2014年2月22日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団第296回定期演奏会

2014-02-22 @みなとみらいホール


飯守泰次郎指揮:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

●ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死  
●ブルックナー/交響曲第7番 ホ長調(ノヴァーク版)

指揮者飯守泰次郎。かつて名前はよく聞いたのだけど、その音楽に接したことがあったろうか、さっぱり思い出せない。
FMのクラッシック番組で主に聴いていたのかもしれない。
多分、本人の生の指揮ぶりを見るのは初めてだったと思う。

楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死、というのは、まことに分かりにくいタイトルだ。3幕ものの楽劇の内、第1幕への前奏曲と第3幕の終盤に置かれる「愛の死」という音楽が一緒に演奏されるのだけど、一体どこまでが前奏曲なのか分からない。一体として間断なく演奏されるからだ。
これまでも疑問に思いつつ確かめたこともなかったのが、今日は良い機会だから調べてやろうと、帰宅後スコアをDLして音符を追いながらCDを聴いて、ようやく分かった。
手持ちのCDでは全体で18:17だがその最初から11:20辺りで、低弦だけで6/8の拍子、付点4部の単調なメロディが6小節。その最後は8部音符のGのピチカート2つ。そしてatacca(切れ目なく)と表記されていて、前奏曲はここで終わるけどそのまま後半の「愛の死」に突入する。

こんなことが分かったからといって音楽の本質理解とは関係がないと思うけど、精神衛生には良いことだ。


ワーグナーの歌劇・楽劇については「物語」を楽しめばよいが器楽曲となると、少数の作品を除いて、メロディは半音階を駆使し、終わりそうで終わらず牛の涎のごとく(無限旋律)、調性はあるものの変化が甚だしい結果、決して耳にすんなりとは入ってこないので、これはなかなか馴染めない。
「トリスタン~」についても、何十回聴いているか分からないのに好きにはなれない。
最近になって、ようやく<抵抗>がなくなったのは、ほぼ2年前に観たラース・フォン・トリア監督の映画「メランコリア」でこの音楽が鳴り続けていたからだ。地球の、人類の、個人の終末を神秘的に、官能的に描いたこの作品はなかなか面白かったが、その背景音楽としてこれ以上はないと思えるほど「トリスタン~」がぴったり嵌っていた。そしてきれいな音楽だとようやく思えるようになったからだ。
もっとも、だからといって、わざわざ聴きたいという程でもない。この曲を聴くくらいならほかに聴きたい曲はわんさかある。

いや、今日の演奏はとても良かった。
コンサートは前回、前々回とアマチュアを聴いたので、やっぱり、プロの音はいい。ホルンがひっくり返ったりしない。お気に入りのP席(人によっては、最悪という見解も。)は楽器の音が明瞭でダイナミックレンジが広く、ああ生演奏!の楽しみを十分に味わえる。

ブルックナーもまずまずだったが、彼の音楽についてはいずれかの機会に回そう。

♪2014-17/♪みなとみらいホール09

2014年2月16日日曜日

横浜室内管弦楽団 第48回演奏会

2014-02-16 @神奈川県立音楽堂


●ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
●シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129
●シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 作品43
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アンコール
●シベリウス:アンダンテフェスティーヴォ(弦楽合奏とティンパニーのための)

チェロ:川井真由美(東京交響楽団フォアシュピーラー)
笠原勝二 指揮 横浜室内管弦楽団

まだ、雪は残っていたが、昨日のような交通機関の乱れも収まったようで、大勢の聴衆が集まった。
年に1回の定期演奏会なので、関係者がこの時を逃しては義理を欠く!と駆けつけたのだろう(ジョークですよ)。

このオーケストラのこともよく知らない。とにかく、横浜にはアマオケが非常に数が多いので、大抵知らない。

この日に何の予定も入っておらず、演奏会場とプログラムが良かったので聴きに行くことにした。

チラシによれば、県立平沼高校の管弦楽部のOBを主体に結成されたオケらしい。平沼高校といえば岸恵子や草笛光子などの母校だ。まあ、これはどうでもいいことだけど。

1曲めが「オベロン」序曲で、その初っ端のホルンの音がひっくり返った。これはよくあることだが、全体的にも出来がイマイチだった。

2曲め。
これを楽しみにしていたのだ。シューマンのチェロ協奏曲。
ソリストは東響の次席チェリスト川井嬢。まだ若くて可愛らしいがさすがにプロだ。弦をバリバリと震わせていた。
オケの方もリハーサル代わりの1曲めでだいぶほぐれてきたか、なかなか良い出来だった。
彼のピアノ協奏曲と同じくイ短調。
冒頭からメランコリーが押し寄せてくる。
協奏曲の常道である三楽章形式だけど、実は全楽章が切れ目なく演奏される。そもそも切れ目なく作曲してあるので、約24分間が緊張の連続。
「疾風怒濤」の時代はハイドンが活躍していた頃だそうだが、ハイドンにはちっとも「疾風怒濤」を感じないのにシューマンの音楽こそふさわしいような気がする。


3曲めはシベリウスの第2番。7曲(+1)ある交響曲の中では群を抜いてポピュラーな作品でバイオリン協奏曲と並んで好きな曲だ。聴く機会が多いからますます馴染んで好ましくなる。この曲は僕もアマオケ時代に弾いたことがある。

しかし、この曲の出来具合はちょいと残念だった。
金管も木管も大活躍するのだけど、この管楽器の調子がイマイチだ。
確かに、弦楽器と異なって、彼らは一人ひとりが絶対に手抜きできないのだ。
弦は、五部のどのパートも最低五人程度(コントラバス)から十数人で構成され、原則として同じ楽譜を演奏するので、腕に自信のない部分は弾いたふりをしてごまかすこともできるし、そのほうが響を乱さなくてむしろ歓迎される。
管楽器はそれができない。
ここ!と指定された場所では一発で音を決めなくてはならないから厳しい。

アンコールが初めて聴く曲だった。
シベリウスの作品は何を聴いてもたいてい「シベリウス印」が耳につくのだけど、「アンダンテフェスティーヴォ」に限ってはまるで別人の作品のような気がして、これはシベリウスの再発見だった。
そして、この最後の曲の出来の良いこと!
なぜなら弦楽合奏とティンパニーだけだったから。
管楽器の諸君!まあ、次回はがんばってください。

♪2014-16♪県立音楽堂-04

2014年2月15日土曜日

ヤマハ横浜吹奏楽団第12回定期演奏会

2014-02-15日 @神奈川県立音楽堂

山口俊一指揮
ヤマハ横浜吹奏楽団

保科洋:「風紋」
J・スウェアリンゲン:ロマネスク
P・マスカーニ(宍倉晃編):歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から
和泉宏隆(真島俊夫編):オーメンズ・オブ・ラブ
J・P・スーザ(高橋宏樹編):森のくまさん、スーザに出会った
C・M・ショーンバーグ(M・ピーターズ編):「レ・ミゼラブル」から


すっかり晴れ上がったとはいえ昨日の大雪が道路をシャーベット状態にしており、交通機関もまだ乱れていた。
開場時刻よりは15分位遅れて到着したが、なんと県立音楽堂はガラガラだ。
さもありなん。僕だって、止めようかと思ったくらいだもの。
今日の残雪に来たくとも来れなかった人や、やっぱりやめた、という人が多かったのだろう。
最終的には会場の2割程度?しか席が埋まらなかった。
演奏する側も恐縮して、最初から指揮者による謝罪会見?から始まった。
正指揮者が飛行機の延着で間に合わないので指揮は自分一人でやる。
団員の中にも参加できない者がいる。
演奏できない曲ができた。
直前の練習が十分出来なかった。
第2部に予定していたゲストによる演奏ができなくなった。
等など。

気の毒なのはむしろ彼らの方だ。
この日のために一生懸命練習してきたろうに。


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アマチュアの吹奏楽を聴く機会は少なからずあるが、企業が編成する吹奏楽団は知らないし、それも世界のヤマハが運営するならいかほどの実力だろうかという興味があって、聴きに出かけたが、そうじゃなかった。「ヤマハ吹奏楽団」というのは確かに存在するけど、主にヤマハの本拠地浜松で活動しているらしい。

で、「ヤマハ横浜吹奏楽団」というのは、横浜駅のそばのヤマハ横浜ミュージックスクールの生徒によって構成された楽団だった。
ま、いわば、お稽古教室の発表会のようなものだ。

が、しかし、さすがに大人の集まりだしヤマハを冠するだけあってアマチュアとしてはなかなかの高水準。十分に楽しめた。

近頃はアマチュアでも高価な楽器が使えるようになったこともそのレベルを引き上げている要因の一つだろう。

どの曲も上手だった。
特に、「森のくまさん、スーザに出会った」は楽しい曲だった。
「森のくまさん」のメロディを主体にしながらマーチ王スーザの名曲が次々と巧妙に織り込まれて行くのが、おかしくて楽しい。
「星条旗よ永遠なれ」、「忠誠」や「士官候補生」などはタイトルも思い出せたが、ほかはメロディに覚えがあってもタイトルはすっかり忘れていた。6曲はその場で数えられたが、実際は7曲織り込まれているようだ。
それにしても、スーザのマーチが「森のくまさん」に実によく馴染んでいるのに驚いた。編曲者のアイデアと腕前に脱帽。
どんな曲か興味のある人は、下記のYoutubeで。
でも、ヤマハ横浜吹奏楽団の演奏はこのYoutubeの演奏よりはるかに上手だったことを付記しておこう。


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県立音楽堂は、紅葉坂を登った紅葉ケ丘という小高い場所にある。
この写真は演奏会終了後の帰路なので、すっかり歩道が出来上がっていたが、朝から集まった団員は楽器を持ってまだ積もったままのこの坂の雪と格闘しながら歩いたのだろうな。
「君の前に道はない 君の後ろに道はできる…」ああ、ありがたや。

♪2014-15/♪県立音楽堂-03

2014年2月10日月曜日

第31回神奈川トヨタ・クラウン・クラシック・コンサート

2014-02-10 @みなとみらいホール

川﨑智子(ピアノ)
金聖響指揮:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

●ベートーベン:「レオノーレ」序曲第3番Op72-b
●シューマン:ピアノ協奏曲イ短調Op54
●ベートーベン:交響曲第3番Op55「英雄」
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アンコール
●モーツァルト:「ディベルティメント」K138第2楽章


昨日の消防音楽隊の演奏会も定員の2.3倍の申し込みがあったと言っていたが、今日はもっと凄い。
2,000人の枠に7,300人が応募したというから3.65倍だ。
キネ旬の表彰式は、まあ古参定期購読者として優先招待されているとはいえ、3日間連続して、ひとつくらい落選してもおかしくないような競争の下で全部当選したというのは、まあ、よくよく運が良かったのだろうけど、これが序の口で、年末にはジャンボ宝くじの数億円大当たりが待っているならうれしいが、逆にこの程度で運の使い果たしになるとすればいささか寂しい。

さて、当日会場で指定席に交換というシステムだ。かなり早めに着いたつもりだったが、既に時遅く行列のお尻に付く羽目になった。それでも、まだ1階席は空いているだろうと思ったが、残念なことに2階LC3列(舞台寄りのバルコニー席)だった。

しかし、演奏が始まってみると、この席、決して悪くない。
舞台下手が視界にはいらないのだけど、指揮者の表情は概ね見えるし、ピアノコンチェルトの鍵盤をちょうど角度よく見下ろす場所で、華麗な指先もよく見える。
いや、何より原音と残響の交じり合ったかつダイナミックレンジの広いサウンドで、これはこれで捨てがたい味わいだ。
今度から、この席も毛嫌いしないで積極的に選択してみようかと思ったが、それもそのはず、みなとみらいホールの座席表を見たらS席扱いなんだ。うむ。悲しいかなガッテン!

ベートーベンはいい。でも理想的に序曲を組み合わせるなら「エグモント」を選曲して欲しかった。
もちろん「レオノーレ」が悪いわけじゃないけどね。
シューマンのピアノ協奏曲やベートーベンの「エロイカ」が続くなら、負けないくらいの濃厚味の「エグモント」のほうが似合っているんじゃないか、ということなんだけど。

シューマン!おおシューマン。
数多(あまた)のピアノ協奏曲の中で、指折りのロマンティシズムとセンチメンタリズム。溢れかえるようなむせ返るような情感は、23歳も若いブラームスが24歳頃に完成したピアノ協奏曲第1番(第2番はその22年後の作品)の大人ぽさと比べると、むしろシューマン(36歳の作)の作品の方に若々しさがみなぎっている。
とりわけ冒頭のピアノの強奏と続く甘いメロディに、シューマンのクララへの想いを重ねて聴く時に、ゾクゾクせずにはおれない。

ベートーベンの交響曲第3番。
明らかに第1番2番とは隔絶した新境地の革新的音楽。
ここで交響曲は古典派の枠組みから飛翔したんだなあ。
今日は、久しぶりの生の3番に、あらためてベートーベンの巨人ぶりに感じ入った。
絶対音楽が絶対音楽のまま形而上学に昇華した記念碑なのかもしれない。

♪2014-14/♪みなとみらいホール08

2014年2月9日日曜日

横浜市消防音楽隊創設55周年記念演奏会

2014-02-09 @みなとみらいホール



大西稔彦/鈴木篤典指揮:横浜市消防音楽隊

第1部:
團伊玖磨:祝典行進曲
B・アッペルモント:コーラリア
F・E・ワール:
 ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・ザ・シロフォン
D・ギリングハム:ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス

第2部:
R・A・ホワイティング:ハリウッド万歳
H・マンシーニ:酒とバラの日々
坂本龍一:八重の桜
荒井由実:ひこうき雲
W・バーカー編:ミュージカル「レ・ミゼラブル」よりセレクション

第3部:
防災広報
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ステージ・ドリル「ポートエンジェルス119」



県警の音楽隊もそうだけど、消防隊の演奏会もすべて事前の応募制で、稀に外れる場合がある。今回は、55周年という節目のコンサートなので、いつもより競争率が高かったそうだ。
僕は、最近、この手のイベントの当選率が高くて、昨日のキネマ旬報ベスト・テン表彰式に続いて、今日の消防音楽隊演奏会、さらに明日の神奈川フィルの特別演奏会と3日も連続して無料の応募制イベントに当選した。こんなことで、1年の運を使い果たさねばいいけど。

消防音楽隊はいわばプロだ。うまくて当たり前。そして、現にうまい。もう少しシンフォニックな曲目を聴きたかったが、ごく普通のプログラムだった。

最近はアマチュアの吹奏楽や管弦楽でも女性の比率が高くなっているが、消防隊もなんと約7割が女性だった。世の中は確実に変わっているなあと思う。これはしかし、良い変化なのだろうか?
女性の社会進出は大いに結構。どんどんと枢要な地位を占めるようになってほしい。
しかし、その一方で男性の草食化が益々進んで、そのうち、社会のお荷物化してしまわないだろうか…などと心配にもなる。

消防隊の演奏会で楽しみは、ポートエンジェルス119だ(った)。
ミニスカートの制服のお姉さんのまるで機械人形のようなシャキッとしたドリルにはつい弛んだ気持ちがただされる。
しかし、はじめて彼女たちを観た時に味わった感動はだんだん小さくなってきた。
下手でもいいからもっと愛想よく演技できないものだろうか。
あまりに真顔で隙もなくピタッと決められると、なんだか、怖い感じがするよ。
時々旗を落としていた県警音楽隊のカラーガードの方にむしろ親しみを感じるなあ。

http://youtu.be/8mRN9ZqRXZ8

前日の大雪の残雪あり。

♪2014-13/♪みなとみらいホール07

2014年2月6日木曜日

歌舞伎座新開場柿葺落 二月花形歌舞伎 通し狂言 青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ) -白浪五人男

2014-02-06 @歌舞伎座



河竹黙阿弥作
通し狂言 青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ) -白浪五人男

序 幕  初瀬寺花見の場
     神輿ヶ嶽の場
     稲瀬川谷間の場
二幕目    雪の下浜松屋の場
     同  蔵前の場
     稲瀬川勢揃の場
大 詰  極楽寺屋根立腹の場
     同  山門の場
     滑川土橋の場


弁天小僧菊之助・青砥左衛門藤綱⇒菊之助/
南郷力丸⇒松緑/
赤星十三郎⇒七之助
忠信利平⇒亀三郎/
鳶頭清次⇒亀寿/
千寿姫⇒梅枝/
青砥家臣伊皿子七郎⇒歌昇
青砥家臣木下川八郎⇒萬太郎/
浜松屋倅宗之助⇒尾上右近
手下岩渕の三次実は川越三郎⇒廣太郎/
手下関戸の吾助実は大須賀五郎⇒種之助
丁稚長松⇒藤間大河/
薩島典蔵⇒権十郎/
局柵⇒右之助/
浜松屋幸兵衛⇒團蔵/
日本駄右衛門⇒染五郎

リニューアル歌舞伎座、というより、そもそも歌舞伎座は初めてだった。
どうしてこれまで縁がなかったのだろうと自分でも不思議なくらいだ。
まあ、国立劇場で比較的安価に観られるので入場料の高い歌舞伎座でも観たい、という気になるほど歌舞伎が好きって言う訳じゃなかったからだな。
これまで年に数回だったが、今年から毎月1本は観ようと、とりあえず決めたので、2月に歌舞伎公演のない国立劇場に代わって歌舞伎座デビューとなった次第。
東銀座までは京急が乗り入れしているので非常に便利だ。
半蔵門(国立劇場)に比べると所要時間は半分くらいだろうか。
B3出口がそのまま、歌舞伎座の地下2階木挽町広場に繋がっている。


リニューアル歌舞伎座はまだ1年も経っていないのでどこもかしこもピカピカだが、残念ながら狭い。
1階ロビーなんか無いに等しい。各階のホワイエも狭い。
客席は1808らしい。国立劇場が1520だから、300席近く多いが、間口も横幅も国立劇場より狭いように思う(さらに舞台天井も低いだろう。)。
それでもたくさんお客が入るのは2階席、3階席(4階は一幕見席)の傾斜が怖いくらい急に作ってあるからだ。
その分、3階席からでも舞台が近いが、舞台天井の低さも邪魔をして大詰めの場面では舞台装置の極楽寺の屋根の瓦に昇った菊之助や山門の上の染五郎の見得を切る顔が隠れてしまって見えない。
やはり、国立劇場のほうがゆったりとみられる。


さて、芝居の方は、有名な弁天小僧菊之助、日本駄右衛門ら白波5人男の話だが、これまで部分的には映画や芝居などで観聴きしていたが、「知らざあ言って聞かせやしょう」の弁天小僧と「問われて名乗るもおこがましいが」の日本駄右衛門や白波5人男がどうつながるのか知らなかったが、今回、通し狂言(3幕9場)として観ることができたので、なるほどこういう話か、と合点した。

いかにも歌舞伎・世話物らしく、主要登場人物のほとんどが「(表向きは)某で、実は…」というビックリマーク付きで、よくまあ、こんなでたらめな話を作り上げたものだと思うが、そこは面白ければ何でもOKの庶民感覚なのだろう。

セリフも浄瑠璃調あり、現代話し言葉風あり、五七調ありのごった煮。
しかし、弁天小僧の「浜松屋の場」や五人男がそれぞれ名乗りを連ねる「稲瀬川勢揃の場」などの名調子こそ、歌舞伎の一つの典型なのだろう。何か懐かしささえ感じて日本人のDNAを刺激された感がある。

「(尾上)菊之助」の「(弁天小僧)菊之助」だったが、まだちょっと若い気もする。
日本駄右衛門の染五郎、
南郷力丸の松緑、
赤星十三郎の七之助、
忠信利平の坂東亀三郎はいずれも若い。
白波五人男としてはやや貫禄が不足した。

大詰めの極楽寺屋根立腹の場から山門の場に代わる所謂「がんどう返し」(大屋根が90度後ろに回転して、背景となりその下から2階建ての山門がせり上がってくる。)がなかなかの見世物だった。電気のない江戸時代によく作ったものだ。

ま、とにかく、この狂言、極めて様式化された「立ち回り」、「名乗り」、「連ね」(調子の良い長台詞)に「厄払い」(五七調の名文句)や「だんまり」(暗闘)や「見得」の連続で、これこそ歌舞伎入門に持って来いだと思う。

♪2014-12/♪歌舞伎座-01

2014年2月2日日曜日

横浜交響楽団第652回定期演奏会

2014-02-02 @神奈川県立音楽堂


バイオリン:宮﨑美里
指揮:飛永悠佑輝

【新春コンサート】〈音楽の都を巡る⑨ベルリン〉

●C.P.E.バッハ
6つのシンフォニアより 第1番ト長調 Wq182-1

●ベートーベン
バイオリン協奏曲ニ長調 Op.61
<カデンツァ by フリッツ・クライスラー>

交響曲第8番ヘ長調 Op.93

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アンコール
●J.シュトラウスⅡ「美しく青きドナウ」



昨年の10月定期から、常任指揮者の甲賀氏が病のために飛永氏に代わり今回も同様だった。飛永氏の指揮に不満がある訳ではないけど甲賀氏の容態が案じられる。

さて、今日は「音楽の都を巡る」シリーズの最終回で「ベルリン編」。
C.P.E.バッハはJ・S・バッハの次男だ。ヴァイマル(ワイマール)の生まれでベルリンにも長く住んだので「ベルリンのバッハ」 と呼ばれるそうだ。なるほど。それで彼の作品が取り上げられた訳だ。
しかし、ベートーベンとベルリンはどう結びつくのか分からないなあ。

C.P.E.バッハの「シンフォニア」を聴くのは初めてだった。
ハイドンに先行する古典派交響曲のハシリなんだ。そういう意味でとても興味深かったが、演奏は、残念ながら寂しいものだった。いつも1曲めはがっくりくる。まあ、1曲めは指慣らし、唇慣らしで2曲めからが本番と思わなくちゃいけないな。

で、2曲めのベートーベンのヴァイオリン協奏曲は、現金なもので、もう出だしから音が違う。ニ長調という調性は弦楽器には弾きやすいと思う。多少はそのせいもあるかもしれない。

Soloの宮﨑美里さんは、いろんなコンクールで入賞しているがまだ東京藝大の二年生だそうな。才能ある若い人にオーケストラとの協演の機会を作ってあげるということはとても良いことだ。
これが実に巧い。正確で、端正だ。もっとも、もう少し、メリハリある、いわばケレン味のある弾き方でも良かったのではないかと思うけど、まあ、そういう味わいはこれから徐々に身につけてゆくのだろうな。

交響曲第8番。
ベートーベンの交響曲の中ではCDではよく聴く方だけど、生演奏では随分久々に聴いた。今後のコンサートの予定の中にもベートーベンの交響曲は何回も取り上げられるけど、すべて3番以降の奇数番号の曲ばかり。ホンに偶数番は取り上げられない。
しかし、2番はともかく、4番、8番はたまには生で聴いてみたい曲なので、今回横響が取り上げてくれたのは良かった。
少なくとも6番よりは格調高い名曲だと思うのだけどなあ。

♪2014-11/♪県立音楽堂-02