2019-06-10 @国立劇場
解説 歌舞伎のみかた 中村虎之介
福内鬼外=作
神霊矢口渡 (しんれいやぐちのわたし) 一幕
国立劇場美術係=美術
頓兵衛住家の場
(主な配役)
渡し守頓兵衛⇒中村鴈治郎
娘お舟⇒ 中村壱太郎
船頭八助⇒ 中村寿治郎
傾城うてな⇒ 上村吉太朗
新田義峰⇒ 中村虎之介
下男六蔵⇒ 中村亀鶴
ほか
通し狂言としても観たことがあるが、全幕中で一番の見所が大詰「頓兵衛住家の場」だろう。今回は鑑賞教室ということもあってこの幕だけが上演された。
前回は頓兵衛を歌六、お船を雀右衛門(当時:芝雀)が演じて素晴らしく印象に深く残っていたが、今回は鴈治郎に壱太郎という実の親子の共演だ。
近年成長著しい壱太郎がどこまで一途な<お船>の純情と命がけの想いを見せてくれるのかが楽しみだった。
が、終盤の見せ場〜
お船が一目惚れした新田義峰を追っ手から逃してやるために、義峰の身代わりとなって、欲深かな実の親・頓兵衛に刺され、打擲され、ボロボロになっても這いつくばって櫓に上がり、鐘を突いて追っ手の囲みを解こうとする〜
を「人形振り」で見せるという演出に本当にびっくり。
人形になりきった壱太郎には2人の黒衣(くろご)が付き、当然表情を変えない。着物の袖からほんの少し顔を出す白塗りの揃えた手指は本物の人形のように可愛らしい…
のだが、不思議なことにむしろ観ている側の感情は激しく揺さぶられた。
この人形振りにはまだ、研究の余地があるとは見たが、雀右衛門のお船とは別趣の悲劇性が高められ、思わず見入ったものである。
楽日は予定があってゆけないが、少し手前にもう一度観にゆくべくチケットを買った。あと10日余りでどれほど腕を上げているか、楽しみだ。
♪2019-078/♪国立劇場-08