2022年6月13日月曜日
6月歌舞伎鑑賞教室(第101回 歌舞伎鑑賞教室)
2021年11月25日木曜日
国立劇場開場55周年記念 令和3年度(第76回)文化庁芸術祭協賛公演 11月歌舞伎公演『一谷嫰軍記』
2021-11-25 @国立劇場
並木宗輔=作
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき) 二幕
国立劇場美術係=美術
序 幕 御影浜浜辺の場
二幕目 生田森熊谷陣屋の場
熊谷次郎直実 中村芝翫
源義経 中村錦之助
梶原平次景高 中村松江
経盛室藤の方 中村児太郎
堤軍次 中村橋之助
亀井六郎 市村竹松
片岡八郎 市川男寅
伊勢三郎 中村玉太郎
駿河次郎 中村吉之丞
庄屋孫右衛門 中村寿治郎
番場の忠太 中村亀鶴
熊谷妻相模 片岡孝太郎
白毫の弥陀六 中村鴈治郎
実ハ弥平兵衛宗清
ほか
初日に面白かった、というか、よくできた芝居だなと思ったことと、中心となる「熊谷陣屋」の演じ方の、多分、珍しい方である「芝翫型」は当分観る機会がないだろうからと思い、もう一度観る機会を窺っていた。
N響定期を振り替えたので、ちょうどこれが歌舞伎の楽日と重なって観賞効率が良くなった。
型を重んずる芸の世界なので、アドリブらしき台詞も初日と同じだったのが笑えたが、おそらく、この3週間で磨きがかかったのだろう。
問題は、初日同様入りが悪い。
こんな調子で芝翫型が廃れたのでは寂しい。
2021年11月2日火曜日
国立劇場開場55周年記念 令和3年度(第76回)文化庁芸術祭協賛公演 11月歌舞伎公演『一谷嫰軍記』
2020年11月3日火曜日
11月歌舞伎公演第2部
2020-11-03 @国立劇場
梅野下風・近松保蔵=作
●彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)-毛谷村-
国立劇場美術係=美術
第一場 豊前国彦山杉坂墓所の場
第二場 同 毛谷村六助住家の場
●上 文売り(ふみうり)
下 三社祭(さんじゃまつり)
清元連中
国立劇場では再開した先月から2公演制(歌舞伎座は4公演制)だ。12月も同様なので、しばらくこの形が続くのだろうか?
すると、恒例のお正月の菊五郎劇団のスペクタクル活劇はどうなるのか心配だ。とても2公演制のような2時間半では収まらないから。
さて、今日は仁左衛門の「毛谷村」を観た。
正式には「彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)-毛谷村-」。
客席はまだ、市松配置ではあるが人気者の仁左衛門登場とあってお客は多かった。
この「毛谷村」はこれまでに色んな配役で観ている。
今回同様の仁左衛門・孝太郎コンビでも観た。まあ、安定の布陣で楽しめる。
が、菊五郎・時蔵のコンビが面白かったな。
今回、見逃したとしたら孝太郎に申し訳ないが、六助(仁左衛門)の女房・お園(孝太郎)が腕っ節は強いが、急に女ぽくなるおかしさなどはもっとしっかり観たかった。
また、本来はこの続きがあるのだろうけど、仇討ちの話なのに、仇討ちに出発するところで終わってしまうのが隔靴掻痒の感を免れ得ず。
♪2020-074/♪国立劇場-09
2019年9月10日火曜日
秀山祭九月大歌舞伎 夜の部
菅原伝授手習鑑
一、寺子屋(てらこや)
松王丸⇒吉右衛門
園生の前⇒福助
千代⇒菊之助
戸浪⇒児太郎
涎くり与太郎⇒鷹之資
菅秀才⇒丑之助
百姓吾作⇒橘三郎
春藤玄蕃⇒又五郎
武部源蔵⇒幸四郎
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう
武蔵坊弁慶⇒幸四郎
源義経⇒孝太郎
亀井六郎⇒坂東亀蔵
片岡八郎⇒萬太郎
駿河次郎⇒千之助
常陸坊海尊⇒錦吾
富樫左衛門⇒錦之助
三世中村歌六 百回忌追善狂言
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
松浦鎮信⇒歌六
大高源吾⇒又五郎
鵜飼左司馬⇒歌昇
江川文太夫⇒種之助
渕部市右衛門⇒鷹之資
里見幾之亟⇒吉之丞
お縫⇒米吉
宝井其角⇒東蔵
今年の秀山祭夜の部は尻尾まで餡の詰まった鯛焼き3枚。大満足。
「寺子屋」は何度目観ても面白い。
今回は、吉右衛門・又五郎・菊之助・幸四郎と見たい役者が揃った。
忠義の為に我が子の首を差し出すという時代錯誤の物語だが不思議と共感してしまうのは無私の精神で徹底的に人に尽くすことの美しさに抵抗できないからだろうな。山本周五郎の掌編「水戸梅譜」に何十回となく読んでいても、新たに読む度泣けてしまうのも同根だ。
今時ありえないような話をありそうに描くのが役者の腕の見せ所。又五郎以下みんな巧いが、吉右衛門は次元が違う大きさを感じさせる。
菊之助の息子、丑之助は團菊祭で初舞台を踏んだ。あいにく彼の出演した夜の部は観なかったので(後日TVで観劇したが)、僕にとっては今日が初見。團菊祭から4ヶ月。6歳になり菅秀才を演じた様子は初舞台で牛若丸を演じた際の子供っぽさとは様変わりで驚いた。
「勧進帳」は弁慶役が奇数・偶数日で仁左衛門と幸四郎が交代。幸四郎は奇数日は富樫を演ずるというハードな舞台をこなしている。幸四郎の弁慶は経験済みなので仁左衛門で観たかったが諸般の事情で偶数日の今日は幸四郎で。富樫は男前の錦之助だ。
義経が孝太郎(最近放映のNHKで昭和天皇。そっくりだったな。)が義経。ちょい老けた義経だけどこれもよし。終盤、弁慶ら部下を謁見する場面などやはり、義経の貫禄を見せる。
3本立ての中でも「松浦の太鼓」がベスト!
歌六・又五郎・東蔵という地味だが達者な役者。米吉が紅一点で華を添える。
忠臣蔵外伝の一種で、これは以前、幸四郎が松浦の殿様を演じたのを観たが、まるで喜劇仕立てだったが、今回は、なかなかしんみりとさせる。
吉良家の隣屋敷に住まいする松浦鎮信(歌六)の赤穂浪士に寄せる思い、本心を明かせず歌に気持ちを託す忠義の大高源吾(又五郎)、二人の俳諧の師である宝井其角(東蔵)、源吾の妹・お縫(米吉…む、かわゆい!)のそれぞれの熱い想いが空回りする前半から、やがて隣家から聞こえてくる山鹿流陣太鼓の連打。
赤穂浪士に助太刀せんと勇みたつ殿様のもとに吉報を知らせにくる大高源吾。すべてのわだかまりが解け、気持ちが結ばれ、喜び合う面々。
おかしくて笑いながらもどっと泣けてきた。
東蔵は、いつもはたいていおばあさん役だ。立ち役(男役)は滅多に観られないが、何をやらしても巧い。人間国宝だものな。
歌六もいい味だ。又五郎も何を演っても巧いな。
3本とも古臭い話なんだけど。でも面白い。
2019年2月26日火曜日
初世尾上辰之助三十三回忌追善 二月大歌舞伎 昼の部
初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
一 義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)〜すし屋

弥助実は三位中将維盛⇒菊之助
娘お里⇒梅枝
若葉の内侍⇒新悟
梶原の臣⇒吉之丞
梶原の臣⇒男寅
梶原の臣⇒玉太郎
六代君⇒亀三郎
弥左衛門女房おくら⇒橘太郎
鮓屋弥左衛門⇒團蔵
梶原平三景時⇒芝翫
初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
長谷川 伸 作 / 村上元三 演出
二 暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)
暗闇の丑松⇒菊五郎
丑松女房お米⇒時蔵
浪人潮止当四郎⇒團蔵
料理人作公⇒男女蔵
料理人伝公⇒彦三郎
料理人巳之吉⇒坂東亀蔵
料理人祐次⇒松也
建具職人熊吉⇒萬太郎
建具職人八五郎⇒巳之助
杉屋遣手おくの⇒梅花
湯屋番頭甚太郎⇒橘太郎
お米の母お熊⇒橘三郎
杉屋妓夫三吉⇒片岡亀蔵
岡っ引常松⇒権十郎
四郎兵衛女房お今⇒東蔵
四郎兵衛⇒左團次
三 団子売(だんごうり)
杵造⇒芝翫
お臼⇒孝太郎
「義経千本桜」から「すし屋」の段。
「義経千本桜」は五段続きだそうな。そのうちのいくつかは歌舞伎と文楽で観ていたが、「すし屋」は初めてだった。
凡その筋は知っているものの「すし屋」の前段に当たる「小金吾討死」の話が前に置かれるのかと思ったていたがそうではなく、いきなりの「すし屋」で、少しまごついた。予習しておいてよかったよ。
しかし、権太=松緑、維盛=菊之助の配役は、当代では最適・最好のコンビではなかったか。いずれも初役ということで、多分、厳しい目にはまだ役がこなれていないのだろうが、僕の目には十分楽しめた。この2人で再演を観たいものだ。
「暗闇の丑松」も初見。これは興味深い物語だった。
昭和初期の作品で、新歌舞伎といわれるジャンルだ。
新劇のような凝った構成と演出に唸る。
止むを得ず人を殺め、人混みの中に消えてゆく幕切れは「夏祭浪花鑑」を思わせた。底辺に暮らす無法者となった男や哀れ。
♪2019-023/♪歌舞伎座-01
2018年10月4日木曜日
十月歌舞伎 通し狂言「平家女護島」
近松門左衛門=作
国立劇場文芸研究会=補綴
国立劇場美術係=美術
通し狂言 平家女護島(へいけにょごのしま)三幕四場
序 幕 六波羅清盛館の場
二幕目 鬼界ヶ島の場
三幕目 敷名の浦磯辺の場
同 御座船の場
(主な配役)
平相国入道清盛/俊寛僧都⇒中村芝翫
俊寛妻東屋⇒片岡孝太郎
瀬尾太郎兼康⇒中村亀鶴
能登守教経/丹左衛門尉基康⇒中村橋之助
俊寛郎等有王丸⇒中村福之助
上臈松ヶ枝⇒中村梅花
海女千鳥⇒坂東新悟
越中次郎兵衛盛次/丹波少将成経⇒中村松江
後白河法皇⇒中村東蔵
ほか
所謂「俊寛」に前後の段を加えた通しとして演じられた。できるだけオリジナルを復元して次代に伝えようという姿勢で、これが国立劇場の魅力だ。
しかし、先月秀山祭@歌舞伎座で吉右衛門が「俊寛」を演ったせいか、2ヵ月続いて「俊寛」では誰が演じてもお客は呼べないだろう。
僕は、秀山祭は昼の部だけを観て夜の部の「俊寛」をパスし、今月の国立での通し狂言「平家女護島」に期待をしていた。
しかし、というか、案の定というべきか、厳しい状況で、芝翫が吉右衛門にかなうはずもなし。
今日のお客の入りは全館で五分〜せいぜい六分の入りか。
舞台は芝翫親子が熱演しているのだけど、空席の目立つ客席は緊張がシカンしていた。
芝翫の息子たち、橋之助・福之助兄弟はそれぞれに出番の多い役で頑張っていたが、舞台にも生まれる緊張の隙間を埋めるには到底心もとなく、お稽古教室の感があった。
鬼界ヶ島で俊寛に斬り殺されてしまう悪役・瀬尾太郎兼康を中村亀鶴が演じていた。亀鶴という役者をこれまで何度も観てきているが、その都度忘れてしまう、まあ、あまり存在感のある役は振られていなかったように思うが、今回の役はなかなか良かった。元気な悪党ぶりが頼もしかった。これで当分覚えているだろう。
♪2018-123/♪国立劇場-014
2018年4月5日木曜日
四月大歌舞伎 昼の部
●明治百五十年記念
真山青果作「江戸城総攻」より
松竹芸文室 改訂
大場正昭 演出
一、西郷と勝(さいごうとかつ)
西郷隆盛⇒松緑
山岡鉄太郎⇒彦三郎
中村半次郎⇒坂東亀蔵
村田新八⇒松江
勝海舟⇒錦之助
●通し狂言
梅照葉錦伊達織(うめもみじにしきのだており)
二、裏表先代萩(うらおもてせんだいはぎ)
大場道益宅
足利家御殿
同 床下
小助対決

下男小助/仁木弾正⇒菊五郎
乳人政岡⇒時蔵
細川勝元⇒錦之助
下女お竹/沖の井⇒孝太郎
倉橋弥十郎⇒松緑
荒獅子男之助⇒彦三郎
渡辺民部⇒坂東亀蔵
鶴千代⇒亀三郎
松島⇒吉弥
大場宗益⇒権十郎
横井角左衛門⇒齊入
栄御前⇒萬次郎
八汐⇒彌十郎
大場道益⇒團蔵
渡辺外記左衛門⇒東蔵
メインは、通し狂言「梅照葉錦伊達織」〜「裏表先代萩」。
と、ポスターや筋書きに書いてあるが、この意味がよく分からない。長大な通し狂言「梅照葉錦伊達織」の中の「裏表先代萩」の幕という意味ではなさそうで、どちらも同じ芝居を指しているようだが、どうしてこんなタイトルになっているのか。「梅照葉錦伊達織」という演目で上演されたこともあるようだ。内容は「伽羅先代萩」の変形なので「裏表先代萩」という言い方の方が伝わりやすいところから、いつしか、今のような形になったのかもしれない。
なにゆえ「裏表」なのか、と言えば、<時代物>である「伽羅先代萩」を「表」とし、そのスピンオフとして町人を主人公にした<世話物>を「裏」として、裏から初めた物語を次は表と交互に綴り、一本の話として成立させているのだ。
実に面白い趣向であるが、更に加えて両方の主人公格(表の伽羅先代萩では仁木弾正、裏では下男小助)を一人の役者が二役をするというのが通例になっているようで、時には最大4役を演じたという記録があるそうな。一人で主役格の複数の役をこなすというのもこの芝居の趣向となっているようだ。
今回は菊五郎がその両者を演じている。
そんな訳で、一粒で二度美味しいアーモンドグリコのような芝居だが、惜しいのは表と裏が交錯しないという点だ。もちろん話はつながっているのだけど、そのつながりが弱く、良いアイデアなのに二つの話が別々に進行してゆくのがイマイチもったいない。
さて、本日の歌舞伎座はガラガラだった。こんなに空席が目立つのも珍しい。やはり、一月、二月と高麗屋三代襲名で大勢の役者が揃った反動で、所謂、人気スターがお休みか、あるいは地方巡業に回ったのではないか。
しかし、今回歌舞伎座で留守を守る役者たちはどちらか言えば好みの
渋い役者が揃っている。
菊五郎、時蔵、錦之助、孝太郎、松緑、彦三郎、坂東亀蔵、萬次郎、彌十郎、團蔵、東蔵など。
中でも、彌十郎の八汐、東蔵の外記左衛門は驚いた。男女の役割が逆様だ。東蔵の立役は初めてでは無いけど、僕の鑑賞歴では非情に珍しい。彌十郎が女形を演じたのは、我が記録・記憶にはなく、多分今回が初めてだった。
2014年の11月国立劇場の「伽羅先代萩」では坂東彌十郎が渡辺外記左衛門(荒獅子男之助も)を、東蔵が栄御前を演じていたが、まあ、この配役が普通の形だろう。
元々声のよく通る彌十郎がひときわ大音声で勤めるので八汐の怖さ倍増だ。いやはや、珍しいものを観せてもらった。
♪2018-035/♪歌舞伎座-02
2017年10月24日火曜日
10月歌舞伎公演「通し狂言 霊験亀山鉾」
平成29年度(第72回)文化庁芸術祭主催
四世鶴屋南北=作
奈河彰輔=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 霊験亀山鉾<れいげんかめやまほこ>四幕九場
― 亀山の仇討 ―
序 幕 第一場 甲州石和宿棒鼻の場
第二場 同 石和河原仇討の場
第三場 播州明石網町機屋の場
二幕目 第一場 駿州弥勒町丹波屋の場
第二場 同 安倍川返り討の場
第三場 同 中島村入口の場
第四場 同 焼場の場
三幕目 播州明石機屋の場
大 詰 勢州亀山祭敵討の場
(出演)
片岡仁左衛門⇒藤田水右衛門/古手屋八郎兵衛実は隠亡の八郎兵衛

中村又五郎⇒石井兵助/石井下部袖助
中村錦之助⇒石井源之丞
片岡孝太郎⇒源之丞女房お松
中村歌昇⇒若党轟金六
中村橋之助⇒大岸主税
中村梅花⇒石井家乳母おなみ
片岡松之助⇒藤田朴庵/縮商人才兵衛
上村吉弥⇒丹波屋おりき
坂東彌十郎⇒掛塚官兵衛/仏作助
中村雀右衛門⇒芸者おつま
片岡秀太郎⇒石井後室貞林尼 ほか
10月4日に第1回目を観たが、なにしろ全4幕9場もあり、人間関係の飲み込めない部分もあって、本来の面白さを堪能できなかった感じもしたので再度観ることにした。
今度は2回目であるから話の筋はよく分かった。
悪の化身ともいうべき藤田水右衛門(仁左衛門)がそもそも卑怯な闇討ちで殺した石井右内の係累による仇討ちを、悪知恵を働かせ、卑怯な手段を用いて次々と返り討ちにしてゆく。
まずは弟石井兵介には正式な敵討ちの場で毒を盛ることで斬殺。
右内の養子石井源之丞と右内の部下であった轟金六を騙しておびき寄せ、落とし穴に脚を落としたところを多数で斬り掛かり斬殺。
源之丞の子を身ごもっていた愛妾おつまも腹の子もろとも刺し殺す。その後、水右衛門は憎々しげに指折りながら一体何人殺したものかとほくそ笑む。
石井右内の係累はもはや少なく、孫の源次郎は奇病を患い立つこともできない。果たして…。
仁左衛門の芝居はこれまでも何度も観ているけど、大きな役としては「毛谷村」の六助ぐらいのもので、どういう訳か巡り合わせが悪くてこういう通し狂言での主役の仁左衛門を見るのは初めてだった。2度も同じ舞台を観て、なるほど、人気者の仁左衛門だと得心した。
また、ほかの役者では、やはり雀右衛門が巧いな。今回は仁左衛門演ずる八郎兵衛とも水右衛門とも斬り合う場面があるが、そういう場面でもまったくもって女性としか思えない身体の動きに大いに感心する。また、顔立ちよくてきれいだから得をしているな。その点、片岡孝太郎などは顔立ちで損している。父親の仁左衛門は端正な顔立ちなのに…。
ほかに好きなのは彌十郎と又五郎。とくに又五郎はスッキリはっきりしていていい。
♪2017-166/♪国立劇場-16
2017年10月4日水曜日
10月歌舞伎公演「通し狂言 霊験亀山鉾」
平成29年度(第72回)文化庁芸術祭主催
四世鶴屋南北=作
奈河彰輔=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 霊験亀山鉾<れいげんかめやまほこ>四幕九場
― 亀山の仇討 ―
序 幕 第一場 甲州石和宿棒鼻の場
第二場 同 石和河原仇討の場
第三場 播州明石網町機屋の場
二幕目 第一場 駿州弥勒町丹波屋の場
第二場 同 安倍川返り討の場
第三場 同 中島村入口の場
第四場 同 焼場の場
三幕目 播州明石機屋の場
大 詰 勢州亀山祭敵討の場
片岡仁左衛門⇒藤田水右衛門/古手屋八郎兵衛実は隠亡の八郎兵衛
中村歌六⇒大岸頼母
中村又五郎⇒石井兵助/石井下部袖助
中村錦之助⇒石井源之丞
片岡孝太郎⇒源之丞女房お松
中村歌昇⇒若党轟金六
中村橋之助⇒大岸主税
中村梅花⇒石井家乳母おなみ
片岡松之助⇒藤田朴庵/縮商人才兵衛
上村吉弥⇒丹波屋おりき
坂東彌十郎⇒掛塚官兵衛/仏作助
中村雀右衛門⇒芸者おつま
片岡秀太郎⇒石井後室貞林尼 ほか
実話を基にした敵討ちの話…というのは珍しくもないと思うが、この話は本懐を遂げるまでに相当な人数が返り討ちにされるという、普通の敵討ちとは逆の筋書きだ。
また、発端から敵討ちが成就するまでに28年を要したというのも実話だが、それだけ長い年数の物語でもある訳で、こちらも珍しいのではないだろうか。
かくして、怪談話ではないけど、暗いエピソードが繰り返されるので、「歌舞伎」の華やかな部分はまるで無い。新派などで演じてもおかしくない内容だし、役者が見得を切る部分も少なく、大向うからもあまり声はかからない。これはなかなか掛け辛いいだろう。
しかし、舞台劇としては見どころも多く、終盤に入って、本雨(ほんあめ)が舞台に降り注ぐ中での殺し合い、井戸を使った活劇、燃えている棺桶から悪党が飛び出すなど、飽きさせない。
この敵役こそこの作品の主人公で、これを仁左衛門が二役(早替わりも楽しめる。)で演ずるのだ。
元々渋い仁左衛門としては、この情け無用の悪党ぶりが板に付いて色っぽくさえある。
♪2017-159/♪国立劇場-15
2017年6月14日水曜日
平成29年6月歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)」
解説 歌舞伎のみかた 中村隼人
歌舞伎十八番の内 「毛抜」一幕 小野春道館の場
(主な配役)
粂寺弾正⇒中村錦之助
腰元巻絹⇒片岡孝太郎
八剣玄蕃⇒坂東彦三郎
小野春風⇒尾上右近
八剣数馬⇒大谷廣太郎
秦秀太郎⇒中村隼人
錦の前⇒中村梅丸
小原万兵衛⇒嵐橘三郎
秦民部⇒坂東秀調
小野春道⇒大谷友右衛門
ほか
中村隼人が女性に人気があるとは知っていたけど、女子高生までにも人気があるとは知らなかった。
その隼人が「歌舞伎のみかた」の解説を努めた。流暢に口が回るがもう少しゆとりが必要。間合いを取らなくちゃ聴いていてもせわしない。
幕が上がると写真撮影禁止は常識だが、今回は撮影タイムが設けられた。スマホで写真を撮って「歌舞伎見たよ」のタグを付けてSNSで発信してくださいという意図だ。良いアイデアで、若い人達に歌舞伎を観ようという気運が出れば良し。
さて、本篇。「毛抜」は前にも観ているので内容は理解しているつもりだったが、今回はプログラムの説明で気がついたのだけど、これが劇中劇という構成だということだ。尤も前回観たのは一番最近でも3年前なので演出には記憶がない。
今回の国立劇場の演出と同じだったかどうか。
ともかく、今回は舞台上に黒い額縁が作ってあり、それが芝居小屋を表している。上手の柱には演目「歌舞伎十八番の内毛抜一幕」、下手には「中村錦之助相勤め申し候」と大書してある。
錦之助演ずる粂寺弾正が若衆や腰元にちょっかい出しては袖にされると「面目次第もござりませぬ」と客席に向かって言い、幕切れのセリフも「〜然らば、お開きといたしましょう」と見得を切って揚幕に消えるのも劇中劇ならではの演出だ。
歌舞伎十八番に入っているだけあって、歌舞伎の多様な見処(弾正の荒事・色気と愛嬌・連続する5つの見得など)が多い。
毛抜が場面に応じて小から大に変化するのも面白い。
筋書きも滑稽味ある推理劇としても楽しめる。
♪2017-101/♪国立劇場-10