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2024年2月6日火曜日

令和6年2月文楽公演第1部

2024-02-06 @日本青年館ホール



第一部 (12時開演〜14:20)
●二人三番叟 (ににんさんばそう)
  睦太夫・亘太夫・聖太夫/勝平・寛太郎・錦吾・清方

●仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
 山崎街道出合いの段
   小住大夫/清馗 

 二つ玉の段
   希太夫/團七/胡弓:藤之亮

 身売りの段
   織太夫/藤蔵

 早野勘平腹切の段
 切 呂太夫/清介

 人形▶二番叟⇒紋吉
    三番叟⇒玉翔
    -----------------------------
    早野勘平⇒玉助
    千崎弥五郎⇒勘一
    斧定九郎⇒簑紫郎
    女房おかる⇒紋臣
    与市兵衛女房⇒簑二郎
    一文字屋才兵衛⇒簑一郎
    めっぽう弥八⇒玉征
    原郷右衛門⇒文司





昨年12月から文楽公演も漂流しているが、年が改まって初の「国立」文楽は、なんと「青年」の館に爺さん・婆さんたちが集まった次第。

おめでたの「三番叟」に続いて久しぶりの「忠臣蔵」から5段目、6段目の上演。
「二つ玉の段」は落語や最近では芝居でも取り上げられている中村仲蔵が、歌舞伎のこの段で今に伝わる工夫をしたことで有名だが、文楽でもおおよそ踏襲されている。

勘平が暗闇の中、猪と見間違って斧定九郎を撃ち殺し、懐の財布を持ち帰ったが為に狂い出した歯車。
真実は観客のみ知るが、義母も塩谷家中も本人さえも舅を殺して50両を奪ったと思い込み、遂に無念の切腹の悲劇に至る。
この辺の話の運びが、良くできていて、なんて、アナクロだよと思いつつも引き込まれてしまう。

♪2024-022/♪日本青年館ホール-1

2023年2月8日水曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 近松名作集第Ⅰ部 心中天網島

2023-02-08@国立劇場


第一部
(11:00時〜14:32)
近松門左衛門=作
心中天網島 (しんじゅうてんのあみじま)
◎北新地河庄の段
 中 睦太夫/勝平
 切 千歳太夫/富助
◎天満紙屋内の段
 口 希太夫/友之助
 奥 藤太夫/團七
◎大和屋の段
 切 織太夫(咲太夫の代理)/燕三
◎道行名残の橋づくし
 小春  芳穂太夫
 治兵衛 小住太夫
     亘太夫・聖太夫
      /錦糸・寛太郎・清公・清允・清方

************************
人形役割
紀伊國屋小春⇒清十郎
花車⇒紋秀
江戸屋太兵衛⇒玉助
五貫屋善六⇒簑紫郎
粉屋孫右衛門⇒玉也
紙屋治兵衛⇒玉男
女房おさん⇒和生
倅勘太郎⇒勘昇
おさんの母⇒蓑一郎
舅五左衛門⇒玉輝


今月は近松名作集だ。誰の作であれ、一般的に時代物は荒唐無稽なものも少なくないが、世話物はリアルな筋立てで密度が高い。特に近松の心中物は話の歯車が外れない。

今回で3度目だが成程巧くできていると感心できたのは一歩理解が深まったか。

構成や詞章の巧さには感心できても、相変わらず、主人公の紙屋治兵衛には全く共感できない。こんな甲斐性なしの男に惚れた挙句心中する遊女小春にも同情できない。
すると、話の中心は治兵衛の女房おさんにあるな、と今回思い至った。彼女を軸に据えて脳内再構成すると話に求心力が出てきそう。

最終段「道行名残の橋づくし」は、良くできている。
ここへ来て浄瑠璃も太夫4人に三味線5人と大編成になる。
終始暗い舞台で、2人の情死行が渡る橋の名を織り込んだ義太夫節が流れる中、遂に、網島の寺の境内で全うする。少し離れて絶命するのはおさんへの気遣いらしい。
この絵が美しい。

♪2023-024/♪国立劇場-02

2022年12月16日金曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 本朝廿四孝 (ほんちょうにじゅうしこう)

 2022-12-16@国立劇場



本朝廿四孝 (ほんちょうにじゅうしこう)

●二段目
◎信玄館の段

 薫太夫/清允
◎村上義清上使の段
 南都太夫/團吾
◎勝頼切腹の段
 織太夫/燕三
◎信玄物語の段
 藤太夫/宗助

●四段目
◎景勝上使の段

 碩太夫/友之助
◎鉄砲渡しの段
 咲寿太夫/寛太郎
◎十種香の段
 呂勢太夫/藤蔵
◎奥庭狐火の段
 希太夫/清志郎
 ツレ 燕二郎/琴:清方
 アト 聖太夫/清方
◎道三最後の段
 亘太夫/錦吾



人形役割

腰元濡衣⇒一輔
常磐井御前⇒文昇
村上義清⇒玉彦
勝頼実は板垣子息⇒紋臣
板垣兵部⇒亀次
蓑作実は勝頼⇒玉佳
武田信玄⇒文司
長尾謙信⇒玉勢
長尾景勝⇒紋秀
花守関兵衛実は斎藤道三⇒簑紫郎
八重垣姫⇒簑二郎
山本勘助⇒玉輝


●全段構成…今後の参考の為に。

18年5月に「本朝廿四孝」(全五段)のうち、三段目(桔梗原の段、景勝下駄の段、勘助住家の段)を観たが、なかなか複雑な話に付いてゆけなかった。

今回は、二段目(信玄館の段、村上義清上使の段、勝頼切腹の段、信玄物語の段)と四段目(景勝上使の段、鉄砲渡しの段、十種香[じゅしゅこう]の段、奥庭狐火の段、道三最後の段)だ。

これに最初に初段(大序<足利館大広間の段、足利館奥御殿の段>)と最後に五段目が加わって完成形…という訳でもなく四段目には今回省かれた[道行似合の女夫丸]と[和田別所化生屋敷の段]が<景勝上使の段>に先立つ。

なので、18年の公演と今回を合わせても、「全段」というには、抜けが多いのだけど、おそらく、二、三、四段目(のうちの<景勝上使の段>以降)を観れば、「本朝廿四孝」のほぼ全容が理解できる…らしい。

●感想…と言っても、とにかく、筋が頭の中で筋が繋がらない。特に今回は途中の三段目が抜けているので、解説など読みながら怪しい記憶と格闘したが難しい。

ただ、今回30年ぶりに上演されたという「道三最後の段」を観て、この複雑な戦国絵巻の争いの構図がぼんやりとではあるが、分かった。

ミステリー小説のように、重要な設定が最後までお客には隠されているのでアンフェアな感じもするが、それが明かされる大団円でなるほど、全てのエピソードがこうして繋がるのか、と合点した。

まる1日をかけて、あるいは、短い間隔で全段を観ることができたら、作者が仕掛けた壮大な物語を楽しむことができるだろう。

♪2022-194/♪国立劇場-13

2022年9月5日月曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 第二部「寿柱立万歳」、「碁太平記白石噺」浅草雷門の段/新吉原揚屋の段

2022-09-05@国立劇場


第二部
●寿柱立万歳
 
太夫⇒竹本三輪太夫
 才三⇒豊竹希太夫
 ツ ⇒豊竹薫太夫
  レ⇒竹本文字栄太夫
    竹澤團七
    鶴澤寛太郎
    鶴澤燕二郎
    鶴澤清方
************************

人形役割
太夫⇒     吉田玉也
才三⇒       吉田蓑一郎

●碁太平記白石噺 (ごたいへいきしらいしばなし)
浅草雷門の段
口 豊竹亘太夫/竹沢團吾
奥 豊竹咲太夫/鶴澤燕三

新吉原揚屋の段
切 豊竹呂太夫/鶴澤清介

************************

人形役割
豆蔵どじょう⇒ 吉田勘一
大黒屋惣六⇒      桐竹勘壽
悪者観九郎⇒  桐竹紋秀
妹おのぶ⇒   吉田一輔
傾城宮城野⇒  吉田和生


Ⅰ部公演では原作の4、5段が、Ⅱ部では6、7段目が上演された。5段目などは51年ぶりの上演だそうで、道理で初めてのはずだ。

ただ、Ⅰ部は、真面目て働き者の農民に降りかかるこの上もない悲劇の連続が、後半の敵討ちの期待を盛り上げて面白いのだけど、Ⅱ部では、Ⅰ部の登場人物が1人しか登場せず、話が繋がっていることは分かっていても、感情移入ができない。

いよいよ敵討ちに出立する段になっても、時機を待てと止められては観客も納得できん。

こんなことなら、第Ⅲ部も通して決着の付く話に仕立てるべきではなかったか。

♪2022-125/♪国立劇場-08

2022年5月8日日曜日

豊竹咲太夫文化功労者顕彰記念 文楽座命名150年 文楽公演第Ⅲ部

2022-05-08@国立劇場


●桂川連理柵 (かつらがわれんりのしがらみ)
 石部宿屋の段
  竹本三輪太夫・ツレ:豊竹咲寿太夫
 /野澤勝平・鶴澤清允

 六角堂の段
  豊竹希太夫/竹澤團吾

 帯屋の段
前 豊竹呂勢太夫/鶴澤清治
切 豊竹呂太夫/鶴澤清介

 道行朧の桂川
お半       豊竹睦太夫
長右衛門 豊竹芳穂太夫
ツレ       竹本津國太夫・竹本碩太夫・豊竹薫大夫
/竹澤團七・鶴澤友之助・野澤錦吾・鶴澤清方

************************
人形役割
娘お半⇒    豊松清十郎
丁稚長吉⇒      吉田玉佳
帯屋長右衛門⇒吉田玉也
出刃屋九右衛門⇒桐竹亀次
女房お絹⇒  吉田勘彌
弟儀兵衛⇒  吉田玉志
母おとせ⇒  桐竹勘壽
親繁斎⇒   吉田清五郎


「桂川連理柵」(かつらがわれんりのしがらみ)は文楽でも歌舞伎でも数回観ている。これは面白い!

立派な妻・お絹がいるのに、女性にだらしない帯屋の主人・長右衛門(38歳。以下、数え年だと思う)。

旅先で、彼女にしつこく言い寄るのが隣家信濃屋の丁稚の長吉。彼から逃れて長右衛門の部屋にきたのが信濃屋の娘・お半(14歳)。子供ゆえに寝間に入れてやる。それが間違いの元。

長右衛門は帯屋の跡取り養子。帯屋の隠居・繁斎の妻は後妻で連れ子が儀兵衛。繁斎はできた男だが、後妻と儀兵衛は性悪で長右衛門を追い出しにかかっている。

旅先での出来事を盗み見した丁稚長吉も、長右衛門からお半を奪わんとする悪党。

長右衛門は前後左右から濡れ衣を着せられ、悪い事にお半は妊娠。

懸命なお絹の働きにも拘らず八方塞がりの中、先に死を決したお半の後を追って、長右衛門も桂川に。

四段構成だが、これが実に効果的に組み立てられている。
一番面白いのが「帯屋の段」で1時間超だが、長さを感じさせない。前半の儀兵衛と長吉の遣り取りが傑作だ。呂勢大夫の語りが素晴らしい。

この浄瑠璃が作られた当時(1776年初演)、上方では大流行して、「帯屋」の段は「お半長」とも呼ばれて子供でも知っている話となった、と上方落語「胴乱の幸助」に取り入れられていて、こちらも大傑作だ(枝雀が素晴らしい)。

追記:
4月から呂太夫/錣大夫/千歳太夫が切語りに昇格した。同慶也。

♪2022-065/♪国立劇場-04

2021年2月17日水曜日

鶴澤清治文化功労者顕彰記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年3月公演第Ⅱ部

 2021-02-17@国立劇場



曲輪文章 (くるわぶんしょう)*

 吉田屋の段

菅原伝授手習鑑 (すがわらでんじゅてならいかがみ)
 寺入りの段
 寺子屋の段

*「文章」は「文」+「章」の1文字

睦太夫/勝平/錦吾/咲太夫/織太夫/藤太夫/南都太夫/咲寿太夫/燕三/燕二郎
勘次郎/玉彦/勘助/勘壽/紋秀/紋吉/玉男/簑助/清十郎〜
-----------------------------------------------------
希太夫/清馗/呂太夫/清介/藤太夫/清友
清之助/玉翔/清五郎/簑二郎/蓑之/簑太郎/玉也/玉輝/玉助/玉誉〜


2本立て。

最初は「曲輪文章(くるわぶんしょう)」。

正確には「文」と「章」はへんとつくりで1文字で表されるが、そんなフォントはない。

因みに同じ話を歌舞伎では「廓文章」と書く。


なんで無理やり作った文字を使うのか?
調べたら、どうやら験担ぎらしい。
3文字(奇数)にする為のようだ。

そういえば、他の演目は全て字数が奇数だ。

そして、題名にはほとんど仮名を使わないにもかかわらず「冥途の飛脚」などは「冥土飛脚」で良さそうなものだが、それでは偶数なので敢えて「の」を入れて5文字にしている。

偶数は2で割れるので席を割るに繋がり、これを嫌うのだそうだ。



遊女夕霧に入れ込んだ大家の若旦那・伊左衛門は法外な借金を拵えた挙句勘当される。
落ちぶれてなお未練な夕霧に会いに恥を忍んで吉田屋へ。

1年ぶりの再会に夕霧は喜ぶも、伊左衛門は不貞腐れ、拗ねて、甘えて、え〜いあほらしや!

1時間ほどの短い話だが太夫が6人で登場人物を語り分ける様は豪華なこと。



2本目はお馴染み「菅原伝授手習鑑」から「寺入り」、「寺子屋」の段。

本心を偽って敵方に仕えた松王丸とその妻の、これほど残酷なことが他にあろうかという極大悲劇。

息子の亡骸をいろは歌に擬えた名文句で野辺の送り(いろは送り)は何度観ても聴いても、突き刺さる。


♪2021-012/♪国立劇場-01

2019年12月13日金曜日

人形浄瑠璃文楽令和元年12月公演「一谷嫰軍記」

2019-12-13 @国立劇場


一谷嫰軍記(いちのたにふたばぐんき)
 陣門の段
  小次郎⇒咲寿太夫
  平山⇒小住太夫
  熊谷⇒亘太夫
  軍兵⇒碩太夫
  宗助
 須磨浦の段
  希太夫/勝平
 組討の段
  睦太夫/清友
 熊谷桜の段
  芳穂太夫/藤蔵
 熊谷陣屋の段
  前:織太夫/燕三
  後:靖太夫/錦糸

人形役割
 小次郎直家(敦盛)⇒一輔
 平山武者所⇒玉翔
 次郎直実⇒玉助
 玉織姫⇒簑紫郎
 遠見の敦盛⇒簑之
 遠見の熊谷⇒和馬
 妻相模⇒勘彌
 堤軍次⇒玉誉
 藤の局⇒簑二郎
 梶原平次景高⇒紋吉
 石屋弥陀六実は弥平兵衛宗清⇒文司
 源義経⇒玉佳
     ほか

今回の上演は全段ではなくかなり切り詰められているようだ。歌舞伎と駒之助の素浄瑠璃を経験しているがいずれも「熊谷陣屋」しか演らなかったので今回初めて全体の輪郭を理解できた。そして自分の勉強不足に呆れるが、かくも壮大なトリックが仕掛けられているとは!

歌舞伎・文楽の時代物では我が子を犠牲にする話が珍しくはない。菅原伝授手習鑑や伽羅先代萩など。一谷嫰軍記も同様な話だが「熊谷陣屋」だけを観ても、首の入れ替えは既になされているので、違和感が無いのだが、前段の陣門・須磨の浦・組討の段から順に見ていると見事に騙されていたのが分かる。

いや、騙されるのは無理はない。いくらなんでも話に無理がある。
「熊谷陣屋」だけが際立って上演機会が多いのは全段中一番面白いから、という理由だけではなさそうな気がした。
初演は約270年前だそうだが、そんな昔に…よくぞかくも大胆な筋立てを考えたものだ。

Aクリスティの「アクロイド殺人事件」は「一谷嫰軍記」にヒントを得たのでは…いや、さすがにそれはないな。

一方で、これまで「熊谷陣屋」をいかにボーッと観ていたか、恥ずかしくなった。
手元に当代芝翫襲名の際の「熊谷陣屋」のビデオがあるので、年末年始にじっくり観直してみよう。

♪2019-204/♪国立劇場-17

第51回文楽鑑賞教室「平家女護島〜鬼界が島の段」ほか

2019-12-13 @国立劇場


●伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)
 火の見櫓の段
 南都太夫・小住太夫・亘太夫・碩太夫/
 清志郎・清馗・友之助・清公・燕二郎/
 紋臣・簑太郎・亀次・勘助・玉峻ほか

●解説 文楽の魅力
 希太夫/寛太郎/玉誉

●平家女護島(へいけにょごのしま)
 鬼界が島の段
 千歳太夫/富助
 和生・玉勢・勘市・清十郎・玉也・清五郎ほか

文楽で声を発するのは太夫だけだが、鑑賞教室では三味線も人形遣いもそれぞれの分野の解説をしてくれるので、意外な発見があって面白い。
伊達娘恋緋鹿子-火の見櫓の段は、娘お七が櫓に上るところが巧い仕掛けで見ものだ。また、絵としても美しい。

平家女護島-鬼界が島の段も、いつもながらの千歳太夫の熱演。俊寛を遣うのは吉田和生。
鑑賞教室は本来中高生の為の公演だが、出演陣も大物投入で手抜きしないのがうれしい。

♪2019-203/♪国立劇場-16

2019年11月20日水曜日

国立文楽劇場開場35周年記念11月文楽公演 第1部「心中天網島」

2019-11-20 @国立文楽劇場


心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)
 北新地河庄の段
  織太夫/清介
  呂勢太夫/清治
 天満紙屋内の段
  希太夫/清馗
  呂太夫/團七
 大和屋の段
  咲太夫/燕三
 道行名残の橋づくし
  三輪太夫・睦太夫・靖太夫・小住太夫・
  文字栄太夫/ 
  清友・團吾・友之助・清公・清允

 人形役割
  紀伊国屋小春⇒簑二郎
  粉屋(こや)孫右衛門⇒玉助
  紙屋治兵衛⇒勘十郎
  女房おさん⇒清十郎
         ほか

「心中天網島」は9月に東京で観たばかりだが、せっかく大阪に行くのだからこちらも鑑賞。

演者が少し変わった。
東京では小春を和生が遣ったが大阪では河庄の前後半で簑二郎・簑助が勤めた。
太夫・三味線も変わったが河庄奥の呂勢太夫・清治、天満紙屋奥の呂太夫・団七、大和屋切の咲太夫・燕三といった重要な場面は同じ配役だった。

唯一人の切り場語り咲太夫は何度も聴いているけど、この秋、人間国宝に指定されてからは初めてということになる。ますます、ありがたみが増したような…。

甲斐性なしの紙屋治兵衛28歳。
惚れてしまった遊女小春18歳。
いずれも数えだから現代風ではもうちょっと幼い。
巻き込まれた女房おさんこそ大迷惑。

治兵衛らに同情はできないが、その心中場面。
先に殺めた小春から抜き取った真っ赤な帯揚げ?で首を括る治兵衛。
この絵の美しさが哀れを引き立たせる。

咲太夫
♪2019-183/♪国立文楽劇場-4

2019年9月19日木曜日

人形浄瑠璃文楽令和元年09月公演 第1部 心中天網島

2019-09-19 @国立劇場


心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)
 北新地河庄の段
  三輪太夫/清志郎
  呂勢太夫/清治
 天満紙屋内の段
  津国太夫/團吾
  呂太夫/團七
 大和屋の段
  咲太夫/燕三
 道行名残の橋づくし
  芳穂太夫・希太夫・小住太夫・亘太夫・碩太夫/ 
  宗助・清丈・寛太郎・錦吾・燕二郎

 人形役割
  紀伊国屋小春⇒和生
  粉屋(こや)孫右衛門⇒玉男
  紙屋治兵衛⇒勘十郎
  女房おさん⇒勘彌
    ほか

妻子有28歳紙屋治兵衛が曽根崎新地の19歳遊女小春に入れあげ、女房おさんは苦しみつつも亭主の顔を立て、小春もおさんと治兵衛の情の板挟みで身動き取れず。
恋・金・義理・人情が絡んでほぐれずどうにもならぬと落ちてゆくも哀れなり。

「道行名残の橋づくし」の義太夫に乗せて、難波の川端彷徨って遂には網島・大長寺で情死する。治兵衛と小春は身から出た錆とは言えるが、おさんがあまりに可哀想。4時間近い大曲だが救いのない話に悄然と劇場を出る。

♪2019-141/♪国立劇場-11

2019年8月1日木曜日

国立文楽劇場開場35周年記念夏休み文楽特別公演 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第Ⅰ部

2019-08-01 @国立文楽劇場


通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)五段目から七段目まで 
4時間18分(正味3時間33分)

 五段目 山崎街道出合いの段
                      小住大夫・勝平 
     二つ玉の段
       靖太夫・錦糸・燕二郎
 六段目 身売りの段
       咲太夫・燕三
            早野勘平腹切の段
       呂勢太夫・清治
 七段目 祇園一力茶屋の段

       由良助⇒呂太夫
       力弥⇒咲寿太夫
                     十太郎⇒津国太夫
       喜多八⇒文字栄大夫
       弥五郎⇒芳穂太夫
       仲居⇒亘太夫
       おかる⇒津駒太夫
       仲居⇒碩太夫
       一力亭主⇒南都太夫
       伴内⇒希太夫
       九太夫⇒三輪太夫
       平右衛門⇒藤太夫
     前 宗助
     後 清友

人形役割
       
       早野勘平⇒和生
       千崎弥五郎⇒玉勢
       百姓与市兵衛⇒亀次
       斧定九郎⇒玉輝
       女房おかる⇒一輔
       与市兵衛女房⇒簑二郎
       一文字屋才兵衛⇒簑太郎
       原郷右衛門⇒玉也
       斧九大夫⇒勘壽
       鷺坂伴内⇒文司
       矢間十太郎⇒紋吉
       大星由良之助⇒勘十郎
       寺岡平右衛門⇒玉助
       大星力弥⇒玉翔
       遊女おかる⇒簑助

4月公演に続いて第2弾。今回は、五段目から七段目まで。

大序(一段目)から四段目までは、侍たちの四角四面の意地の張り合いのような物語だが、五段目〜六段目は、農家や商家の人々の人情話で、これがなかなか面白い。

五、六段目の主役は早野勘平(萱野三平重実がモデルと言われている。)だ。
彼氏、善良で忠義の男なのだが、ちょいとうっかりミスが多い。ほんのささいな失敗から不運が不運を呼んで、岳父を亡くし、恋女房は遊女に身売りし、挙句、自分は早まって腹を切ることになる。

ここは人間国宝に内定している咲太夫の名調子だったが、なんだか、一段とありがたく聴こえた。

おかるがその身を売られた後に、勘平が切腹をしたので、おかるはその事情を知らずに遊女として祇園「一力」で働いている。

七段目は、全段の中で、一番面白いかもしれない。
「一力」で放蕩を尽くす由良助の元に敵も味方も彼の本心を探りにくる。容易なことで内心を明かさない駆け引きがまずは面白い。

判官(内匠頭)の妻・顔世御前から由良助宛の密書を、ひょんなことからおかるは盗み見してしまう。それを知った由良助はおかるを身請けしてやるという。喜ぶおかるだが、おかるの兄・足軽の平右衛門は、それを聞いて由良助の仇討ちの決意を読み取り、おかるは密書を見た為に殺されるのだと説く。
驚くおかるに、亭主の勘平は切腹し、父親は殺されたことを伝え、「その命、兄にくれ!その命と引き換えに仇討ちの仲間に入れてもらえるよう嘆願する」と切りかかる。もはや、生きる希望を失ったおかるは兄の望みが叶うならと命を差し出すその刹那、陰で聞いていた由良助が平右衛門の覚悟のほどを知り、刀を納めさせ、平右衛門の仇討ち参加を許す。

と、ざっと書いたが、実際はこの段だけで1時間半もある。
いろんなエピソードがあって見どころ、聴きどころ満載。よくぞ、こんな面白い話を作ったものだと思う。

次回公演は11月だ。これで全段完了。また、行かねばなるまい。


♪2019-113/♪国立文楽劇場-2

2019年5月16日木曜日

国立文楽劇場開場35周年記念 人形浄瑠璃文楽05月公演 通し狂言「妹背山婦女庭訓」第1部

2019-05-16 @国立劇場


通し狂言「妹背山婦女庭訓」(いもせやまおんなていきん)

●第一部(午前10時30分開演)
 大   序
  大内の段
   碩太夫・亘太夫・小住太夫・咲寿太夫/
   清允・燕二郎・錦吾・清公
      小松原の段
   芳穂太夫・咲寿太夫・南都太夫・
   文字栄太夫・津国太夫/團吾
      蝦夷子館の段
   口:亘太夫/清公
   奥:三輪太夫/清友

 二段目
  猿沢池の段
   希太夫/友之助
      鹿殺しの段
   碩太夫/錦吾
      掛乞の段
   睦太夫/寛太郎
      万歳の段
   織太夫/清志郎・清允
      芝六忠義の段
   切:咲太夫/燕三

 三段目
  太宰館の段
   靖太夫/錦糸
     
人形▶玉佳・玉勢・紋臣・簑太郎・玉助・簑紫郎
   玉男・文司・清十郎・玉也・勘次郎・
   簑二郎・和馬・勘十郎・ほか

今月は、国立文楽劇場会場35周年の記念であり、令和に改元後最初の公演ということもあってか、日本で初めて元号が定められた「大化の改新」を題材にした超大作が、昼夜2部に及ぶ通し狂言として上演された。
第1部は10時半から。第2部終演は21時という時間割だが、これだけ長いと日を分けて鑑賞するのが普通だと思うが、今月はやたら忙しいので、1日で一挙に観てしまうことにした。もちろん幕間はあるし、1部終演後2部開演までにもお客の入れ替えの時間があるが、入館してしまえば出るまで拘束10時間半だ。
これはかなり体力が必要で、若干、不安もあったが、始まってみると実に面白くて、疲労など全然感じるどころではなかった。

この演目は、初めての鑑賞だ。およその筋書きは頭に入っていたが、まあ、登場人物が多く、最初のうちはなかなか彼らの関係性が飲み込めず、買ったプログラムの「人物相関図」などをチラチラ見ながら、なんとかついてゆくという感じだった。

ややこしいのは人間関係だけではなく、そもそもの筋書きがもう破天荒なのだ。
中大兄皇子(天智天皇)、藤原(中臣)鎌足側と、蘇我蝦夷・入鹿親子側との権力争いが大筋である(こういう狂言を「王代物」というらしい。)が、タイトルからしても違和感があるように、途中では室町か鎌倉の時代物風になったり、さらには江戸時代の世話物の様な話も加わり、元の大筋はだんだんとボケてゆき、まるで違う話が2つ3つ合わさっているようだ。

まあ、面白ければなんでもあり、という文楽・歌舞伎の庶民芸能の面目躍如だ。

第1部では文楽版ロメオとジュリエットとも言える久我之助(こがのすけ)と雛鳥の出会いを描く「小松原の段」、天智帝やその部下が大納言兼秋らが匿われているあばら家に掛け取りに来た商人とのトンチンカンなやりとりを描く「掛乞いの段」、親子の犠牲を描く「芝六忠義の段」が印象的だった。

♪2019-064/♪国立劇場-06

2019年4月9日火曜日

国立文楽劇場開場35周年記念4月文楽公演 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第Ⅰ部

2019-04-09 @国立文楽劇場


国立文楽劇場開場35周年記念4月文楽公演
通し狂言「仮名手本忠臣蔵」(かなでほんちゅうしんぐら)
第Ⅰ部大序から四段目まで 4時間18分(正味3時間43分)

 大序
  鶴が岡兜改めの段
   碩太夫・亘太夫・小住太夫・咲寿太夫/
   清允・燕二郎・錦吾・清公
  恋歌の段
   津国太夫・南都太夫・文字栄太夫/
   團吾

 二段目
  桃井館力弥使者の段
   芳穂太夫/清丈
  本蔵松切の段
   三輪太夫/清友 

 
三段目
  下馬先進物の段
   小住太夫/寛太郎
  腰元おかる文使いの段
   希太夫/清馗
  殿中刃傷の段
   呂勢太夫/清治
  裏門の段
   睦太夫/勝平

  
四段目
   花籠の段
    文字久太夫改め豊竹藤太夫/團七
   塩谷判官切腹の段
    切:咲太夫/燕三
   城明渡しの段
    碩太夫/清允
◎人形
 勘十郎・和生・玉輝・文司・玉佳・簑助・玉男ほか

国立文楽劇場では「仮名手本忠臣蔵」を今年、春夏秋3季に分けて全段通し上演する。
2年半前の国立劇場での全段通しは2部構成1日公演だったが、今回は時間をかける分、国立文楽劇場としては初演となるの場面(桃井館力弥使者の段)の上演など、全段通しにふさわしく細部も忠実に公演するのは、本場大阪の矜持を感じて嬉しい。

Ⅰ部は全11段中大序から四段目・城明け渡しまで。
やはりこの最後の段は特別に厳粛だ。人の死がかくも丁寧・荘重に描かれる芝居は他に例がないのではないか?
主人の無念の切腹を受け、明け渡した城を後にする由良助は万感を胸に秘め、その想いは延々三味線だけで表されるが、最後に太夫が一声大きく「『はつた』と睨んで」と城を振り返る由良助の思いを叫んで幕となる。

心憎い幕切れである。

全体として、この話は、口にできぬ人の思いを阿吽の呼吸や腹で探り、受け止め、あるいは命に変えて伝えんとする、激しい情の交錯が見所だ。そのように受け止める時に、時代を超えて今にも通づる人の情けの美しさが胸を打つのだろう。

この後の段も楽しみだが果たして大阪まで遠征できるか。

余談:たこ焼き屋の隣の劇場はとてもナショナル・シアターとも思えぬ気取りの無さ。この味わいが嬉しいや。


♪2019-045/♪国立文楽劇場-1