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2021年11月25日木曜日

国立劇場開場55周年記念 令和3年度(第76回)文化庁芸術祭協賛公演 11月歌舞伎公演『一谷嫰軍記』

2021-11-25 @国立劇場



並木宗輔=作
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)  二幕
国立劇場美術係=美術

序   幕    御影浜浜辺の場
二幕目    生田森熊谷陣屋の場


熊谷次郎直実     中村芝翫
源義経        中村錦之助
梶原平次景高     中村松江
経盛室藤の方     中村児太郎
堤軍次        中村橋之助
亀井六郎       市村竹松
片岡八郎       市川男寅
伊勢三郎       中村玉太郎
駿河次郎       中村吉之丞
庄屋孫右衛門     中村寿治郎
番場の忠太      中村亀鶴
熊谷妻相模      片岡孝太郎
白毫の弥陀六          中村鴈治郎
 実ハ弥平兵衛宗清

ほか


今回は、初日に観劇して、今日千穐楽に再見した。

初日に面白かった、というか、よくできた芝居だなと思ったことと、中心となる「熊谷陣屋」の演じ方の、多分、珍しい方である「芝翫型」は当分観る機会がないだろうからと思い、もう一度観る機会を窺っていた。


N響定期を振り替えたので、ちょうどこれが歌舞伎の楽日と重なって観賞効率が良くなった。


型を重んずる芸の世界なので、アドリブらしき台詞も初日と同じだったのが笑えたが、おそらく、この3週間で磨きがかかったのだろう。


問題は、初日同様入りが悪い。

こんな調子で芝翫型が廃れたのでは寂しい。


♪2021-138/♪国立劇場-10

2021年11月2日火曜日

国立劇場開場55周年記念 令和3年度(第76回)文化庁芸術祭協賛公演 11月歌舞伎公演『一谷嫰軍記』

2021-11-02 @国立劇場


並木宗輔=作
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)  二幕
国立劇場美術係=美術

序   幕    御影浜浜辺の場
二幕目    生田森熊谷陣屋の場


熊谷次郎直実     中村芝翫
源義経        中村錦之助
梶原平次景高     中村松江
経盛室藤の方     中村児太郎
堤軍次        中村橋之助
亀井六郎       市村竹松
片岡八郎       市川男寅
伊勢三郎       中村玉太郎
駿河次郎       中村吉之丞
庄屋孫右衛門     中村寿治郎
番場の忠太      中村亀鶴
熊谷妻相模      片岡孝太郎
白毫の弥陀六         中村鴈治郎
 実ハ弥平兵衛宗清
ほか



初日観賞。
この演目の完成形を知らない。
『一谷嫰軍記( いちのたにふたばぐんき)』と言っても、一谷の合戦は描かれない(文楽版では全五段版を見たが、戦に出かけるところから演じられるのでこの芝居の隠された面白さが明らかになる。)。

多くの場合、戦が終わってからの「熊谷陣屋」だけ、それも冒頭部分がカットされて演じられるのが通例だ。

その「陣屋」の演じ方には芝翫型と團十郎型があるそうな。
いずれも何度も観ているが表札の扱いなどは違いが分かるが、細かい点まで覚えていないので大した違いではないと思う…。

芝翫型を正しく受け継ぐのが中村芝翫だ。
2016年の襲名披露興行でも演じた。
これも観たが、5年経過してうんと良くなったような気がする。分かり易い。それだけ観ている方も入魂できる。

●一つには「陣屋」の前に「御影浜」の場が置かれ、弥陀六<鴈治郎>が陣屋に登場する経緯などが明確になったこと。

●「陣屋」の冒頭に敦盛の母・藤の方<児太郎>が訪ねてきて直実の妻・相模<孝太郎>に匿われるという経緯が置かれる。
襲名披露版ではそこが省かれていたからお客にはなぜ藤の方がいきなり懐剣を持って奥の部屋から出てくるのかが分からなかった。
…と細かい工夫がなされて、成程納得。目から鱗。

芝翫は熱演!児太郎はこれまで随分観ているけど、今回の藤の方はとても良かった。
弥陀六の鴈治郎も強かさを秘め軽さもありで面白い。
一番感心したのは相模を演じた孝太郎だ。
この芝居の主人公は相模かもしれないなと思いながら観入った。
「敦盛」の首を抱えて悲痛な母の思いが胸を打つ。

これまでに観た「熊谷陣屋」の中では一番”筋”が通っていたこともあり、とても楽しめた。

しかし、残念なことに、初日だというのに客席はガラガラだった。


♪2021-123/♪国立劇場-09

2019年6月20日木曜日

令和元年6月 第95回歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」

2019-06-20 @国立劇場


福内鬼外=作
神霊矢口渡 (しんれいやぐちのわたし) 一幕
    国立劇場美術係=美術
       頓兵衛住家の場

(主な配役)
渡し守頓兵衛⇒中村鴈治郎
娘お舟⇒      中村壱太郎
船頭八助⇒     中村寿治郎
傾城うてな⇒ 上村吉太朗
新田義峰⇒     中村虎之介
下男六蔵⇒     中村亀鶴
        ほか

2回目なので「歌舞伎のみかた」は省略して本篇から参入…というか、本当は緊張感なく、寝坊して間に合わなかっただけ。


注目は終盤の壱太郎の「人形振り」だ。
前回、この演出に唸ったが「振り」は改善の余地ありと見て10日間の精進ぶりを観察。
ま、それなりの進歩あり。
最後の櫓の場面では人形から人間に戻るが、狭い所で黒衣と3人では無理なのだろう。

「人形振り」では当然目玉を開けたまま動かさない。観ながら僕も瞬きを我慢してみたがとても続かない。何気ない処でも訓練・精進だなあ。

人形を遣う黒衣役の演技に不満が残ったがこれはやむを得ないか。

それにしても、今回の芝居で壱太郎は歌舞伎役者として確実に一ステージ高みに登ったと思う。鑑賞教室、侮るべからず。


♪2019-085/♪国立劇場-09

2019年6月10日月曜日

令和元年6月 第95回歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」

2019-06-10 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた  中村虎之介

福内鬼外=作
神霊矢口渡 (しんれいやぐちのわたし) 一幕
    国立劇場美術係=美術
       頓兵衛住家の場

(主な配役)
渡し守頓兵衛⇒中村鴈治郎
娘お舟⇒     中村壱太郎
船頭八助⇒    中村寿治郎
傾城うてな⇒ 上村吉太朗
新田義峰⇒    中村虎之介
下男六蔵⇒    中村亀鶴
        ほか

通し狂言としても観たことがあるが、全幕中で一番の見所が大詰「頓兵衛住家の場」だろう。今回は鑑賞教室ということもあってこの幕だけが上演された。

前回は頓兵衛を歌六、お船を雀右衛門(当時:芝雀)が演じて素晴らしく印象に深く残っていたが、今回は鴈治郎に壱太郎という実の親子の共演だ。

近年成長著しい壱太郎がどこまで一途な<お船>の純情と命がけの想いを見せてくれるのかが楽しみだった。

が、終盤の見せ場〜
お船が一目惚れした新田義峰を追っ手から逃してやるために、義峰の身代わりとなって、欲深かな実の親・頓兵衛に刺され、打擲され、ボロボロになっても這いつくばって櫓に上がり、鐘を突いて追っ手の囲みを解こうとする〜
を「人形振り」で見せるという演出に本当にびっくり。

人形になりきった壱太郎には2人の黒衣(くろご)が付き、当然表情を変えない。着物の袖からほんの少し顔を出す白塗りの揃えた手指は本物の人形のように可愛らしい…

のだが、不思議なことにむしろ観ている側の感情は激しく揺さぶられた。

この人形振りにはまだ、研究の余地があるとは見たが、雀右衛門のお船とは別趣の悲劇性が高められ、思わず見入ったものである。
楽日は予定があってゆけないが、少し手前にもう一度観にゆくべくチケットを買った。あと10日余りでどれほど腕を上げているか、楽しみだ。

♪2019-078/♪国立劇場-08

2019年4月23日火曜日

四月大歌舞伎 昼の部

2019-04-23 @歌舞伎座


今井豊茂 作
藤間勘十郎 演出・振付
一 平成代名残絵巻(おさまるみよなごりのえまき)
常盤御前⇒福助
藤原基房⇒権十郎
  平宗盛⇒男女蔵
  平知盛⇒巳之助
平徳子⇒壱太郎
  遮那王⇒児太郎
  左源太⇒男寅
平重衡⇒吉之丞
右源太⇒竹松
平時子⇒笑三郎
建春門院滋子⇒笑也
鎌田正近⇒市蔵
平宗清⇒彌十郎

二 新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)
座摩社/野崎村
〈座摩社〉
油屋娘お染⇒雀右衛門
丁稚久松⇒錦之助
弥忠太⇒家橘
勘六⇒寿治郎
山伏法印⇒松之助
山家屋佐四郎⇒門之助
手代小助⇒又五郎
〈野崎村〉
久作娘お光⇒時蔵
油屋娘お染⇒雀右衛門
丁稚久松⇒錦之助
手代小助⇒又五郎
百姓久作⇒歌六
後家お常⇒秀太郎

坂田藤十郎米寿記念
三 寿栄藤末廣(さかえことほぐふじのすえひろ )鶴亀
女帝⇒藤十郎
亀⇒猿之助 
従者⇒歌昇
従者⇒壱太郎
従者⇒種之助
従者⇒米吉
従者⇒児太郎
従者⇒亀鶴
鶴⇒鴈治郎

四世鶴屋南北 作
四 御存 鈴ヶ森 (ごぞんじすずがもり)
白井権八⇒菊五郎
東海の勘蔵⇒左團次
飛脚早助⇒又五郎
北海の熊六⇒楽善

短いのが4本。

1本目の「平成代名残絵巻(おさまるみよなごりのえまき)」は平成から令和への代替わりを、
3本目の「寿栄藤末廣(さかえことほぐふじのすえひろ )」はその名前が掛けてある坂田藤十郎米寿を、
それぞれ祝う長唄舞。

いずれも華麗な衣装や舞台装置などで賑やかに寿いだ。
藤十郎はほとんど舞うこともなく、形を決めるだけ。まあ、それでも存在感があるのは大したもの…かな。
お大事にしてくださいよ、と言いたくなる。

「新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)」は、お染<雀右衛門>、久松<錦之助>、お光<時蔵>。
何れも悪くないが、今月の登場する役者の中で言えば、せめて猿之助、できれば米吉、児太郎、壱太郎等の世代でこの芝居を観たい。雀右衛門らのベテラン勢ではそろそろこの芝居は感情移入が難しくなってきた。

最後は「御存 鈴ヶ森 (ごぞんじすずがもり」。
滅法強い白井権八<菊五郎>と男伊達の幡随院長兵衛<吉右衛門>の出逢いを描く。
人間国宝2人の絡みと言っても多分に様式がかった演出で丁々発止の緊迫感は無い。
もう派手には動けない菊五郎<権八>の立回りが長過ぎだ。

歌舞伎役者も働き方改革しないと芸を消耗するよ。

♪2019-052/♪歌舞伎座-02

2018年3月3日土曜日

三月歌舞伎公演「増補忠臣蔵」/「梅雨小袖昔八丈」

2018-03-03 @国立劇場

●『増補忠臣蔵』


桃井若狭之助⇒中村鴈治郎
三千歳姫⇒中村梅枝
井浪伴左衛門⇒市村橘太郎
加古川本蔵⇒片岡亀蔵
        ほか

●『梅雨小袖昔八丈』


髪結新三⇒尾上菊之助
下剃勝奴⇒中村萬太郎
白子屋手代忠七⇒中村梅枝
白子屋娘お熊⇒中村梅丸
白子屋後家お常⇒市村萬次郎
紙屋丁稚長松⇒寺嶋和史
家主女房お角⇒市村橘太郎
家主長兵衛⇒片岡亀蔵
加賀屋藤兵衛⇒河原崎権十郎
弥太五郎源七⇒市川團蔵
         ほか

明治150年記念

一、増補忠臣蔵(ぞうほちゅうしんぐら)一幕二場
 ―本蔵下屋敷―(ほんぞうしもやしき)
     国立劇場美術係=美術
  
  第一場 加古川家下屋敷茶の間の場
  第二場 同        奥書院の場

河竹黙阿弥=作
尾上菊五郎=監修
二、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)三幕六場
 ―髪結新三―(かみゆいしんざ)
     国立劇場美術係=美術
  
  序幕  白子屋見世先の場
      永代橋川端の場
  二幕目 富吉町新三内の場
          家主長兵衛内の場
        元の新三内の場
  大詰    深川閻魔堂橋の場

国立の歌舞伎は通し狂言が多いが、昨年の秋に続いて今回は2本立てだった。
最初の「増補忠臣蔵」は僕には初モノだが、「仮名手本忠臣蔵」
の九段目(山科閑居)の前日譚だとは承知していたので楽しみだった。ここで主人公は加古川本蔵が仕える桃井若狭之助であるが、筋立てからは本蔵の方が重い役にも思える。「仮名手本〜」全体を通じても重要なキーパーソンであり、なかなか魅力的な人物だ。

「増補」と付いているのは、「仮名手本〜」の話の一部を膨らませたという意味だが、出来たのが明治の始め頃らしい。最初は人形浄瑠璃で、明治30年が歌舞伎版の初演。初代鴈治郎が桃井若狭之助を演じ、二代目も三代目(現・藤十郎)も得意とし、歴代鴈治郎が演じてきたが、当代の鴈治郎としては今回初役であり、先代までは東京では演じてこなかったので、東京での公演は65年ぶりなのだそうだ。

1幕2場で公演時間もちょうど1時間というこじんまりした作品だ。登場人物も少なく筋も簡単で分かりやすい。

ほとんど、若狭之助(鴈治郎)と本蔵(片岡亀蔵)の主従のやりとりで、若狭之助に見送られて虚無僧姿で出立するところでこの芝居は終わるが、忠臣蔵の物語としてはこの後に九段目が続くと思うと、なかなかその別れも味わい深いものがある。

今日は初日だったせいか、竹本と2人のセリフに少しズレというほどでもないけどぴったり感のない箇所があったような気がした。

また、これは本質的なことだけど、鴈治郎の芝居と亀蔵の芝居がそもそもタイプが違うというか、木に竹継いだようで、うまく噛み合っていなかったように思う。

2本めがいわゆる「髪結新三」だ。菊之助初役。
この人は美形過ぎてヤクザな新三には不似合いだと思っていたが、なかなかどうして、ほとんど違和感がなかった。
ただ、最初の方で忠七(梅枝)の髪を整えるところの仕草はちっとも髪結いには見えなかったな。誰だったか、現・芝翫だったか、松緑だったか思い出せないが、多分ふたりとも今日の菊之助より髪結いらしかったな。

まあ、こちらの腕も徐々に上がるだろう。
家主長兵衛とのやり取りなど、とてもおかしい。初役はひとまずは成功だと思う。

この長兵衛を片岡亀蔵が演じていて、ここではまことに嵌り役だ。この人は軽めの(こってりしない)芝居が合っているのではないか。

梅丸は既に何度か観て娘役として実にかわいらしいのでとても男が演じているとは思えない。

♪2018-026/♪国立劇場-005

2018年2月1日木曜日

二月大歌舞伎 昼の部

2018-02-01 @歌舞伎座


一、春駒祝高麗(はるこまいわいのこうらい)
工藤祐経⇒梅玉
曽我五郎⇒芝翫
大磯の虎⇒梅枝
喜瀬川亀鶴⇒梅丸
化粧坂少将⇒米吉
曽我十郎⇒錦之助
小林朝比奈⇒又五郎
     
二、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣/奥殿
一條大蔵長成⇒染五郎改め幸四郎
常盤御前⇒時蔵
お京⇒孝太郎
吉岡鬼次郎⇒松緑
茶亭与市⇒橘三郎
女小姓⇒宗之助
八剣勘解由⇒歌六
鳴瀬⇒秀太郎
     
三、歌舞伎十八番の内 暫(しばらく)
鎌倉権五郎⇒海老蔵
鹿島入道震斎⇒鴈治郎
那須九郎妹照葉⇒孝太郎
成田五郎⇒右團次
小金丸行綱⇒彦三郎
加茂三郎⇒坂東亀蔵
桂の前⇒尾上右近
大江正広⇒廣松
埴生五郎⇒弘太郎
荏原八郎⇒九團次
足柄左衛門⇒男女蔵
東金太郎⇒市蔵
局常盤木⇒齊入
宝木蔵人⇒家橘
加茂次郎⇒友右衛門
清原武衡⇒左團次
     
北條秀司作・演出
四、井伊大老(いいたいろう)
井伊大老⇒吉右衛門
お静の方⇒雀右衛門
昌子の方⇒高麗蔵
宇津木六之丞⇒吉之丞
老女雲の井⇒歌女之丞
仙英禅師⇒歌六
長野主膳⇒梅玉

高麗屋3代同時襲名披露公演の第2弾、と言っても3人が揃うのは夜の部で、これは3等席以下の切符が取れない。2等席といっても1万5千円だ。これなら日生劇場のS席に回したい。
昼は新・幸四郎が一条大蔵卿に出ただけで新・白鸚も新・染五郎も夜の部だけだ。それに夜の部には高麗屋の3人以外に菊五郎、仁左衛門、玉三郎、猿之助、藤十郎などのスターが登場するので、昼のぶとは比べ物にならない豪華さだ。
昼夜の配役の偏りは大いに不満。
それで料金は同じなんだものなあ。
結局、昼の部だけではなく夜の部も観せようという商魂か。
いや、それだけではなく「仮名手本〜七段目」ではお軽勘平を偶数日と奇数日で、玉三郎+仁左衛門と菊之助+海老蔵というダブルキャストにして、よければ二度とも観てくださいという魂胆であるのが腹立たしい。


その高麗屋の貴重な出番「一條大蔵譚」では新・幸四郎の阿呆ぶりはもっとハジけたかった。この芝居は何回か観ているが、誰が演っても無理があって、面白いと感じたことはない。大義のために阿呆なふりをしているが、ここ一番では正気に戻ってかっこよく見せ問題が片付くとまた阿呆に戻るのだが(もう、戻る必要はないのではないか、という気がしてならないのだけど。)、こういう変化はなんかお客を喜ばせるにはとても安易でどうも気分が乗れない。
ま、ここぞというところで、一條大蔵卿が孔雀の羽を広げるように豪華な衣裳を見せて見得を切るというところが、歌舞伎の華々しいところで、これはこれでいいのだろうけど。

「暫」は前に七之助の「女暫」を観たが、本家?は今日が始めて。海老蔵がさすがの貫禄。長い刀を振り回して大勢の首を跳ねるところは「女暫」で経験していたが、面白い。
「井伊大老」はえらく地味な科白劇だが、2幕途中から登場する吉右衞門と雀右衛門のシットリ芸がいい。

♪2018-013/♪歌舞伎座-01

2017年2月16日木曜日

江戸歌舞伎三百九十年 猿若祭二月大歌舞伎

2017-02-16 @歌舞伎座


田中青滋 作
一、猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)
猿若⇒勘九郎
出雲の阿国⇒七之助
若衆⇒宗之助
若衆⇒児太郎
若衆⇒橋之助
若衆⇒福之助
若衆⇒吉之丞
若衆⇒鶴松
福富屋女房ふく⇒萬次郎
奉行板倉勝重⇒彌十郎
福富屋万兵衛⇒鴈治郎
  
初代桜田治助 作
  戸部銀作 補綴
二、大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)
「黒髪」長唄連中
正木幸左衛門実は源頼朝⇒松緑
地獄谷の清左衛門実は文覚上人/北条時政⇒勘九郎
おます実は政子の前⇒七之助
清滝⇒児太郎
熊谷直実⇒竹松
畠山重忠⇒廣太郎
佐々木高綱⇒男寅
三浦義澄⇒福之助
下男六助⇒亀寿
家主弥次兵衛⇒團蔵
女房おふじ実は辰姫⇒時蔵
  
河竹黙阿弥 作
三、四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)
四谷見附より牢内言渡しまで
野州無宿富蔵⇒菊五郎
女房おさよ⇒時蔵
伊丹屋徳太郎⇒錦之助
浅草無宿才次郎⇒松緑
寺島無宿長太郎⇒菊之助
黒川隼人⇒松江
頭⇒亀三郎
三番役⇒亀寿
下谷無宿九郎蔵⇒萬太郎
ぐでんの伝次⇒橘太郎
下金屋銀兵衛⇒松之助
穴の隠居⇒由次郎
数見役⇒権十郎
石出帯刀⇒秀調
生馬の眼八⇒團蔵
隅の隠居⇒歌六
うどん屋六兵衛⇒東蔵
浜田左内⇒彦三郎
牢名主松島奥五郎⇒左團次
藤岡藤十郎⇒梅玉
    
四、扇獅子(おうぎじし)
鳶頭⇒梅玉
芸者⇒雀右衛門

1★★★…いわば、江戸歌舞伎の発祥を祝う長唄に乗せた所作事(舞踊)中心。華やかでいい。

2★★…この幕は寝てよし。

3★★★…これは菊五郎と梅玉が双方いい味出すのだけど、世話物として物足りない。牢屋の仕組みを知らなかった当時の普通の生活者にとって、このリアルさに惹きこまれたのかもしれないけど。

4★★★…清元による所作事。鏡獅子ならぬ扇獅子。四季の移り変わりを愛でる舞踊。梅玉と雀右衛門。ここでの雀右衛門はいいと思った。

勘九郎、七之助はいい。優れたDNAを受け継いでいると思う。
菊之助、松緑は出番少なし。

♪2017-024/♪歌舞伎座-01

2015年10月5日月曜日

10月歌舞伎公演「通し狂言 伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」

2015-10-05 @国立劇場


中村梅玉⇒福岡貢
中村東蔵⇒貢の叔母おみね
中村鴈治郎⇒料理人喜助/正直正太夫
中村松江⇒油屋お鹿
中村亀鶴⇒奴林平
中村壱太郎⇒油屋お紺
中村寿治郎⇒銅脈の金兵衛
松本錦吾⇒猿田彦太夫
大谷桂三⇒徳島岩次(藍玉屋北六)
澤村由次郎⇒徳島岩次(藍玉屋北六)
市川高麗蔵⇒今田万次郎
大谷友右衛門⇒藤浪左膳
中村魁春⇒仲居万野
中村梅丸⇒油屋抱えお岸
ほか

近松徳三=作
通し狂言「伊勢音頭恋寝刃」(いせおんどこいのねたば)
 三幕八場
 国立劇場美術係=美術
       
序幕
第一場 伊勢街道相の山の場 
第二場 妙見町宿場の場
第三場 野道追駆けの場
第四場 野原地蔵前の場
第五場 二見ヶ浦の場

二幕目 御師福岡孫太夫内太々講の場

大詰
第一場 古市油屋店先の場
第二場 同 奥庭の場


国立劇場がこの作品を取り上げるのは開場以来初めてだそうだ。
他の劇場でも大詰めの二場が単独で度々演じられるそうだが、二幕目の太々講(だいだいこう)の場は歌舞伎座で演じられて以来53年ぶりになるという。

つまり、これまでは各場がバラバラに上演されてきたが、これを通し狂言として演ずるのは初めてということだ。
こういうのは国立劇場でしかできない仕事だ。

阿波国のお家騒動が下地にあって、将軍家に献上する予定の名刀「青江下坂(あおえしもさか)」が行方知れず、恋人の裏切り(実は…の展開)や妖刀の殺気に翻弄される大量殺人などが描かれる。

芝居全体の主役は梅玉演ずる福岡貢という伊勢神宮の御師であるが、陰惨な大詰めの前に置かれる太々講の場はむしろ喜劇で、ここでは正直正太夫を演ずる鴈治郎が実におかしい。

油屋(遊郭)店先の場では、貢がすったもんだの末に青江下坂は手にしたもののその折紙(鑑定書)を手に入れようと腐心するが、これを仲居の万野(魁春)が邪魔をする。愛人お紺(壱太郎)にも仔細あって邪険にされる。遊郭の決まりだと言われて、手に入れた刀を帳場に預けることになるが、敵方が刀を入れ替えてしまうなどのふんだり蹴ったりだ。

面目を失った貢が油屋を出た後、刀が入れ違っていると気づき油屋に戻るが、そこで、こちらも偽物の刀を掴まされたと思って貢の刀を取り返そうとする万野を貢が誤って斬りつけ、それが契機となって、万野の仲間(敵方)の連中をメッタ斬りにしたのは名刀青江下坂の妖気の故か。

お紺が折紙を手に貢のもとに駆けつけたことから、我に返った貢は自分がしたことの重大さにおののき腹を切ろうとするが、そこに料理人喜助(鴈治郎)が現れ、刀は自分が最終的に入れ替えておいた本物であることを告げ、めでたしめでたし。


まあ、大略こういう筋だ。
最後の最後にフラ~っと出てきた敵方の小物を貢が切り捨てた際に、喜助が「下坂の切れ味見事!」と声を掛けてお終いになったと思うが、これは人道的にひどい作劇だなあ、と思ったよ。

まあ、そういう残酷な殺戮シーンもあるが、滑稽な場面もあって、通し狂言の長丁場を退屈させない。


梅玉という役者が歌舞伎界でどういう位置を占めるのかよく分からない。
これまでに観た「双蝶々曲輪日記」の南与兵衛や「傾城反魂香」の又平も主役なのだろうが、今回が一番大きな役だったと思う。
それにしては地味な役者だ。渋いというべきかもしれないが、どうも彼の持ち味をどう受け止めて良いのかよく分からなかった。

正直正太夫という滑稽味と料理人喜助、実は貢の家来筋という2役で、この芝居のおいしいところをさらったのは鴈治郎ではなかったか。


♪2015-97/♪国立劇場-04

2015年4月10日金曜日

松竹創業120周年 中村翫雀改め 四代目中村鴈治郎襲名披露 四月大歌舞伎

2015-04-10 @歌舞伎座


●玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記(ごばんたいへいき)
山科閑居の場

大石内蔵助     扇雀
岡平
 実は高村逸平太  染五郎
大石主税      壱太郎
医者玄伯      寿治郎
空念
 実は武林唯七   亀鶴
妻およし      孝太郎
母千寿       東蔵

●六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)
〈遍照〉
僧正遍照      左團次
小野小町      魁春

〈文屋〉
文屋康秀      仁左衛門

〈業平小町〉
在原業平      梅玉
小野小町      魁春

〈喜撰〉
喜撰法師      菊五郎
祇園のお梶     芝雀
所化        團蔵
同         萬次郎
同         権十郎
同         松江
同         歌昇
同         竹松
同         廣太郎

〈黒主〉
大伴黒主      吉右衛門
小野小町      魁春

●玩辞楼十二曲の内 廓文章(くるわぶんしょう)吉田屋
劇中にて襲名口上申し上げ候

藤屋伊左衛門   翫雀改め鴈治郎
吉田屋喜左衛門  幸四郎
若い者松吉    又五郎
藤屋番頭藤助   歌六
おきさ        秀太郎
扇屋夕霧       藤十郎


「碁盤太平記」という演目があることは知っていたけど、これが所謂「忠臣蔵」の話とは知らなかった。大筋はこれまでにさんざ、映画、テレビなどで観てきたエピソードと同じだ。

大石内蔵助(扇雀)が吉良側を欺くために、遊興放蕩し、ついには、これを諌める妻(孝太郎)を離縁し、呆れる母(東蔵)からは勘当されてまでも、腹の中を隠し通そうとする。

吉良の家来・岡平(染五郎)は下僕に身を変えて大石に仕えながら彼らの動静を窺っていたが、字の読めないはずの岡平に手紙が届いたことから主税はその正体を見破り、若さゆえの短慮から、彼に斬りつけ、トドメを刺ささんとするところを内蔵助が押しとどめた。
内蔵助はとっくに岡平の正体を知りながら放置しむしろ陽動作戦に利用していたのだ。
しかし、主税が斬りつけたとあっては是非もない。
岡平に対し、吉良の身内なら屋敷の間取りを知っているだろうから、死ぬ前に教えてくれ、と虫のいいことを頼む。
頼まれた岡平は碁盤の上で碁石を並べて教えてから事切れる。

虫の息の岡平が吉良屋敷の間取りを教えるのは、実は岡平の親が浅野家家臣だったという理由だったか、大石親子の忠臣ぶりに情が移ったからか、ま、そんな理由があってのことなのだけど、この肝心な芝居に集中できずにいたものだから今や思い出せない。

筋書きを読めば思い出せる、あるいはそのものズバリの筋書きが書いてあったかもしれないが、終演後の飲み屋のはしごのどこかでカバンごと失くすという大失態。
それはともかく、NETで検索しても、「碁盤太平記」にはいくつかのパターンがあるらしい。


主役の名前が今回は「大石内蔵助」だったが、「碁盤太平記」の過去の上演記録では「由良之助」バージョンと「内蔵助」バージョンがあるようだ(後世、幾つもの忠臣蔵ものを集大成した「仮名手本忠臣蔵」では「大星由良之助」になっている。)。
名前の違いだけではなく、岡平の素性も、登場人物も若干異なる<あらすじ>が散見されるので、内容も少しずつ変化してきているのかもしれない、あるいは演出の違いなのか。

ま、ここはしかし、実の母や妻を欺かねばならない内蔵助や主税の心中と、斬られながらも死に際に大石親子の心中に共鳴する岡平の心の様をしっかり見届けなくてはいけなかったが、叙上の如く、岡平にはすまないことをした。

扇雀、染五郎の芝居は説得力があった。


さて、昼の部のメインは「廓文章 吉田屋」だ。

これは最近、テレビ録画で藤十郎の「伊左衛門」を観ていたのが良くなかったか。
四代目を襲名した鴈治郎がどんな風に演ずるのかという興味があったが、素人目にもどうも固い。

伊左衛門という男は、アホだけどにくめない人柄がとりえだと思うけど、それがいまいち出ていないように思う。
彼が惚れ込んだ夕霧はそんじょそこらにはお目にかかれないとびきりの才色兼備だ。そんな彼女でも商売抜きで心を寄せる、というにふさわしい伊左衛門の人柄がでなくちゃ、この話はアホらしいで終わってしまう。

そこがねえ。
ちょっと不足していたように思うよ。
夕霧が藤十郎で愛嬌振りまくのだもの、こっちのほうがずっと可愛い。

劇中口上では、芝居が面白おかしく口上につながって洒落ていた。
喜左衛門を演ずる幸四郎が紹介役なのだけど、貫禄十分!

♪2015/28 @歌舞伎座-02