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2024年12月17日火曜日

令和6年12月文楽公演 第三部

2024-12-17 @県立青少年センター




●第三部 (午後6時45分開演)
野澤松之輔=脚色・作曲
曾根崎心中(そねざきしんじゅう)
 生玉社前の段
 天満屋の段
 天神森の段 






2公演を1日で観たので文楽漬けだったが、全然没入できなかった。字幕がないから。

全作品、数回は鑑賞済みなのでどういう話かは分かっているが、念を入れた詞章を味わう楽しみは別次元だ。

字幕なしで江戸時代の大阪の言葉を、それも掛け言葉やしゃれ、語呂合わせをふんだんに使う言葉遊びの世界でもあるのに耳からだけで理解できる訳がない。

自分のスマホで字幕アプリが使えます、と
は国立劇場のホームページや会報「あぜくら」にも書いてある。

それは、通常の字幕のほかに使うこともできるという意味だと考えていた。それで一応アプリもDLしておいたが、使う気はなかった。

ところが、まさかの「字幕なし」だよ。

途中からやむを得ず「字幕アプリ」を使ってみたが見づらいこと甚だしい。遠い舞台と手元のスマホに焦点を合わせられるお客はどれだけいるか?ほとんど高齢者ばかりなのに。

有料プログラムもいつも買っているが、買いたくない人もいるだろう。それに、演出によっては(今日の第三部「曾根崎心中」のように)客電も落とした薄暗い中で読めたものではない。
字幕なしで文楽が楽しめる者がどれほどいるだろう?

漂流する国立劇場は、お客様サービスも考えられないほどの迷走ぶりだ。

十数年、あぜくら会会員として、国立の歌舞伎と文楽は余程のことがない限り欠かさず観て来たのに、次回以降も字幕なしではもう止めようかしらと思う。


♪2024-176/♪県立青少年センター-2

令和6年12月文楽公演 第二部

2024-12-17 @県立青少年センター



●第二部 (午後2時30分開演)
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)
 熊谷桜の段
 熊谷陣屋の段

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
 阿古屋琴責の段 






2公演を1日で観たので文楽漬けだったが、全然没入できなかった。字幕がないから。

全作品、数回は鑑賞済みなのでどういう話かは分かっているが、念を入れた詞章を味わう楽しみは別次元だ。

字幕なしで江戸時代の大阪の言葉を、それも掛け言葉やしゃれ、語呂合わせをふんだんに使う言葉遊びの世界でもあるのに耳からだけで理解できる訳がない。

自分のスマホで字幕アプリが使えます、と
は国立劇場のホームページや会報「あぜくら」にも書いてある。

それは、通常の字幕のほかに使うこともできるという意味だと考えていた。それで一応アプリもDLしておいたが、使う気はなかった。

ところが、まさかの「字幕なし」だよ。

途中からやむを得ず「字幕アプリ」を使ってみたが見づらいこと甚だしい。遠い舞台と手元のスマホに焦点を合わせられるお客はどれだけいるか?ほとんど高齢者ばかりなのに。

有料プログラムもいつも買っているが、買いたくない人もいるだろう。それに、演出によっては(今日の第三部「曾根崎心中」のように)客電も落とした薄暗い中で読めたものではない。
字幕なしで文楽が楽しめる者がどれほどいるだろう?

漂流する国立劇場は、お客様サービスも考えられないほどの迷走ぶりだ。

十数年、あぜくら会会員として、国立の歌舞伎と文楽は余程のことがない限り欠かさず観て来たのに、次回以降も字幕なしではもう止めようかしらと思う。



♪2024-175/♪県立青少年センター-1

2024年2月7日水曜日

令和6年2月文楽公演第2部

2024-02-06 @日本青年館ホール



第二部 (15:15開演〜17:30)
●艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
 酒屋の段
 中 三輪太夫/清友
 切 錣太夫/宗助
 奥 呂勢太夫/清治

●戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)
 廓噺の段
   藤太夫・靖太夫・碩太夫/
   燕三・清𠀋・清公・燕二郎

 人形▶丁稚長太⇒玉彦
    半兵衛女房⇒文昇
    美濃屋三勝⇒清十郎
    娘お通⇒和登
    舅半兵衛⇒勘壽
    五人組の頭⇒亀次
    親宗岸⇒玉也
    嫁お園⇒勘十郎
    茜屋半七⇒清五郎
    -----------------------------
    浪花次郎作⇒玉佳
    吾妻与四郎⇒玉勢
    かむろ⇒一輔




4年半ぶりに「艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)」を観た。
前回は、半七と芸者・三勝(さんかつ)との心中道行があったが、今回は「酒屋の段」のみ。
それで、少し印象が変わったが、これはこれで、むしろスッキリと面白い。

冒頭、店の留守を任された丁稚の能天気さ。
そこに酒を買いに来た子連れの女。
頼まれて酒を運んでやる丁稚。
この謎めいた場面から始まる。

半七の父、半兵衛が代官所から戻り、丁稚がなぜか子供を背負って店に戻る。
そこに離縁されたお半七の女房お園が父親とともに茜屋を訪ねてから話は急展開する。
ただ、この時点でもまだ半七・三勝は登場しないというのが凝った作劇だ。

実話に基づいているというが、誰一人真の悪人はいないのに、歯車が少し欠けたか、登場人物の人生が狂ってゆくさま哀れ也。

♪2024-022/♪日本青年館ホール-2

2024年2月6日火曜日

令和6年2月文楽公演第1部

2024-02-06 @日本青年館ホール



第一部 (12時開演〜14:20)
●二人三番叟 (ににんさんばそう)
  睦太夫・亘太夫・聖太夫/勝平・寛太郎・錦吾・清方

●仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
 山崎街道出合いの段
   小住大夫/清馗 

 二つ玉の段
   希太夫/團七/胡弓:藤之亮

 身売りの段
   織太夫/藤蔵

 早野勘平腹切の段
 切 呂太夫/清介

 人形▶二番叟⇒紋吉
    三番叟⇒玉翔
    -----------------------------
    早野勘平⇒玉助
    千崎弥五郎⇒勘一
    斧定九郎⇒簑紫郎
    女房おかる⇒紋臣
    与市兵衛女房⇒簑二郎
    一文字屋才兵衛⇒簑一郎
    めっぽう弥八⇒玉征
    原郷右衛門⇒文司





昨年12月から文楽公演も漂流しているが、年が改まって初の「国立」文楽は、なんと「青年」の館に爺さん・婆さんたちが集まった次第。

おめでたの「三番叟」に続いて久しぶりの「忠臣蔵」から5段目、6段目の上演。
「二つ玉の段」は落語や最近では芝居でも取り上げられている中村仲蔵が、歌舞伎のこの段で今に伝わる工夫をしたことで有名だが、文楽でもおおよそ踏襲されている。

勘平が暗闇の中、猪と見間違って斧定九郎を撃ち殺し、懐の財布を持ち帰ったが為に狂い出した歯車。
真実は観客のみ知るが、義母も塩谷家中も本人さえも舅を殺して50両を奪ったと思い込み、遂に無念の切腹の悲劇に至る。
この辺の話の運びが、良くできていて、なんて、アナクロだよと思いつつも引き込まれてしまう。

♪2024-022/♪日本青年館ホール-1

2023年10月15日日曜日

文楽協会創立60周年記念 人形浄瑠璃文楽 「桂川連理柵」

2023-10-15 @県立青少年センター



演目解説…豊竹芳穂太夫

桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
 石部宿屋の段(今回は省略)
     
 六角堂の段
     豊竹亘太夫/鶴沢清公

 帯屋の段
     前⇒豊竹藤太夫/竹澤宗助
     切⇒竹本錣太夫/鶴澤藤蔵
 道行朧の桂川
     お半:豊竹芳穂太夫
     長右衛門:竹本小住大夫
     豊竹薫大夫/
     鶴澤清馗・鶴澤清公・鶴澤清方     


  人形▶女房お絹⇒吉田勘彌
     弟儀兵衛⇒吉田玉志
     丁稚長吉⇒吉田玉勢
     母おとせ⇒吉田簑一郎
     親繁斎⇒吉田勘市
     帯屋長右衛門⇒吉田玉也
     娘お半⇒吉田簑紫郎
     下男⇒大ぜい

     望月太明蔵社中









文楽の世話ものと言えば、「お半・長右衛門=桂川連理柵」、「お初・徳兵衛=曾根崎心中」、「お染・久松=新版歌祭文」など心中ものをすぐ思い浮かべるのは、多分、このジャンルに傑作が多いからではないか?

大抵は、だらしのない男が墓穴を掘って女性を道連れにする話だ。

「桂川連理柵かつらがわれんりのしがらみ」の主人公、帯屋の主人・長右衛門(38歳くらい)は養父・繁斎や隣家の信濃屋にも恩を受けており、女房お絹もよくできた女性だ。しかし、旅先で、偶然一緒になった信濃屋の娘お半…コレがなんと14歳…と床を一つにし、妊娠させてしまう。
商売上の失敗やら繁斎の子連れ後妻にいじめ抜かれ、にっちもさっちもゆかなくなって、「桂川で死にます」と書き置きを残して出て行ったお半の後を追い、身投げをする。

2まわりも若い、それも14歳(数え)のほんの子どもと過ちを犯し挙句入水するなんて、あほらし!という気もするが、実は、それほど荒唐な話でもなく、丁寧に味わえば、それなりの説得力があって、そのような道行になるのも納得はできる。


全編悲劇に終始するかと思えばそうではなく、三段中(今回は、先立つ「石部宿屋の段」が省略された。)最も長尺の「帯屋の段」は、後半、笑いがとまらない。

つまりは、非常にうまくできた話なのでいつまで経っても人気が衰えないのだろう。

余談:枝雀の落語「どうらんの幸助」では、この「帯屋の段」が面白く取り入れられて実におかしい。



♪2023-174/♪県立青少年センター-1

2023年2月11日土曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 近松名作集第Ⅲ部 女殺油地獄

2023-02-08@国立劇場




第3部(18:30時〜20:57)
近松門左衛門=作
女殺油地獄 (おんなころしあぶらのじごく)
◎徳庵堤の段
 南都太夫・亘太夫・津國太夫・文字栄太夫・薫太夫
 /清𠀋
◎河内屋内の段
 口 咲寿太夫/團吾
 奥 靖太夫/清志郎
◎豊島屋油店の段
 切 呂太夫/清介

************************
人形役割
女房お吉⇒一輔
河内屋与兵衛⇒勘十郎
山本森右衛門⇒勘市
豊島屋七左衛門⇒勘彌
河内屋徳兵衛⇒勘壽
徳兵衛女房お沢⇒文昇
河内屋太兵衛⇒清五郎
妹おかち⇒紋臣




























今月の文楽公演は近松名作集。
「女殺油地獄」は最晩年の作(ひょっとして絶筆か)。
「心中天網島」は3時間半を超えるがこれは2時間30分と短く、話がよく纏まっていて分かり易い。

過去にも鑑賞歴があるが、歌舞伎も含め、今回の公演が一番面白かった。

今回は三段構成でそれぞれの段は趣を異にしているが、序破急の典型のようで、作劇の巧さを味わった。

一段目は、主要人物の紹介と事件端緒を野崎参りの賑やかな茶店で描き、
二段目はどうにもならない性悪与兵衛と親のとの葛藤を、
三段目は、それでも見捨てることができない親の情け。

段々と舞台は暗くなってゆく。A

親の情けを知りつつも、与兵衛は豊島屋女房お吉へ強引な金の無心。断られた与兵衛は脇差でお吉を刺す。切る。抉る。
逃げるお吉も追う与兵衛も油まみれ・血まみれの凄惨図。
油敷の床で与兵衛もお吉も思うに任せず、よく滑ること。
この迫力がコワイ。

遂に息絶えたお吉から鍵を盗み、与兵衛は金を奪って夜のしじまに消えてゆく。途中、血まみれの脇差を「栴檀の木橋」から捨てる、とある。北浜から今でいう中之島公会堂を結ぶ橋だ。個人的には懐かしい。

今日の公演は三段目までだったが、18年に観た時は、四段目「逮捕の段」があり、与兵衛は捕まるがそれで気分がスッキリするような話でもない。

今回のように、悪事を尽くして逃げ落ちるところで幕にした方が怖さも一入という気がする。

一人の悪に周りが振り回され、救いは全くない。

悄然と劇場を出た。

♪2023-024/♪国立劇場-02

2023年2月8日水曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 近松名作集第Ⅰ部 心中天網島

2023-02-08@国立劇場


第一部
(11:00時〜14:32)
近松門左衛門=作
心中天網島 (しんじゅうてんのあみじま)
◎北新地河庄の段
 中 睦太夫/勝平
 切 千歳太夫/富助
◎天満紙屋内の段
 口 希太夫/友之助
 奥 藤太夫/團七
◎大和屋の段
 切 織太夫(咲太夫の代理)/燕三
◎道行名残の橋づくし
 小春  芳穂太夫
 治兵衛 小住太夫
     亘太夫・聖太夫
      /錦糸・寛太郎・清公・清允・清方

************************
人形役割
紀伊國屋小春⇒清十郎
花車⇒紋秀
江戸屋太兵衛⇒玉助
五貫屋善六⇒簑紫郎
粉屋孫右衛門⇒玉也
紙屋治兵衛⇒玉男
女房おさん⇒和生
倅勘太郎⇒勘昇
おさんの母⇒蓑一郎
舅五左衛門⇒玉輝


今月は近松名作集だ。誰の作であれ、一般的に時代物は荒唐無稽なものも少なくないが、世話物はリアルな筋立てで密度が高い。特に近松の心中物は話の歯車が外れない。

今回で3度目だが成程巧くできていると感心できたのは一歩理解が深まったか。

構成や詞章の巧さには感心できても、相変わらず、主人公の紙屋治兵衛には全く共感できない。こんな甲斐性なしの男に惚れた挙句心中する遊女小春にも同情できない。
すると、話の中心は治兵衛の女房おさんにあるな、と今回思い至った。彼女を軸に据えて脳内再構成すると話に求心力が出てきそう。

最終段「道行名残の橋づくし」は、良くできている。
ここへ来て浄瑠璃も太夫4人に三味線5人と大編成になる。
終始暗い舞台で、2人の情死行が渡る橋の名を織り込んだ義太夫節が流れる中、遂に、網島の寺の境内で全うする。少し離れて絶命するのはおさんへの気遣いらしい。
この絵が美しい。

♪2023-024/♪国立劇場-02

2022年12月16日金曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 国立劇場第54回 文楽鑑賞教室 「絵本太功記」夕顔棚の段/尼崎の段

2022-12-16@国立劇場



●解説 文楽の魅力
 豊竹亘太夫/鶴澤清公

●絵本太功記えほんたいこうき
 夕顔棚の段
  亘太夫/清公
 尼ヶ崎の段
前 睦太夫/勝平
後 靖太夫/清馗


************************
人形役割
母さつき⇒ 吉田玉也
妻 操⇒ 吉田蓑一郎
嫁初菊⇒ 桐竹紋吉
旅の僧実は真柴久吉⇒ 吉田文哉
武智光秀⇒ 吉田玉志
武智十次郎⇒ 吉田簑太郎
加藤正清⇒ 吉田和馬


鑑賞教室だから、本篇の前に20分程度の解説がある。初めての人には有益だろうが、毎回のように欠かさず行っている者にはあまり驚きもないが、解説してくれる太夫や三味線方の人柄が伝わるのは面白い。
実際、この世界では、太夫は豊竹・竹本、三味線は鶴澤がほとんどで竹澤・野澤・豊澤はほんの僅か。人形は吉田・桐竹で圧倒する。だから、人間国宝やベテラン級はともかくとして中堅以下はなかなか名前と顔が一致しない。
今日の豊竹亘太夫や鶴澤清公は名前はよく知っていても、顔がなかなか一致しないのだけど、これから暫く?は覚えているだろう。

さて、「絵本太功記」は3度目だったが、いつも、「夕顔棚の段」と「尼ヶ崎の段」だ。

主人公光秀、その母、その妻、その子の思いが、絡み合うものの最後には互いを理解し、許しあう大団円が待つ…というのが、たいていの物語なのだけど、これは違う。
だからいつもスッキリしない。
これはたぶん全十四段の話のうち十段目だけを取り出しているからではないか?

こういう良いとこどりの見方(=見取り狂言<>通し狂言)では手軽でいいとしても誤った見方をしてしまう恐れがある。
…ということを、同日この後に観た「本朝廿四孝」で痛感した。

♪2022-193/♪国立劇場-12

2022年9月5日月曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 第二部「寿柱立万歳」、「碁太平記白石噺」浅草雷門の段/新吉原揚屋の段

2022-09-05@国立劇場


第二部
●寿柱立万歳
 
太夫⇒竹本三輪太夫
 才三⇒豊竹希太夫
 ツ ⇒豊竹薫太夫
  レ⇒竹本文字栄太夫
    竹澤團七
    鶴澤寛太郎
    鶴澤燕二郎
    鶴澤清方
************************

人形役割
太夫⇒     吉田玉也
才三⇒       吉田蓑一郎

●碁太平記白石噺 (ごたいへいきしらいしばなし)
浅草雷門の段
口 豊竹亘太夫/竹沢團吾
奥 豊竹咲太夫/鶴澤燕三

新吉原揚屋の段
切 豊竹呂太夫/鶴澤清介

************************

人形役割
豆蔵どじょう⇒ 吉田勘一
大黒屋惣六⇒      桐竹勘壽
悪者観九郎⇒  桐竹紋秀
妹おのぶ⇒   吉田一輔
傾城宮城野⇒  吉田和生


Ⅰ部公演では原作の4、5段が、Ⅱ部では6、7段目が上演された。5段目などは51年ぶりの上演だそうで、道理で初めてのはずだ。

ただ、Ⅰ部は、真面目て働き者の農民に降りかかるこの上もない悲劇の連続が、後半の敵討ちの期待を盛り上げて面白いのだけど、Ⅱ部では、Ⅰ部の登場人物が1人しか登場せず、話が繋がっていることは分かっていても、感情移入ができない。

いよいよ敵討ちに出立する段になっても、時機を待てと止められては観客も納得できん。

こんなことなら、第Ⅲ部も通して決着の付く話に仕立てるべきではなかったか。

♪2022-125/♪国立劇場-08

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 第一部「碁太平記白石噺」田植の段/逆井村の段

2022-09-05@国立劇場


第一部
●碁太平記白石噺 (ごたいへいきしらいしばなし)
 
田植の段
口 豊竹咲寿太夫/鶴澤友之助
奥 豊竹藤太夫/鶴澤清友

逆井村の段
中 豊竹靖太夫/野澤勝平
切 竹本千歳太夫/豊澤富助

************************
人形役割
庄屋七郎兵衛⇒ 吉田玉也
志賀台七⇒       吉田玉勢
百姓与茂作⇒  吉田玉輝
娘おのぶ⇒   吉田一輔
宇治兵部助⇒  吉田玉志
女房おさよ⇒  吉田簑二郎
金江谷五郎⇒  豊松清十郎


前から告知されていたことだけど、いよいよ9月公演から「初代国立劇場さよなら公演」という冠が付いた。と言っても今月で終わるのではなく来年10月末まで「さよなら公演」が続く。その後建て替えが始まり、再開は2029年の秋だ。なんて長いんだ。7年の空白はツライ。

あちこちの劇場で手分けして公演を続けるらしいが、歌舞伎や文楽にふさわしい舞台構造を持った劇場は首都圏にないはずだから、やると言っても色々制約の多い演出・演目になるのだろう。
第一、7年後僕は健脚・健聴・健眼を維持しているだろうか心配だよ。

「さよなら〜」ということもあって、コロナ禍でできなかった通し上演が(完全ではないが)復活した。コロナの収束宣言は出ないけど、それを待っていたら、第2代国立劇場ができてしまうかも。
今回はⅠ部とⅡ部に分けて「碁太平記白石噺」が通して上演される。
と言っても全11段中4段だけだが。

♪2022-125/♪国立劇場-07

2022年5月8日日曜日

豊竹咲太夫文化功労者顕彰記念 文楽座命名150年 文楽公演第Ⅲ部

2022-05-08@国立劇場


●桂川連理柵 (かつらがわれんりのしがらみ)
 石部宿屋の段
  竹本三輪太夫・ツレ:豊竹咲寿太夫
 /野澤勝平・鶴澤清允

 六角堂の段
  豊竹希太夫/竹澤團吾

 帯屋の段
前 豊竹呂勢太夫/鶴澤清治
切 豊竹呂太夫/鶴澤清介

 道行朧の桂川
お半       豊竹睦太夫
長右衛門 豊竹芳穂太夫
ツレ       竹本津國太夫・竹本碩太夫・豊竹薫大夫
/竹澤團七・鶴澤友之助・野澤錦吾・鶴澤清方

************************
人形役割
娘お半⇒    豊松清十郎
丁稚長吉⇒      吉田玉佳
帯屋長右衛門⇒吉田玉也
出刃屋九右衛門⇒桐竹亀次
女房お絹⇒  吉田勘彌
弟儀兵衛⇒  吉田玉志
母おとせ⇒  桐竹勘壽
親繁斎⇒   吉田清五郎


「桂川連理柵」(かつらがわれんりのしがらみ)は文楽でも歌舞伎でも数回観ている。これは面白い!

立派な妻・お絹がいるのに、女性にだらしない帯屋の主人・長右衛門(38歳。以下、数え年だと思う)。

旅先で、彼女にしつこく言い寄るのが隣家信濃屋の丁稚の長吉。彼から逃れて長右衛門の部屋にきたのが信濃屋の娘・お半(14歳)。子供ゆえに寝間に入れてやる。それが間違いの元。

長右衛門は帯屋の跡取り養子。帯屋の隠居・繁斎の妻は後妻で連れ子が儀兵衛。繁斎はできた男だが、後妻と儀兵衛は性悪で長右衛門を追い出しにかかっている。

旅先での出来事を盗み見した丁稚長吉も、長右衛門からお半を奪わんとする悪党。

長右衛門は前後左右から濡れ衣を着せられ、悪い事にお半は妊娠。

懸命なお絹の働きにも拘らず八方塞がりの中、先に死を決したお半の後を追って、長右衛門も桂川に。

四段構成だが、これが実に効果的に組み立てられている。
一番面白いのが「帯屋の段」で1時間超だが、長さを感じさせない。前半の儀兵衛と長吉の遣り取りが傑作だ。呂勢大夫の語りが素晴らしい。

この浄瑠璃が作られた当時(1776年初演)、上方では大流行して、「帯屋」の段は「お半長」とも呼ばれて子供でも知っている話となった、と上方落語「胴乱の幸助」に取り入れられていて、こちらも大傑作だ(枝雀が素晴らしい)。

追記:
4月から呂太夫/錣大夫/千歳太夫が切語りに昇格した。同慶也。

♪2022-065/♪国立劇場-04

豊竹咲太夫文化功労者顕彰記念 文楽座命名150年 文楽公演第Ⅱ部

2022-05-08@国立劇場


●競伊勢物語 (はでくらべいせものがたり)
 玉水渕の段
口 豊竹亘太夫/鶴澤清𠀋
奥 竹本織太夫/鶴澤清友

 春日村の段
中 竹本小住太夫/鶴澤清馗
次 豊竹藤太夫/鶴澤藤蔵
切 竹本千歳太夫/豊澤富助/琴:鶴澤清公
************************
人形役割
娘信夫⇒    吉田一輔
磯の上豆四郎⇒吉田玉勢
鉦の鐃八⇒  吉田簑一郎
代官川島典膳⇒吉田玉輝
亭主五作⇒  桐竹勘次郎
母小よし⇒  吉田和生
紀有常⇒   吉田玉男
在原業平⇒  吉田玉彦
井筒姫⇒   吉田和馬


「競伊勢物語」は東京では35年ぶりの上演だそうだ。勿論、初めての観賞。

朝廷の争いに巻き込まれた公家・紀有常が忠義の為に実の娘を手に掛け、その若い夫も自害するという悲惨な話。

それに先行して、これも忠義で犯した大罪の、類が実母に及ばぬように、必死でわざと実母に悪態をつき、なんとか勘当してもらおうとするが、母の限りのない我が子への深い情愛がそれを受け付けない。このやりとりがウルっとなる。

ところで、伝統芸能でジェンダー不平等やセクハラ・パワハラは洋の東西を問わないが、身代わりに我が子の首を差し出す児童虐待?は日本のお家芸かも。

追記:
文楽では初めて観たけど、過去の記録を見ていたら2015年の歌舞伎座秀山祭で、吉右衛門・菊之助・染五郎*・東蔵・米吉*(*当時の名前)らの豪華版で(歌舞伎では)観ていた。
強烈な話なのにもう忘れているなんてかなりショックだ。

♪2022-064/♪国立劇場-03

2021年12月6日月曜日

国立劇場第53回 文楽鑑賞教室 「新版歌祭文」野崎村の段

2021-12-06@国立劇場



●解説 文楽の魅力
 吉田簑太郎

●新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)
 野崎村の段

中 豊竹亘太夫/鶴澤寛太郎
前 豊竹芳穂太夫/野澤勝平
後 豊竹藤太夫/鶴澤藤蔵
     ツレ 鶴澤清允
************************
人形役割
娘おみつ⇒ 吉田一輔
祭文売り⇒ 吉田和馬
親久作⇒    吉田玉也
手代小助⇒ 吉田玉誉
丁稚久松⇒ 吉田清五郎
娘お染⇒    桐竹紋臣
下女およし⇒ 豊松清之助
駕籠屋⇒    吉田玉延
駕籠屋⇒    吉田玉征
母おかつ⇒ 吉田簑太郎



鑑賞教室として開催。20分程初心者向け解説付き。


本演目は歌舞伎でも文楽でもしばしば取り上げられるが、歌舞伎と異なり、文楽では「野崎村の段」のみが上演される。所謂「お染・久松」の物語だ。


本篇では恋に狂った若い2人の先行きは描かれないが、心中する話だ。



久松の育ての親久作は、久松を兄妹同然に育ったおみつと夫婦にするつもり。

しかし、久松は大坂で奉公した店の娘お染と身分違いの恋をする。

その奉公先で未実の罪を着せられ、クビになった久松は野崎村の久作の元に戻される。それを追って、お染も大坂から野崎村へ。


この三角関係はお染の親も知ることになり、仲を割かれて野崎村を、お染は船で、久松は籠で後にし大坂に戻される。

後に残った可哀想なおみつは尼に。


燃え上がった恋心だけでは世間は渡れない。

何だか、最近世を賑わしたような話だが、素材となった実話では心中することを知っているからこのモヤモヤとした話もなんとか腹に収まる。


最後の陸路/水路での2人の道行で、今回初めて気づいた。

籠かきと船頭は登場するが、お染久松は登場しない。


夫々乗り物の中にいて、姿は見えない。


最終幕ではこの人夫達が主人公なのだ。


汗を拭き、手ぬぐいを搾り、竿を突き、竿を水に落とし、その様子の滑稽なこと。

モヤモヤした色恋話は、このようにして幕引きをするのだ。

いや、うまく考えた構成だ。かくしてスト〜ンと腑に落ちた。


♪2021-147/♪国立劇場-12

国立劇場開場55周年記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年12月公演

2021-12-06@国立劇場




国立劇場開場55周年記念
仮名手本忠臣蔵 (かなでほんちゅうしんぐら)
 桃井館本蔵松切の段
 下馬先進物の段
 殿中刃傷の段
 塩谷判官切腹の段
 城明渡しの段
 道行旅路の嫁入


桃井館本葳松切の段
 竹本小住太夫/鶴澤清丈
下馬先進物の段
 竹本南都太夫/竹澤團吾
殿中刃傷の段
 豊竹靖太夫/野澤錦糸
塩谷判官切腹の段
 竹本織太夫/鶴澤燕三
城明渡しの段
 竹本碩太夫/鶴澤清允
道行旅路の嫁入
 小浪:豊竹呂勢太夫/鶴澤清志郎
 戸無瀬:豊竹咲寿太夫/鶴澤清公
 豊竹亘太夫/野澤錦吾
 竹本聖太夫/鶴澤燕二郎
 豊竹薫太夫/鶴澤清方

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人形役割
桃井若狭助⇒ 吉田玉佳
加古川本蔵⇒ 吉田勘市
妻戸無瀬⇒    豊松清十郎
娘小浪⇒ 吉田簑紫郎
高師直⇒ 吉田玉助
鷺坂伴內⇒    桐竹紋秀
塩谷判官⇒  吉田簑二郎
早野勘平⇒  吉田玉路
茶道珍才⇒  吉田蓑悠
原郷右衛門⇒ 桐竹亀次
石堂右馬丞⇒ 吉田玉輝
薬師寺次郎左衛門⇒吉田文哉
大星カ弥⇒  吉田簑太郎
大星由良助⇒ 吉田玉志
顔世卿前⇒  桐竹紋吉
その他 大ぜい

今から5年前の2016年。国立劇場では開場50年記念に、歌舞伎は3部(1か月公演X3回)、文楽の方は2部(昼夜公演)構成で全段通し「仮名手本忠臣蔵」をやった。
それが僕の文楽の初見で以後病みつきになった。

2019年には大阪の国立文楽劇場の開場35年で春・夏・秋に3部に分けて全段通しをやった。これも観に行った。

そして、今年は国立劇場開場55年記念の年だ。

そこで、記念の公演という訳だが、今回は、二、三、四、八段目からの抜粋だ。これは寂しい。

四段目のほかにも面白い七段目、九段目がない。これでは見どころは切腹の段のみというのも辛い。

それにどういう訳か、今回は太夫・三味線・人形ともに重鎮が出ていない。普通なら人間国宝級全員とは言わずとも出演するものだ。ましてや記念の公演なのに。
ま、今日の出演者の中では、個人的には織太夫とか呂勢太夫は好きだけど。
どれにしては寂しい公演だった。

同時に別興行で観賞教室をやっているがこっちの方が面白かった!


♪2021-146/♪国立劇場-11