2016年4月9日土曜日

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2016-ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽

2016-04-09 @東京文化会館


ノア・ベンディックス=バルグリー:バイオリン:
オラフ・マニンガー:チェロ
オハッド・ベン=アリ:ピアノ:

メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.49
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 《偉大な芸術家の思い出に》 op.50


室内楽の編成でピアノを含むものはピアノ三重奏からピアノ六重奏まである(ピアノ七重奏もあるかもしれないけど、そうなれば単に七重奏曲というのではないかな?)が、中ではピアノ三重奏曲がダントツに多く作曲されているようだ。
ピアノ抜きでは弦楽四重奏曲が圧倒的に多いのと同じで、各パートの役割が安定して作曲に制約が少ないのではないか。
数が多いだけに名曲も多い。

古典派の作品では短調のものが極めて少ない。ハイドンは真正45曲中短調は8曲、モーツァルトは6曲中ゼロ、ベートーベンは7曲中1曲のみ。

ところが、ロマン派に入ると俄然短調の作品が多くなり、いずれも泣かせる要素が強く、そのメランコリックな情緒性が心持ちを酔わせてくれる。
そういう面では、メンデルスゾーンの第1番とチャイコの作品は双璧をなすだろう。

個人的にも大好きな2曲で、これにあとショパンとベートーベンの第3番ハ短調が加わればもう泣かせの四天王だ(もっとも、すべてのピアノトリオ(を聴いた訳ではないけど)から秀作を選ぶならベートーベンの第7番「大公」は絶対に外せない。)。

そんな訳で、大いなる期待を持って臨んだ。

ベルリン・フィルの第1コンサートマスターと首席チェリストに彼らとコンビを組むことが多いピアニストというメンバーだが、ベルリン・フィルだからといって、各人の技量が名の通った日本人ソロ演奏家と格段の違いがあるとは思っていなかった。

しかし、冒頭のチェロの音を聴いて、これは!と思った。
つい先日も同じ文化会館小ホールでピアノ四重奏などを聴いたばかりだったが、音色も音量も段違いに豊かだ。
それはチェロだけではなく、バイオリンにしても、先日と同じ楽器だと思われるピアノにしても同様で、かくも違いが生ずるのはどうしてだろう。多少は聴いている席の違いもあるだろうけど、それ以上に音楽の形が違うように思った。

これは今まで聴いたことのない異次元の巧さだ。
豊かな音色と音量が明確な輪郭を描き、2曲に通ずる「悲痛」は、そのまま「美に通ずる」事を実証した感がある。

満席の観客の誰もが心打たれたのだろう。小ホールのコンサートにしては珍しく館内大歓声でカーテンコールは照明がつくまで繰り返された。


ピアノ三重奏鑑賞上の間違いなく一つの基準となった演奏だったが、これはむしろ不幸なことかもしれない。
このような演奏に再び出会えることは極めて少ないと思えるからだ。

♪2016-41/♪東京文化会館-05