2016年3月27日日曜日

東京交響楽団 川崎定期演奏会 第54回

2016-03-27 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ドミトリー・キタエンコ:指揮
成田達輝:バイオリン*
東京交響楽団

チャイコフスキー:歌劇「エフゲニ・オネーギン」~ポロネーズ
チャイコフスキー:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品35*
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47「革命」 

指揮者もソリストも初めての人だったが、成田達輝については、帰宅後録画で観たこの日放送の「題名のない音楽会」にも登場していて達者なところを再確認した。

東響のホームページのこのコンサート紹介では成田達輝を「『偉大な名手パガニーニのライバル』と評され、世界で活躍する成田~が登場します。」と書いてあるけど、それはいくらなんでも大げさではないか。

彼も東響も上手だけど、チャイコの協奏曲に関しては、昨年11月のhr交響楽団と五嶋龍の演奏があまりに素晴らしかったので、その後に聴いた演奏が、今回を含め、どうにも物足りない。

ショスタコの5番は一昨日、同じミューザで聴いたばかりで、これもそちらの演奏が雑ではあったけど強烈な迫力だったので、もう少々のことでは驚かなくなってしまっているのも困ったものだ。


ところで、東響の看板娘?ソロ・コンサートマスター(東響ではミストレスとは表記しない)の大谷康子が21年間務めた東響を本日を以って退団するということで、終演後の館内は大いに盛り上がった。
確かに、彼女の存在は大きかった。華やかさだけではなく、コンマスとして本番中の懸命なリードもあったな。時として、彼女の音だけがはっきり聴こえてくることがあった。これも良し悪しだけど。

確か、もう還暦を迎えたはずだけど、いつまでもお姫様ぽくて、愛想が良くて、スターだった。
今後、東響では名誉コンサートマスターという名誉職に就くらしい。それは名ばかりで、実際の活動はソロや室内楽に移るんだろう。機会があれば室内楽などを近くで聴いてみたいものだ。


♪2016-035/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-08

2016年3月25日金曜日

第5回 音楽大学フェスティバル・オーケストラ

2016-03-15 @ミューザ川崎シンフォニーホール


尾高忠明:指揮
首都圏9音楽大学選抜オーケストラ

チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 作品64
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47「革命」 

首都圏の9つの音楽大学から選抜されたオーケストラだ。
ミューザの舞台に目いっぱいの楽員が並んだところは壮観だ。
まず、コンバス10本が目に飛び込んだ。これはすごい。
これまでに見たことがあるかなあ?8本はさほど珍しくはないけど10本はひょっとして初めてかもしれない。

客席からは10列目だったので舞台より少し高い程度なのでパート毎の人数を数えられたのはコンバスの他にチェロが12本だけ。
プログラムに名簿が出ていたので、それを数えると、コンマスを含めバイオリンは第1も第2も18名ずつ。ビオラが14名。弦5部全体で70名という大所帯だ。チャイコ、ショスタコいずれも交響曲第5番ということで、管打楽器も大勢だ。
チャイコとショスタコで管打はメンバーが入れ替わったが、人数の少ないチャイコでも合計100名はいたろう。

この大編成を聴くには1階10列目は近すぎたかもしれない。
なにしろ弦の響が厚い。ピアニシモでさえ普段聴く弦の音とは違う。こんなに大勢がユニゾンすればピッチの狂いが出るのではないか、と思っていたが、さすがはプロの卵達で、アマチュアオケとは格段の違い。きれいな響だ。

管楽器も上手で、特に印象に残ったのはチャイコの第2楽章のホルンソロが見事だった。

チャイコは音響・音圧の迫力が心地よく、ワクワクしながら聴いた。


ショスタコについては、残念ながらチャイコほどのまとまりがなかった。もとより、チャイコのように歌えるメロディーが次から次と繰り出されるような音楽とは異なるから、どうしてもばらつきが出やすい。よほど練習を積んで気脈を通じあっていないとオケ全体の集中力が生まれないのではないかと思う。

それにしても圧倒的な大管弦楽は異次元の体験だ。これは中毒になりそうな予感。来年も同日・同場所で開催されるので、予定表にしっかり書き込んだよ。


♪2016-034/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-07

2016年3月22日火曜日

三月大歌舞伎 中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露三月大歌舞伎<昼の部>

2016-03-22 @歌舞伎座


一 寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
工藤祐経⇒橋之助
曽我五郎⇒松緑
曽我十郎⇒勘九郎
化粧坂少将⇒梅枝
近江小藤太⇒廣太郎
八幡三郎⇒廣松
喜瀬川亀鶴⇒児太郎
梶原平次景高⇒橘太郎
梶原平三景時⇒錦吾
大磯の虎⇒扇雀
小林朝比奈⇒鴈治郎
鬼王新左衛門⇒友右衛門

二 女戻駕(おんなもどりかご)/俄獅子(にわかじし)
〈女戻駕〉
吾妻屋おとき⇒時蔵
浪花屋おきく⇒菊之助
奴萬平⇒錦之助
〈俄獅子〉
鳶頭梅吉⇒梅玉
芸者お孝⇒孝太郎
芸者お春⇒魁春

三 鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
絹川村閑居の場
時姫⇒芝雀改め雀右衛門
佐々木高綱⇒吉右衛門
おくる⇒東蔵
富田六郎⇒又五郎
母長門⇒秀太郎
三浦之助義村⇒菊五郎

四  団子売(だんごうり)
杵造⇒仁左衛門
お福⇒孝太郎


芝雀が雀右衛門を襲名する披露の公演だが、襲名の口上は夜の部で行われるので昼の部だとピンと来ないけど、仕方がない。
鴈治郎襲名公演の時は昼の部でも劇中襲名口上というのがあったが、今回はそれもなかった。

芝雀(=雀右衛門)と言えば、いつも女形なので、あまり印象に残っていないけど、去年の11月の「神霊矢口渡」の娘お舟の芝居は良かった。物語自体が面白いのだけど、演技力あってこそ集中できたのだと思う。

今回は「鎌倉三代記」の時姫が雀右衛門襲名披露の役だったが、歌舞伎の世界では三姫(鎌倉三代記の時姫、本朝廿四孝の八重垣姫、祇園祭礼信仰記の雪姫)の一つとして重要な役柄だそうだ。確かに、敵の武将に恋をしてその武将から実父を討てと迫られて引き受けてあの世で添い遂げましょうという話だからなかなか難しいのだろう。
甲斐甲斐しいお姫様ぶりは良しとして、父親を討つ覚悟に至る芯の強さのような気配はあまり感じられなかったのだけど、見逃したのかな。
この芝居で言えば、吉右衛門の存在感が大きかった。

ほかの芝居では、「壽曽我対面」での橋之助に貫禄が出たなあと思った。松緑はもっと本格的な芝居を見たかった。


女戻駕と俄獅子は前者が常磐津、後者が長唄による舞踊劇だ。踊りのことは分からないけど、音楽としては心地よい。特に、前者が終わって舞台暗転後に囃子連中?が大勢で舞台一面に並んで聴かせる長唄は華やかな舞台にピッタリでこれは面白かった。

団子売も竹本による舞踊劇。
団子の素になる餅つきから始まるが、その餅が柔らかそうで、あれは一体何で出来ているのだろう。最後はちぎって丸めて客席に投げ込んでくれたら面白いのに、そういう展開ではなかった。


♪2016-033/♪歌舞伎座-02

2016年3月20日日曜日

東京春祭チェンバー・オーケストラ 《室内楽特別コンサート》 ~トップ奏者たちによる極上の室内楽

2016-03-20 @東京文化会館

東京春祭チェンバー・オーケストラ
バイオリン:漆原啓子、川田知子、小林美恵、島田真千子、玉井菜採
ビオラ:佐々木亮、篠﨑友美
チェロ:銅銀久弥、藤村俊介
コントラバス:池松宏

テレマン:
 4つのヴァイオリンのための協奏曲 ハ長調
 4つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ長調
ドボルザーク:
 三重奏曲 ハ長調 作品74
 弦楽五重奏曲 第2番 ト長調 作品77
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20 
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アンコール
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲から第3楽章


バイオリンが5人、ビオラ、チェロが各2人、コンバス1人が登場し、当然弦楽合奏で三重奏、四重奏、五重奏、八重奏を聴かせる。
でもフツーの弦楽四重奏はなかった。

ドボルザークの五重奏曲もテレマンの4つのバイオリンのための協奏曲も初聴きだった。聴いたことがあるのはドボルザークの弦楽三重奏曲とメンデルスゾーンの八重奏曲だけ。それもCDで数回聴いただけ。

つまり、楽器自体は珍しくないのに組合せが珍しい作品ばかりでそういう意味ではどれも面白かった。

テレマンの「4つのバイオリンのための協奏曲」というのは「協奏曲」の意味がバロックの合奏協奏曲とも古典派以降の器楽協奏曲とも意味が違うのだろう。
バイオリンだけ4本というのは、多分、弾く側の楽しみのために作曲されたのではないか。聴く側としては妙味に欠けるな。

ドボルザークの弦楽五重奏曲はフツーの弦楽四重奏の編成にコントラバスが加わったものだ。これも変わった編成だ。弦楽五重奏の編成で多いのフツーの弦楽四重奏にビオラがもう1本加わった形が圧倒的に多い。チェロがもう1本というのも少ないけどある(ボッケリーニはこの形式で100曲ほど書いているらしいから少ないとはいえないかもしれないが。余談だが、彼の膨大な弦楽五重奏曲集から4曲を収めたCDを持っていながらほとんど聴いたことがなかったが、今回の演奏会で刺激されて聴いてみたらホ長調作品13(11)の5というのがあって、その第3楽章メヌエットに驚いた。
FMの音楽番組か学習番組だったか料理番組?のテーマ曲だったよ。さらにハ短調作品37の第2楽章もFM放送のテーマ曲だったような気がする。ボッケリーニの弦楽五重奏曲って案外メジャーなんだと認識を新たにした。)。

ともかく、コンバスが加わった形は、このドボルザークが3曲書いたという弦楽五重奏曲のうちの今回演奏された第2番しか見当たらない。ドボルザークの近辺にコンバスの名手がいたのかもしれない。確かにコンバスの重低音を活かした曲作りになっていたような記憶…も怪しいが。

やはり、聴き応えがあるのはメンデルスゾーンの八重奏曲で、手持ちのCDだと33分を要する大曲だ。
もっとも、この曲は、メンデルスゾーンが16歳の秋に僅かな期間で書いたそうだ。その7年後に改訂をしたそうだが、それでも23歳の若さだ。第2楽章を除けば全篇疾走する勢いで、明るくて元気なのがいい。

顔見知り?は漆原啓子、川田知子、小林美恵だけ。漆原敬子がいわばコンマスの役割を担っていたようだが、それにしても彼女のバイオリンが飛び抜けてよく聴こえたなあ。小ホール5列目で方向が彼女の方を向いていたからだろうか?まさかね。


♪2016-32/♪東京文化会館-03

2016年3月19日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第315回横浜定期演奏会

2016-03-19 @みなとみらいホール


広上淳一:指揮
南紫音:バイオリン*
日本フィルハーモニー交響楽団

チャイコフスキー:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品35*
ベートーベン:交響曲第7番イ長調 作品92
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アンコール
グラジナ・バツェヴィチ:ポーリッシュ カプリツィオ*
J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番 BWV1068から「アリア」

今回はどうしたことか、チャイコのバイオリン協奏曲にベートーベンの7番て組合せが名曲コンサート過ぎないか?
いずれも名曲なんだけど、あまりに聴く機会が多いので聴く側の集中力が高まらないのは、もちろん音楽のせいじゃないけど。
会場に向かう際に心のときめきがないのは困ったものだ。

この日の演奏は、ケレン味もなくそつもなく違和感もなくすんなりと受け止められるものだったが、チャイコについては昨秋のhr響+五嶋龍の演奏が、ベートーベンについては先月の川瀬賢太郎+神奈川フィルの演奏が素晴らしかったので、つい比較して物足りなさを感じてしまう。

南紫音は初聴き。クラシック倶楽部などの放送録画はいくつか持っているので、無伴奏ものやバイオリンソナタなどは聴いていたが、協奏曲は放送を含め聴いていなかった。

ロン=ティボー国際コンクール2位やハノーファー国際コンクール2位などの受賞歴が安定した実力を表しているように、協奏曲も巧いというのか、そのへんのところはよく分からないのだけど、普通に楽しめた。が、上述したように、世の中にはもっと胸を躍らせる演奏があることは事実だ。

それに今日は、体調もイマイチで緊張感を維持できず、チャイコもベートーベンも軽音楽のようにぼんやり聴き入ってしまったが、こういう日があってもいいことにしよう。

彼女がアンコールで弾いた作品は、これも初聴きだし、そもそもグラジナ・バツェヴィッチという作曲家が存在することすら知らなかった…と帰宅するまで思っていたが、家でiTunes ライブラリーを検索してみたら五嶋みどり10枚組の中の「アンコール!」という小品集(この1枚は単独でも持っていたよ!)の中にグラジナ・バツェヴィッチの「オベレック第2番」というのが入っていた。
何者か、と思って調べたら現代ポーランドの女性作曲家だった。
「オベレック第2番」にしてもアンコールの「ポーランド舞曲」にしても後期ロマン派(民族音楽ぽい)の音楽のようで、とても20世紀後半まで生きていた人とは思えない分かりやすい音楽だった。


♪2016-031/♪みなとみらいホール-10

横浜交響楽団第669回定期演奏会

2016-03-19 @県立音楽堂


田中健:指揮
山中歩夢:ピアノ*
横浜交響楽団

オットー・ニコライ:歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18*
ブラームス:交響曲第2番ニ長調 作品73
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アンコール
リスト:「愛の夢」第3番変イ長調*

ピアノ独奏の山中歩夢くんというのは、芸大卒業後、幾つかのプロオケとの競演も経験し、現在はハンガリー、リスト・フェレンツ音楽大学で学んでいるそうだ。セミ・プロというところか。
このクラスでは、「オーケストラの共演はなかなかできることではないので、本当に楽しみです。」と本人のブログに書いてあった。

ラフマニノフのピアノ協奏曲は全部で4曲あるが、映画でも度々取り上げられている第2番がダントツに有名で、ついで第3番だろうか。良くコンサートで聴くのはこの2曲で、第4番はナマでは一度も聴いたことがないように思う。

この2番、僕が横響で聴くのは初めてだが、699回定期というプロオケもびっくりの歴史を有する横響としてはもう何度も演奏しているのだろう。

山中君のピアノ捌きもお見事だったし、オケのサポートも良い出来栄えだった。

さて、そのあとのブラームス交響曲第2番は、冒頭の低弦と木管のやり取りがぎこちなくて、そのせいばかりではないけど、全体の構成感にまとまりを欠いて音楽的緊張感が持続できなかった。
やはり、ブラームスは少しでも緩むと空中分解してしまうのが恐ろしい。 


♪2016-030/♪県立音楽堂-02

2016年3月18日金曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2016前期 ≪楽興の時≫上原彩子ピアノ・リサイタル

2016-03-18 @みなとみらいホール


上原彩子:ピアノ

モーツァルト:フランスの歌「ああ、お母さん聞いて」による12の変奏曲 ハ長調 K265
シューベルト:「楽興の時」 Op94 D780<全6曲>
クライスラー(ラフマニノフ編):「愛の悲しみ」、「愛の喜び」
ラフマニノフ:楽興の時 Op16<全6曲>
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アンコール
チャイコフスキー:「四季」から「3月ひばりの歌」
同(上原彩子編):「くるみ割り人形」から「花のワルツ」


上原彩子が日本の楽壇でどのように評価されているのか知らないけど、経歴を読むと、実に多くの有名コンクールで上位入賞している。その中でも白眉は第12回チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門第1位獲得だろう。女性の第1位は彼女が史上初だったそうだ。また、日本人が第1位になったのもこの時の彼女が最初。その後も2015年までピアノ部門では日本人は入賞さえしていない(第13回のバイオリン部門では神尾真由子が第1位、有希・マヌエラ・ヤンケが国籍はドイツだが3位だった。)。

このクラスになるとメカニカルな技量に驚くのではなく、音楽表現の豊かさ、確かさ、のようなものこそ聴き取らなくてはいけないのだろうけど自信がない。
ま、共感できるとか違和感を感ずるとかその程度の受け止め方しかできないけど、まずは、演奏家が拓いてくれる音楽世界に素直な気持ちで臨むことが肝心かな。

事前の情報や当日配られたプログラムをみると、シューベルト&ラフマニノフの2つの「楽興の時」を軸に据えた軽めの構成と思いきや、ラフマニノフが編曲したクライスラーのミミタコのような小品2曲でガラッと様子が変わった。
ラフマニノフがバイオリンとピアノのための原曲をピアノ独奏用に編曲したものは、少なくともナマで聴くのは初めてだったが、これがなかなか興趣に富んだ大作風仕上がりで、クライスラーの「愛の~」シリーズに抱いていたピアノ発表会用小品というイメージが覆って驚いた。

続くラフマニノフの「楽興の時」も、どうせ知っている曲だろうと軽く構えていたが、どうもこれも初聴きらしい。シューベルトの「楽興の時」とは全然様相が異なって、いかにもラフマニノフらしい絢爛豪華なピアノテクニックが繰り広げられる。


ここまで来て、チャイコフスキー・コンクール第1位らしい選曲だなあ、と納得した。
さらにアンコールの2曲めが素晴らしい。
チャイコフスキーの有名な「花のワルツ」が超絶技巧風で圧巻なのだ。
終演後、ロビーに貼りだされたアンコール曲目を読んでもっとびっくり。なんと「花のワルツ」は上原彩子自身の編曲だった!
やっぱり、只者ではない。 


♪2016-029/♪みなとみらいホール-09

2016年3月13日日曜日

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団名曲全集 第115回

2016-03-13 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ハンスイェルク・シェレンベルガー:指揮
郷古廉:バイオリン*
東京交響楽団

ベートーベン:バイオリン協奏曲ニ長調 作品61*
ブラームス:交響曲 第2番ニ長調 作品73
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アンコール
イザイ:無伴奏バイオリンソナタ第2番から第2楽章憂鬱*
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番ト短調


シェレンベルガー指揮でベートーベンVn協奏曲(郷古廉)とブラームス交響曲2番という鉄板のプログラムだったが、全体にこじんまりとまとまって、面白みには欠けたかな…とは欲深い聴衆の声。 

確かに刮目すべき部分もなく、さりとて違和感もなく、耳に馴染んだ音楽が心地よく通りすぎてしまった。

今、思い返しても不思議なくらい、印象が希薄だったのは、当方の体調がイマイチだったということも原因だろう。
そんな状態で聴いたのは申し訳ないし、もったいなかったが、こちらも生身。そういう日もあるから、やむを得ないな。



♪2016-028/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-06

2016年3月12日土曜日

J.S.バッハ「マタイ受難曲」演奏会 聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団

2016-03-12 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ゴットホルト・シュヴァルツ:指揮
聖トーマス教会合唱団
ゲヴァントハウス管弦楽団

ソプラノ:シビッラ・ルーベンス
アルト:マリー=クロード・シャピュイ
テノール:マルティン・ペッツォルト[福音史家とテノール]
バス:クラウス・ヘーガー[キリスト] 
バス:フローリアン・ベッシュ

J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244


これほど正真正銘のマタイはあるまい。
バッハがカントールを務めた教会合唱団とメンデルスゾーンが約100年ぶりに「マタイ受難曲」の復活上演を行ったゲヴァントハウス管弦楽団による演奏だ。

大曲であるからオーケストラの定期演奏会では取り上げられないので、生演奏を聴けるのは平均すれば数年に一度だ。と言っても、たまたま昨年は「熱狂の日」でバッハ・コレギウム・ジャパンのマタイを聴いたが、2年連続して聴くのは珍しい。アマチュアコーラスの演奏会を探せば機会は増えるだろうけど。

バッハ・コレギウム・ジャパンの時は基本的に古楽のアプローチで、アルトは男性(カウンターテナー)だった。これがつまらなかったと、その時の鑑賞ノートに書いている。

ゲヴァントハウスはモダン楽器中心で、一部に古楽器を用いていた。聖トーマス教会合唱団は少年合唱団だ。声楽の独唱は成人の男声、女声なので、カウンターテナーは存在しない。
この方が自然だと思う。


オーケストラは左右に2組が一対をなして対置している。
これは確か、バッハの時代に教会に祭壇が2つあって、それぞれに合唱団と伴奏楽器が位置したことに始まったと、本で読んだ記憶がある。声楽のソロも左右に分かれて歌う。
過去のマタイ観賞では問題意識も知識もなかったので、そういうふうにオケやソリストが並んでいたかどうかは記憶に無いが、今回は舞台上の楽器配置もよく見えて、なるほどこういう形で歌われるべきものなのか、と得心した。


音楽については何も言うことはない。
素晴らしい音楽をこれ以上は望めないような演奏家たちによって、それもミューザの特等席で聴くのは誠に至福の3時間であった。


♪2016-027/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-05

2016年3月11日金曜日

国立演芸場3月中席

2016-03-11@国立演芸場

落語 桂昇羊⇒初天神
落語 桂翔丸⇒つる
漫才 コントD51
落語 春風亭鹿の子⇒袈裟御前~かっぽれ~
曲芸 翁家喜楽・喜乃
落語 桂幸丸⇒野口英世伝
―仲入り―
奇術 山上兄弟
落語 春風亭柳之助⇒時そば
曲独楽 やなぎ南玉
落語 春風亭小柳枝⇒井戸の茶碗

 
寄席って過去に一度行ったきりで、それも数十年前のことだ。
落語など好きだけどわざわざ寄席へ行かなくとも、お気に入りの作品はCDでそこそこ持っているし、Youtubeで聴くこともできるのでながく行かなかったのだけど、歌舞伎の縁で国立劇場の「あぜくら会」にも入会したので、チケッが取り易くなり、自宅まで配送してくれるので、ちょいとついでに落語でもと思って出かけることにした。

国立演芸場といっても席は300しかないので建物自体も隣の大劇場と比べたらえらく小さい。というより外見は貧相だ。もっと立派にできなかったものか。

さて、たくさんの演目の中で、感心したものは、翁家喜楽・喜乃親子による「曲芸」だ。傘の上で色んな物を回したり、顎の上に棒を立てて茶碗やら房の付いた棒などを積み上げていくバランス芸だ。まあ、目新しさはないけど、そこがむしろ楽しい。
やなぎ南玉の「曲独楽」も同様で、最近ではTVでさえ見ることがなくなった回転している独楽を扇の紙の端や日本刃で刃渡りしたりして見せてくれるのだけど、驚きはないけど、懐かしさを感じて良かった。

「奇術」の山上兄弟。まだ20歳前後と見えたが、なかなか堂に入ったものだ。1人が箱の中に入り、蓋を占めてからその箱に何本もの先の尖った金属棒を突き刺して、蓋を開けるとあら不思議、誰もいない。再度蓋を閉めて棒を抜き取るとなかから最初の青年が入っている。そういうのが、もう一つあった。人間の体が箱ごと分断され多様に見えてまた元に戻る。
これもよく見る芸だけど、間近で見ているのにタネが分からない。

最後は春風亭小柳枝の「落語」。知っている話だったが、さすがにトリだけあって、それまでに出た落語家の話とは俄然違ってうまい。


フリをしているようでは一人前じゃない。
自然にそのまんまが芸になって表に出てそれがおかしい、そういうのでなくちゃいけない。でも、粋なフリをしているがそれが板についていない落語家が実に多いのは嘆かわしい。


♪2016-026/♪国立演芸場-01

2016年3月5日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第317回

2016-03-05@みなとみらいホール


尾高忠明:指揮
宮田大:チェロ*
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

E.エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 作品85*
W.ウォルトン:交響曲第1番 変ロ短調
-----------------
アンコール
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番から「ブーレ」*
E.エルガー:エニグマ変奏曲作品36から第9曲「ニムロッド」

指揮の尾高忠明は英国音楽に造詣が深いそうだ。それでエルガーとウィリアム・ウォルトンの作品が取り上げられたのだろう。結果的にはアンコール(管弦楽)もエルガーだったので、宮田大のアンコールがJ.S.バッハではなく、ブリテンの無伴奏組曲をやってくれたら完璧だったのに惜しい。

エルガーのチェロ協奏曲は、出だしがチェロの独奏で、まるでバッハの無伴奏曲のように始まるが、そのチェロの音がただものではない。楽器はストラディヴァリウスだそうだが、そうと知っているから余計にきれいに聴こえたのかもしれないけど実に惚れ惚れする魅力的な音だ。また、聴いてみたい。

独奏チェロだけではなく、この日の神奈川フィルは弦の音がきれいなのに驚いた。


さて、ウォルトンという作曲家の名前は初めてだった。
その音楽については、放送や映画で彼の音楽を聴いているのかもしれないのだけど、意識して聴いたのは今回初めてだ。

1983年まで生きていた人だから現代作曲家だが、今回の交響曲第1番を聴く限りでは、調性のある音楽で、ところどころ刺激的な不協和音が使われるけど、全体として馴染みやすい。というより、まるで映画音楽のようだった。

1935年に完成したそうだから、第2次世界大戦前夜だ。
そういう時代の雰囲気を表わそうとしたのか、全体に非常に劇的で重苦しい。とくに第1楽章では、僕は「ベン・ハー」の海戦シーンを思い出した。

第2楽章と第3楽章は古典の形式に照らせば入れ替わっている。

第2楽章はテンポの速いスケルツォだが「邪気を以って」という発想記号が付いているそうだ。確かに不気味な曲調だ。
第3楽章がアンダンテだがこれにも「憂鬱なアンダンテ」と記されているという。テンポはゆっくりだけど、曲調はやはり暗く、時に激しい。

終楽章は前全3楽章の重苦しさを吹き飛ばしそうな予感を与えて始まる。
ティンパニーは2セット並んでいるが、2つ目の出番はようやく終楽章の中盤以降だ。銅羅も同じくここに来てようやく使われる。
緊張感は益々高まりいよいよクライマックスか…と思わせて、なかなかたどり着かない。終曲をうんと引き延ばした感じのジリジリさせる打撃音が何回か続いて、遂にダウンする。

やはり、全曲、劇的緊張感が漲っていて気の休まる部分はなく、翻弄され続けて、終曲してようやく気分が解放されるという意味ではカタルシスだが同時にドッと疲れが襲ってくる。

しかし、館内の大きな拍手歓声は、かつて神奈川フィルの演奏会で聞いたことがないものだった。
確かに、この日の神奈川フィルは弦の音が澄んで弱音もきれいだった。ホルンがいつになく見事なハーモニーを聴かせてくれた。
一曲入魂というか、高い集中力を維持してこの激しい大曲を演奏しきった。

演奏する音楽によっても演奏の出来は異なって聴こえるが、指揮者の力量もあったのかもしれない。

演奏後、尾高氏が客席に向かって話しかけ、神奈川フィルを初めて指揮したのは10年前だが、今日、こんなにも成長した、といった趣旨だったと思う。

これほどの重厚長大曲を演奏した後にまさかアンコールを演奏するとは思わなかったので尾高氏が再び指揮台に立ったのには驚いた。
その曲がエルガーのエニグマ変奏曲からその第9変奏「ニムロッド」で、これがなんとも美しく、会場はしばし幸福感に包まれた。


神奈川フィルにとっては歴史に残る演奏会となったろう。
僕にとってもこれは記憶に刻み込まれたと思う。


♪2016-025/♪みなとみらいホール-08

2016年3月4日金曜日

みなとみらいクラシック・クルーズ Vol.75 ベルマン・トリオ

2016-03-04 @みなとみらいホール


-- ベルマン・トリオ --
スヴェン・ファン・クイプ:クラリネット
ウルリッヒ・ビュージング:バスクラリネット&バセットホルン*
ジョンノエル・アッタルド:ピアノ

メンデルスゾーン:クラリネット、バセットホルンとピアノのためのコンツェルトシュテュック(協奏的小品)第1番ヘ短調Op.113 *
久保摩耶子:まつり 
グリンカ:ピアノ三重奏曲ニ短調「悲愴」
-----------------
アンコール
ピアソラ:ブエノスアイレスの夏


クラシック・クルーズの今季の最終回であり、クルーズという企画自体の最終回だ。来季からはクラシック・マチネというシリーズに衣替えされ、回数は少なくなるし料金が高くなる。とはいえ、依然破格の低料金であることには変わらないので、安価良質の室内楽を楽しめるのはありがたい。

今回はクラリネットとピアノの「ベルマン・トリオ」だ。初めて目にする名前だ。クラリネットの2人はフランクフルト放送交響楽団のメンバーらしい。

クラリネット・トリオと言ってもクラリネットの1本はバスクラリネット又はバセットホルンという組合わせだ。
バセットホルン自体は、稀にオーケストラ曲で使われることがあって舞台では見たことがあるが、その音を意識して聴いたのは初めてだ。クラリネットと同じような高音も出ていたように思うが、全く同じならこの楽器の存在意義はないので、実際は中音から低域が拡張されているらしい。弦楽アンサンブルで言えばビオラかな。バスクラリネットがチェロに当たるのだろう。

演奏された3曲+アンコールはすべて初めて聴くものばかり。

メンデルスゾーンの協奏的小品は帰宅後調べたらCDを持っていた。実は聴いたことがなかった。CDに収められているのはクラリネット、ファゴット、ピアノの三重奏だ。多分これがオリジナルだろう。かなりメランコリックでクラリネットの哀愁に満ちた音色に合っているようだ。

久保摩耶子「まつり」はこのトリオからの委嘱作らしい。
作曲した御本人が登壇して曲の解説をしてくれた。
「阿波踊り」をテーマにした賑やかな曲だった。ピアノもクラリネットも打楽器のような使い方も織り込まれたまさに「現代」音楽だが、もの珍しさもあって、案外楽しめた。 

グリンカの三重奏曲も、オリジナルはクラリネット、ファゴット、ピアノらしい。
こちらも「悲愴」というタイトルどおりでメランコリックな曲調だが冒頭の主題(第4楽章でも繰り返される)が特徴的な旋律だが安っぽい感じがしたなあ。


♪2016-024/♪みなとみらいホール-07