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2020年2月12日水曜日

2月中席

2020-02-12 @国立演芸場


落語  金原亭馬太郎⇒出来心
落語    金原亭馬玉也⇒ざるや
漫才  金原亭世之介/古今亭菊春
リレー落語
『お富与三郎』~「木更津見染め」⇒林家正雀
『お富与三郎』~「赤間の仕返し」⇒金原亭馬生

獅子舞  金原亭世之介/古今亭菊春

    ―仲入り―

大喜利 鹿芝居
「与話情浮名横櫛ー源氏店ー」脚本=竹の家すゞめ
切られ与三郎:金原亭馬生
横櫛お富:林家正雀
蝙蝠の安五郎:金原亭世之介
番頭藤八:古今亭菊春
和泉屋多左衛門:金原亭馬生
手代弥吉:金原亭馬治
瓦版売り久蔵:金原亭馬久
瓦版売り太郎:金原亭馬太郎
下女およし:金原亭小駒

特別ゲスト 下男権助:大谷友右衛門

毎年2月中席は恒例の「鹿芝居」。
古典落語を材料にする事が多かったが、今年は歌舞伎の「与話情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし)ー源氏店ー」と本格的。
その為か、歌舞伎界から大谷友右衛門丈をゲストに招いたが、全体としては締まらない。

鹿芝居も19年目?とか言っていたが、下手なほど面白いともいえる芝居だから仕方ないか。

♪2020-020/♪国立演芸場-02

2019年12月4日水曜日

12月歌舞伎公演「近江源氏先陣館―盛綱陣屋―」/「蝙蝠の安さん」

2019-12-04 @国立劇場


①近松半二=作
『近江源氏先陣館』(おうみげんじせんじんやかた)
「盛綱陣屋」(もりつなじんや)一幕
        国立劇場美術係=美術

佐々木三郎兵衛盛綱⇒松本白鸚
高綱妻篝火⇒中村魁春
信楽太郎⇒松本幸四郎
盛綱妻早瀬⇒市川高麗蔵
後室微妙⇒上村吉弥
四天王⇒澤村宗之助
四天王⇒大谷廣太郎
竹下孫八⇒松本錦吾
伊吹藤太⇒市川猿弥
和田兵衛秀盛⇒坂東彌十郎
古郡新左衛門⇒大谷友右衛門
北條時政⇒坂東楽善
                      ほか

②チャールズ・チャップリン生誕130年
チャールズ・チャップリン=原作『街の灯』より
木村錦花=脚色
国立劇場文芸研究会=補綴
大野裕之=脚本考証
大和田文雄=演出
『蝙蝠の安さん』 (こうもりのやすさん)
    国立劇場美術係=美術

蝙蝠の安さん⇒松本幸四郎
花売り娘お花⇒坂東新悟
上総屋新兵衛⇒市川猿弥
井筒屋又三郎⇒大谷廣太郎
海松杭の松さん⇒澤村宗之助
お花の母おさき⇒上村吉弥
大家勘兵衛⇒大谷友右衛門
                                  ほか

高麗屋一門による「近江源氏先陣館―盛綱陣屋―」/「蝙蝠の安さん」。国立にしては珍しい2本立て。
「盛綱陣屋」はいかにも義太夫歌舞伎らしい本格派。
彌十郎がかっこいい。

「蝙蝠の安さん」はチャップリン「街の灯」を翻案した異色作だが、案外と良くできていた。

幸四郎と猿弥のやりとりの場面で、幸四郎のちょび髭が落ちてしまった。慌てる幸四郎に猿弥が「髭なしで何か面白いことをやれ」と囃し立てる。この場面は客席も大笑いだったが、てっきり、そういう演出だと思って観ていたが、実はそうではなく、髭が落ちたのは予期せぬ事故だったが、猿弥も幸四郎もアドリブで乗り切ったのだという。まあ、喜劇だから、どんな失敗が起こっても笑って済ませるからいいが、「盛綱陣屋」で白鸚のカツラが落ちたりしたらどうにも取り繕いもできないだろうな。

♪2019-193/♪国立劇場-15

2018年5月22日火曜日

團菊祭五月大歌舞伎 昼の部

2018-05-22 @歌舞伎座


成田山開基1080年
二世市川團十郎生誕330年
安田蛙文・中田万助 作
奈河彰輔 演出
藤間勘十郎 演出・振付
通し狂言
一、雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)
市川海老蔵五役相勤め申し候
鳴神上人⇒海老蔵
粂寺弾正⇒海老蔵
早雲王子⇒海老蔵
安倍清行⇒海老蔵
不動明王⇒海老蔵


雲の絶間姫⇒菊之助
秦民部⇒彦三郎
文屋豊秀⇒松也
秦秀太郎⇒児太郎
小野春風/矜羯羅童子⇒廣松
錦の前⇒梅丸
八剣数馬/制多迦童子⇒九團次
小原万兵衛実は石原瀬平/黒雲坊⇒市蔵
白雲坊⇒齊入
小松原中納言⇒家橘
関白基経⇒錦之助
八剣玄蕃⇒團蔵
小野春道⇒友右衛門
腰元巻絹⇒雀右衛門

二、女伊達(おんなだて)
女伊達木崎のお光⇒時蔵
男伊達中之島鳴平⇒種之助
同  淀川の千蔵⇒橋之助

「雷神不動北山櫻」は僕にとって初めての演目だった。
全4幕の通し狂言で、そのうちに歌舞伎十八番(市川宗家のお家芸として選定された荒事の演目。)に選ばれている「毛抜・鳴神・不動」の3作を含むというのだから、1作で3度おいしい作品という言える。
尤も、歌舞伎十八番も現代も実際に演じられているのは8作品程度で、残りは今ではほとんど演じられることはないそうだ。内容が伝承されていないので、演るとすれば新作を作り上げるに等しいらしい。
「毛抜・鳴神・不動」も実際に舞台にかかるのはほぼ「毛抜」だけと言ってもよい状態のようだ。

僕も、「毛抜」は数回観たが、「鳴神」も「不動」も観たことはないし、今回の鑑賞で初めてそういう作品があることを知った次第だ。

1人口上から4幕大詰まで海老蔵が5役出ずっぱりで八面六臂の大活躍。外連味たっぷりの見得がこれ程似合うのは海老蔵だけか。
菊之助との絡みも見所。

筋の運びが必ずしも滑らかではないし、長過ぎるような気もするが、歌舞伎の面白さ、楽しさ、美しさをたっぷり詰め込んだ力作だ。

余談だが、「毛抜」が単独で演じられる時は、何故か劇中劇の形をとる。今回も2幕目がそれに当たるが、やはり、この幕だけは、舞台上手と下手に芝居小屋の看板が掲げられ、粂寺弾正が若衆や腰元にちょっかい出しては失敗する度に客席に向かって頭を下げ、「面目次第もござりませぬ」と言い訳するところも今回の「通し」上演でも同じだった。

♪2018-058/♪歌舞伎座-03





2017年6月14日水曜日

平成29年6月歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)」

2017-06-14 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた 中村隼人 
                                 
歌舞伎十八番の内 「毛抜」一幕 小野春道館の場

(主な配役)

粂寺弾正⇒中村錦之助
腰元巻絹⇒片岡孝太郎
八剣玄蕃⇒坂東彦三郎
小野春風⇒尾上右近
八剣数馬⇒大谷廣太郎
秦秀太郎⇒中村隼人
錦の前⇒中村梅丸
小原万兵衛⇒嵐橘三郎
秦民部⇒坂東秀調
小野春道⇒大谷友右衛門
 ほか

中村隼人が女性に人気があるとは知っていたけど、女子高生までにも人気があるとは知らなかった。
その隼人が「歌舞伎のみかた」の解説を努めた。流暢に口が回るがもう少しゆとりが必要。間合いを取らなくちゃ聴いていてもせわしない。

幕が上がると写真撮影禁止は常識だが、今回は撮影タイムが設けられた。スマホで写真を撮って「歌舞伎見たよ」のタグを付けてSNSで発信してくださいという意図だ。良いアイデアで、若い人達に歌舞伎を観ようという気運が出れば良し。

さて、本篇。「毛抜」は前にも観ているので内容は理解しているつもりだったが、今回はプログラムの説明で気がついたのだけど、これが劇中劇という構成だということだ。尤も前回観たのは一番最近でも3年前なので演出には記憶がない。

今回の国立劇場の演出と同じだったかどうか。
ともかく、今回は舞台上に黒い額縁が作ってあり、それが芝居小屋を表している。上手の柱には演目「歌舞伎十八番の内毛抜一幕」、下手には「中村錦之助相勤め申し候」と大書してある。

錦之助演ずる粂寺弾正が若衆や腰元にちょっかい出しては袖にされると「面目次第もござりませぬ」と客席に向かって言い、幕切れのセリフも「〜然らば、お開きといたしましょう」と見得を切って揚幕に消えるのも劇中劇ならではの演出だ。

歌舞伎十八番に入っているだけあって、歌舞伎の多様な見処(弾正の荒事・色気と愛嬌・連続する5つの見得など)が多い。
毛抜が場面に応じて小から大に変化するのも面白い。
筋書きも滑稽味ある推理劇としても楽しめる。

♪2017-101/♪国立劇場-10

2016年10月27日木曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第一部 四幕九場

2016-10-27 @国立劇場


平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)第一部四幕九場
国立劇場美術係=美術

大序   鶴ヶ岡社頭兜改めの場
二段目  桃井館力弥使者の場
       同 松切りの場
三段目   足利館門前の場
            同 松の間刃傷の場
            同 裏門の場
四段目   扇ヶ谷塩冶館花献上の場
            同 判官切腹の場
            同 表門城明渡しの場

(主な配役)⇒10/03のノート参照

初日に観たが、いよいよ第2部の公演も近づいて、復讐と予習を兼ねて千秋楽にも出かけた。

すっかり、頭に入っていたつもりだけど、見逃していた部分などもあって良い勉強になった。

やはり、4段目の判官切腹の場からの緊張感がいい。役者陣も1ヶ月近く演じてきただけに息が合ってきたのだろう。
観ている側の気持ちも、劇中にシンクロしてゆくようだった。
由良之助の幸四郎も、初日に感じたほどにはクセを感じなかった。
初日には足元がふらついた團蔵もシャキッと有終の美を飾った。

第2部が楽しみだ。
第2部も第3部も2回観ることにしている。
めったに観られない全段完全通しを全身全霊で味わいたいものだ。

♪2016-148/♪国立劇場-06

2016年10月3日月曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第一部 四幕九場

2016-10-03 @国立劇場



平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)第一部四幕九場
国立劇場美術係=美術

大序   鶴ヶ岡社頭兜改めの場
二段目  桃井館力弥使者の場
      同 松切りの場
三段目   足利館門前の場
            同 松の間刃傷の場
            同 裏門の場
四段目   扇ヶ谷塩冶館花献上の場
            同 判官切腹の場
            同 表門城明渡しの場

(主な配役)
【大序】
塩冶判官⇒中村梅玉
顔世御前⇒片岡秀太郎
足利直義⇒中村松江
桃井若狭之助⇒中村錦之助
高師直⇒市川左團次

【二段目】
桃井若狭之助⇒中村錦之助
本蔵妻戸無瀬⇒市村萬次郎
大星力弥⇒中村隼人
本蔵娘小浪⇒中村米吉
加古川本蔵⇒市川團蔵

【三段目】
塩冶判官⇒中村梅玉
早野勘平⇒中村扇雀
桃井若狭之助⇒中村錦之助
鷺坂伴内⇒市村橘太郎
腰元おかる⇒市川高麗蔵
加古川本蔵⇒市川團蔵
高師直⇒市川左團次

【四段目】
大星由良之助⇒松本幸四郎
石堂右馬之丞⇒市川左團次
薬師寺次郎左衛門⇒坂東彦三郎
大鷲文吾⇒坂東秀調
赤垣源蔵⇒大谷桂三
織部安兵衛⇒澤村宗之助
千崎弥五郎⇒市村竹松
大星力弥⇒中村隼人
佐藤与茂七⇒市川男寅
矢間重太郎⇒嵐橘三郎
斧九太夫⇒松本錦吾
竹森喜多八⇒澤村由次郎
原郷右衛門⇒大谷友右衛門
顔世御前⇒片岡秀太郎
塩冶判官⇒中村梅玉
ほか


今年は国立劇場会場50周年ということで記念の大型企画が各分野で並んだが、中でも、「仮名手本忠臣蔵」の3ヶ月連続公演による全段完全通し上演というのが画期的らしい。

全段通し上演と称した公演は度々行われているようだが、国立劇場が昭和61年に開場20周年記念で今回と同じく10月~12月の3回に分けて上演したものは本物の「完全通し上演」だそうだが、他の「全段通し」は実際にはいくつかの場面が省略されているらしい。

50周年記念の今回も、上演可能な場面はすべて網羅するという「完全通し上演」だと言うから、今回を逃したら次の機会に生きている保障はないかも…と思って、「あぜくら会」会員向けの3公演セット券を迷わず買った。歌舞伎鑑賞はたいてい3階席だが、今回は特別席と1等A席しかセット販売されないので1等Aを選んだ。

人形浄瑠璃からの移行作品の全段完全通しなので、一段目は「大序」と呼ばれるそうだが、この「大序」の前には定式幕の前に文楽人形が出てきて配役を紹介する。これを「口上人形」という。滑稽な表情とセリフがおかしく、かしこまった作品かと思っていたが楽しく出鼻をくじかれた。

口上が終わって幕が開くと鶴岡八幡宮の場面だが、ここでも役者たちは目を伏せうなだれたまま微動だにしない。そしてどこからか役者の名前を告げる声がしてそれに応じて一人ずつ精気を得たように「人形」から「人間」に生まれ変わる。

こういう演出はいずれも、原典の人形浄瑠璃に敬意を表するものだそうだ。

物語は、映画やテレビドラマなどでよく知っている「忠臣蔵」とはかなり異なるので驚きの連続。
しかし、省かれた場面がないので物語の連続性は分かりやすい。
なるほど、これが本物の「仮名手本忠臣蔵」なのか。

人形浄瑠璃として1748年に初演され、同年末には早くも歌舞伎に移行されて以来、270年近い歴史の中で、上演すれば必ずそれなりのヒットが見込まれたそうで、もはや日本人のDNAに刷り込まれているのかもしれない。

塩冶判官を演ずる梅玉はいつもながら渋い。
4段目になってようやく登場する由良之助の幸四郎は、やや、芝居が大仰ではないかと思うけど如何にもの幸四郎節で、やはり舞台の求心力は大きい。
左団次が演ずる加古川本蔵という登場人物のことは知らなかった。これまで映画やTVドラマなどではこの人に相当する人物は出てこなかったように思う。そもそも本蔵が仕える桃井若狭之介(錦之助)という殿様の存在も知らなかったが、どうやら、本蔵の存在が全段の物語の中で大きな役割を占めることになりそうだ。

「大序」も伝統に則った珍しい演出だったが、4段目切腹の場も古来「通さん場」と呼ばれ、お客の出入りを禁じたそうで、国立劇場でも踏襲された。

こんなところにも、格調を感じさせる大芝居だ。
この壮大な物語があと2回も続くというのはとてもワクワクする。


♪2016-132/♪国立劇場-05

2015年12月8日火曜日

12月歌舞伎公演「東海道四谷怪談」

2015-12-08 @国立劇場


松本幸四郎⇒民谷伊右衛門/石堂右馬之丞
中村錦之助⇒小汐田又之丞
市川染五郎⇒お岩/小仏小平/佐藤与茂七/大星由良之助/鶴屋南北
市川高麗蔵⇒赤垣伝蔵
中村松江⇒矢間十太郎
坂東新悟⇒お岩妹お袖/千崎弥五郎
大谷廣太郎⇒秋山長兵衛/大鷲文吾
中村米吉⇒喜兵衛孫娘お梅/大星力弥
中村隼人⇒奥田庄三郎/竹森喜多八
澤村宗之助⇒関口官蔵/織部安兵衛
松本錦吾⇒四谷左門
大谷桂三⇒薬売り藤八/金子屋庄七
片岡亀蔵⇒按摩宅悦/高家家来小林平内
市村萬次郎⇒伊右衛門母お熊
坂東彌十郎⇒直助権兵衛/仏孫兵衛
大谷友右衛門⇒伊藤喜兵衛/原郷右衛門
      ほか

四世鶴屋南北=作
通し狂言「東海道四谷怪談」とうかいどうよつやかいだん 三幕十場
          国立劇場美術係=美術


序幕   浅草観世音額堂の場
     浅草田圃地蔵前の場
     同     裏田圃の場

二幕目 雑司ヶ谷四谷町民谷伊右衛門浪宅の場
    伊藤喜兵衛宅の場
    元の伊右衛門浪宅の場 

大詰  砂村隠亡堀の場
    小汐田又之丞隠れ家の場
    蛇山庵室の場
    仇討の場


予備知識として、四谷怪談の物語の背景に忠臣蔵が同時に描かれているということは知っていたが、これはどうやら奇抜なアイデアではないらしい。
歌舞伎初演時から四谷怪談と忠臣蔵が、形は別の演目として独立しているものの、物語は同時進行的に描かれていたようだし、民谷伊右衛門が浅野家の浪士であるという設定は「四谷怪談」が単独上演されるようになって追加されたものではなく当初からのものらしい。

これまで「四谷怪談」は映画などでしばしば観ているが、伊右衛門が浅野家浪士だったとは気が付かなかったというか、果たしてそのように描かれていたのだろうか。

ま、ともかく、作者鶴屋南北は「四谷怪談」を「仮名手本忠臣蔵」の外伝として描いたそうだ。

そもそも歌舞伎で「四谷怪談」を観るのが初めてなので(国立劇場としても44年ぶりの上演らしい。)、「四谷怪談」と「忠臣蔵」を抱き合わせにするとはなんて斬新なアイデアだと思っていたが、その萌芽は初演時からあった訳だ。

人気の出し物を2本併せてた物語が組み立てられているせいか、全三幕十一場の場面を必要とするほどに話が複雑で、ついて行くのに苦労した。
普段は、役者の役どころや演目の筋をさらっておいてから出かけるのだけど、今回は忙しくて時間のゆとりがなかったことに加え、どうせ、両方とも話は分かっている、と甘く見ていたのが大間違いで、大筋はともかく、それを彩る、いや絡みつくというか、いろいろと細かい話が盛り沢山。それに最初に出た何気ないエピソードや小物が後の場になってつながってくるという筋立て上の仕掛けもあって、これは相当目配り・気配りしながら観ないと全体を楽しむことはできない。

塩冶家(⇒浅野家)の家臣小汐田又之丞(錦之助)が冒頭、高家(⇒吉良家)の家臣らにさんざ打擲されて歩けなくなるというエピソードなど、忘れてしまうような話だが、大詰め第二場で、民谷家家宝の薬ソウキセイ(桑寄生)が意味を明らかにし、これを持ってきた小仏小平(染五郎)とともに討ち入りにつながってくるのだからぼんやりしてられない。
いや、ぼんやりしていた部分はほかにあったのだけど思い出せないだけだ。



中盤は伊右衛門(幸四郎)とお岩(染五郎)の話が中心になるが、上述の小汐田又之丞隠れ家の場が踏み台になって舞台は一挙に討ち入りに変化する。

既に真っ白な雪が積もったところに惜しげも無く雪が舞い降りてそこでの戦闘シーンはきれいだ。途中、あれは誰と誰の戦いだったか、2人の上にドカ雪が落ちてきてもう互いに顔も見えない中での斬り合いが意表を突いて面白かった。

幸四郎の伊右衛門はコワイ。
だからとても良い。

染五郎は別としてほかにも良い味を感じた役者が何人かいた。
坂東彌十郎(直助権兵衛/仏孫兵衛)が存在感があった。
米吉(お梅/大星力弥)はお梅で存在感希薄。力弥では颯爽たる立ち回りが絵になっていた。
錦之助(小汐田又之丞)は冒頭の情けない場面と随分間があって「小汐田又之丞隠れ家の場」でタイトルロール?として登場するが、ここではさすがにかっこ良く、次の場面への期待を持たせるきっぱりとした芝居だ。


さて、染五郎。

お岩、小仏小平、佐藤与茂七、大星由良之助のほかに、冒頭、鶴屋南北としてすっぽんから登場して(幽霊なので)本公演の趣旨を述べ、又之丞打擲の芝居が終わると再度せり上がってきて、未来の役者、市川染五郎なるものが熱心に上演許可を求めてきたので許可した、ゆっくりご覧あれ…といったような口上を述べてセリ下がる。館内は笑いに包まれる。
そんな訳で計5役を勤めるのだ。
その中には、お岩と小平のような早変わりもある。
お岩の顔貌の早変わり?もある。
燃える提灯からの飛び出しって、昔からそういう仕掛けがあったのだろうか。
宙乗りもあってもう大奮闘だ。

最後に本懐を遂げた由良之助で終わるので、カタルシスがある。

まあ、とにかく、筋の仕掛け、舞台の仕掛けも複雑で盛り沢山だが、2、3度観なければ全貌を堪能するには至らないように思った。

もう一度、おさらいをしにゆくかな。


♪2015-122/♪国立劇場-06

2014年10月20日月曜日

10月歌舞伎公演「通し狂言 双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」

2014-10-20 @国立劇場大劇場


松本 幸四郎
中村 東   蔵
中村 芝   雀
市川 高麗蔵
松本 錦   吾
大谷 廣太郎
大谷 廣   松
澤村 宗之助
中村 松   江
市川 染五郎
大谷 友右衛門
中村 魁   春
        ほか

竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき) 四幕五場       
        
   序   幕  新清水の場
   二幕目  堀江角力小屋の場
   三幕目  大宝寺町米屋の場
         難波芝居裏殺しの場        
   四幕目 八幡の里引窓の場


8月、9月に(国立劇場では)歌舞伎公演がなかったので、久しぶりの国立劇場だ。
歌舞伎座の華やかさも悪くないけど、国立劇場はロビーもホワイエも客席もゆったりとしていい。なんたって安価なのが一番いいけど、今月からプログラム代が900円に値上がりしていたなあ。
これとて歌舞伎座の筋書きに比べるとずっと安い。

今月は「通し狂言 双蝶々曲輪日記」で、幸四郎が半世紀ぶりに主人公濡髪を演じたり、染五郎が3役に扮するなどの見どころが前評判。
初めて鑑賞する演目だし、こういう話があるということも知らなかった。それならしっかり予習しておけばよかったけど、その時間もなくて、幕間に筋書きを読みながらの鑑賞だった。

この作品に限ったことではないけど、通し狂言となると、長丁場だし登場人物も多く、なかなか役柄も筋書きも頭に入らない。

プログラムには人物関係図が書いてあったが、これに加えて演じている役者も覚えようとすると並大抵ではない。
せっかくの熱演を目一杯楽しむには、せいぜい劇場に足を運んで目や耳を養わなくてはいかんなあ。


●序幕では、染五郎の(与五郎を助ける与兵衛)二役早替わりが面白く宙乗りも出たのにはびっくりした。

●2幕目の堀江角力小屋の場は面白い趣向だ。
舞台上手に掘建小屋のような角力小屋が作ってあるが、土俵は見えない。見物人が出入り口で押し合いへし合いの中、相撲見物に興じている。
その様子だけで勝負の有様を表現している。

この場面から主人公というべき関取濡髪長五郎(幸四郎)と因縁の仲となる素人力士放駒長吉(染五郎の3役目)が登場する。「双蝶々」というタイトルは、この両者がともに「長」が付く名前であることに由来しているそうだが、ちょいと無理がありゃしませぬか。

ともかく、なぜか結びの一番で二人が勝負をし、大番狂わせが起こる。それを端緒に二人は達引(意地の張り合い。それによる喧嘩)を約束することに。

●3幕目は放駒長吉の実家、米屋の場だ。
弟長吉の日頃の不行跡に業を煮やした姉おせき(魁春)が一策を案じて改心させる。達引に訪れた濡髪長五郎とも仲直りするが、その前には一波乱あり、両者の米俵を投げ合う喧嘩などがおかしくて見ものだ。

濡髪にとって贔屓筋の息子である与五郎と与五郎の恋仲である吾妻(高麗蔵)の身に危険が迫ったことを知り、救出に向かうが、誤って二人の武士を殺してしまい、落ち延びることになる。

●4幕目八幡の里引窓の場。
芝居としてはここが一番面白かった。
南与兵衛の住まいに、濡髪が忍んで来る。
実は(歌舞伎には「実は」が多い!)その家の主の継母お幸(東蔵)は濡髪の実母であった。
いずれ入牢することとなる前に一目実母に会いに来たのだ。
お幸はワケありげな様子の濡髪を2階の部屋に連れて行く。

同じ日、皮肉なことに与兵衛は、めでたく父の跡を継いで代官に取り立てられ、その初仕事が濡髪を捕らえることだった。

お幸はその話を聞いて驚愕する。
先妻の子(与兵衛)が実の子(濡髪)を捕らえるとなっては、居ても立っても居られない。
2階には濡髪が引窓を開けて下の様子を窺う。
それが手水鉢の水面に映ったのを与兵衛も見逃さない。
この緊張の三角関係の中で、母、実子、継子が互いを想う真情が交錯してとてもドラマチックだ。
時は恰も石清水八幡の放生会(魚や鳥を放す儀式)の前夜、というのが良い設定で、得心の大団円を迎えて満足。

♪2014-95/♪国立劇場-05