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2019年3月27日水曜日

東京・春・音楽祭-2019-ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽〜ピアノ四重奏の夕べ

2019-03-27 @東京文化会館


バイオリン:ノア・ベンディックス=バルグリー
ビオラ:アミハイ・グロス
チェロ:オラフ・マニンガー
ピアノ:オハッド・ベン=アリ

マーラー:ピアノ四重奏曲(断片) イ短調
シューマン:ピアノ四重奏曲変ホ長調 op.47
ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番ト短調 op.25

東京・春・音楽祭ではほぼ毎年このメンバーの演奏を聴いているが、いつも大満足できる。

ベルリン・フィルのトップ奏者たちってなんて凄腕なんだろう。ほとほと感心するよ。こんな高水準の演奏を聴くことは誠にもって幸福なことだが、一方で、この高い水準が他の演奏を聴くときの物差しになるのが不幸なことでもある。

今回は、ピアノ四重奏曲集だ。
最初はマーラーの12分くらいの単一楽章の作品だった。これはマーラー唯一の室内楽作品だそうな。作品、と言っても<断片>で終わっている。作曲したのは15歳(16歳説も)らしい。
かなり、劇的で、将来のマーラーを予感させる部分も見えたが、多くの部分は古典派やロマン派の諸先輩の作品を倣ったように思える。

シューマンの室内楽は多品種少量作曲でその多くがピアノを含んでいる。ピアノ四重奏という編成では今日の作品が唯一だ。時々CDを回すのだけど、いまいちとらえどころがなくて入り込めないでいたが、今日の演奏で霧が晴れた感じがした。やはりナマで聴かないと音楽の琴線に触れるということができないようだ。

最後のブラームス。これは大いに期待をしていたが、その期待をも軽々超えてしまう上出来であった。40分近い大曲だが、全く飽きさせない。最初にパズルのピース、あるいは手札のカードを配っておいて、それが徐々に形を成してゆく過程を聴きながらスリリングに味わった。

どの楽章も面白いが、何と言っても舞曲風に仕上げた最終楽章の高揚感は半端ではない。ハンガリアンダンス風で中間部にはロマを思わせる泣かせるメロディーが仕込まれていて、もうこれは本当に胸をかきむしられるようで、不覚の落涙…とまではゆかないものの、こんなにも哀愁に満ちた音楽を巧妙に構築しているブラームスの才能に感服した。
もちろん、ベルリン・フィルのトップ奏者たちの息の合った演奏が見事なのだけど。

この日は東京で桜の満開が宣言された。

♪2019-37/♪東京文化会館-02

2017年3月16日木曜日

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2017-ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽

2017-03-16 @東京文化会館


バイオリン:アンドレアス・ブーシャッツ
チェロ:オラフ・マニンガー
ピアノ:オハッド・ベン=アリ

ラフマニノフ:ピアノ三重奏曲 第1番 ト短調 《悲しみの三重奏曲》
ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 作品8
シューマン:ピアノ三重奏曲 第1番 二短調 作品63

東京・春・音楽祭の一番手。
昨年も聴いた(Vn交替)が、その時はメンデルスゾーンの1番にチャイコフスキーという、もうグイグイ泣かせる組合せで堪能したし、とりわけ、チェロの美音にしびれたことを思い出す。

今年はラフマニノフ、ブラームス、シューマンという渋いプロ。
去年も素晴らしかったが、3人の呼吸が一体となっているのが分かる。
特にシューマンの微妙に揺れるテンポがぴったりなのが実に気持ち良い。そして相変わらずのチェロの音色がいい。

今回も客席からは大歓声が沸き起こった。何度も何度もカーテンコールが繰り返されたが、ステージと客席の一体感が嬉しかったね。

♪2017-41/♪東京文化会館-02

2016年4月9日土曜日

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2016-ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽

2016-04-09 @東京文化会館


ノア・ベンディックス=バルグリー:バイオリン:
オラフ・マニンガー:チェロ
オハッド・ベン=アリ:ピアノ:

メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.49
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 《偉大な芸術家の思い出に》 op.50


室内楽の編成でピアノを含むものはピアノ三重奏からピアノ六重奏まである(ピアノ七重奏もあるかもしれないけど、そうなれば単に七重奏曲というのではないかな?)が、中ではピアノ三重奏曲がダントツに多く作曲されているようだ。
ピアノ抜きでは弦楽四重奏曲が圧倒的に多いのと同じで、各パートの役割が安定して作曲に制約が少ないのではないか。
数が多いだけに名曲も多い。

古典派の作品では短調のものが極めて少ない。ハイドンは真正45曲中短調は8曲、モーツァルトは6曲中ゼロ、ベートーベンは7曲中1曲のみ。

ところが、ロマン派に入ると俄然短調の作品が多くなり、いずれも泣かせる要素が強く、そのメランコリックな情緒性が心持ちを酔わせてくれる。
そういう面では、メンデルスゾーンの第1番とチャイコの作品は双璧をなすだろう。

個人的にも大好きな2曲で、これにあとショパンとベートーベンの第3番ハ短調が加わればもう泣かせの四天王だ(もっとも、すべてのピアノトリオ(を聴いた訳ではないけど)から秀作を選ぶならベートーベンの第7番「大公」は絶対に外せない。)。

そんな訳で、大いなる期待を持って臨んだ。

ベルリン・フィルの第1コンサートマスターと首席チェリストに彼らとコンビを組むことが多いピアニストというメンバーだが、ベルリン・フィルだからといって、各人の技量が名の通った日本人ソロ演奏家と格段の違いがあるとは思っていなかった。

しかし、冒頭のチェロの音を聴いて、これは!と思った。
つい先日も同じ文化会館小ホールでピアノ四重奏などを聴いたばかりだったが、音色も音量も段違いに豊かだ。
それはチェロだけではなく、バイオリンにしても、先日と同じ楽器だと思われるピアノにしても同様で、かくも違いが生ずるのはどうしてだろう。多少は聴いている席の違いもあるだろうけど、それ以上に音楽の形が違うように思った。

これは今まで聴いたことのない異次元の巧さだ。
豊かな音色と音量が明確な輪郭を描き、2曲に通ずる「悲痛」は、そのまま「美に通ずる」事を実証した感がある。

満席の観客の誰もが心打たれたのだろう。小ホールのコンサートにしては珍しく館内大歓声でカーテンコールは照明がつくまで繰り返された。


ピアノ三重奏鑑賞上の間違いなく一つの基準となった演奏だったが、これはむしろ不幸なことかもしれない。
このような演奏に再び出会えることは極めて少ないと思えるからだ。

♪2016-41/♪東京文化会館-05