2016-04-23 @ミューザ川崎シンフォニーホール
ジョナサン・ノット:指揮
クレシミル・ストラジャナッツ:バス・バリトン&語り:
チェン・レイス:ソプラノ:
東響コーラス:混声合唱
東京交響楽団
シェーンベルク:ワルシャワの生き残り 作品46 ~語り手、男声合唱と管弦楽のための
ベルク:「ルル」組曲
ブラームス:ドイツ・レクイエム 作品45
東響音楽監督のジョナサン・ノットは時々変わったプログラムで驚かせるが、今日は前半が12音技法を採用した超現代音楽2曲。後半がブラームスの「ドイツ・レクイエム」とは、いかなるコンセプトか。
大体、無調音楽は苦手で、CDやビデオではまず、聴かない。
しかし、ナマで聴くと、これが案外面白かったりもする。
「ワルシャワの生き残り」はナチスの犠牲になったユダヤ人の悲劇を管弦楽と語りと男声合唱で表現しているので、終始、不協和音の連続で重苦しい。
シェーンベルクの弟子筋に当たるベルクもナチスには苦労したそうだ。この「ルル」組曲には政治的な主張はないが、原作がウィーン世紀末の退廃を描いているそうで、魔性の女ルルが多数の男を巻き込んで最後は殺されるというこれまた悲惨な話を題材にしている。元々オペラとして企画され、作曲は未完に終わったが、それらの中から抜粋して組曲が編まれた。
そのためにソプラノ歌手が登場してルルを演じている?のだろう。
現代音楽というのは、如何に観客を驚かすか、ということに腐心している(というのは嫌味で言っているだけだど)ので、ぼんやりと退屈している間はなく、そういう意味では最後まで飽きずに聴ける。しかし、何度も聴きたいとは思わない。
前半に、脳みそを掻き回されるような音楽を聴いたので、後半のブラームスがどんなに素晴らしかったことか。
なるほど、ジョナサン・ノットの計算はこういうことであったか。
第1曲の闇夜から徐々に陽が差してくるように静かに合唱が始まる時、もう、気持ちをキュンと掴まれてしまう。
全7曲で構成され、どれもが深い精神性を持っているようだ。
テキストが通常のミサ曲やレクイエムのようにラテン語ではなくドイツ語(なので「ドイツ・レクイエム」と呼ばれる。)であるというだけではなく、形式においても、通常は置かれるキリエ~サンクトゥス~ラクリモーサ~アニュス・デイ~リベラ・メなどの歌詞を持つ曲が全く配されていないので、レクイエムというより、聖書をテキストにした「管弦楽伴奏声楽独唱と合唱のための組曲」のようなものだ。
こういう点が、いわゆる三大レクイエム(モーツァルト、ヴェルディ、フォーレ)にカウントされない理由かもしれないが、これらの3曲にまったく劣らない大傑作だと思う。個人的にはヴェルディを引きずり下ろしてもドイツ・レクイエムを入れたいところだ。
合唱の東響コーラスはアマチュアなのだけど、東響専属だけあって良く訓練されており、全員が楽譜を持たずに全曲を歌っていたのは驚いた。ソプラノグループに、特に最終曲の高音ピッチに不安が見られたけど、気にするほどのことではなかったか。
♪2016-048/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-11
https://youtu.be/rGWai0SEpUQ
https://youtu.be/YP12Bt9qjh4