2021年10月30日土曜日

東京都交響楽団 プロムナードコンサート No.393

2021-10-30 @サントリーホール



小泉和裕:指揮
東京都交響楽団
佐藤晴真:チェロ*


ドボルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104*
ドボルザーク:交響曲第8番 ト長調 op.88


ドボルザーク2本立て。

運が悪いことに、
チェロ協奏曲は2週間前に宮田大+ラザレフ+読響で、
交響曲第8番は8日前にブロムシュテット+N響で聴いた。

他のオケと比べながら聴くのは鑑賞の楽しみを狭くする。

それぞれの良いところを見つける楽しみを会得したい!

等と殊勝な心構えで…初めは…いたけれど、そうもいかんのである。


佐藤晴真くんのチェロの鳴りが悪かったのは楽器とホールの相性の問題か?それもあるかもだが、主にサントリーホールの床に問題があるのではないかと、素人のくせに大胆な仮説を立てている。というのもこのホールではピアノでも響きが鈍重だからだ。

(でも、不思議なことに同じ都響@サントリーでの金川真弓のバイオリンは良く鳴っていた。尤も、彼女のバイオリンは都響@文化会館でも良い音を響かせていたので、『名曲探偵』の推理は行き詰まる。)


都響は、大抵いつも編成が大きい。

協奏曲を弦16型で演奏するのは都響だけ?

独奏楽器が埋もれがちになるのは確かだ。采配が難しい。


その大きな編成が交響曲8番では奏功した。
低弦の重厚感は音の良さも相まって素晴らしい迫力。

細かいところで、ピッタリ感不足だが、8日前にN響を聴いていなければ、確実に「都響の特大管弦楽を楽しんだ」等と書いたろう。


小泉師の指揮ぶりは好きだ。
全く外連味がない。正統の安心感。


♪2021-121/♪サントリーホール-16

2021年10月27日水曜日

第1941回 NHK交響楽団 定期公演 B-1

2021-10-27 @サントリーホール



ヘルベルト・ブロムシュテット:指揮
NHK交響楽団

ステンハンマル:セレナード ヘ長調 作品31
ベートーベン:交響曲第5番ハ短調 作品67


N響定期プログラムB-1の会員にとっては今日が今季ブロム翁の最後の公演だった。


そのせいか、カーテンコールはC-1の時以上に盛り上がったが、コンマスのマロ氏が舞台上でもなお盛り上げるので、客席もかつて経験した事がないような拍手とスタンディング・オーベイションで常ナラヌ様相だった。正真正銘最後となる明日(B-2)はどんな事になるやら。


敬愛の念で満たされ、気持ちが繋がった指揮者とオケの演奏はそれだけで心豊かになる。


しかし、さあて、今日の出来は?


先日、響の悪い池袋で素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれたのだが、もちっとマシな響きのサントリーなのに、あの透明感は何処に?もちろん悪くはないのだけど。


Cを聴いていなければ上出来と思ったろうに。


良い演奏を聴くということは、次に良い演奏を聴く機会が少なくなるというジレンマと闘い続け、もっと良い演奏を求める事になる。


あゝ、こういう聴き方をしていちゃいかんなあ。


「運命」冒頭。

スリリングだった。

指揮は頭の拍を打つだけなのに、よくリズムが合うものだ。

2度目の運命の音形は崩れるかと思ったが、コンマスが強引に合わせたという感じがしたよ。それでも揃うのだから大したものだ。


♪2021-120/♪サントリーホール-15

2021年10月26日火曜日

バレエ「白鳥の湖」<新制作>

 2021-10-26 @新国立劇場



【指揮】ポール・マーフィー
【振付】マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ/ピーター・ライト
【演出】ピーター・ライト
【共同演出】ガリーナ・サムソワ
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【美術・衣裳】フィリップ・プロウズ
【照明】ピーター・タイガン

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【オデット/オディール】柴山紗帆
【ジークフリード王子】伊澤駿

バレエ「白鳥の湖」全4

上演時間:約3時間
第Ⅰ-Ⅱ幕       
70分
  休憩         25分
第Ⅲ幕        40分
  休憩         20分
第Ⅳ幕        25分



バレエは数十年前に卒業した⁉︎ので、それ程の久しぶりの生舞台だった。

やっぱり生だな。

BSなどで放映・録画は観ているけど、生の迫力は格段に大きく強い。

オペラでもコンサートでも生に限るけど、肉体が縦横無尽に躍動するバレエではとりわけの感がある。

コンサートでは時々バレエ音楽(組曲)を聴くことがあるが、今日、つくづく思ったよ。バレエ抜きのバレエ音楽ってなんだろ!

耳に馴染んだ名曲が次から次からバレエと共に繰り出されるのを聴き、観るのは、本当に至福の3時間だった。

黒鳥の踊る片足32回転!
もう、素晴らしいの一言。


厳しく鍛え抜かれた肉体が徹底的に優雅さを求める。

男性も踊るが主たる役割は女性ダンサーをいかに美しく見せるかにある。

そのアンビバレントな美学。引き裂かれそうな快感!


舞台を観ながら歌舞伎を思い出していた。

だんまりの芸、所作事、見得など共通する要素が多い。

大勢の出演者の名前まで書けないから、キャスト表を貼っておこう。
4羽の白鳥たち、2羽の白鳥
たち、32羽の白鳥たち。

みんな素晴らしかった。


♪2021-110/♪新国立劇場-09

2021年10月24日日曜日

名曲全集第170回 モーツァルト没後230年。祈りを込める「レクイエム」

2021-10-24 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ジョナサン・ノット:指揮

東京交響楽団
新国立劇場合唱団*

ソプラノ:三宅理恵*
メゾソプラノ:小泉詠子*
テノール:櫻田亮*
バスバリトン:ニール・デイヴィス*

デュティユー:交響曲第1番
モーツァルト:レクイエム K. 626(リゲティ:ルクス・エテルナを含む)*




指揮のジョナサン・ノットが来日できなくなった定期演奏会で、事前に指揮ぶりを収録したビデオで東響に(リハではなくお客を入れた本番で)演奏させた事は驚愕だった。


もし彼がベルリン・フィルやウィーン・フィルを指揮するとしたら、このような事をするだろうか?

しないだろうし、オケも受け入れないだろう。

日本のオケやお客をバカにしているのではないか。


そこからノット不信が始まった。


今回、モーツァルト「レクイエム」にリゲティ「ルクス・エテルナ」を混在させた事は、ビデオ指揮とは異なり、音楽表現上の問題だから罪は軽い。否、無罪かもしれないが、彼のコロコロ変わる思いつきがオケ関係者を振り回していることは確かで、この点は微罪処分に相当する。


当初のプログラムにはリゲティは含まれなかった。

1回目の訂正でモツ・レクの後に演奏すると発表され、

2回目の訂正で終曲前に挿入することとされた。


リゲティ「ルクス・エテルナ」は世界的に高明なペーター・ダイクストラ指揮スウェーデン放送合唱団で聴いたことがあり、精緻な和声?に驚き感心したので、モツ・レクとは独立して聴きたかった。


どうせ、モーツァルトの完全作ではないのだから、他人の、現代作品を挿入して演奏するのも、格別気にする事もないのかもしれないが、少なくとも苦労して今日の形を完成したジュスマイヤーには失礼かも。


今回、演奏中、ジュスマイヤーの手にならない2曲(「涙にくれる、その日」とリゲティ「ルクス〜」)の前には仏壇に置いてある鐘?がチ〜ンと鳴らされたのは、ジュスマイヤーよ、化けて出るなよ!というお祓いのようだ。


良い点:弦編成が8-8-6-4-3。声楽は30人程。これはスッキリと聴けた。それに演奏自体悪くなかった。


挿入場所が問題のリゲ「ルクス〜」。

当初は東響コと発表されたが、これも新国合唱団に代わって良かった…と思っていたが、瑞典放送合唱団の透明さと滑らかさには及ばず。

あゝ違うなあ〜と思いながら聴いていたよ。


ブーイングが起こってもおかしくない演奏会だったが、客席はスタンディング・オーベイションで歓迎した。


♪2021-118/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-35

2021年10月23日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第372回定期演奏会

2021-10-23 @ミューザ川崎シンフォニーホール


小泉和裕:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

モーツァルト:交響曲第40番ト短調 K.550
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64


神奈川フィルにハズレなし…とこの日まで思っていたが、前夜に素晴らしいブロムシュテット翁+N響を聴いたので、物差しの目盛りが一段細かくなってしまった。

いくら好演とはいえど、N響と比べると《やや》落ちる!
それにモーツァルト交響曲第40番の弦編成が14型というのも収まりが悪かった(もう少し小振りで聴きたい音楽だ。)。

後半のチャイコフスキー交響曲第5番は、運悪く?前日、同じミューザの席も1列1番違いで読響の凄まじい演奏を聴いたばかり。
両者の一番の違いは神フィルも上出来だったホルンセクション以外の金管だ。

読響の金管は華やかで朗々と突き抜ける明るさがあった。
神フィルも上手だったが及ばず。

先に聴いておれば、ハズレ無し記録更新だったろうに。



♪2021-117/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-034

2021年10月22日金曜日

第1940回 NHK交響楽団 定期公演 池袋C-1

2021-10-22 @東京芸術劇場大ホール



ヘルベルト・ブロムシュテット:指揮
NHK交響楽団

グリーグ:「ペール・ギュント」組曲第1番 作品46
ドボルザーク:交響曲第8番ト長調 作品88


ほぼ2年ぶりのブロム翁だった。

登場を待つ間も含め、彼と同じ時間・空間を共有しているだけで、なにやらありがたい気持ちになる。


今回は早めに出かけて、休憩なし短時間公演の穴埋めか申し訳か、プレ室内楽も聴いた。

Vn1白井圭、Vn 2大林修子、Va佐々木亮のトリオでマルティヌー「セレナーデ2番」。


3人とも田中千香士門下生だったそうだ。

懐かしい名前を聞いたよ。N響コンマスの前に京響のコンマスもしていたな。


で、響の悪いホールでの弦楽トリオは音にふくよかさがないから全く面白くない。次回からパスしよう。


ところが、本番が始まるとN響の弦の響きが見事に美しい。

乾いた響きのホールなので、シャリシャリ感は払拭できないが、それさえも美しいと感じさせるピタッと揃った響に驚く。


白井圭のコンマスではもう何度も聴いているが今回が1番の上出来。彼の手腕かブロム翁の手腕か、全員が気持ちを一つにできたんじゃないか。

芸劇でもここまでやれるか!


管部門も各自が巧い。 


今季C定期はコスパが悪いなと思っていたけど始まってみるとPヤルヴィの前回も良かったが、今回はそれ以上に至福の時を過ごした。

一頭地抜くN響の巧さ。

管弦楽とはこういうものだ、という基準となる演奏だ。


ま、これが良し悪しで、上出来を聴けばそれが物差しになり、それを超えるものが少なくなるジレンマが悲しい。


♪2021-116/♪東京芸術劇場大ホール-03

読響第3回川崎マチネーシリーズ

2021-10-22 @ミューザ川崎シンフォニーホール




小林研一郎:指揮
読売日本交響楽団

服部百音:バイオリン*

チャイコフスキー:バイオリン協奏曲ニ長調 作品35*
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 作品64 
----アンコール-------------
クライスラー:レシタティーヴォとスケルツォ*
チャイコ5番終楽章最後の90秒!


チャイコフスキー2本立て。
服部百音のバイオリンは十分良かった?のだけど、如何せん、月初に聴いた辻彩奈+都響のメンデルスゾーン@アプリコがずば抜けて素晴らしい演奏で、バイオリンの明瞭で美しい響きといい、オケのバックアップ、オケとの絡み等、バイオリン協奏曲の理想形と言いたいような名演を聴いてしまった後では分が悪い。

ミューザの12列目(2CA最前列)中央という良席だ。

蚊の鳴くようなharmonicsも聴き取れるが強奏となると思いのほか音圧が不足した。

辻彩奈@アプリコでも席は12列中央だったので、舞台からの距離はほぼ同じだった。
何が原因か分からないが、先に辻のメンコンを聴いていなければとても良い印象を持ったと思う。

メインはチャイコフスキー交響曲第5番。
弦の編成は1プルト増えて14型。

炎のコバケン氏、最近は独自色がすっかり陰を潜めて聴き馴染んだ(正統的?)音楽作りだ。これが良かった。

弦の響きも、管弦の混じり具合も、朗々たるブラスの咆哮も凄まじく、これぞ読響サウンド。

♪2021-115/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-33

2021年10月21日木曜日

東京都交響楽団 第937回 定期演奏会Bシリーズ

2021-10-21 @サントリーホール


大野和士:指揮
東京都交響楽団
藤村実穂子:メゾソプラノ*

すぎやまこういち:交響組曲「ドラゴンクエストⅡ」からレクイエム(氏の急逝を追悼して急遽追加)
R.シュトラウス:交響詩《死と変容》 op.24
ツェムリンスキー:メーテルリンクの詩による6つの歌 op.13*
R.シュトラウス:交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》op.30


すぎやまこういち作:交響組曲「ドラゴンクエストⅡ」から「レクイエム」は初聴きだけど耳障りの良い音楽。


「死と変容」…半分は睡魔と格闘。


「6つの歌」…不思議なもので、全曲歌の切れ目を覚えているのに夢心地。


休憩を挟んで一番聴きたかった「ツァラトゥストラ」は16型大編成で寝ているどころじゃない。


「2001年宇宙の旅」冒頭のファンファーレ!

ここでのオルガンや大太鼓、ティンパニー、コントラファゴット等の重低音は、その昔、再生テスト《LP》にも使われていた。当時の我が家のHiFi装置ではゴロゴロ鳴って失格だったが。


さて、この曲は19年4月N響Aを遅刻して聴き逃す痛恨のミスを犯したので、ナマは本当に久しぶり。


こういうド派手な音楽をやると、都響の失対事業のような大型編成が生きてくる。

弦もがんばるが、なんといってもバスドラムを軸に打楽器と金管が耳をつん裂く大音量で嬉しい。


静かな部分もあるが、ずっと緊張が張り詰めて最後のクライマックスを迎える。


哲学者枝雀が「落語は緊張と緩和の芸」と言っていたが、時間芸術とは押し並べてそういうものだろう。


最後に頂点に達した緊張は解き放たれ、穏やかな終曲を迎える…かに見せてどっこい、忘れ物をしたような不安を残す。


都響の力技がとても良かった。


♪2021-114/♪サントリーホール-14

10月歌舞伎公演「通し狂言 伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」

2021-10-21 @国立劇場


近松徳三=作
通し狂言「伊勢音頭恋寝刃」(いせおんどこいのねたば)
 三幕七場
 国立劇場美術係=美術       

序幕
 第一場 伊勢街道相の山の場
 第二場 妙見町宿場の場
 第三場 野道追駆けの場
 第四場 野原地蔵前の場
 第五場 二見ヶ浦の場

二幕目 
 第一場 古市油屋店先の場
 第二場 同 奥庭の場

福岡貢          中村梅玉
藤浪左膳/料理人喜助    中村又五郎
油屋お紺         中村梅枝
油屋お鹿         中村歌昇
奴林平          中村萬太郎
油屋お岸         中村莟玉
徳島岩次実ハ藍玉屋北六   片岡市蔵
藍玉屋北六実ハ徳島岩次   坂東秀調
今田万次郎        中村扇雀
仲居万野         中村時蔵
              ほか



2015年に梅玉の主演で国立劇場では初めて通し狂言としてかけられたのを観た。


今回は、同じく「通し」といっても初演時に比べて一幕少ない。

コロナ以降の芝居は、概ね短縮形になっている。


役者も梅玉の他は莟玉(当時は梅丸)が同じ役で出ている他は多分全員変わっている。


歌舞伎としては色々見処(二見ヶ浦の場、油屋奥庭など)があるが、主人公が妖刀のせいにして殺される程の罪もない者8人ばかりに斬りつけ、その部下が「切れ味お見事!」と持ち上げて幕という構成や演出にちょいと疑問あり。

返り血を浴びた梅玉の見得などは残酷美でもあるが陰惨な印象が残った。


中村莟玉が同じ役で出ている(前回は10代だった!)が、6年経って女の色っぽさが益々磨かれたようで同慶の至り。

梅枝もいい女方だし、いずれは父時蔵が演じた大きな役の仲居万野を演るようになるのだろう。


今回は歌昇が生涯初めての女方だそうだが、滑稽な味も出して初めてとは思えない良い出来だった。


♪2021-113/♪国立劇場-08

2021年10月16日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 横浜第371回定期演奏会

2021-10-16 @カルッツかわさき



アレクサンドル・ラザレフ:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

宮田大:チェロ*

ドボルザーク:チェロ協奏曲ロ短調 op.104
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73
-------------------------
カザルス編:鳥の歌*
ブラームス:ハンガリー舞曲第2番二短調


18年の秋以来(記録ミス?)という久しぶりのラザレフはかなり劇的!に登場した。

オケより早く1人で登場してパントマイムショーで客席を笑わせたが、どうやら待機期間が不足していたらしい。

入退場は孤独に、指揮台周りは広く侵入禁止エリアが設定されていていた。


先月のPヤルヴィの場合はまろ氏が付き添っていたが、ラザレフは芸人だから1人無言コントで終演まで間を持たせ客席を沸かせた。


指揮台と独奏者宮田大との距離は間にVn1プルト入れても余るくらい離れている。コンマスは遥かに遠い。そのせいもあったか、ドボコンの出来はイマイチだった。


会場の響きの悪さが第一の原因で、音楽が薄っぺらく聴こえてしまう。宮田の音の良さは何度も経験しているが、カルッツではその美音に潤いがない。オケの響きも同様にとてもドライだ。


しかし、一方で気づきもあった。

ホールの響きが悪いと演奏だけでなく作品の出来まで露見させてしまう…ドボルザークとブラームスの音楽の差だ。


後半のブラームス交響曲第2番は、響きのハンデを乗り越えてしまう重厚なアンサンブルに圧倒される思いだった。これぞ本来の日フィルの底力。ラザレフは見事にそれを引き出していた。久しぶりとは言え、彼の指揮で聴くのはずいぶん回数を重ねているが、今日は、この人の底力も強く感じた。素晴らしい音楽を聴かせてくれた。終曲時に、これは珍しいことではないが、タクトを振り下ろすと同時にくるりと身を翻して客席にドヤ顔を見せる。いやはや、今日の演奏は本気でドヤ顔が似合ったよ。


ところで、ドボルザークとブラームスは管弦楽に対する考え方・作曲技法等に違いがあるのは当然として、それが作品に刻印されているが、決定的には才能が違うのではないか。

それゆえに顕れる音楽そのものの持つ力の差を、響の悪いホールのお陰で感じ、今更乍らブラームスの偉大さが身に沁みた。


♪2021-112/♪カルッツかわさき-02

2021年10月15日金曜日

横浜バロック室内合奏団定期演奏会99回 〜モーツァルトの魅力

 2021-10-15 @ひまわりの郷



横浜バロック室内合奏団

Vn小笠原伸子、有馬希和子、梅原真希子、眞中望美
Va小森佳奈、櫻井すみれ
Vc間瀬利雄、中垣文子
Cb大西雄二

小笠原伸子:独奏バイオリン*
百武由紀:独奏ビオラ*

早川昭三:バロック風「日本の四季」から「秋」
モーツァルト:セレナーデ第13番ト長調 K525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
モーツァルト:バイオリンとビオラの為の協奏交響曲 K364*
----------------
モーツァルト:ディヴェルティメント第17番ニ長調K334(320b)からメヌエット

今回も早川正昭:「バロック風日本の四季」から今回は「秋」。

これがホンに大傑作だ。3楽章形式で、用いられた原曲は「虫の声〜荒城の月〜村祭り」だが、いずれもビバルディをパロったバロック風仕上げが良くできていて、思わず笑ってしまう。次回「冬」も楽しみだ。いずれは全4曲を通しで聴きたいものだ。


今日は総勢8+1人の弦楽合奏。

横浜バロック〜は熟年婦人中心の合奏団だが、中に20歳台のお嬢さんが2人。

彼女達は「村祭り」を知らなかったそうだ。リハーサルの際にそれを知った主宰の小笠原女史が「世代間ギャップにとても驚きました!」と言っていたが、今の小学校の音楽教育はどうなっているんだ?日本文化でもあるこれらの名曲を是非とも次代に伝えていって欲しいね。


アイ・クラはこの1月で3回目。1月前に聴いた弦楽5重奏版がスリリングで面白かったが、今回も小編成ならではの面白さを楽しんだ。


後半はモーツァルト「バイオリンとビオラの為の協奏交響曲」。

第2楽章Andanteはちょいと泣かされそうに美しい。


独奏ビオラの音がガット弦らしく柔らかで実に綺麗な音だが独奏Vnとは合わない。

後で聞いたら、案の定、1&4弦だけガットを使っていたそうだ。こだわりの音作りだ。

であるなら、独奏バイオリンもガットで聴きたかったね。


♪2021-111/♪ひまわりの郷-3

2021年10月11日月曜日

ロッシーニ「チェネレントラ」<新制作>

2021-10-11 @新国立劇場



【指 揮】城谷正博
【演 出】粟國淳
【美術・衣裳】アレッサンドロ・チャンマルーギ
【照 明】大島祐夫
【振 付】上田遙
【舞台監督】髙橋尚史

【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

ドン・ラミーロ⇒ルネ・バルベラ
ダンディーニ⇒上江隼人
ドン・マニフィコ⇒アレッサンドロ・コルベッリ
アンジェリーナ⇒脇園彩
アリドーロ⇒ガブリエーレ・サゴーナ
クロリンダ⇒高橋薫子
ティーズベ⇒齊藤純子

ロッシーニ「チェネレントラ」<新制作>
全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約3時間15分
第Ⅰ幕 105分
  休憩25分
第Ⅱ幕 65分



元々、話は分かりやすく、アリアや重唱は変化に富んで明るい調子ばかり。なので、何にも手を加えずに順番に歌って行っても面白い。


でも、演出がNG。


大抵オペラをつまらなくするのは演出だ。粟國淳の演出は過去何度も観ているがどれも正統的で満足できたのに。


映画を作ると言う二重構造の設定で、劇中劇としてオペラ「チェネ〜」が進行する。


辻褄合わせに、字幕を一部変えたり、カメラマンや監督が劇中劇にもパントマイムで登場するが、目障りなだけ。


せめて、幕尻に「カット!」の声でも掛かれば工夫しているなと思うけど。


その無意味な演出には目を閉じて劇中劇を楽しめば、冒頭書いた様になかなかの傑作なのだ。


チェネレントラ役の脇園彩はハマり役だった。過去に新国ではドン・ジョヴァ、セビリアを観ていたが今回が一番魅力的(ま、誰が演じても良い結果になると思うが)。


大柄で舞台映えもするので、海外勢にも全く見劣り・聴き劣りなし。

むしろ、あちこちで長年Dマニフィコを歌っているAコルベッリに弾けたところがなかった。


ダンディーニの上江隼人も上出来で、存在感を示した。


下手な演出さえなかったらもっと楽しめたろうと思うと残念なり。


♪2021-110/♪新国立劇場-08

2021年10月10日日曜日

マエストロの白熱教室2021 指揮者・広上淳一の音楽道場

2021-10-11 @フィリアホール



広上淳一:指揮&指導
東京音楽大学学生
東京音楽大学特別オーケストラ

シューベルト:交響曲第5番変ロ長調 D485

厳密にはコンサートではない。

オケのリハでもなく、指揮者の卵のオケ付きレッスンだ。


2度の休憩を除き正味3時間余。

誠に白熱教室だった。


シューベルトの5番を材料に、卵が入れ替わり8人かな?

指導は広上師に加えて、東京音大の現役の教授陣。


現役の教授陣7〜8人が加わる事で引き締まった感じがある。

広上センセだけでは無駄なお喋りが長い。


オケのリハではないので響きを作るという作業はない。

音楽を作るという作業も今回は見られず、もっぱら、音楽にどう取り組むかといった抽象的な内容で、期待した面白さはなかったが、シュベ5を、もう散々聴いた。


3時間のレッスン中音が鳴っていたのは2時間超(全曲6回分に相当)だろう。

ずっと聴いていたのだけど、その魅力がだんだんと染み込んできたよ。


最後に、学生に混じってビオラを弾いていた先生曰く「シューベルトこそウィーンの音楽だ」。そういえば!と思う処もあり。


♪2021-109/♪フィリアホール-05

2021年10月8日金曜日

若き音楽家たちによるフレッシュ・オペラ ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ(椿姫)

2021-10-08 @サントリーホール




指揮:村上寿昭
演出:田口道子
舞台装置:大沢佐智子
照明:西田俊郎(ASG)
舞台監督:幸泉浩司

桐朋学園オーケストラ
サントリーホール オペラ・アカデミー
新国立劇場合唱団

ヴィオレッタ:大田原瑶(ソプラノ)
アルフレード:石井基幾(テノール)
ジェルモン:町英和(バリトン)
フローラ:佐藤路子(ソプラノ)
アンニーナ:三戸はるな(ソプラノ)
ガストン子爵:高柳圭(テノール)
ドゥフォール男爵:宮城島康(バリトン)
ドビニー侯爵:的場正剛(バス)
医師グランヴィル:五島真澄(バス)

ヴェルディ「椿姫」
(全3幕/イタリア語上演・日本語字幕付)

計3時間10分
第1幕 35分
<休憩20分>
第2幕 75分
<休憩20分>
第3幕 40分


海外キャストを招いた本格的舞台の合間に、舞台セット等利用できるものは利用して、カバーキャスト等で1日だけ開催されたものだ。


これまで、演奏会形式のオペラはサントリーホールを含めあちこちで見ているが、今回は様子が違った。

ホールオペラ®️というサントリーホールの登録商標付きのオペラなのだ。


みんな、本格的な衣装を纏い、演技をし、P席を取り払って簡易な舞台が作られ、照明も、プロジェクトマッピングも駆使して、かなり本物の舞台に近い作りなので、まずは、驚いた。


独唱者達は、中には何度も舞台で聴いている人が数人いたが、ほとんどが初聴きだった。しかし、当然みんな巧い!


ホールオペラ®️はかなり魅力的だ。

1階席からは舞台がやや高い。字幕はもっと高い。

ので、むしろ2階席からの方が楽ちんに鑑賞できるかもしれない。

ともかく、お客には手頃な料金で、若手歌手には得難い舞台経験を与える良い企画だ。

独立公演は無理だろうから今回の様な谷間の利用はとてもいい。


♪2021-108/♪サントリーホール-13

新日本フィル:すみだクラシックへの扉#2

2021-10-08 @すみだトリフォニーホール



秋山和慶:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
エマニュエル・リモルディ:ピアノ*

トドボルザーク:序曲「謝肉祭」op.92, B.169
ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 op.21*
シベリウス:交響曲第2番ニ長調 op.43
-------------------
ラフマニノフ:10の前奏曲 Op23 から10番*


恐縮して前もってお断り。前日の長尺映画鑑賞と震度5弱の為睡眠不足にて観賞。

Eリモルディは初聴きでショパン2番。悪くなかった。

問題は前後の2本。

まとまりに精彩を欠いた印象。

特にシベ2に繊細さが不足した。最近、これは良かった!と思うのは大抵12型以下。


編成が大きくなれば合わせにくいのは当然。DLは広く迫力もあるのだけど(終楽章のうねりなどとても好感)、終始ざわつき感が払拭できなかった。

秋山御大は6月の都響以来。

その時もシベ2本で、金川真弓を独奏に迎えたVn協が素晴らしかった。

それだけに満を辞しての交響曲2番に期待したが…。


♪2021-107/♪すみだトリフォニーホール-06


S席1階15列19番-20番

2021年10月3日日曜日

トップコンサートPart33 第37回かながわ音楽コンクール 入賞者が奏でる協奏曲

2021-10-03 @県立音楽堂



上野正博:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

加藤亜咲美:ピアノ
堺日和:フルート
杉山和駿:バイオリン

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18
バーバー:バイオリン協奏曲 作品14
ジョリヴェ:フルート協奏曲第1番


37回かながわ音楽コンクール入賞者+神奈川フィルの協奏曲演奏会。才能のある若い人の音楽を聴くのはとても楽しい。

驚いた事が幾つか。

独奏者3人のうち、2人が参加した全国学生音楽コンクール全国大会に僕も横浜市民賞選定委員(希望すれば大体OK)として聴きに行き、審査をしたのだ!

当時の高校生の演奏を、大学/院生となった今再び聴くことになるとはうれしい縁である。今後もこの楽しみが続きますように。

最年少はピアノの加藤嬢、17歳。
YAMAHAが協賛している事もあり、今日のPfは同社のC3X espressivoという新製品で、まあよく鳴ること。でも、最高級というわけではないらしい。中低域の響きに物足りなさもあったが、十分、良い音で、特に音楽堂の良い響が一層輝かせた。


ジョリヴェのフルート協奏曲は初聴きだ。現代の作家らしい。
オケが弦8型の計23人のみの編成。そこにフルートが良い対比を聴かせた。

ラフマニノフのピアノ協奏曲とバーバーのバイオリン協奏曲は弦10型+管打等。

つまりオケは3曲とも小編成だった。

神奈川フィルは石田コンマスを始め精鋭を揃えて見事なバックアップ。
弦が美しいと管がダメにする事があったり、その逆も。
しかし、今日の神フィルはなんて巧いのだ!
管弦の交わりも美しく、処々の管楽器のソロもミスなく(特にラフマニノフ1楽章のホルンのきれいな事)、聴いていてホンに気持ちが良かった。

神奈川フィルは、最近…と言ってもここ数年、本当にレベルを上げていると思うが、今日の演奏は首都圏オケの中でも3-4を争う上出来だったのではないか。今後が益々楽しみだ。


♪2021-106/♪神奈川県立音楽堂-06