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2023年3月27日月曜日

東京都交響楽団 第971回 定期演奏会Bシリーズ 【リゲティの秘密-生誕100 年記念-】

2023-03-27 @サントリーホール



大野和士:指揮
東京都交響楽団
合唱:栗友会合唱団**

バイオリン&声:パトリツィア・コパチンスカヤ*

リゲティ(アブラハムセン編曲):虹~ピアノのための練習曲集第1巻より[日本初演]
リゲティ:バイオリン協奏曲*
バルトーク:《中国の不思議な役人》op.19 Sz.73(全曲)**
リゲティ:マカーブルの秘密*
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リゲティ : バラードとダンス(2つのバイオリン編)*
with 四方恭子





リゲティは(「ルクス・エテルナ」を除き)嫌いだし、都響も普段あまり持ち上げることも少ないけど、このプログラムに限っては絶賛する。

明日も芸劇でやるそうだから、今日聴けなかった人は是非当日券を買って一大パフォーマンスを観に行ってほしい。値打ちものだ。

リゲティの3曲中「マカーブルの秘密」以外は初聴き。

「バイオリン協奏曲」が先ずは聴きもの。
オケの弦編成は変則調弦のバイオリン、ビオラ各1を含んで僅か11本だが、管打鍵は種類も人数も大所帯だ。
音楽は微分音を含むものらしいが、どこが?って感じ。
「ルクス・エテルナ」の管弦楽版擬。微妙な音程の重なりと変化を固唾を飲んで聴いた。

コパチンスカヤの口笛あり、奇声あり、足踏みあり。これらはオケも強要され、客席も求められ、呼応して叫ぶ勇者もあり。


「マカーブル〜」の編成も弦は15本だけだが、管打鍵は大編成。
ソリストは、編成表にも「ソプラノ」と記してある。本来は、歌手が担当するのだと思う。

僕が以前聴いた時は半田美和子の独唱と管弦楽だった。

今回は、コパチンがバイオリンを弾きながら歌った?いや、奇声を発した。
かつて経験していたものの、やはり驚かされた。

コパチンは衣装も独特で、バイオリン協奏曲の時は、以前同様虫食い穴あきのようなドレスで裸足だった。

それが、「マカーブル〜」では死神のつもりなのか極端なメイクに、ドレスには新聞紙や膨らませたレジ袋擬をいくつもぶら下げて登場し、見た目にも圧倒される。これは音楽なのか?と考えるゆとりも与えない強烈なパフォーマンスだった。

プログラムの構成としては、長尺大編成のバルトークを最後に置くのが常識的だが、「マカーブル〜」を先にやったのでは、お客にとてもバルトークを聴く心の準備ができないと考えて、「マカーブル〜」で締め括ったのだろう。正解だ。

さて、バルトーク「中国の不思議な役人」。
組曲版は過去に聴いているが今回は全曲版。
弦16型で管打鍵はこちらも大編成。オルガンに混声4部60人強のボカリーズも。

今回は、よほどリハを繰り返したのか、大野和士のリードが巧かったのか、細部まで、よく整ったアンサンブルで大編成の魅力を十分に発揮した。
大満足也。

♪2023-053/♪サントリーホール-08

2019年1月10日木曜日

東京都交響楽団 第871回 定期演奏会Bシリーズ

2019-01-10 @サントリーホール


大野和士:指揮
東京都交響楽団

パトリツィア・コパチンスカヤ:バイオリン*

シェーンベルク:バイオリン協奏曲 op.36*
ブルックナー:交響曲第6番イ長調 WAB106(ノヴァーク版)

微睡(まどろみ)が感受性を高めるのは真実だ。

激しく眠い上にシェーンベルクの作品だというのに裸足で操るコパチンのバイオリン独奏がかつてないほどビンビンと響く。都響もぴったりシンクロして上出来だ。

さらに後半のブルックナー交響曲第6番の出来栄えはどうだろう。これがいつもの都響かと耳を疑うようなアンサンブルの馬力ある美しさ。

6番は聴く機会も馴染みも少ないにも関わらず、なんとも心地が良い。

加えて、今日のサントリーホールは、普段と違って〜乾燥していたのだろうか、非常にクリアな響きで驚いた。
音楽だけでなく、拍手までがサラウンドで粒立っている。
これは微睡みが齎した幻聴?それともリアル?

♪2019-002/♪サントリーホール-01

2014年6月7日土曜日

N響第1784回 定期公演 Aプログラム

2014-06-07 @NHKホール


パトリツィア・コパチンスカヤ(バイオリン)
ウラディーミル・アシュケナージ指揮
NHK交響楽団

◎グラズノフ:交響詩「ステンカ・ラージン」作品13
◎プロコフィエフ:バイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63
--------アンコール
◎ホルヘ・サンチョス・チョン:クリン(Vnソロ)

◎チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71から第2幕
 第1曲 情景(砂糖の山の魔法の城で)
 第2曲 情景(クララと王子)
 第3曲
  a)チョコレート(スペインの踊り)
  b)コーヒー(アラビアの踊り)
  c)お茶(中国の踊り)
  d)トレパーク(ロシアの踊り)
  e)あし笛の踊り
  f)ジゴーニュおばさんとピエロ
 第4曲 花のワルツ
 第5曲 パ・ド・ドゥー
   アダージュ/タランテラ/金平糖踊り/コーダ
 第6曲 終わりのワルツと大詰め(アポテオーズ)

                      <録音用にマイクがたくさんぶら下がっている。>

「ステンカ・ラージン」がロシアの傑物の名前であることは、たぶん同名のロシア民謡から覚えたのだろう。

グラズノフの交響詩「ステンカ・ラージン」は、そのステンカ・ラージンにまつわる伝承物語を、やはり彼をたたえて作られたロシア民謡の「ボルガの舟唄」のメロディをモチーフにして構成されている。

中学生くらいのだったろうか、ロシア民謡「ステンカ・ラージン」の哀愁に満ちた旋律をよく歌って、今でも覚えているが、こちらの旋律も使われるのかと期待して聴いていたが、こちらは使われていなかった(…と思う)。

交響詩が冠されているが、ソナタ形式らしい。
親しみやすい、そしてロシアの香りに満ちた音楽だった。

この日の演奏はNHKFMが中継放送していたので、それを録音したものが早速Youtubeに投稿されていた。


プロコフィエフは、ショスタコーヴィチらとともにいわゆるジダノフ批判(1948年から10年間)で翻弄された作曲家のひとりだが、本日の演目バイオリン協奏曲第2番は「批判」の10年以上前の作品なので、まあ、のびのびと作ったのではないか。というより、彼の作品のほとんどは「批判」前に完成しているので、過去の作品についてほじくり返されて批判を受けたのか、具体的なことは知らないけど、国が芸術、とりわけ音楽を管理するなんて、恐ろしいことだ。

で、そのプロコフィエフの音楽だけど、これが馴染みが少ない。
この曲も聴いたことがない訳ではないけどCDの手持ちもないので予習もできずに臨んだが、果たして冒頭の特徴的なテーマはかすかに記憶があったが、進むに連れ未知との遭遇状態になった。

ほぼ同時代、同国人のショスタコーヴィチの音楽も、調性が頻繁にゆらめくのは同じだけど、ショスタコの場合は(これは聴き慣れているからかもしれないけど)あまり違和感ないのだけど、プロコフィエフはどうもメロディーが掴みにくい。
それでいてト短調と銘打っているので、調性はかろうじて維持しているのだろうが。

美しい口ずさめるような旋律は皆無だけどその代わりリズムが面白い。
冒頭の第1主題にしても4/4拍子だけど、5拍子のようなリズムだし、第2楽章も12/8というちょっと変わったリズムだ。
最終楽章は無窮動のようで忙しくソロバイオリンは休む間がない。

まだこれからも何度も聴く機会があるだろう。
だんだんと味わいが深くなるのに期待しよう。


バイオリンソロのコパチンスカヤ。
モルドヴァ生まれの30歳代後半。色白の大型美形だ。純白のドレスに血痕が滴っているような大胆なドレスだったが、長い裾から時々素足が見えた。

都はるみだったか、歌うときは裸足で地に足つけた方が力が入るとか言っていたが、彼女もそれを実践しているのだ。

なかなか迫力のあるバイオリンだった。

後で知ったのだけど、アンコールの「クリン」は彼女の定番らしい。
初めて聴いたが、超現代的な無伴奏作品で、声楽というか、口三味線というか、弾きながら意味不明の嬌声を発して、びっくりしている間に終わって、客席からは笑いとともに大きな拍手が起こった。


最後はチャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」作品71から第2幕。
こういう聴き方は初めてだった。

よく演奏会で取り上げられるのはバレエ組曲「くるみ割り人形」(作品71a)で、バレエ音楽の中からチャイコ自身が8曲を選んで組曲にしたものだ。

で、今日演奏されたのは元々のバレエにつけた音楽の内、第2幕の音楽全曲だ。
でも、チャイコが組曲として選んだ8曲の内6曲までが第2幕から取られているので、馴染みの少ない曲はわずかでしか無く、全体としてとても楽しめた。

終わって、万雷の拍手に応えるアシュケナージは、自身が演奏に満足できたのか、嬉しくてはしゃいでいるようだった。

今日はFM放送生中継のほか、テレビカメラも入って録画をしていたので、いずれクラッシク倶楽部などで放映されるだろう。
コパチンスカヤのプロコフィエフを是非とももう一度聴きたい。
彼女の迫力ある表情を間近に観ながら聴きたい。

♪2014-59/♪NHKホール-03