2018-05-22 @歌舞伎座
成田山開基1080年
二世市川團十郎生誕330年
安田蛙文・中田万助 作
奈河彰輔 演出
藤間勘十郎 演出・振付
通し狂言
一、雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)
市川海老蔵五役相勤め申し候
鳴神上人⇒海老蔵
粂寺弾正⇒海老蔵
早雲王子⇒海老蔵
安倍清行⇒海老蔵
不動明王⇒海老蔵
雲の絶間姫⇒菊之助
秦民部⇒彦三郎
文屋豊秀⇒松也
秦秀太郎⇒児太郎
小野春風/矜羯羅童子⇒廣松
錦の前⇒梅丸
八剣数馬/制多迦童子⇒九團次
小原万兵衛実は石原瀬平/黒雲坊⇒市蔵
白雲坊⇒齊入
小松原中納言⇒家橘
関白基経⇒錦之助
八剣玄蕃⇒團蔵
小野春道⇒友右衛門
腰元巻絹⇒雀右衛門
二、女伊達(おんなだて)
女伊達木崎のお光⇒時蔵
男伊達中之島鳴平⇒種之助
同 淀川の千蔵⇒橋之助
「雷神不動北山櫻」は僕にとって初めての演目だった。
全4幕の通し狂言で、そのうちに歌舞伎十八番(市川宗家のお家芸として選定された荒事の演目。)に選ばれている「毛抜・鳴神・不動」の3作を含むというのだから、1作で3度おいしい作品という言える。
尤も、歌舞伎十八番も現代も実際に演じられているのは8作品程度で、残りは今ではほとんど演じられることはないそうだ。内容が伝承されていないので、演るとすれば新作を作り上げるに等しいらしい。
「毛抜・鳴神・不動」も実際に舞台にかかるのはほぼ「毛抜」だけと言ってもよい状態のようだ。
僕も、「毛抜」は数回観たが、「鳴神」も「不動」も観たことはないし、今回の鑑賞で初めてそういう作品があることを知った次第だ。
1人口上から4幕大詰まで海老蔵が5役出ずっぱりで八面六臂の大活躍。外連味たっぷりの見得がこれ程似合うのは海老蔵だけか。
菊之助との絡みも見所。
筋の運びが必ずしも滑らかではないし、長過ぎるような気もするが、歌舞伎の面白さ、楽しさ、美しさをたっぷり詰め込んだ力作だ。
余談だが、「毛抜」が単独で演じられる時は、何故か劇中劇の形をとる。今回も2幕目がそれに当たるが、やはり、この幕だけは、舞台上手と下手に芝居小屋の看板が掲げられ、粂寺弾正が若衆や腰元にちょっかい出しては失敗する度に客席に向かって頭を下げ、「面目次第もござりませぬ」と言い訳するところも今回の「通し」上演でも同じだった。
♪2018-058/♪歌舞伎座-03
2018年5月22日火曜日
2016年4月18日月曜日
四月大歌舞伎 夜の部
2016-04-18 @歌舞伎座
一 彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
杉坂墓所~毛谷村
毛谷村六助⇒仁左衛門
お園⇒孝太郎
杣斧右衛門⇒彌十郎
微塵弾正実は京極内匠⇒歌六
お幸⇒東蔵
高野山開創一二〇〇年記念
夢枕獏:原作、戸部和久:脚本、齋藤雅文:演出
新作歌舞伎
二 幻想神空海(げんそうしんくうかい)
沙門空海唐の国にて鬼と宴す
空海⇒染五郎
橘逸勢⇒松也
白龍⇒又五郎
黄鶴⇒彌十郎
白楽天⇒歌昇
廷臣馬之幕⇒廣太郎
牡丹⇒種之助
玉蓮⇒米吉
春琴⇒児太郎
劉雲樵⇒宗之助
楊貴妃⇒雀右衛門
丹翁⇒歌六
憲宗皇帝⇒幸四郎
「彦山権現誓助剱」は昨年2月に歌舞伎座で観たが、その時の主要な役者は菊五郎(六助)、時蔵(お園)、東蔵(お幸)で、東蔵は今回も同じ役だった。
この時は「毛谷村」だけの上演だったが、今回は「杉坂墓所」という前段が演じられて話がより分かりやすくなった。
前回は初見だったが、これは面白かった。そもそも話が面白いのだ。
今回は菊五郎から仁左衛門に、時蔵から孝太郎に変わったが、やはり面白い。一番楽しめるのは男勝りで腕自慢のお園が、六助こそ自分の許嫁であることを知って、急にしおらしく、女っぽくなるおかしさだ。
それでも照れながら庭の臼を転がしたりとつい地が出たり、慌てていて火吹き竹の代わりに尺八を吹いてしまうなど、まるでコントのようなおかしさだ。
それを孝太郎が実におかしくやるので笑いが止まらない。
仁左衛門の六助が菊五郎と違ってとても陽性で、人の良い六助にぴったりだ。この仁左衛門・孝太郎という実の親子の掛け合いが、本筋とは別に、とても幸福感に満ちて良かった。
さて、今月の歌舞伎座のメインは新作歌舞伎「幻想神空海」だろう。そう思い、興味もあって、今月は<夜の部>を選んだ。
しかし、これがちっとも面白くないのだ。
音楽、音響効果、照明、セリフ回しを含め、これが「歌舞伎」?という疑問もあるけど、まあ、そこは<面白ければ>なんでもあり、というのが「歌舞伎」の真髄だと思うので受け入れることができる。
しかし<面白ければ>許される新しい試みは全然効果を発揮していない。
まずもって、芝居の筋が分かり難い。
観劇の最中は客席の照明も落とされるし、2時間12分の長丁場に幕間休憩もないので、筋書きをチラチラ読むこともできない。
予めざっと目を通していたけど、人物の名前もなかなか覚えきれないまま本番に突入したので、ほとんど役に立たなかった。
空海が主役と思っていたが、必ずしもそうとも言えないようだ。
空海が留学僧として、唐で密教を学び成長してゆく話かと思いきや、なるほど夢枕獏の原作であるからにはそんな正統的な話であるはずがない。それはそれで良い。突飛な物語も結構だけど、空海の存在が希薄なのだ。
終わってみれば、楊貴妃をめぐる白龍と丹翁の確執の物語ではないか。空海は狂言回しのような存在にすぎない。
これは意欲的な取組みだったがこのままでは失敗作で終わるのではないか。
♪2016-047/♪歌舞伎座-03