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2019年7月16日火曜日

令和元年6月 第96回歌舞伎鑑賞教室「菅原伝授手習鑑ー車引」/「棒しばり」

2019-07-16 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた  坂東新悟

竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)  一幕
 ―車引(くるまびき)―
  国立劇場美術係=美術
  吉田社頭車引の場

岡村柿紅=作
棒しばり(ぼうしばり)  長唄囃子連中

(主な配役)
「菅原伝授手習鑑 -車引- 」
舎人松王丸⇒尾上松緑
舎人梅王丸⇒坂東亀蔵
舎人桜丸⇒坂東新悟
舎人杉王丸⇒中村玉太郎/尾上左近(交互出演)
藤原時平⇒中村松江
       ほか

「棒しばり」
次郎冠者⇒尾上松緑
太郎冠者⇒坂東亀蔵
曽根松兵衛⇒中村松江
        ほか

7月は短篇2本。菅原伝授手習鑑から「車引」。
三ツ子の兄弟の出会い・睨み合いを描くだけでこれといって面白い話ではないが、歌舞伎の荒事・和事・実事を隈取りや車鬢、衣装、小道具などで描き分ける点で入門にも相応しい。
松緑の松王丸、亀蔵の梅王丸やよし!

後半は「棒しばり」。
狂言から移された松羽目物。
オリジナルの狂言は若い頃に観ているが歌舞伎版は初見。
遠い記憶と照らしてはほぼ同じように思ったが…。
主人の留守中、悪さをせぬようにと次郎冠者は棒に両手を縛られ太郎冠者は後ろ手に縛られるが、二人協力して酒の壺から大酒する様のおかしさ。こちらも松緑と亀蔵が大活躍。

松江が前半では藤原時平、後半では大名(曽根松兵衛)の役で舞台を締めるはずだけど、イマイチ貫禄不足かなあ。この人は真面目一方な感じで(実際は知らないけど…)ハッタリが不足している。

♪2019-101/♪国立劇場-10

2014年3月25日火曜日

平成26年3月歌舞伎公演 菅原伝授手習鑑/處女翫浮名横櫛

2014-03-25 @国立劇場大劇場


●竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ) 一幕
-車引-       
吉田社頭車引の場


●河竹黙阿弥=作
国立劇場文芸研究会=補綴
處女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし)
二幕六場
-切られお富-
序幕     第一場 藤ヶ谷天神境内の場   
    第二場 赤間妾宅の場
二幕目 第一場 薩埵峠一つ家の場
    第二場 赤間屋見世先の場
    第三場 同 奥座敷の場
    第四場 狐ヶ崎の場


中村時蔵/中村錦之助/市川男女蔵/中村萬太郎/中村隼人/嵐橘三郎/上村吉弥/坂東秀調/坂東彌十郎/ほか


◆「菅原伝授手習鑑」という演目(外題)はよく知っていたけど、どんな話か知らなかった。
要約すれば、「菅原道真が讒言により大宰府に左遷され、最後は天神になる」と言う話らしい。
元は人形浄瑠璃として作られ、それが後に歌舞伎に移し替えられたもので、こういう出自の作品を「義太夫狂言」といい、本作と「義経千本桜」、「仮名手本忠臣蔵」が義太夫狂言の3大名作と呼ばれる…と俄勉強。

人形浄瑠璃では全五段で語られるうちの三段目の冒頭部分が今日の「車引(くるまびき)」。
「菅原伝授手習鑑」は、歌舞伎では通しで演じられることが少なく、「車引」や「賀の祝」、「寺子屋」の場が単独で演じられるのがフツウだそうだ。

その「車引」は1幕1場。上演時間にして35分ほど。物語のホンの一部に過ぎず、これを観たからといって「群盲象を撫ず」。
なんで単独上演されるのか?という疑問があったが、事前に解説は読んでいたけどなるほど実際に鑑賞すると合点する。

短い芝居の中に全体のエッセンスが込められていることのほか、歌舞伎の様式美の中の「荒事」と呼ばれる所作の見せ所なのだ。
それぞれに様式の異なる隈取や衣装を身に着けた三つ子の兄弟が運命に引き裂かれ敵対する立場で偶然出会い、牛車を引き合う(という設定で実際には触れもしないけど)形を大見得の連続、飛び六方、立ち回りなどで見せる。これも歌舞伎ならではの魅力であった。



◆「切られお富」は河竹黙阿弥によって書かれる(というより正しくは脚色だと思うが。)前に黙阿弥自身の手になる「切られ与三」があり、その前にはライバル作家による「切られ与三(与話情浮名横櫛)」があり、その作品は第三者による講談「お富与三郎」の脚色であり、それは事実に基づいている、というややこしい系譜で誕生した。

なんでこんなことを書いておくのかというと、僕の遠い記憶の中に「切られ与三(郎)」の映画の存在があリ、春日八郎の「お富さん」という歌
♪粋な黒塀 見越しの松に 仇な姿の 洗い髪 死んだ筈だよ お富さん 生きていたとは お釈迦さまでも 知らぬ仏の お富さん エーサオー 玄冶店♪
を今でも覚えているので、メッタ斬りにされたのは与三郎の方ではなかったか?という引っ掛かりがずっとあったからだ。

で、あれこれ調べると、つまり、ライバルの作った「切られ与三」の大ヒットを受けて河竹黙阿弥がお富をメッタ斬りにされるように作りなおしたのが「處女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし)全二幕六場」で、通称というのだろうか別名なのか「切られお富」とも呼ばれているということらしい。
尤も、本作は書替え作であるにもかかわらず原作を凌ぐという評価を得ているようだ。

今も耳に残っている印象的なセリフ、

与三郎:え、御新造(ごしんぞ)さんぇ、おかみさんぇ、お富さんぇ、
いやさ、これ、お富、久しぶりだなぁ。
お 富:そういうお前は。
与三郎:与三郎だ。
お 富:えぇっ。
与三郎:お主(のし)ゃぁ、おれを見忘れたか。
~(この後にも調子の良い啖呵が続く)

は、「切られ与三」のものであることも、今回知った。

では、このやりとりが「切られお富」では二人の立場が逆転して登場するかというとそうではない。

全体として、そんな名調子のやりとりはなかった(はず!)。

むしろ、若い男女の恋愛が運命に弄ばれ、お富が与三郎への恋情が故に情夫によって総身に疵を負いながらも、お金に困っている与三郎との偶然の再会によって、意を決して悪女になり元の主宅へ強請(ゆすり)に行くという、お富という女性の純情を宿した大胆な悪女の心情を細やかに表現した物語としての面白さが楽しめる。

切り刻まれたり、殺しあったりと、凄惨な場面もあって刺激的でもあるが、今回の公演は(プログラムによると)原典にない場面の追加や削除によりわかりやすくしたとあるが、与三郎とお富が「実は」(この実は~が歌舞伎には多い!)本当の兄妹だった、という設定も変えてあり(省かれている)、その分、現代人にも受け入れられやすいリアルな人情物語(世話物)になったのだろう。

五代目中村時蔵が家の芸とも言える「切られお富」に初めて挑んだという。



お食事処「向日葵」。 開演前に予約してあるので、食事休憩時には番号札を持ってゆくと案内される席には既に御膳が並べてある。



新メニュー「牛ステーキ重」。 肉が固くておいしくなかった。やっぱり「ちらし寿司」がいい。



♪2014-25/♪国立劇場-02