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2022年6月13日月曜日

6月歌舞伎鑑賞教室(第101回 歌舞伎鑑賞教室)

2022-06-13 @国立劇場



●「解説 歌舞伎のみかた」
解説                               中村玉太郎

●『彦山権現誓助剣』
毛谷村六助⇒中村又五郎
杣人斧右衛門⇒中村松江
微塵弾正実ハ京極内匠⇒中村歌昇
一味斎孫弥三松⇒小川綜真
一味斎後室お幸⇒上村吉弥
一味斎娘お園⇒片岡孝太郎
                     ほか

解説 歌舞伎のみかた

梅野下風・近松保蔵=作
彦山権現誓助剣-毛谷村- 一幕二場
(ひこさんごんげんちかいのすけだち-けやむら-)
       国立劇場美術係=美術

第一場 豊前国彦山杉坂墓所の場
第二場 同  毛谷村六助住家の場


国立劇場は、毎夏6-7月は鑑賞教室だ。
簡単な解説付きで休憩込み2時間20分は手頃。
お値段も破格。芝居は中堅〜若手だが勿論手抜きなし。

「毛谷村」は色んな役者で観てきたが、今回は六助を又五郎、その妻お園を孝太郎という好感コンビで楽しませてもらった。

又五郎の長男・歌昇が珍しく敵役を演じ、そのまた長男のちびっ子も出て親子3代。
人間国宝・東蔵(今回は出演せず)の長男が松江でこれも珍しく間の抜けた農民役。その長男・玉太郎が解説役、とこちらも親子出演。

歌舞伎ってこうやって芸が継承されていくんだね。


大勢の高校生が行儀良く鑑賞。事前のレクチャーもうしっかり受けてきたのだろう、ホンに立派な鑑賞態度で、掛け声禁止ではあるが、拍手のタイミングも実によろしい。

残念なのは、団体鑑賞ではない一般席(2ー3階)がガラガラだったこと。

♪2022-085/♪国立劇場-05

2021年11月25日木曜日

国立劇場開場55周年記念 令和3年度(第76回)文化庁芸術祭協賛公演 11月歌舞伎公演『一谷嫰軍記』

2021-11-25 @国立劇場



並木宗輔=作
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)  二幕
国立劇場美術係=美術

序   幕    御影浜浜辺の場
二幕目    生田森熊谷陣屋の場


熊谷次郎直実     中村芝翫
源義経        中村錦之助
梶原平次景高     中村松江
経盛室藤の方     中村児太郎
堤軍次        中村橋之助
亀井六郎       市村竹松
片岡八郎       市川男寅
伊勢三郎       中村玉太郎
駿河次郎       中村吉之丞
庄屋孫右衛門     中村寿治郎
番場の忠太      中村亀鶴
熊谷妻相模      片岡孝太郎
白毫の弥陀六          中村鴈治郎
 実ハ弥平兵衛宗清

ほか


今回は、初日に観劇して、今日千穐楽に再見した。

初日に面白かった、というか、よくできた芝居だなと思ったことと、中心となる「熊谷陣屋」の演じ方の、多分、珍しい方である「芝翫型」は当分観る機会がないだろうからと思い、もう一度観る機会を窺っていた。


N響定期を振り替えたので、ちょうどこれが歌舞伎の楽日と重なって観賞効率が良くなった。


型を重んずる芸の世界なので、アドリブらしき台詞も初日と同じだったのが笑えたが、おそらく、この3週間で磨きがかかったのだろう。


問題は、初日同様入りが悪い。

こんな調子で芝翫型が廃れたのでは寂しい。


♪2021-138/♪国立劇場-10

2021年11月2日火曜日

国立劇場開場55周年記念 令和3年度(第76回)文化庁芸術祭協賛公演 11月歌舞伎公演『一谷嫰軍記』

2021-11-02 @国立劇場


並木宗輔=作
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)  二幕
国立劇場美術係=美術

序   幕    御影浜浜辺の場
二幕目    生田森熊谷陣屋の場


熊谷次郎直実     中村芝翫
源義経        中村錦之助
梶原平次景高     中村松江
経盛室藤の方     中村児太郎
堤軍次        中村橋之助
亀井六郎       市村竹松
片岡八郎       市川男寅
伊勢三郎       中村玉太郎
駿河次郎       中村吉之丞
庄屋孫右衛門     中村寿治郎
番場の忠太      中村亀鶴
熊谷妻相模      片岡孝太郎
白毫の弥陀六         中村鴈治郎
 実ハ弥平兵衛宗清
ほか



初日観賞。
この演目の完成形を知らない。
『一谷嫰軍記( いちのたにふたばぐんき)』と言っても、一谷の合戦は描かれない(文楽版では全五段版を見たが、戦に出かけるところから演じられるのでこの芝居の隠された面白さが明らかになる。)。

多くの場合、戦が終わってからの「熊谷陣屋」だけ、それも冒頭部分がカットされて演じられるのが通例だ。

その「陣屋」の演じ方には芝翫型と團十郎型があるそうな。
いずれも何度も観ているが表札の扱いなどは違いが分かるが、細かい点まで覚えていないので大した違いではないと思う…。

芝翫型を正しく受け継ぐのが中村芝翫だ。
2016年の襲名披露興行でも演じた。
これも観たが、5年経過してうんと良くなったような気がする。分かり易い。それだけ観ている方も入魂できる。

●一つには「陣屋」の前に「御影浜」の場が置かれ、弥陀六<鴈治郎>が陣屋に登場する経緯などが明確になったこと。

●「陣屋」の冒頭に敦盛の母・藤の方<児太郎>が訪ねてきて直実の妻・相模<孝太郎>に匿われるという経緯が置かれる。
襲名披露版ではそこが省かれていたからお客にはなぜ藤の方がいきなり懐剣を持って奥の部屋から出てくるのかが分からなかった。
…と細かい工夫がなされて、成程納得。目から鱗。

芝翫は熱演!児太郎はこれまで随分観ているけど、今回の藤の方はとても良かった。
弥陀六の鴈治郎も強かさを秘め軽さもありで面白い。
一番感心したのは相模を演じた孝太郎だ。
この芝居の主人公は相模かもしれないなと思いながら観入った。
「敦盛」の首を抱えて悲痛な母の思いが胸を打つ。

これまでに観た「熊谷陣屋」の中では一番”筋”が通っていたこともあり、とても楽しめた。

しかし、残念なことに、初日だというのに客席はガラガラだった。


♪2021-123/♪国立劇場-09

2020年11月3日火曜日

11月歌舞伎公演第2部

 2020-11-03 @国立劇場

梅野下風・近松保蔵=作
●彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)-毛谷村-

 国立劇場美術係=美術

第一場 豊前国彦山杉坂墓所の場
第二場 同   毛谷村六助住家の場

●上 文売り(ふみうり)
 下 三社祭(さんじゃまつり)
                     清元連中

●彦山権現誓助剣 -毛谷村-
 毛谷村六助                   片岡仁左衛門
 一味斎娘お園                片岡孝太郎
 杣人斧右衛門                坂東彦三郎
 一味斎孫弥三松               小川大晴
 家人佐五平       片岡松之助
 微塵弾正実ハ京極内匠      坂東彌十郎
 一味斎後室お幸      中村東蔵
                                     ほか
●上『文売り』
 文売り    中村梅枝

●下『三社祭』
 悪玉                          中村鷹之資
 善玉   片岡千之助


国立劇場では再開した先月から2公演制(歌舞伎座は4公演制)だ。12月も同様なので、しばらくこの形が続くのだろうか?

すると、恒例のお正月の菊五郎劇団のスペクタクル活劇はどうなるのか心配だ。とても2公演制のような2時間半では収まらないから。


さて、今日は仁左衛門の「毛谷村」を観た。

正式には「彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)-毛谷村-」。


客席はまだ、市松配置ではあるが人気者の仁左衛門登場とあってお客は多かった。


この「毛谷村」はこれまでに色んな配役で観ている。

今回同様の仁左衛門・孝太郎コンビでも観た。まあ、安定の布陣で楽しめる。

が、菊五郎・時蔵のコンビが面白かったな。

今回、見逃したとしたら孝太郎に申し訳ないが、六助(仁左衛門)の女房・お園(孝太郎)が腕っ節は強いが、急に女ぽくなるおかしさなどはもっとしっかり観たかった。


また、本来はこの続きがあるのだろうけど、仇討ちの話なのに、仇討ちに出発するところで終わってしまうのが隔靴掻痒の感を免れ得ず。

♪2020-074/♪国立劇場-09

2019年9月10日火曜日

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部

2019-09-10 @歌舞伎座


菅原伝授手習鑑
一、寺子屋(てらこや)
松王丸⇒吉右衛門
園生の前⇒福助
千代⇒菊之助
戸浪⇒児太郎
涎くり与太郎⇒鷹之資
菅秀才⇒丑之助
百姓吾作⇒橘三郎
春藤玄蕃⇒又五郎
武部源蔵⇒幸四郎

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう
武蔵坊弁慶⇒幸四郎
源義経⇒孝太郎
亀井六郎⇒坂東亀蔵
片岡八郎⇒萬太郎
駿河次郎⇒千之助
常陸坊海尊⇒錦吾
富樫左衛門⇒錦之助

三世中村歌六 百回忌追善狂言
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
松浦鎮信⇒歌六
大高源吾⇒又五郎
鵜飼左司馬⇒歌昇
江川文太夫⇒種之助
渕部市右衛門⇒鷹之資
里見幾之亟⇒吉之丞
お縫⇒米吉
宝井其角⇒東蔵

今年の秀山祭夜の部は尻尾まで餡の詰まった鯛焼き3枚。大満足。

「寺子屋」は何度目観ても面白い。
今回は、吉右衛門・又五郎・菊之助・幸四郎と見たい役者が揃った。
忠義の為に我が子の首を差し出すという時代錯誤の物語だが不思議と共感してしまうのは無私の精神で徹底的に人に尽くすことの美しさに抵抗できないからだろうな。山本周五郎の掌編「水戸梅譜」に何十回となく読んでいても、新たに読む度泣けてしまうのも同根だ。

今時ありえないような話をありそうに描くのが役者の腕の見せ所。又五郎以下みんな巧いが、吉右衛門は次元が違う大きさを感じさせる。
菊之助の息子、丑之助は團菊祭で初舞台を踏んだ。あいにく彼の出演した夜の部は観なかったので(後日TVで観劇したが)、僕にとっては今日が初見。團菊祭から4ヶ月。6歳になり菅秀才を演じた様子は初舞台で牛若丸を演じた際の子供っぽさとは様変わりで驚いた。

「勧進帳」は弁慶役が奇数・偶数日で仁左衛門と幸四郎が交代。幸四郎は奇数日は富樫を演ずるというハードな舞台をこなしている。幸四郎の弁慶は経験済みなので仁左衛門で観たかったが諸般の事情で偶数日の今日は幸四郎で。富樫は男前の錦之助だ。

義経が孝太郎(最近放映のNHKで昭和天皇。そっくりだったな。)が義経。ちょい老けた義経だけどこれもよし。終盤、弁慶ら部下を謁見する場面などやはり、義経の貫禄を見せる。

3本立ての中でも「松浦の太鼓」がベスト!
歌六・又五郎・東蔵という地味だが達者な役者。米吉が紅一点で華を添える。
忠臣蔵外伝の一種で、これは以前、幸四郎が松浦の殿様を演じたのを観たが、まるで喜劇仕立てだったが、今回は、なかなかしんみりとさせる。

吉良家の隣屋敷に住まいする松浦鎮信(歌六)の赤穂浪士に寄せる思い、本心を明かせず歌に気持ちを託す忠義の大高源吾(又五郎)、二人の俳諧の師である宝井其角(東蔵)、源吾の妹・お縫(米吉…む、かわゆい!)のそれぞれの熱い想いが空回りする前半から、やがて隣家から聞こえてくる山鹿流陣太鼓の連打。
赤穂浪士に助太刀せんと勇みたつ殿様のもとに吉報を知らせにくる大高源吾。すべてのわだかまりが解け、気持ちが結ばれ、喜び合う面々。
おかしくて笑いながらもどっと泣けてきた。

東蔵は、いつもはたいていおばあさん役だ。立ち役(男役)は滅多に観られないが、何をやらしても巧い。人間国宝だものな。
歌六もいい味だ。又五郎も何を演っても巧いな。

3本とも古臭い話なんだけど。でも面白い。


♪2019-136/♪歌舞伎座-04

2019年2月26日火曜日

初世尾上辰之助三十三回忌追善 二月大歌舞伎 昼の部

2019-02-26 @歌舞伎座


初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
一 義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)〜すし屋
いがみの権太⇒松緑
弥助実は三位中将維盛⇒菊之助
娘お里⇒梅枝
若葉の内侍⇒新悟
梶原の臣⇒吉之丞
梶原の臣⇒男寅
梶原の臣⇒玉太郎
六代君⇒亀三郎
弥左衛門女房おくら⇒橘太郎
鮓屋弥左衛門⇒團蔵
梶原平三景時⇒芝翫

初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
長谷川 伸 作 / 村上元三 演出
二 暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)
暗闇の丑松⇒菊五郎
丑松女房お米⇒時蔵
浪人潮止当四郎⇒團蔵
料理人作公⇒男女蔵
料理人伝公⇒彦三郎
料理人巳之吉⇒坂東亀蔵
料理人祐次⇒松也
建具職人熊吉⇒萬太郎
建具職人八五郎⇒巳之助
杉屋遣手おくの⇒梅花
湯屋番頭甚太郎⇒橘太郎
お米の母お熊⇒橘三郎
杉屋妓夫三吉⇒片岡亀蔵
岡っ引常松⇒権十郎
四郎兵衛女房お今⇒東蔵
四郎兵衛⇒左團次

三 団子売(だんごうり)
杵造⇒芝翫
お臼⇒孝太郎

「義経千本桜」から「すし屋」の段。
「義経千本桜」は五段続きだそうな。そのうちのいくつかは歌舞伎と文楽で観ていたが、「すし屋」は初めてだった。

凡その筋は知っているものの「すし屋」の前段に当たる「小金吾討死」の話が前に置かれるのかと思ったていたがそうではなく、いきなりの「すし屋」で、少しまごついた。予習しておいてよかったよ。

しかし、権太=松緑、維盛=菊之助の配役は、当代では最適・最好のコンビではなかったか。いずれも初役ということで、多分、厳しい目にはまだ役がこなれていないのだろうが、僕の目には十分楽しめた。この2人で再演を観たいものだ。

「暗闇の丑松」も初見。これは興味深い物語だった。
昭和初期の作品で、新歌舞伎といわれるジャンルだ。
新劇のような凝った構成と演出に唸る。
止むを得ず人を殺め、人混みの中に消えてゆく幕切れは「夏祭浪花鑑」を思わせた。底辺に暮らす無法者となった男や哀れ。

♪2019-023/♪歌舞伎座-01







2018年10月4日木曜日

十月歌舞伎 通し狂言「平家女護島」

2018-10-04 @国立劇場


近松門左衛門=作
国立劇場文芸研究会=補綴
国立劇場美術係=美術
通し狂言 平家女護島(へいけにょごのしま)三幕四場

序 幕 六波羅清盛館の場 
二幕目 鬼界ヶ島の場
三幕目 敷名の浦磯辺の場
同   御座船の場

(主な配役)
平相国入道清盛/俊寛僧都⇒中村芝翫
俊寛妻東屋⇒片岡孝太郎
瀬尾太郎兼康⇒中村亀鶴
能登守教経/丹左衛門尉基康⇒中村橋之助
俊寛郎等有王丸⇒中村福之助
上臈松ヶ枝⇒中村梅花
海女千鳥⇒坂東新悟
越中次郎兵衛盛次/丹波少将成経⇒中村松江
後白河法皇⇒中村東蔵
ほか

所謂「俊寛」に前後の段を加えた通しとして演じられた。できるだけオリジナルを復元して次代に伝えようという姿勢で、これが国立劇場の魅力だ。
しかし、先月秀山祭@歌舞伎座で吉右衛門が「俊寛」を演ったせいか、2ヵ月続いて「俊寛」では誰が演じてもお客は呼べないだろう。

僕は、秀山祭は昼の部だけを観て夜の部の「俊寛」をパスし、今月の国立での通し狂言「平家女護島」に期待をしていた。

しかし、というか、案の定というべきか、厳しい状況で、芝翫が吉右衛門にかなうはずもなし。
今日のお客の入りは全館で五分〜せいぜい六分の入りか。

舞台は芝翫親子が熱演しているのだけど、空席の目立つ客席は緊張がシカンしていた。

芝翫の息子たち、橋之助・福之助兄弟はそれぞれに出番の多い役で頑張っていたが、舞台にも生まれる緊張の隙間を埋めるには到底心もとなく、お稽古教室の感があった。

鬼界ヶ島で俊寛に斬り殺されてしまう悪役・瀬尾太郎兼康を中村亀鶴が演じていた。亀鶴という役者をこれまで何度も観てきているが、その都度忘れてしまう、まあ、あまり存在感のある役は振られていなかったように思うが、今回の役はなかなか良かった。元気な悪党ぶりが頼もしかった。これで当分覚えているだろう。

♪2018-123/♪国立劇場-014

2018年4月5日木曜日

四月大歌舞伎 昼の部

2018-04-05 @歌舞伎座


●明治百五十年記念
真山青果作「江戸城総攻」より
松竹芸文室 改訂
大場正昭 演出
一、西郷と勝(さいごうとかつ)
西郷隆盛⇒松緑
山岡鉄太郎⇒彦三郎
中村半次郎⇒坂東亀蔵
村田新八⇒松江
勝海舟⇒錦之助

●通し狂言
梅照葉錦伊達織(うめもみじにしきのだており)
二、裏表先代萩(うらおもてせんだいはぎ)
大場道益宅
足利家御殿
同  床下
小助対決
仁木刃傷
下男小助/仁木弾正⇒菊五郎
乳人政岡⇒時蔵
細川勝元⇒錦之助
下女お竹/沖の井⇒孝太郎
倉橋弥十郎⇒松緑
荒獅子男之助⇒彦三郎
渡辺民部⇒坂東亀蔵
鶴千代⇒亀三郎
松島⇒吉弥
大場宗益⇒権十郎
横井角左衛門⇒齊入
栄御前⇒萬次郎
八汐⇒彌十郎
大場道益⇒團蔵
渡辺外記左衛門⇒東蔵

メインは、通し狂言「梅照葉錦伊達織」〜「裏表先代萩」。
と、ポスターや筋書きに書いてあるが、この意味がよく分からない。長大な通し狂言「梅照葉錦伊達織」の中の「裏表先代萩」の幕という意味ではなさそうで、どちらも同じ芝居を指しているようだが、どうしてこんなタイトルになっているのか。「梅照葉錦伊達織」という演目で上演されたこともあるようだ。内容は「伽羅先代萩」の変形なので「裏表先代萩」という言い方の方が伝わりやすいところから、いつしか、今のような形になったのかもしれない。

なにゆえ「裏表」なのか、と言えば、<時代物>である「伽羅先代萩」を「表」とし、そのスピンオフとして町人を主人公にした<世話物>を「裏」として、裏から初めた物語を次は表と交互に綴り、一本の話として成立させているのだ。
実に面白い趣向であるが、更に加えて両方の主人公格(表の伽羅先代萩では仁木弾正、裏では下男小助)を一人の役者が二役をするというのが通例になっているようで、時には最大4役を演じたという記録があるそうな。一人で主役格の複数の役をこなすというのもこの芝居の趣向となっているようだ。

今回は菊五郎がその両者を演じている。

そんな訳で、一粒で二度美味しいアーモンドグリコのような芝居だが、惜しいのは表と裏が交錯しないという点だ。もちろん話はつながっているのだけど、そのつながりが弱く、良いアイデアなのに二つの話が別々に進行してゆくのがイマイチもったいない。

さて、本日の歌舞伎座はガラガラだった。こんなに空席が目立つのも珍しい。やはり、一月、二月と高麗屋三代襲名で大勢の役者が揃った反動で、所謂、人気スターがお休みか、あるいは地方巡業に回ったのではないか。

しかし、今回歌舞伎座で留守を守る役者たちはどちらか言えば好みの
渋い役者が揃っている。

菊五郎、時蔵、錦之助、孝太郎、松緑、彦三郎、坂東亀蔵、萬次郎、彌十郎、團蔵、東蔵など。

中でも、彌十郎の八汐、東蔵の外記左衛門は驚いた。男女の役割が逆様だ。東蔵の立役は初めてでは無いけど、僕の鑑賞歴では非情に珍しい。彌十郎が女形を演じたのは、我が記録・記憶にはなく、多分今回が初めてだった。
2014年の11月国立劇場の「伽羅先代萩」では坂東彌十郎が渡辺外記左衛門(荒獅子男之助も)を、東蔵が栄御前を演じていたが、まあ、この配役が普通の形だろう。

元々声のよく通る彌十郎がひときわ大音声で勤めるので八汐の怖さ倍増だ。いやはや、珍しいものを観せてもらった。

♪2018-035/♪歌舞伎座-02

2017年10月24日火曜日

10月歌舞伎公演「通し狂言 霊験亀山鉾」

2017-10-24 @国立劇場


平成29年度(第72回)文化庁芸術祭主催
四世鶴屋南北=作
奈河彰輔=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 霊験亀山鉾<れいげんかめやまほこ>四幕九場
― 亀山の仇討 ―

序 幕 第一場 甲州石和宿棒鼻の場 
    第二場 同 石和河原仇討の場
    第三場 播州明石網町機屋の場
二幕目 第一場 駿州弥勒町丹波屋の場
    第二場 同 安倍川返り討の場
    第三場 同 中島村入口の場
    第四場 同 焼場の場
三幕目 播州明石機屋の場
大 詰 勢州亀山祭敵討の場

(出演)
片岡仁左衛門⇒藤田水右衛門/古手屋八郎兵衛実は隠亡の八郎兵衛
中村歌六⇒大岸頼母
中村又五郎⇒石井兵助/石井下部袖助
中村錦之助⇒石井源之丞
片岡孝太郎⇒源之丞女房お松
中村歌昇⇒若党轟金六
中村橋之助⇒大岸主税
中村梅花⇒石井家乳母おなみ
片岡松之助⇒藤田朴庵/縮商人才兵衛
上村吉弥⇒丹波屋おりき
坂東彌十郎⇒掛塚官兵衛/仏作助
中村雀右衛門⇒芸者おつま
片岡秀太郎⇒石井後室貞林尼   ほか


10月4日に第1回目を観たが、なにしろ全4幕9場もあり、人間関係の飲み込めない部分もあって、本来の面白さを堪能できなかった感じもしたので再度観ることにした。

今度は2回目であるから話の筋はよく分かった。

悪の化身ともいうべき藤田水右衛門(仁左衛門)がそもそも卑怯な闇討ちで殺した石井右内の係累による仇討ちを、悪知恵を働かせ、卑怯な手段を用いて次々と返り討ちにしてゆく。
まずは弟石井兵介には正式な敵討ちの場で毒を盛ることで斬殺。
右内の養子石井源之丞と右内の部下であった轟金六を騙しておびき寄せ、落とし穴に脚を落としたところを多数で斬り掛かり斬殺。
源之丞の子を身ごもっていた愛妾おつまも腹の子もろとも刺し殺す。その後、水右衛門は憎々しげに指折りながら一体何人殺したものかとほくそ笑む。

石井右内の係累はもはや少なく、孫の源次郎は奇病を患い立つこともできない。果たして…。

仁左衛門の芝居はこれまでも何度も観ているけど、大きな役としては「毛谷村」の六助ぐらいのもので、どういう訳か巡り合わせが悪くてこういう通し狂言での主役の仁左衛門を見るのは初めてだった。2度も同じ舞台を観て、なるほど、人気者の仁左衛門だと得心した。
また、ほかの役者では、やはり雀右衛門が巧いな。今回は仁左衛門演ずる八郎兵衛とも水右衛門とも斬り合う場面があるが、そういう場面でもまったくもって女性としか思えない身体の動きに大いに感心する。また、顔立ちよくてきれいだから得をしているな。その点、片岡孝太郎などは顔立ちで損している。父親の仁左衛門は端正な顔立ちなのに…。

ほかに好きなのは彌十郎と又五郎。とくに又五郎はスッキリはっきりしていていい。

♪2017-166/♪国立劇場-16

2017年10月4日水曜日

10月歌舞伎公演「通し狂言 霊験亀山鉾」

2017-10-04 @国立劇場



平成29年度(第72回)文化庁芸術祭主催
四世鶴屋南北=作
奈河彰輔=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 霊験亀山鉾<れいげんかめやまほこ>四幕九場
― 亀山の仇討 ―

序 幕 第一場 甲州石和宿棒鼻の場 
    第二場 同 石和河原仇討の場
    第三場 播州明石網町機屋の場
二幕目 第一場 駿州弥勒町丹波屋の場
    第二場 同 安倍川返り討の場
    第三場 同 中島村入口の場
    第四場 同 焼場の場
三幕目 播州明石機屋の場
大 詰 勢州亀山祭敵討の場



片岡仁左衛門⇒藤田水右衛門/古手屋八郎兵衛実は隠亡の八郎兵衛
中村歌六⇒大岸頼母
中村又五郎⇒石井兵助/石井下部袖助
中村錦之助⇒石井源之丞
片岡孝太郎⇒源之丞女房お松
中村歌昇⇒若党轟金六
中村橋之助⇒大岸主税
中村梅花⇒石井家乳母おなみ
片岡松之助⇒藤田朴庵/縮商人才兵衛
上村吉弥⇒丹波屋おりき
坂東彌十郎⇒掛塚官兵衛/仏作助
中村雀右衛門⇒芸者おつま
片岡秀太郎⇒石井後室貞林尼   ほか

実話を基にした敵討ちの話…というのは珍しくもないと思うが、この話は本懐を遂げるまでに相当な人数が返り討ちにされるという、普通の敵討ちとは逆の筋書きだ。
また、発端から敵討ちが成就するまでに28年を要したというのも実話だが、それだけ長い年数の物語でもある訳で、こちらも珍しいのではないだろうか。

かくして、怪談話ではないけど、暗いエピソードが繰り返されるので、「歌舞伎」の華やかな部分はまるで無い。新派などで演じてもおかしくない内容だし、役者が見得を切る部分も少なく、大向うからもあまり声はかからない。これはなかなか掛け辛いいだろう。

しかし、舞台劇としては見どころも多く、終盤に入って、本雨(ほんあめ)が舞台に降り注ぐ中での殺し合い、井戸を使った活劇、燃えている棺桶から悪党が飛び出すなど、飽きさせない。

この敵役こそこの作品の主人公で、これを仁左衛門が二役(早替わりも楽しめる。)で演ずるのだ。
元々渋い仁左衛門としては、この情け無用の悪党ぶりが板に付いて色っぽくさえある。

登場人物も多く、それらの関係性を頭に入れるのは容易ではなくて、今回は筋をさらった程度で終わってしまった。

♪2017-159/♪国立劇場-15

2017年6月14日水曜日

平成29年6月歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)」

2017-06-14 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた 中村隼人 
                                 
歌舞伎十八番の内 「毛抜」一幕 小野春道館の場

(主な配役)

粂寺弾正⇒中村錦之助
腰元巻絹⇒片岡孝太郎
八剣玄蕃⇒坂東彦三郎
小野春風⇒尾上右近
八剣数馬⇒大谷廣太郎
秦秀太郎⇒中村隼人
錦の前⇒中村梅丸
小原万兵衛⇒嵐橘三郎
秦民部⇒坂東秀調
小野春道⇒大谷友右衛門
 ほか

中村隼人が女性に人気があるとは知っていたけど、女子高生までにも人気があるとは知らなかった。
その隼人が「歌舞伎のみかた」の解説を努めた。流暢に口が回るがもう少しゆとりが必要。間合いを取らなくちゃ聴いていてもせわしない。

幕が上がると写真撮影禁止は常識だが、今回は撮影タイムが設けられた。スマホで写真を撮って「歌舞伎見たよ」のタグを付けてSNSで発信してくださいという意図だ。良いアイデアで、若い人達に歌舞伎を観ようという気運が出れば良し。

さて、本篇。「毛抜」は前にも観ているので内容は理解しているつもりだったが、今回はプログラムの説明で気がついたのだけど、これが劇中劇という構成だということだ。尤も前回観たのは一番最近でも3年前なので演出には記憶がない。

今回の国立劇場の演出と同じだったかどうか。
ともかく、今回は舞台上に黒い額縁が作ってあり、それが芝居小屋を表している。上手の柱には演目「歌舞伎十八番の内毛抜一幕」、下手には「中村錦之助相勤め申し候」と大書してある。

錦之助演ずる粂寺弾正が若衆や腰元にちょっかい出しては袖にされると「面目次第もござりませぬ」と客席に向かって言い、幕切れのセリフも「〜然らば、お開きといたしましょう」と見得を切って揚幕に消えるのも劇中劇ならではの演出だ。

歌舞伎十八番に入っているだけあって、歌舞伎の多様な見処(弾正の荒事・色気と愛嬌・連続する5つの見得など)が多い。
毛抜が場面に応じて小から大に変化するのも面白い。
筋書きも滑稽味ある推理劇としても楽しめる。

♪2017-101/♪国立劇場-10

2016年4月18日月曜日

四月大歌舞伎 夜の部

2016-04-18 @歌舞伎座


一 彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
杉坂墓所~毛谷村
毛谷村六助⇒仁左衛門
お園⇒孝太郎
杣斧右衛門⇒彌十郎
微塵弾正実は京極内匠⇒歌六
お幸⇒東蔵

高野山開創一二〇〇年記念
夢枕獏:原作、戸部和久:脚本、齋藤雅文:演出
新作歌舞伎
二 幻想神空海(げんそうしんくうかい)
沙門空海唐の国にて鬼と宴す
空海⇒染五郎
橘逸勢⇒松也
白龍⇒又五郎
黄鶴⇒彌十郎
白楽天⇒歌昇
廷臣馬之幕⇒廣太郎
牡丹⇒種之助
玉蓮⇒米吉
春琴⇒児太郎
劉雲樵⇒宗之助
楊貴妃⇒雀右衛門
丹翁⇒歌六
憲宗皇帝⇒幸四郎


「彦山権現誓助剱」は昨年2月に歌舞伎座で観たが、その時の主要な役者は菊五郎(六助)、時蔵(お園)、東蔵(お幸)で、東蔵は今回も同じ役だった。
この時は「毛谷村」だけの上演だったが、今回は「杉坂墓所」という前段が演じられて話がより分かりやすくなった。

前回は初見だったが、これは面白かった。そもそも話が面白いのだ。
今回は菊五郎から仁左衛門に、時蔵から孝太郎に変わったが、やはり面白い。一番楽しめるのは男勝りで腕自慢のお園が、六助こそ自分の許嫁であることを知って、急にしおらしく、女っぽくなるおかしさだ。
それでも照れながら庭の臼を転がしたりとつい地が出たり、慌てていて火吹き竹の代わりに尺八を吹いてしまうなど、まるでコントのようなおかしさだ。
それを孝太郎が実におかしくやるので笑いが止まらない。

仁左衛門の六助が菊五郎と違ってとても陽性で、人の良い六助にぴったりだ。この仁左衛門・孝太郎という実の親子の掛け合いが、本筋とは別に、とても幸福感に満ちて良かった。

さて、今月の歌舞伎座のメインは新作歌舞伎「幻想神空海」だろう。そう思い、興味もあって、今月は<夜の部>を選んだ。

しかし、これがちっとも面白くないのだ。
音楽、音響効果、照明、セリフ回しを含め、これが「歌舞伎」?という疑問もあるけど、まあ、そこは<面白ければ>なんでもあり、というのが「歌舞伎」の真髄だと思うので受け入れることができる。
しかし<面白ければ>許される新しい試みは全然効果を発揮していない。
まずもって、芝居の筋が分かり難い。
観劇の最中は客席の照明も落とされるし、2時間12分の長丁場に幕間休憩もないので、筋書きをチラチラ読むこともできない。
予めざっと目を通していたけど、人物の名前もなかなか覚えきれないまま本番に突入したので、ほとんど役に立たなかった。

空海が主役と思っていたが、必ずしもそうとも言えないようだ。
空海が留学僧として、唐で密教を学び成長してゆく話かと思いきや、なるほど夢枕獏の原作であるからにはそんな正統的な話であるはずがない。それはそれで良い。突飛な物語も結構だけど、空海の存在が希薄なのだ。
終わってみれば、楊貴妃をめぐる白龍と丹翁の確執の物語ではないか。空海は狂言回しのような存在にすぎない。

これは意欲的な取組みだったがこのままでは失敗作で終わるのではないか。


♪2016-047/♪歌舞伎座-03

2016年3月22日火曜日

三月大歌舞伎 中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露三月大歌舞伎<昼の部>

2016-03-22 @歌舞伎座


一 寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
工藤祐経⇒橋之助
曽我五郎⇒松緑
曽我十郎⇒勘九郎
化粧坂少将⇒梅枝
近江小藤太⇒廣太郎
八幡三郎⇒廣松
喜瀬川亀鶴⇒児太郎
梶原平次景高⇒橘太郎
梶原平三景時⇒錦吾
大磯の虎⇒扇雀
小林朝比奈⇒鴈治郎
鬼王新左衛門⇒友右衛門

二 女戻駕(おんなもどりかご)/俄獅子(にわかじし)
〈女戻駕〉
吾妻屋おとき⇒時蔵
浪花屋おきく⇒菊之助
奴萬平⇒錦之助
〈俄獅子〉
鳶頭梅吉⇒梅玉
芸者お孝⇒孝太郎
芸者お春⇒魁春

三 鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
絹川村閑居の場
時姫⇒芝雀改め雀右衛門
佐々木高綱⇒吉右衛門
おくる⇒東蔵
富田六郎⇒又五郎
母長門⇒秀太郎
三浦之助義村⇒菊五郎

四  団子売(だんごうり)
杵造⇒仁左衛門
お福⇒孝太郎


芝雀が雀右衛門を襲名する披露の公演だが、襲名の口上は夜の部で行われるので昼の部だとピンと来ないけど、仕方がない。
鴈治郎襲名公演の時は昼の部でも劇中襲名口上というのがあったが、今回はそれもなかった。

芝雀(=雀右衛門)と言えば、いつも女形なので、あまり印象に残っていないけど、去年の11月の「神霊矢口渡」の娘お舟の芝居は良かった。物語自体が面白いのだけど、演技力あってこそ集中できたのだと思う。

今回は「鎌倉三代記」の時姫が雀右衛門襲名披露の役だったが、歌舞伎の世界では三姫(鎌倉三代記の時姫、本朝廿四孝の八重垣姫、祇園祭礼信仰記の雪姫)の一つとして重要な役柄だそうだ。確かに、敵の武将に恋をしてその武将から実父を討てと迫られて引き受けてあの世で添い遂げましょうという話だからなかなか難しいのだろう。
甲斐甲斐しいお姫様ぶりは良しとして、父親を討つ覚悟に至る芯の強さのような気配はあまり感じられなかったのだけど、見逃したのかな。
この芝居で言えば、吉右衛門の存在感が大きかった。

ほかの芝居では、「壽曽我対面」での橋之助に貫禄が出たなあと思った。松緑はもっと本格的な芝居を見たかった。


女戻駕と俄獅子は前者が常磐津、後者が長唄による舞踊劇だ。踊りのことは分からないけど、音楽としては心地よい。特に、前者が終わって舞台暗転後に囃子連中?が大勢で舞台一面に並んで聴かせる長唄は華やかな舞台にピッタリでこれは面白かった。

団子売も竹本による舞踊劇。
団子の素になる餅つきから始まるが、その餅が柔らかそうで、あれは一体何で出来ているのだろう。最後はちぎって丸めて客席に投げ込んでくれたら面白いのに、そういう展開ではなかった。


♪2016-033/♪歌舞伎座-02