通し狂言 隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ) 三幕九場
 ―御存梅の由兵衛― (ごぞんじうめのよしべえ)
             国立劇場美術係=美術
序幕  柳島妙見堂の場
    同 橋本座敷の場
    同 入口塀外の場
二幕目 蔵前米屋店先の場
    同 塀外の場
    同 奥座敷の場
    本所大川端の場
大詰  梅堀由兵衛内の場
    同 仕返しの場

中村吉右衛門⇒梅の由兵衛
中村歌六⇒源兵衛堀の源兵衛
中村又五郎⇒土手のどび六実は十平次
尾上菊之助⇒由兵衛女房小梅/丁稚長吉
中村歌昇⇒佐々木小太郎行氏/延紙長五郎
中村種之助⇒結城三郎貞光/芸者小糸
中村米吉⇒米屋娘お君
中村吉之丞⇒医者三里久庵
嵐橘三郎⇒米屋佐次兵衛
大谷桂三⇒曽根伴五郎
中村錦之助⇒金谷金五郎
中村雀右衛門⇒曽我二の宮実は如月姫/額の小三
中村東蔵⇒信楽勘十郎
 ほか

連日の劇場通いで初見演目なのに予習なし。寝不足。折角2階花道寄り最前列を取ったのに集中できず。吉右衛門、雀右衛門、歌六、東蔵、又五郎、菊之助、米吉…みんな好きなのにゴメン!
でも、筋もイマイチだったかもな。39年ぶり上演(=永く上演機会がなかった)にはこういう理由もあるのかも。


♪2017-199/♪国立劇場-19

2017年9月7日木曜日

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部

2017-09-07 @歌舞伎座


一、彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
毛谷村(けやむら)
毛谷村六助⇒染五郎
お園⇒菊之助
杣斧右衛門⇒吉之丞
お幸⇒吉弥
微塵弾正実は京極内匠⇒又五郎

仮名手本忠臣蔵
二、道行旅路の嫁入(みちゆきたびじのよめいり)
戸無瀬⇒藤十郎
小浪⇒壱太郎
奴可内⇒隼人

三、極付 幡随長兵衛(きわめつき ばんずいちょうべえ)
「公平法問諍」
幡随院長兵衛⇒吉右衛門

水野十郎左衛門⇒染五郎
近藤登之助⇒錦之助
子分極楽十三⇒松江
同 雷重五郎⇒亀鶴
同 神田弥吉⇒歌昇
同 小仏小平⇒種之助
御台柏の前⇒米吉
伊予守頼義⇒児太郎
坂田金左衛門⇒吉之丞
慢容上人⇒橘三郎
渡辺綱九郎⇒錦吾
坂田公平/出尻清兵衛⇒又五郎
唐犬権兵衛⇒歌六
長兵衛女房お時⇒魁春

毛谷村も幡随長兵衛も、既に何度も観ているので、どうしても以前の公演との比較で観てしまいがちだ。
菊五郎ー時蔵、仁左衛門ー孝太郎と比べると、今回の染五郎ー菊の助は味わいが乏しい。前2者が人間国宝のベテランであったのに対し、今回はまだ中堅なので、先入観もあるだろうけど、ちょいと軽い気がした。
染五郎の方は、滑稽味もあってそれなりの六助になっているけど、菊之助が硬い。
臼を振り回したり、尺八と火吹き竹を間違うところなど、ここで笑いたいというところでなかなか笑えない。
男勝りからしおらしい世話女房への変化も、何か、型どおりやっていますという感じだったな。

幡随長兵衛は前回が昨年の芝翫襲名だった。
新・芝翫の長兵衛もスッキリとして気持ちよく観れたが、やはり、こちらも吉右衛門の貫禄にはかなわないか。ただ、いつも思うに、子分たちの芝居が平板なので、長兵衛の重い決断がどうも軽く見えてしまう。

吉右衛門は、さすがに序幕で客席から登壇するとにわかに舞台が引き締まる。
ただ、ちょいと年齢的にはキツイ。本物の長兵衛は35、6歳で殺されているらしい。倍以上の歳の長兵衛なら「人は一代、名は末代」などと威勢の良い啖呵を切って殺されにはゆかなかったのではないか。この向こう見ずな意地っ張りぶりに関しては、芝翫の長兵衛が似合っていた。


ところで、序幕で芝居の邪魔をする水野の手勢の相手をして奮闘するのが舞台番の新吉。この役を演じているのが中村吉兵衛という役者で、僕は多分初めて観たと思う。口跡はいいし、顔つきが吉右衛門に良く似ているので、彼の血統かと思って調べたら、門下ではあるけど、他人で、国立劇場の12期研修修了生だそうだ。もう43歳で若いとはいえないけど、ちょっと、見どころのある役者だな、と感じた次第。

染五郎が敵役の水野を演じたが、ここではやはり貫禄負け。

なんか、今年の秀山祭・昼の部はミスキャストが多いな。本人のせいではなくて、文字どおり「配役」で損をしている。

♪2017-145/♪歌舞伎座-05

2017年4月10日月曜日

四月大歌舞伎@歌舞伎座

2017-04-10 @歌舞伎座


近松門左衛門 作
一、傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
土佐将監閑居の場
浮世又平後に土佐又平光起⇒吉右衛門
女房おとく⇒菊之助
狩野雅楽之助⇒又五郎
土佐修理之助⇒錦之助
土佐将監⇒歌六
将監北の方⇒東蔵

二、桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
帯屋
帯屋長右衛門⇒藤十郎
信濃屋娘お半/丁稚長吉⇒壱太郎
義母おとせ⇒吉弥
隠居繁斎⇒寿治郎
弟儀兵衛⇒染五郎
長右衛門女房お絹⇒扇雀

三代猿之助四十八撰の内
三、奴道成寺(やっこどうじょうじ)
白拍子花子実は狂言師左近⇒猿之助
所化⇒尾上右近
同⇒種之助
同⇒米吉
同⇒隼人
同⇒男寅
同⇒龍生(初舞台)

「桂川連理柵」を楽しみにしていたが、結果的には「傾城反魂香」の出来が良くて大いに楽しめた。
絵師又平を演ずる吉右衛門が飄々としておかしい。さりとて軽いのでもなく自然体というのだろうか。演技に筋が通っている様は素人目にも明らかだ。名人というのはこういうのを言うのかと思った。
吃音の又平に代わり女房のおとく(菊之助)が口達者という設定だ。前半は初役のためか、もう少しくだけた明るさがほしいと思ったが、膨大な長台詞を滑舌良くこなして、こちらも巧いものだと感心した。
歌舞伎らしい華やかさは無縁。物語としての面白みにも欠けるが、久しぶりに「芸」を味わう逸品だった。

「桂川連理柵」*は、物語が興味深い。実話に基づくそうだ。あらすじ以下の如し。
帯屋の養子として店を継いだ長右衛門(藤十郎)は、義理の母(吉弥)と義理の弟儀兵衛(染五郎)の悪辣な罠に嵌められる。お金や宝剣の不始末はともかくとして、長右衛門は言い訳できない失敗をした。隣の商家の娘お半(壱太郎)と旅先で情を通じたことがお半から「長さま」に宛てた手紙を盗んだ義理の母子によって追求されることになる。これを賢い女房お絹(扇雀)の機転で「長さま」というのはお半の店の丁稚長吉(壱太郎二役)だと言い、儀兵衛らによって呼び出され詰問される長吉もお絹の目配せや自分の見栄もあって「長さま」はおいらのことだ言い張ることでなんとか切り抜けることはできた。
養父繁斎(寿治郎)もお絹も良くできた人物で、当面の問題は解決できやれやれというところ。
しかし、その夜、お半は密かに寝込んでいた長右衛門を訪ね、死ぬつもりの置き手紙を残して桂川に向かう。それを知った長右衛門も心を決めて後を追う。

芝居としての興味は、85歳の藤十郎が26歳の孫・壱太郎と恋仲を演ずるのが果たしてどんなものか、というところだった。
実話では長右衛門38歳、お半14歳(数え歳!)で、芝居の設定も親子ほど歳が離れているということのようだが、そういう説明があったかどうだか記憶も怪しいが、ともかく、藤十郎と壱太郎が親子どころか祖父と孫という年齢の差が見たとおりなので、非常識なほどの歳の差の男女関係であることには違いない。
そういう男女の機微を藤十郎はお手のものとしても壱太郎にそのお相手が勤まるのだろうかという疑問があった。
ところが、壱太郎は、まずは丁稚の洟垂れ小僧・長吉として登場し、儀兵衛役の染五郎との掛け合いの面白さで、まことに嵌り役だと思わせてくれる。そして愈々終盤に至ってお半として登場すると、洟垂れの悪ガキとのあまりの落差に、これまたピタリと嵌まる。藤十郎との絡みも不自然さはなく、あれれこんなに巧い役者だったのかと認識を新たにした。むしろ、藤十郎の声量が弱々しくて聞き辛かったのが残念だ。

思いのほかと言えば、意地悪い儀兵衛を演じた染五郎のおかしいこと、いや、巧いことにもびっくりだ。上方訛も自然に操っていやはや人気だけでなく実力もあるんだと改めて感じ入ったり。

帰宅後、手持ちのCDで桂枝雀の「胴乱の幸助」を聴く。ああ、この話だったのかと大いに得心した。

「奴道成寺」は、舞台に登場する役者の数は多いが、実質的には猿之助の一人舞台。常磐津、長唄を伴奏にした舞踊劇だ。華やかなものだったが、この面白さを味わうには僕の素養が大いに不足している。

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*オリジナルである人形浄瑠璃(文楽)では全5段構成だが、完全通して演じられるのかどうか不知。歌舞伎では現在ではその最後の「帯屋」の段しか演じられなくなったようだ。なので、宝剣政宗を盗んだ犯人やお半から長右衛門宛の手紙をどうして儀兵衛が入手したのかなどは説明されないし、お半が一夜の契りであったにも関わらず妊娠していることも、なぜ旅先で長右衛門と深い仲になったのかも、長右衛門がお半の後を追って桂川に行く因縁話も説明されない。
全段の話は実に面白く良くできているように思うが「帯屋」だけではその面白さが伝わらないのは実に残念だ。

♪2017-055/♪歌舞伎座-02

2017年3月15日水曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)五幕七場

2017-03-15 @国立劇場


近松半二ほか=作
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)五幕七場

序幕    相州鎌倉 和田行家屋敷の場
二幕目 相州鎌倉 円覚寺方丈の場
      同    門外の場
三幕目 三州藤川 新関の場
      同    裏手竹藪の場
四幕目 三州岡崎 山田幸兵衛住家の場
大詰      伊賀上野 敵討の場 

唐木政右衛門⇒中村吉右衛門
山田幸兵衛⇒中村歌六
佐々木丹右衛門・奴助平⇒中村又五郎
和田志津馬⇒尾上菊之助
近藤野守之助⇒中村歌昇
捕手頭稲垣半七郎・石留武助⇒中村種之助
幸兵衛娘お袖⇒中村米吉
池添孫八⇒中村隼人
沢井城五郎・夜回り時六⇒中村吉之丞
和田行家⇒嵐橘三郎
沢井股五郎⇒中村錦之助
政右衛門女房お谷⇒中村雀右衛門
幸兵衛女房おつや⇒中村東蔵
ほか


2014年末公演の再演。その時に東京では1970年(国立劇場)以来だという「岡崎」の場を核とする芝居に再構成された。吉右衛門らの熱演で、この芝居は読売演劇大賞を歌舞伎として初めて受賞した。今回は若干構成を変えてあるがやはり、「岡崎」をクライマックスとする作りは同じで、しかも、同じ役者による(場面構成の違いによる配役や端役は異なっていると思うが。)、いわば凱旋公演だ。既に新聞などの劇評では一段と磨きがかかったと概ね好評なので観るのが楽しみだった。

場面構成の変更は、前回は第2幕は「大和郡山誉田家城中の場」だったが、これに代わって「相州鎌倉円覚寺方丈の場」、「同 門外の場」が置かれた。これによって話も鎌倉から伊賀への道順になって「道中双六」らしくなった。

見せ場は「岡崎」での愁嘆場だが、大義の為に敢えて妻子を犠牲にする苦悩の吉右衛門とこの上もない悲劇に見舞われる雀右衛門の葛藤が鬼気迫る。

前回も思ったが、吉右衛門が演ずる唐木政右衛門はとんでもない男だ。仇討ちのためにやむを得ないとは言え、まだ乳飲み子の我が子を刺殺し土間に放り投げるなど、これは納得できない。
残酷さを観るより、ギリシャ悲劇のような悲劇性を観て取るべしという高邁な解説も読んだが、乳飲み子の命より大切な仇討ちはなかろう、とつい思ってしまう。

この「岡崎」の場での政右衛門、否、吉右衛門の心中は極度の追い詰められ鬼と化すのだろう。

息子を殺してその直後に政右衛門の師匠が悪党を切り倒したのを見て褒める「まだお手の内は狂いませぬな、ハハハ〜」のセリフはやっぱりおかしい。この辺りを手直ししてはどうかと思うのだけどな。

米吉のお袖は今回も実にカワユイ!面白い。この悲惨な殺戮のドラマの中で一服の清涼剤だ。
菊之助は相変わらず男前で一段と磨きがかかったようだ。


♪2017-040/♪国立劇場-07

2016年11月24日木曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第二部 四幕五場

2016-11-24 @国立劇場


平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)第二部四幕五場
国立劇場美術係=美術


浄瑠璃道行旅路の花聟   清元連中
五段目   山崎街道鉄砲渡しの場
        同二つ玉の場
六段目   与市兵衛内勘平腹切の場
七段目   祇園一力茶屋の場

(主な配役)⇒11/03のノート参照


3日に続いて2度めの鑑賞。筋はすっかり頭に入っているつもりだったけど、やはり1度目には見落としているものがあった。

芝居として重要なのは六段目と七段目だ。
五段目の暗闇の山中で勘平が撃ち殺したのは、おかるの父与市兵衛を惨殺して50両を奪った斧定九郎なので勘平は岳父の仇を討ったことにになるのだが、勘平には誰を猪と誤って撃ったのかが分からなかったことと斧定九郎が与市兵衛から奪った財布を、これで出世の手がかりができたと自分の懐に入れたことが災いしてまことに運悪く、彼が与市兵衛を殺し50両を奪ったと自分でも思い込み、回りからも責め立てられ、ついに自ら腹を切って落とし前をつける羽目に至る。
その直後、彼の無実は明らかになり晴れて討ち入りの連判状に名を連ねてもらうことができたが、時既に遅し。
僅かな手違いが運命の糸を縺れさせ思いもかけない大事に。ここがとてもドラマチックだ。

この勘平を菊五郎(七代目)が演ずるのだが、この一連の芝居には三代目菊五郎の型を基本に五代目菊五郎が完成した「音羽屋型」が踏襲されているそうだ。尤も他の型は観たことがないのでどんなものか分からないけど、まあ、緻密に手順が定められているのだろう。観客はそれを知る必要もないのだけど知ればさらに面白いだろう。

七段目。大星由良之助(吉右衛門)はこの段にしか登場しないが、なんといっても全段を通したらこの役こそ主役だろう。
しかし、七段目だけを観ると、ここで面白いのは遊女になっているおかる(雀右衛門。なお、冒頭の道行と六段目では<おかると勘平>は<菊之助と錦之助>。)とその兄の平右衛門(又五郎)の話だ。

足軽にすぎない平右衛門だが、なんとか討ち入りの仲間に入れてほしいと願い出るものの、敵を欺くために味方も欺いている由良之助には冷たくあしらわれてしまう。
ところが、おかるが由良之助への密書を盗み見したことから由良之助はおかるを身請けしてやろうという話になった。その次第をおかるから聞いた平右衛門はすべてを察し、妹を殺してまでも連判状に加えてもらおうとする。訳が分からないおかるに平右衛門は(六段目で描かれる)父・与市兵衛の死や夫・勘平の自決を説明することで、おかるは絶望し、いっそ兄の手にかかって死のうと覚悟を決める。
このドラマがとても観応えがあり、面白い。

又五郎と雀右衛門のともに涙を絞られるような哀切の芝居は由良之助の存在を食ってしまって七段目の主役のようでさえある。

第1部は武士の世界が描かれたが、第2部では元武士を含む庶民の人情物語だ。「仮名手本忠臣蔵」という大芝居の懐の深さとでも言うか、よくできた物語だと感心する。

♪2016-162/♪国立劇場-08

2016年11月3日木曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第二部 四幕五場

2016-11-03 @国立劇場


平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)第二部四幕五場
国立劇場美術係=美術


浄瑠璃道行旅路の花聟   清元連中
五段目   山崎街道鉄砲渡しの場
      同二つ玉の場
六段目   与市兵衛内勘平腹切の場
七段目   祇園一力茶屋の場

(主な配役)
【道行旅路の花聟】
早野勘平⇒中村錦之助
鷺坂伴内坂⇒東亀三郎
腰元おかる⇒尾上菊之助

【五段目】
早野勘平⇒尾上菊五郎
千崎弥五郎⇒河原崎権十郎
斧定九郎⇒尾上松緑

【六段目】
早野勘平⇒尾上菊五郎
原郷右衛門⇒中村歌六
勘平女房おかる⇒尾上菊之助
千崎弥五郎⇒河原崎権十郎
判人源六⇒市川團蔵
与市兵衛女房おかや⇒中村東蔵
一文字屋お才⇒中村魁春

【七段目】
大星由良之助⇒中村吉右衛門
寺岡平右衛門⇒中村又五郎
赤垣源蔵⇒坂東亀三郎
矢間重太郎⇒坂東亀寿
竹森喜多八⇒中村隼人
鷺坂伴内⇒中村吉之丞
斧九太夫⇒嵐橘三郎
大星力弥⇒中村種之助
遊女おかる⇒中村雀右衛門
ほか

3ヶ月とも初日を取りたかったが、11月の第2部は2日目に観劇することになった。

今回はおかる・勘平の道行に始まって7段目の一力茶屋まで。

忠臣蔵を描いた歌舞伎は、これまでに観た記憶・記録にあるものを並べると「主税と右衛門七」、「弥作の鎌腹」、「忠臣蔵形容画合」、「碁盤太平記」、「東海道四谷怪談」などがあるが、このうち「忠臣蔵形容画合」が「仮名手本忠臣蔵」の大序から7段目までを抜粋してまとめたものなので、少なくとも7段目までの筋は覚えていても良さそうなものなのに全然頭に入っていなかった。

今回は、気合を入れて予習・復習しているから話の展開は非常によく分かった。
芝居の前半は早野勘平の悲劇物語。不自然なほどに作り込まれた筋だが見せ場は多い。

落語の「中村仲蔵」は5段目に登場する斧定九郎を演ずる役者の工夫の物語で、実話だそうだ。今回の舞台では松緑が扮するのだけど、中村仲蔵の工夫によって斧定九郎の役が大きくなったので今や松緑クラスにも配役されるのだろうが、それにしても松緑には役不足ではなかったか。

落語では「4段目」というのもあって、今回通し公演を観ているからこそ、この落語のおかしさが良く分かった。

7段目が第2部の芝居の後半といえる。
「忠臣蔵」には欠かせない一番良く知られた話だ。第1部では由良之助(幸四郎)は4段目のみの登場だったが、第2部も最後の段だけ。しかしこの場だけで1時間50分とかなりの長丁場。
お茶屋遊びに呆けている由良之助(吉右衛門)の真意は何処に在りやと敵も味方も疑いが晴れない。
吉右衛門は国立劇場開場の年(昭和41年)に襲名したそうで、今年は吉右衛門にとっても襲名50年という節目の年だ。
芸については感想を言えるほど通じていないけど、やはりこの人が出てくると大きな舞台に中心ができ緊張感が生まれるのはなるほどなあと思う。

複雑な人間関係と絡み合った人情がやがてほぐれて束になり怒涛の第3部に突入する訳だが、今回の第2部も楽日近い日程で再見する予定なので細部までよく頭に入れて第3部に突入したい。

♪2016-149/♪国立劇場-07

2016年9月5日月曜日

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部

2016-09-05 @歌舞伎座


右田寅彦 作
松岡 亮 補綴
一 碁盤忠信(ごばんただのぶ)
佐藤忠信⇒染五郎
塩梅よしのお勘実は呉羽の内侍⇒菊之助
右平太⇒歌昇
左源次⇒萬太郎
万寿姫⇒新悟
三郎吾⇒隼人
小車の霊⇒児太郎
浮橋⇒宗之助
壬生の小猿⇒桂三
摺針太郎⇒由次郎
宇都宮弾正⇒亀鶴
江間義時⇒松江
番場の忠太⇒亀蔵
横川覚範⇒松緑
小柴入道浄雲⇒歌六

岡村柿紅 作
二 太刀盗人(たちぬすびと)
すっぱの九郎兵衛⇒又五郎
田舎者万兵衛⇒錦之助
従者藤内⇒種之助
目代丁字左衛門⇒彌十郎
 
三 一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣/奥殿/三代目中村吉之丞襲名披露
一條大蔵長成⇒吉右衛門
吉岡鬼次郎⇒菊之助
お京⇒梅枝
八剣勘解由⇒吉之助改め吉之丞
鳴瀬⇒京妙
茶亭与一⇒橘三郎
常盤御前⇒魁春


3作の内前2作は初めてだったが、いずれもよくできていて、それぞれに異なる歌舞伎の味わいを楽しめた。

「碁盤忠信」は「碁盤」が付くからといって忠臣蔵のスピンオフ「碁盤太平記」とは全然関係がない。しかしここに登場する「忠信」は「義経千本桜」の忠信と同一人物らしいが、「義経~」では狐として登場するので、両者の関係は分からない。まあ、別々に歴史上の人物をヒントに面白おかしく作り上げた物語だろうから、首尾一貫していなくとも問題では無いのだろう。

ま、ともかく、やたら碁盤を持って暴れるのだが、その様(荒事)が見どころで、実に歌舞伎の一つの典型を見る思いだ。

染五郎、菊之助、松緑という人気役者が揃うのだけど、あいにく、松緑の出番があまりに少ないのが残念だった。

「太刀盗人」は狂言を移し替えたもので、ほぼ、狂言そのものと言ってよい。
大勢の人で賑わう都に出てきた田舎者の万兵衛(錦之助)が持っていた刀をスリの九郎兵衛(又五郎)が市中の雑踏(…と言っても舞台には2人しか登場しないのも狂言の形を踏襲している。)の中で奪おうとする。盗られまいと刀を離さない万兵衛との間で、口論が始まり、変事を聞いてお役人(彌十郎)が駆けつけ、一体どちらに所有権があるのかの詮議始める。やがて泥棒の方は役人の追及に耐えかねてとうとう逃げ出す。「やるまいぞ、やるまいぞ」と追う役人と万兵衛。まさしく狂言仕立てのおかしさ。

「一條大蔵譚」は4年近く前に国立劇場で同じ吉右衛門の一条大蔵卿(と鬼一法眼の2役)主演で「鬼一法眼三略巻」清盛館・菊畑・檜垣・奥殿の構成で見たことがあり、2年前の秀山祭では菊畑を観ている(この時の鬼一法眼は歌六)が、どうも、話として各段の連携は密でなく(だからこそ、それぞれ独立して上演されるのだろうが)、なかなか頭に入ってこない。
ま、源氏再興のために阿呆のふりをしている一条大蔵卿が、ここぞという場面で正気を表し悪党を成敗するというまあ格好いい話だ。吉右衛門にとっては家の芸だそうで、身のこなし、セリフ回しの使い分けが面白い。
ふりをしている、のは大蔵卿だけではなくその妻常盤御前(魁春)も源氏への思いも忘れ揚げ弓に興じてばかりで、様子を見に来たかつての家来筋に当たる鬼次郎夫婦(菊之助・梅枝)は呆れ果てて弓を取り上げ打擲する始末。実は、これも世を忍ぶ仮の姿という訳でその後に常盤御前の長台詞で真実が明らかにされる。
話の流れは、このことがあってから、大蔵卿の阿呆ぶりも仮の姿であることが明らかになるので(観客は既にこの話の筋書きを知っているから驚きもしないが)、鬼次郎夫婦は大いにびっくりしただろうと、ちょいとおかしくなってしまう。
面白ければなんでもありだ。

♪2016-118/♪歌舞伎座-06