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2024年2月7日水曜日

令和6年2月文楽公演第2部

2024-02-06 @日本青年館ホール



第二部 (15:15開演〜17:30)
●艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
 酒屋の段
 中 三輪太夫/清友
 切 錣太夫/宗助
 奥 呂勢太夫/清治

●戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)
 廓噺の段
   藤太夫・靖太夫・碩太夫/
   燕三・清𠀋・清公・燕二郎

 人形▶丁稚長太⇒玉彦
    半兵衛女房⇒文昇
    美濃屋三勝⇒清十郎
    娘お通⇒和登
    舅半兵衛⇒勘壽
    五人組の頭⇒亀次
    親宗岸⇒玉也
    嫁お園⇒勘十郎
    茜屋半七⇒清五郎
    -----------------------------
    浪花次郎作⇒玉佳
    吾妻与四郎⇒玉勢
    かむろ⇒一輔




4年半ぶりに「艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)」を観た。
前回は、半七と芸者・三勝(さんかつ)との心中道行があったが、今回は「酒屋の段」のみ。
それで、少し印象が変わったが、これはこれで、むしろスッキリと面白い。

冒頭、店の留守を任された丁稚の能天気さ。
そこに酒を買いに来た子連れの女。
頼まれて酒を運んでやる丁稚。
この謎めいた場面から始まる。

半七の父、半兵衛が代官所から戻り、丁稚がなぜか子供を背負って店に戻る。
そこに離縁されたお半七の女房お園が父親とともに茜屋を訪ねてから話は急展開する。
ただ、この時点でもまだ半七・三勝は登場しないというのが凝った作劇だ。

実話に基づいているというが、誰一人真の悪人はいないのに、歯車が少し欠けたか、登場人物の人生が狂ってゆくさま哀れ也。

♪2024-022/♪日本青年館ホール-2

2023年2月11日土曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 近松名作集第Ⅲ部 女殺油地獄

2023-02-08@国立劇場




第3部(18:30時〜20:57)
近松門左衛門=作
女殺油地獄 (おんなころしあぶらのじごく)
◎徳庵堤の段
 南都太夫・亘太夫・津國太夫・文字栄太夫・薫太夫
 /清𠀋
◎河内屋内の段
 口 咲寿太夫/團吾
 奥 靖太夫/清志郎
◎豊島屋油店の段
 切 呂太夫/清介

************************
人形役割
女房お吉⇒一輔
河内屋与兵衛⇒勘十郎
山本森右衛門⇒勘市
豊島屋七左衛門⇒勘彌
河内屋徳兵衛⇒勘壽
徳兵衛女房お沢⇒文昇
河内屋太兵衛⇒清五郎
妹おかち⇒紋臣




























今月の文楽公演は近松名作集。
「女殺油地獄」は最晩年の作(ひょっとして絶筆か)。
「心中天網島」は3時間半を超えるがこれは2時間30分と短く、話がよく纏まっていて分かり易い。

過去にも鑑賞歴があるが、歌舞伎も含め、今回の公演が一番面白かった。

今回は三段構成でそれぞれの段は趣を異にしているが、序破急の典型のようで、作劇の巧さを味わった。

一段目は、主要人物の紹介と事件端緒を野崎参りの賑やかな茶店で描き、
二段目はどうにもならない性悪与兵衛と親のとの葛藤を、
三段目は、それでも見捨てることができない親の情け。

段々と舞台は暗くなってゆく。A

親の情けを知りつつも、与兵衛は豊島屋女房お吉へ強引な金の無心。断られた与兵衛は脇差でお吉を刺す。切る。抉る。
逃げるお吉も追う与兵衛も油まみれ・血まみれの凄惨図。
油敷の床で与兵衛もお吉も思うに任せず、よく滑ること。
この迫力がコワイ。

遂に息絶えたお吉から鍵を盗み、与兵衛は金を奪って夜のしじまに消えてゆく。途中、血まみれの脇差を「栴檀の木橋」から捨てる、とある。北浜から今でいう中之島公会堂を結ぶ橋だ。個人的には懐かしい。

今日の公演は三段目までだったが、18年に観た時は、四段目「逮捕の段」があり、与兵衛は捕まるがそれで気分がスッキリするような話でもない。

今回のように、悪事を尽くして逃げ落ちるところで幕にした方が怖さも一入という気がする。

一人の悪に周りが振り回され、救いは全くない。

悄然と劇場を出た。

♪2023-024/♪国立劇場-02

2022年12月16日金曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 国立劇場第54回 文楽鑑賞教室 「絵本太功記」夕顔棚の段/尼崎の段

2022-12-16@国立劇場



●解説 文楽の魅力
 豊竹亘太夫/鶴澤清公

●絵本太功記えほんたいこうき
 夕顔棚の段
  亘太夫/清公
 尼ヶ崎の段
前 睦太夫/勝平
後 靖太夫/清馗


************************
人形役割
母さつき⇒ 吉田玉也
妻 操⇒ 吉田蓑一郎
嫁初菊⇒ 桐竹紋吉
旅の僧実は真柴久吉⇒ 吉田文哉
武智光秀⇒ 吉田玉志
武智十次郎⇒ 吉田簑太郎
加藤正清⇒ 吉田和馬


鑑賞教室だから、本篇の前に20分程度の解説がある。初めての人には有益だろうが、毎回のように欠かさず行っている者にはあまり驚きもないが、解説してくれる太夫や三味線方の人柄が伝わるのは面白い。
実際、この世界では、太夫は豊竹・竹本、三味線は鶴澤がほとんどで竹澤・野澤・豊澤はほんの僅か。人形は吉田・桐竹で圧倒する。だから、人間国宝やベテラン級はともかくとして中堅以下はなかなか名前と顔が一致しない。
今日の豊竹亘太夫や鶴澤清公は名前はよく知っていても、顔がなかなか一致しないのだけど、これから暫く?は覚えているだろう。

さて、「絵本太功記」は3度目だったが、いつも、「夕顔棚の段」と「尼ヶ崎の段」だ。

主人公光秀、その母、その妻、その子の思いが、絡み合うものの最後には互いを理解し、許しあう大団円が待つ…というのが、たいていの物語なのだけど、これは違う。
だからいつもスッキリしない。
これはたぶん全十四段の話のうち十段目だけを取り出しているからではないか?

こういう良いとこどりの見方(=見取り狂言<>通し狂言)では手軽でいいとしても誤った見方をしてしまう恐れがある。
…ということを、同日この後に観た「本朝廿四孝」で痛感した。

♪2022-193/♪国立劇場-12

2022年9月5日月曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 第一部「碁太平記白石噺」田植の段/逆井村の段

2022-09-05@国立劇場


第一部
●碁太平記白石噺 (ごたいへいきしらいしばなし)
 
田植の段
口 豊竹咲寿太夫/鶴澤友之助
奥 豊竹藤太夫/鶴澤清友

逆井村の段
中 豊竹靖太夫/野澤勝平
切 竹本千歳太夫/豊澤富助

************************
人形役割
庄屋七郎兵衛⇒ 吉田玉也
志賀台七⇒       吉田玉勢
百姓与茂作⇒  吉田玉輝
娘おのぶ⇒   吉田一輔
宇治兵部助⇒  吉田玉志
女房おさよ⇒  吉田簑二郎
金江谷五郎⇒  豊松清十郎


前から告知されていたことだけど、いよいよ9月公演から「初代国立劇場さよなら公演」という冠が付いた。と言っても今月で終わるのではなく来年10月末まで「さよなら公演」が続く。その後建て替えが始まり、再開は2029年の秋だ。なんて長いんだ。7年の空白はツライ。

あちこちの劇場で手分けして公演を続けるらしいが、歌舞伎や文楽にふさわしい舞台構造を持った劇場は首都圏にないはずだから、やると言っても色々制約の多い演出・演目になるのだろう。
第一、7年後僕は健脚・健聴・健眼を維持しているだろうか心配だよ。

「さよなら〜」ということもあって、コロナ禍でできなかった通し上演が(完全ではないが)復活した。コロナの収束宣言は出ないけど、それを待っていたら、第2代国立劇場ができてしまうかも。
今回はⅠ部とⅡ部に分けて「碁太平記白石噺」が通して上演される。
と言っても全11段中4段だけだが。

♪2022-125/♪国立劇場-07

2021年12月6日月曜日

国立劇場開場55周年記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年12月公演

2021-12-06@国立劇場




国立劇場開場55周年記念
仮名手本忠臣蔵 (かなでほんちゅうしんぐら)
 桃井館本蔵松切の段
 下馬先進物の段
 殿中刃傷の段
 塩谷判官切腹の段
 城明渡しの段
 道行旅路の嫁入


桃井館本葳松切の段
 竹本小住太夫/鶴澤清丈
下馬先進物の段
 竹本南都太夫/竹澤團吾
殿中刃傷の段
 豊竹靖太夫/野澤錦糸
塩谷判官切腹の段
 竹本織太夫/鶴澤燕三
城明渡しの段
 竹本碩太夫/鶴澤清允
道行旅路の嫁入
 小浪:豊竹呂勢太夫/鶴澤清志郎
 戸無瀬:豊竹咲寿太夫/鶴澤清公
 豊竹亘太夫/野澤錦吾
 竹本聖太夫/鶴澤燕二郎
 豊竹薫太夫/鶴澤清方

*****************************
人形役割
桃井若狭助⇒ 吉田玉佳
加古川本蔵⇒ 吉田勘市
妻戸無瀬⇒    豊松清十郎
娘小浪⇒ 吉田簑紫郎
高師直⇒ 吉田玉助
鷺坂伴內⇒    桐竹紋秀
塩谷判官⇒  吉田簑二郎
早野勘平⇒  吉田玉路
茶道珍才⇒  吉田蓑悠
原郷右衛門⇒ 桐竹亀次
石堂右馬丞⇒ 吉田玉輝
薬師寺次郎左衛門⇒吉田文哉
大星カ弥⇒  吉田簑太郎
大星由良助⇒ 吉田玉志
顔世卿前⇒  桐竹紋吉
その他 大ぜい

今から5年前の2016年。国立劇場では開場50年記念に、歌舞伎は3部(1か月公演X3回)、文楽の方は2部(昼夜公演)構成で全段通し「仮名手本忠臣蔵」をやった。
それが僕の文楽の初見で以後病みつきになった。

2019年には大阪の国立文楽劇場の開場35年で春・夏・秋に3部に分けて全段通しをやった。これも観に行った。

そして、今年は国立劇場開場55年記念の年だ。

そこで、記念の公演という訳だが、今回は、二、三、四、八段目からの抜粋だ。これは寂しい。

四段目のほかにも面白い七段目、九段目がない。これでは見どころは切腹の段のみというのも辛い。

それにどういう訳か、今回は太夫・三味線・人形ともに重鎮が出ていない。普通なら人間国宝級全員とは言わずとも出演するものだ。ましてや記念の公演なのに。
ま、今日の出演者の中では、個人的には織太夫とか呂勢太夫は好きだけど。
どれにしては寂しい公演だった。

同時に別興行で観賞教室をやっているがこっちの方が面白かった!


♪2021-146/♪国立劇場-11

2020年2月19日水曜日

人形浄瑠璃文楽令和2年2月公演第Ⅰ部

2020-02-19 @国立劇場


菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
 吉田社頭車曳の段
  芳穂太夫・靖太夫・咲寿太夫・碩太夫・
  津國太夫/清友
 佐太村茶筅酒の段
  三輪太夫/團七
       喧嘩の段
  小住太夫/清馗
 同      訴訟の段
  靖太夫/錦糸
       桜丸切腹の段
  千歳太夫/富助
人形役割
 梅王丸⇒分司
 桜丸(車曳)⇒簑紫郎
 杉王丸⇒玉翔
 松王丸⇒玉輝
 左大臣時平⇒勘一
 親白太夫⇒和生
 女房八重⇒勘十郎
 女房千代⇒清十郎
 女房春⇒一輔
 桜丸(佐太村)⇒簑助
 ほか

文楽版菅原伝授手習鑑では、以前に、序幕というべき「車曳の段」も前段というべき「佐太村茶筅酒の段~桜丸切腹の段」も観ているのだけど、(歌舞伎でも)圧倒的に多いのが後段というべき「寺入り・寺子屋の段」で、その前段の話を味わうのは久しぶりだった。
それし、これらの話を知っていてこそ「寺子屋」の悲壮感が一層高まるのだ。

そういう意味で、今月の文楽公演は3部構成だが、第Ⅱ部か第Ⅲ部にどうして「寺入り」、「寺子屋」を演らなかったのか。残念なり。

忠義の為に、我が命も子供の命さえ犠牲にするという、超アナクロな筋立てに、自分の気持ちを整理するのも難しいが、それでも、やはりその真摯な生き様には感動を禁じ得ない。

クライマックスは「桜丸切腹の段」。目一杯の感情移入で語ってくれる千歳太夫が今日も素晴らしかった。

♪2020-025/♪国立劇場-03

2019年12月13日金曜日

人形浄瑠璃文楽令和元年12月公演「一谷嫰軍記」

2019-12-13 @国立劇場


一谷嫰軍記(いちのたにふたばぐんき)
 陣門の段
  小次郎⇒咲寿太夫
  平山⇒小住太夫
  熊谷⇒亘太夫
  軍兵⇒碩太夫
  宗助
 須磨浦の段
  希太夫/勝平
 組討の段
  睦太夫/清友
 熊谷桜の段
  芳穂太夫/藤蔵
 熊谷陣屋の段
  前:織太夫/燕三
  後:靖太夫/錦糸

人形役割
 小次郎直家(敦盛)⇒一輔
 平山武者所⇒玉翔
 次郎直実⇒玉助
 玉織姫⇒簑紫郎
 遠見の敦盛⇒簑之
 遠見の熊谷⇒和馬
 妻相模⇒勘彌
 堤軍次⇒玉誉
 藤の局⇒簑二郎
 梶原平次景高⇒紋吉
 石屋弥陀六実は弥平兵衛宗清⇒文司
 源義経⇒玉佳
     ほか

今回の上演は全段ではなくかなり切り詰められているようだ。歌舞伎と駒之助の素浄瑠璃を経験しているがいずれも「熊谷陣屋」しか演らなかったので今回初めて全体の輪郭を理解できた。そして自分の勉強不足に呆れるが、かくも壮大なトリックが仕掛けられているとは!

歌舞伎・文楽の時代物では我が子を犠牲にする話が珍しくはない。菅原伝授手習鑑や伽羅先代萩など。一谷嫰軍記も同様な話だが「熊谷陣屋」だけを観ても、首の入れ替えは既になされているので、違和感が無いのだが、前段の陣門・須磨の浦・組討の段から順に見ていると見事に騙されていたのが分かる。

いや、騙されるのは無理はない。いくらなんでも話に無理がある。
「熊谷陣屋」だけが際立って上演機会が多いのは全段中一番面白いから、という理由だけではなさそうな気がした。
初演は約270年前だそうだが、そんな昔に…よくぞかくも大胆な筋立てを考えたものだ。

Aクリスティの「アクロイド殺人事件」は「一谷嫰軍記」にヒントを得たのでは…いや、さすがにそれはないな。

一方で、これまで「熊谷陣屋」をいかにボーッと観ていたか、恥ずかしくなった。
手元に当代芝翫襲名の際の「熊谷陣屋」のビデオがあるので、年末年始にじっくり観直してみよう。

♪2019-204/♪国立劇場-17

2019年11月19日火曜日

国立文楽劇場開場35周年記念11月文楽公演 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第Ⅲ部

2019-11-19 @国立文楽劇場


通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
八段目から十一段目まで 4時間30分(正味3時間50分)

 八段目 道行旅路の嫁入
  津駒太夫・織太夫・南都太夫・亘太夫・碩太夫/
  宗助・清志郎・寛太郎・錦吾・燕二郎
 九段目 雪転しの段-山科閑居の段
  芳穂太夫/勝平
  前 千歳太夫/富助
  後 藤太夫/藤蔵     
 十段目 天河屋の段
  口 小住太夫/寛太郎
  奥 靖太夫/錦糸
   十一段目 花水橋引揚より光明寺焼香の段
  睦太夫・津國太夫・咲寿太夫・碩太夫/清𠀋

人形役割
  妻戸無瀬⇒和生
  娘小浪⇒一輔
  大星由良助⇒玉男
  妻お石⇒勘彌
  大星力弥⇒玉佳
  加古川本蔵⇒勘十郎
  天川屋義平⇒玉也
  原郷右衛門⇒分司
  矢間十太郎⇒勘一
  寺岡平右衛門⇒簑太郎
  桃井若狭之助⇒玉志
         ほか

3年前に国立劇場開場50周年記念の「仮名手本忠臣蔵」…2部構成の11段通しを観たのが、恥ずかしながらナマ文楽の最初で、これで嵌ってしまった。
その後は東京の公演は1回も欠かさず。今年は大阪遠征も3回・4公演を楽しんだ。

今年の3部構成の忠臣蔵も今回で全段終幕。

本場大阪では、国立文楽劇場開場35周年行事として時間をたっぷりかけたので、東京では演らなかった2段目冒頭、力弥使者の段と11段目の最後の最後、光明寺焼香の段も観られて良かった。
やはり焼香の段は泣かせる場面だ。花水川引き揚げで終わるよりカタルシスが得られて満足感が高い。

この本格的全段通し、次回はいつか。
もう一度くらい観たいね。
3回皆勤賞で手拭GET。

♪2019-182/♪国立文楽劇場-3

2019年9月21日土曜日

人形浄瑠璃文楽令和元年09月公演 第2部

2019-09-21 @国立劇場


嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)
 花菱屋の段
  織太夫/清介
 日向嶋の段
  千歳太夫/富助

 人形役割
  花菱屋女房⇒文昇
  花菱屋長⇒玉輝
  肝煎左治太夫⇒簑二郎
  娘糸滝(花菱屋)⇒簑紫郎
  悪七兵衛景清⇒玉男
  娘糸滝(日向嶋)⇒簑助
    ほか

艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
 酒屋の段
  靖太夫/錦糸
  藤太夫/清友
  津駒太夫/藤蔵
 道行霜夜の千日
  睦太夫・南都太夫・咲寿太夫・
  碩太夫・文字栄太夫/
  勝平・清馗・友之助・清公・清允

 人形役割
  半兵衛女房⇒簑一郎
  美濃屋三勝⇒一輔
  舅半兵衛⇒玉志
  親宗岸や玉也
  嫁お園⇒清十郎
  茜屋半七⇒玉助
    ほか

①嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)
忠義一徹が仇で日向嶋に流された平家の武将・景清の元に父の仕官の費用を持参する娘糸滝との再会。しかし景清は武士の矜持が邪魔をして娘を蹴散らすように追い返す。

後で、そのお金は我が身を売って拵えたものであると知り既に岸を離れた糸滝の船に向かって「ヤレその子は売るまじ。娘よ、船よ返せ、戻せ」と慟哭。

このくだり、千歳大夫の叫びとも聞こえる渾身の義太夫が日本人DNAを鷲掴みにして胸を締め付ける(日向嶋の段)。

前段の「花菱屋の段」も、身を売らなければならなくなった糸滝の話に、店の面々が厚い情愛を寄せるところが、これまた胸が熱くなる。

②艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
茜屋の若主人半七は女房お園を迎える前から芸者三勝に入れ上げ子供まで設けていたが、ひょんなことから恋敵を殺してしまう。その罪を被った父半兵衛、心ならずも離縁されたお園、行き詰まった半七と三勝は我が子をそっと半兵衛らに託し、霜の夜、自害する。

冒頭「酒屋の段」。店の留守を任された丁稚の能天気さ。そこに酒を買いに来た子連れの女。頼まれて酒を運んでやる丁稚。この謎めいた場面から始まる。

半兵衛が代官所から戻り、丁稚がなぜか子供を背負って店に戻る。そこに離縁されたお園が父親とともに茜屋を訪ねてから話は急展開し、引き込まれる。

ただ、この時点でも半七・三勝は登場しないというのが凝った作劇で面白い。

実話に基づいているというが、誰一人真の悪人はいないのに、歯車が少し欠けたか、登場人物の人生を狂わせてゆく人間の情のおかしさ。

♪2019-143/♪国立劇場-12

2019年5月16日木曜日

国立文楽劇場開場35周年記念 人形浄瑠璃文楽05月公演 通し狂言「妹背山婦女庭訓」第1部

2019-05-16 @国立劇場


通し狂言「妹背山婦女庭訓」(いもせやまおんなていきん)

●第一部(午前10時30分開演)
 大   序
  大内の段
   碩太夫・亘太夫・小住太夫・咲寿太夫/
   清允・燕二郎・錦吾・清公
      小松原の段
   芳穂太夫・咲寿太夫・南都太夫・
   文字栄太夫・津国太夫/團吾
      蝦夷子館の段
   口:亘太夫/清公
   奥:三輪太夫/清友

 二段目
  猿沢池の段
   希太夫/友之助
      鹿殺しの段
   碩太夫/錦吾
      掛乞の段
   睦太夫/寛太郎
      万歳の段
   織太夫/清志郎・清允
      芝六忠義の段
   切:咲太夫/燕三

 三段目
  太宰館の段
   靖太夫/錦糸
     
人形▶玉佳・玉勢・紋臣・簑太郎・玉助・簑紫郎
   玉男・文司・清十郎・玉也・勘次郎・
   簑二郎・和馬・勘十郎・ほか

今月は、国立文楽劇場会場35周年の記念であり、令和に改元後最初の公演ということもあってか、日本で初めて元号が定められた「大化の改新」を題材にした超大作が、昼夜2部に及ぶ通し狂言として上演された。
第1部は10時半から。第2部終演は21時という時間割だが、これだけ長いと日を分けて鑑賞するのが普通だと思うが、今月はやたら忙しいので、1日で一挙に観てしまうことにした。もちろん幕間はあるし、1部終演後2部開演までにもお客の入れ替えの時間があるが、入館してしまえば出るまで拘束10時間半だ。
これはかなり体力が必要で、若干、不安もあったが、始まってみると実に面白くて、疲労など全然感じるどころではなかった。

この演目は、初めての鑑賞だ。およその筋書きは頭に入っていたが、まあ、登場人物が多く、最初のうちはなかなか彼らの関係性が飲み込めず、買ったプログラムの「人物相関図」などをチラチラ見ながら、なんとかついてゆくという感じだった。

ややこしいのは人間関係だけではなく、そもそもの筋書きがもう破天荒なのだ。
中大兄皇子(天智天皇)、藤原(中臣)鎌足側と、蘇我蝦夷・入鹿親子側との権力争いが大筋である(こういう狂言を「王代物」というらしい。)が、タイトルからしても違和感があるように、途中では室町か鎌倉の時代物風になったり、さらには江戸時代の世話物の様な話も加わり、元の大筋はだんだんとボケてゆき、まるで違う話が2つ3つ合わさっているようだ。

まあ、面白ければなんでもあり、という文楽・歌舞伎の庶民芸能の面目躍如だ。

第1部では文楽版ロメオとジュリエットとも言える久我之助(こがのすけ)と雛鳥の出会いを描く「小松原の段」、天智帝やその部下が大納言兼秋らが匿われているあばら家に掛け取りに来た商人とのトンチンカンなやりとりを描く「掛乞いの段」、親子の犠牲を描く「芝六忠義の段」が印象的だった。

♪2019-064/♪国立劇場-06

2019年2月2日土曜日

人形浄瑠璃文楽平成31年02月公演 第3部

2019-02-02 @国立劇場


第三部
鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)
 中将姫雪責の段
     前⇒  靖太夫/錦糸
     奥⇒  千歳太夫/富助
     胡弓⇒    錦吾

  人形▶紋臣・一輔・二郎・文哉・紋秀・清五郎・簑助・玉也

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
 阿古屋琴責の段
     阿古屋⇒ 津駒太夫
     重忠⇒  織太夫
     岩永⇒       津國太夫
     榛沢⇒       小住太夫
     水奴⇒       碩太夫
          清助
     ツレ⇒       清志郎
     三曲⇒       寛太郎

  人形▶玉助・文司・玉翔・勘十郎・勘助・玉路・和馬・簑之

Ⅰ部、Ⅱ部は後日に回して。
Ⅲ部は「鶊山(ひばりやま)姫捨松」中将姫雪責の段と「壇浦兜軍記」阿古屋琴責の段。
2本とも若い女性が責められまくる話って、ちょっと興奮させる?
後者は歌舞伎の玉三郎で観たが人形では初めて。前者は歌舞伎も知らない。

「鶊山姫捨松」では、権力闘争の煽りを食って、無実の中将姫が雪の舞う庭で、継母岩根御前による殺害目的の折檻を受ける場面=雪責めがメインだ。

打掛を剥がされ竹刀でさんざの打擲に苦しむ姿を、豊澤富助の三味線に乗せ竹本千歳太夫が振り絞るように語り、人間国宝吉田簑助が人形に命を吹き込む。

「壇浦兜軍記」は傾城阿古屋が、源氏方代官重忠と岩永から、彼女が馴染みだった平家の重臣・景清の行方を聞き出そうと拷問を受ける一幕だ。
逸(はや)る岩永を制して冷静な重忠は阿古屋に琴・三味線・胡弓を弾かせその調子で阿古屋の本心を探ろうとする。
歌舞伎では一人の役者が3種を操る処が見どころ。

文楽でも同様だが、ここでは人に操られる人形が演奏するフリをするという屈折した面白さがある。
楽器の実演は三味線方(鶴澤寛太郎の見事な演奏)が担うが、それに合わせて、さも演奏しているかのようにピタッと合わせて阿古屋を遣うのが桐竹勘十郎の名人芸。見事でありおかしくもある。

観客は、寛太郎の演奏を横目で見ながら勘十郎が遣う人形のフリを同時に見るので、撥・弓・指遣いの微妙な仕草までシンクロするのがよく分かって只管感心するが、舞台上の憎まれ役岩永も阿古屋の名演につい惹き込まれる様子も傑作で、場内は笑い声が広がる。津駒太夫・織太夫らも名調子。

阿古屋琴責めでは中将姫雪責めと違って、三味線方も太夫も大勢で人形を演じ分け、責めるといってもこちらは優雅なもので傾城の見事な衣装も楽しめるし、賑やかで、おかしくてホンに楽しい一幕ではあった。

♪2019-010/♪国立劇場-02

2018年12月9日日曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年12月公演「鎌倉三代記」ほか

2018-12-09 @国立劇場


鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
     局使者の段⇒希太夫/清馗
     米洗いの段⇒靖太夫/錦糸
     三浦之助母別れの段⇒文字久太夫/藤蔵
     高綱物語の段⇒織太夫/清介
  人形▶和生・簑一郎・紋臣・紋秀・紋吉・勘彌・玉志・玉助・文哉

伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)
     八百屋内の段⇒津駒太夫/宗助
     火の見櫓の段⇒芳穂太夫・南都太夫・亘太夫・碩太夫/
            勝平・清公・錦吾・燕二郎
  人形▶玉勢・簑紫郎・一輔・勘市・亀次・玉翔・勘助・玉路

「鎌倉三代記」と「伊達娘恋緋鹿子」2本立て。

前者は、これまで歌舞伎で数回観ているが、歌舞伎ではもっぱら「絹川村閑居の場」のみが上演される。

今回の文楽公演では「絹川村〜」という名の「段」はないのだが、「三浦之助母別れの段」と「高綱物語の段」がそれに相当するのではないか、と観たがどうだか、確かなことは分からない。
いずれにせよ、この二段が話の中核だ。
だが、話の内容が結構複雑なことと、愛や忠義の為の究極の選択に素直な感情移入が難しい。

後者はまったくの初見。
所謂「八百屋お七」の物語だが、その「火の見櫓の段」こそ見もの。白黒世界に雪が舞い赤い振袖長襦袢。お七が梯を登るところが刮目の一工夫。火炙り覚悟の半鐘打ちの壮烈で美しいこと。


♪2018-166/♪国立劇場-18

第50回文楽鑑賞教室「菅原伝授手習鑑」ほか

2018-12-09 @国立劇場


●団子売(だんごうり)
  靖太夫<杵造>・咲寿太夫<お臼>・亘太夫・碩太夫/
  團吾・友之助・清公・精允
  人形▶玉翔<杵造>・紋吉<お臼>

●解説 文楽の魅力
  希太夫/寛太郎
  人形▶玉誉

●菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
  寺入りの段⇒小住太夫/寛太郎
  寺子屋の段⇒前:千歳太夫/富助
        後:睦太夫/清友
  人形▶簑悠<菅秀才>・簑太郎<よだれくり>・文昇<戸波>・
       豊松清十郎<千代>・和馬<小太郎>・玉峻<三助>・
     玉也<武部源蔵>・玉輝<春藤玄蕃>・玉男<松王丸>・玉誉<御台所>・
     その他大ぜい

「団子売」は歌舞伎では仁左衛門・孝太郎、猿之助・勘九郎のコンビで観たことがある。
歌舞伎では、このコンビの名前は「杵造」と「お福」だ。

お祝い事の舞踊劇で、筋書きらしいものはないけど、仲の良い夫婦が杵と臼で餅を搗くという所作だが、滑稽味もある。

文楽で観るのは今回初めてだったが、内容は同じだ。人形が踊ると人間が踊るより可愛げがある。

また、登場人物の名前が「杵造」は同じだが「お福」は「お臼」になっていた。「杵と臼」の役割どおりになっている。「杵と臼」が何を仮託しているかは見てのとおりだ。

五穀豊穣・子孫繁栄を祈る祝いの舞踊だというのが納得できる。文楽では「景事」(けいごと・けいじ)とも呼ばれているそうだが内容からは「閨事」でもあるような…。

今回の「〜手習鑑」は「寺入りの段、寺子屋の段」。
文楽では昨年5月に「茶筅酒の段、喧嘩の段、訴訟の段、桜丸切腹の段、寺入りの段、寺子屋の段」を、6月にも「車曳の段、寺入りの段、寺子屋の段」を観た。

やはり、寺入りの前段、特に「車曳きの段」や「桜丸切腹の段」を知らないと、「寺子屋の段」の痛切な哀しみは理解できないと思うが、そうであったとしても、忠義のために我が子を殺す話は現代では徐々に共感が得難くなってきているのではないか。

モーツアルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」など、実に古い価値観で作られているので現代人の共感を得るために演出家が苦労するのと同じで、儒教の八徳(仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌)などを思想の根底に据えた物語は、だんだん普遍性を失って、やがては成立しなくなるかもしれないな…と思った。

鑑賞教室の楽しみの一つ。
大夫のほか、普段は口を開くことのない三味線方や人形遣いもマイクを持ってそれぞれも分野を説明してくれる。

今回は、吉田玉誉の解説が存外傑作だった。

♪2018-165/♪国立劇場-17

2018年9月10日月曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年9月公演 第1部「良弁杉由来」、「増補忠臣蔵」

2018-09-10 @国立劇場


<明治150年記念>
南都二月堂
●良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)
 志賀の里の段
  睦太夫・小住太夫/鶴澤清友
 桜の宮物狂いの段
  津駒太夫・津國太夫・芳穂太夫・咲寿太夫/鶴澤藤蔵・ 
  清馗・寛太郎・清公・清允
 東大寺の段
  靖太夫・野澤錦糸
 二月堂の段
  千歳太夫・豊澤富助
◎人形⇒吉田和生・桐竹紋臣・吉田玉男

●増補忠臣蔵(ぞうほちゅうしんぐら)
 本蔵下屋敷の段
  呂太夫・咲太夫/竹澤團七・鶴澤燕三・燕二郎
◎人形⇒吉田玉佳・吉田玉志・吉田玉助・吉田一輔

1日で第1部と第2部を通して観た。歌舞伎座で昼の部と夜の部を通して見るようなものだ。11時から20時34分まで。もちろん数回の休憩と入れ替えの時間があるが、それらを含めて9時間34分も小劇場の椅子に座っていたことになる。

2部の「夏祭浪花鑑」については興行が別なので感想も別に書いたが、これは消化不良だった。

それに対比して、第1部の2本*はいずれも初見だったにもかかわらず、ほぼ完全消化できた。そしていずれも大いに楽しめた。

●「良弁杉由来」は、幼い子どもを鷲に攫われた渚の方が悲しみのあまり狂女となって30年。乗り合わせた船の中で東大寺の良弁上人が幼い頃鷲にさらわれたという噂を聞き、訪ねた二月堂で親子念願の再会を果たす。
「志賀の里の段」での大鷲の仕掛け、「桜の宮物狂いの段」では桜の花盛りの中、シャボン玉も登場して笑いを誘う。その華やかさの一方でやつれ果てた狂女のが川面に写った自分の姿を見て30年間失っていた正気を取り戻す。
「二月堂の段」では書割とはいえ、二月堂の威容が見事だ。感動的な名乗り合いと再会の前に、良弁の登場の先触れに登場する奴たちが長い槍を放り投げては受け取るというアクロバティックな見どころも用意されていて心憎い。
この段では千歳太夫の渾身の語りが観る者、聴く者の心を揺り動かした。

●「増補忠臣蔵」は「仮名手本忠臣蔵」の外伝の一つで、有名な九段目「山科閑居の場」の前日譚だ。
本篇(仮名手本〜)では家老加古川本蔵の主人、桃井若狭之助は短慮で直情径行な若殿という扱いになっているが、この増補版では本蔵の心情を良く理解し、本蔵の決死の覚悟を知って見送る英邁な若殿様に成長している。
後日にできた前日譚だろうが、この話を知ることで、本篇九段目に本蔵が虚無僧姿で山科の由良助の閑居を訪れること、高師直の屋敷の図面を持っていることなどが、ピシャリと嵌ってなるほどと思う訳だ。

主従の絆や親子の情愛がとても分り易く表現されて面白い。
この演目で、「前」の太夫は呂太夫(三味線は團七)、「切」は唯一の切場語りである咲太夫(〃燕三)という豪華版でしっとりと聞かせてくれた。

*第1部は「明治150年記念」という冠がついているが、2本とも明治期に初演された演目だ。

♪2018-109/♪国立劇場-12