2017年7月30日日曜日

東京二期会 グラインドボーン音楽祭との提携公演 オペラ「ばらの騎士」

2017-07-30 @東京文化会館


セバスティアン・ヴァイグレ:指揮
リチャード・ジョーンズ:演出
ポール・スタインバーグ:装置
サラ・フェイ:演出補・振付
ニッキー・ギリブランド:衣裳
ミミ・ジョーダン・シェリン:照明

読売日本交響楽団


元帥夫人⇒森谷真理
オックス男爵⇒大塚博章
オクタヴィアン⇒澤村翔子
ファーニナル⇒清水勇磨
ゾフィー⇒山口清子
マリアンネ⇒岩下晶子
ヴァルツァッキ⇒升島唯博
アンニーナ⇒増田弥生
警部⇒清水那由太
元帥夫人家執事⇒土師雅人
ファーニナル家執事⇒新津耕平
公証人⇒松井永太郎
料理屋の主人⇒加茂下稔
テノール歌手⇒前川健生
3人の孤児⇒田崎美香/舟橋千尋/金澤桃子
帽子屋⇒斉藤園子
動物売り⇒加藤太朗

R.シュトラウス:オペラ「ばらの騎士」全3幕ドイツ語公演日本語字幕付き


「ばらの騎士」。予てから観たいと思って既に12月の新国立のチケットはとってある。それで、二期会には失礼だが、新国立での鑑賞の予行演習みたいな気分で出かけた。
「ばらの騎士」も初めてなら文化会館で(演奏会形式ではない本物の)オペラを観るのも初めてだった。

今日の興行は、グラインドボーン音楽祭(彼の地での劇場はキャパが1,300人らしい。)との提携公演だそうだ。
つまり、彼の地での公演と同じ演出、同じ舞台美術で、歌手やオケがメイド・イン・ジャパンという訳だ。その為に、客席数で言えば2倍近い文化会館の舞台にグラインドボーンで使った舞台セットをそのまま持ってきたのでは小さくなってしまう。現に、額縁の中に額縁を重ねることになり、せっかくの文化会館の大きな舞台空間を十分活かせず隔靴掻痒の感無きにしも非ず。

が、それも、まあ、違和感を感じたのは冒頭と第3幕で、その他は問題なく、に第2幕は奥行きをたっぷり使って狭さを微塵も感じさせなかった。

オペラは演出次第でずいぶん様子が異なる。
「ばらの騎士」のナマは初めてだったが、放送録画を数種類持っていてビデオによる鑑賞は何度も、何種類も経験済みだが、今日の演出には驚く部分があった。

何といっても、第1幕冒頭のシーンだ。舞台は元帥夫人の部屋で、昨夜から若いツバメであるオクタヴィアンと過ごした朝、舞台奥に作られたのは、特大水盤で水浴びする裸体の女性。古典派画家アングルの「泉」を思わせる。天井からは本当に水が流れている。あまり照明が当たっていないし、しばらくその裸体は動かなかったのでてっきり水浴びする銅像かと思ったが、やがて、その全裸が動き出した。もう本当に素っ裸なのだ。ここでは当然、手持ちのモノキュラーが活躍する。驚いた。乳首まではっきり見える。が、同時に、肌色の着包みであることも見えてしまったが。
それにしても大胆な演出で、惹き付けられた。

良い演出ばかりではなく疑問点もいっぱい。
第1幕の終盤、元帥夫人が時の流れには勝てないとしみじみ嘆く、第1幕最大の聴きどころ。ここでは普通、恋人の若い燕オクタヴィアンをキスもせずに帰してしまった元帥夫人が部屋に一人残って独白するはずなのに、部屋の隅には老人が一人椅子に座っていた。彼が一体何者なのか?こんな演出はかつて観たことがないので気になってしまった。件の老人は第3幕にも登場するが一言のセリフ(歌)もないので、なおさら、何者か分からない。分かった観客がいたろうか。

釈然としなかったので、終演後、二期会関係者を捕まえて質してみたら、その老人は元帥夫人の書記だという。18世紀ウィーンの貴族の屋敷には、夫人の独り言さえ記録する書記が居たのだろうか?そもそも、婚約者に「ばらの騎士」が銀のバラを贈る、という風習も作者が捏造したものなので、この書記の存在もあてにはならない。
ま、真偽はともかく、物語の進行において、まったく意味をなさない演出だ。

ほかにも、第2幕の上手と下手に置かれた椅子が他の調度と時代が全く異なるとか、第3幕では唐突に衣裳以外が現代になるのも不自然、というか、その理由が理解できない。第3幕の居酒屋が舞台を広く使わず、三角形の部屋(ドアも3か所、天井も三角形)で窮屈そうなのは、元帥夫人、オクタヴィアン、ゾフィーの三角関係を示唆しているのだろうが、せっかくの三重唱をスケールを小さくした印象が否めない。その三重唱が始まる第3幕中盤のゾフィーの洋服が可愛げない。それにメガネを掛けていたのではそれまでの可愛らしさが消えてしまったのも残念。

と、演出・装置などでは不満も残ったが、二期会歌手陣はいずれも素晴らしい。そして、読響の演奏も力強くて良かった。

♪2017-131/♪東京文化会館-12

2017年7月29日土曜日

フェスタサマーミューザ2017 NHK交響楽団 ≪プリンセス・オン・クラシックス≫

2017-07-29 @ミューザ川崎シンフォニーホール


渡邊一正:指揮
NHK交響楽団
司会:平井理央
歌唱:新妻聖子、津田英佑

ディズニー:ファンタズミック!ーメイン・テーマ
チャイコフスキー:「眠りの森の美女」作品66から<ワルツ>
すぎやまこういち:交響組曲「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」から<序曲のマーチ、王宮のトランペット、愛の旋律、戦火を交えて〜不死身の敵に挑む、結婚ワルツ>
ディズニー:ファンテリュージョン!
「アラジン」から<ア・ホール・ニュー・ワールド>(新妻、津田)
シルヴェスター・リーヴァイ:ミュージカル「エリザベート」から<私だけに>(新妻聖子)
J.ウィリアムズ:雅の鐘
ホルスト:組曲「惑星」作品32から<木星>
-------------
アンコール
メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」から<結婚行進曲>

N響をミューザで聴く機会は、このフェスタサマーミューザだけかな。
居ながらにして首都圏のプロオーケストラを日替わりで、かつ、リーズナブルな料金で聴けるのはこの夏の祭典だけで、ありがたいことだ。ただし、N響について、つまらないのは、いつも正統派のクラシック音楽を取り上げず、映画やミュージカル、さらに最近ではゲーム音楽などを中心にプログラムが編成される事だ。まあ、夏休みの時期だしたまにはいいかとも思うけど、他の在京オケ(アンサンブル金沢の特別参加もあったが)が堂々たるクラシックを取り上げるのに比べて些かさびしい。

今日は、「プリンセス・オン・クラシック」という副題で、ディズニー映画、ゲームなどに登場するプリンセスにちなんだ音楽が中心だったが、チャイコフスキーの「眠りの森の美女」の「ワルツ」とプリンセスにはこじつけっぽいホルスト「惑星」から「木星」の2曲を除いてはまったく馴染みがなかった。

歌もあって、新妻聖子と津田英佑がマイクを握ったが、1曲はデュエット、もう1曲は新妻のソロだ。せっかく2人を登場させるなら、「アナ雪」のナンバーも聴きたかったよ。…でも、アナ雪は一昨年の「N響ホットコンサート」でやったか…。


会場に入って舞台上の配置を見た時、まるでマーラーの大曲でもやるのかと思わせるような大編成だった。コンバスが8本寝かせてあるし、ティンパニーは2組。グランドピアノにチェレスタ、シロフォン、ビブラフォン、鐘など多種多様な鍵盤楽器に打楽器。全曲がこの特大編成という訳ではではないにしても、相当豪華なオーケストレーションが期待できる。

そして、大音量と多彩な響きという点ではまさしく期待に応えてくれた。
圧倒的に知らない曲ばかりだけど、全プログラムに共通しているのが「プリンセス」というより、ファンファーレだ。どの曲も全てに金管がけたゝましく咆哮し、それに負けじと大規模な弦楽合奏が対抗して豪快なものだった。

N響の真の実力を時々知らされる身には、真価には程遠く、浅く仕上げた音楽だなと思いながら聴いていたが、初めてN響のナマに接した子供達には良い思い出になったろうな。

♪2017-130/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-19

2017年7月27日木曜日

フェスタサマーミューザ2017 東京フィルハーモニー交響楽団 ≪チョン・ミョンフンのベートーベン≫

2017-07-27 @ミューザ川崎シンフォニーホール


チョン・ミョンフン:指揮
清水和音:ピアノ*
東京フィルハーモニー交響楽団

<オール・ベートーベン・プログラム>
ピアノ協奏曲第3番ハ短調 作品37*
交響曲第3番変ホ長調 作品55「英雄」
-------------
アンコール

リスト:「愛の夢」第1番*

今日は、チョン・ミョンフン指揮東京フィルでベートーベンプログラム。
ピアノ協奏曲第3番(ピアノ:清水和音)と交響曲第3番「英雄」という実に分かりやすい組合せだった。

東フィルは気になるオケであるにもかかわらずコンサートで聴く機会は少なく、毎夏のフェスタサマーミューザで聴く程度だ。その代わりピットで聴くオケではもう断然東フィルが群を抜いて多い。オペラで素晴らしい演奏を何度も聴いているので、相当レベルの高いオケだと思ってはいるが、コンサートの回数が少ないので、しかと、評価する機会はなかった。

しかし、今日の「英雄」はなかなかの聴きものだった。

最初に演奏された協奏曲も悪くはなかったけど、やはり、こちらはピアノが主役でそれを抜きにしたオケ自体の面白みは、少なくとも今日も感じなかった。名曲だと思うし、大好きなものの一つではあるけど。僕の関心が東フィルの実力如何というところに集中していたせいもあるかもしれないが、全体として可もなく不可もないという印象の弱い演奏だった。

ところが、休憩後の「英雄」では冒頭の2つの和音が素晴らしくて一挙に惹き込まれた。
硬くて、重くて、それでいて簡潔で引き締まった見事な和音の2連発。2つの和音の間に僅かな残響も美しい。
「英雄」は数え切れないほど聴いているが、こんな印象的な出だしは初めてだ。ここで心を掴まれてしまったから、あとはもうただ、キビキビした爽快な演奏を黙って聴くしかない。

協奏曲と異なり、「英雄」ではチョン・ミョンフンのコントロールがフレーズの細部まで行き渡っているように思った。終楽章に、若干管の乱れを感じたが、弦楽合奏の力強さが全てを補って余りあり。

ますます、東フィルは気になる存在だ。でも、既に6オケ7定期でもアップアップなのにこれ以上定期は増やせない。機会を見つけて一回券で聴くようにしようかな。

♪2017-129/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-18

2017年7月26日水曜日

フェスタサマーミューザ2017 東京都交響楽団 ≪ヤクブ・フルシャの「わが祖国」≫

2017-07-26 @ミューザ川崎シンフォニーホール

ヤクブ・フルシャ:指揮
東京都交響楽団

スメタナ:連作交響詩「我が祖国」(全曲)

今日は都響の「我が祖国」全曲。
5月にN響でやはり全曲を聴いたが、面白くない音楽だという印象だった。もちろん、単独でよく演奏される第2曲「モルダウ」は馴染んでいるせいもあってなかなか良い曲だとは思うけど、全6楽章、80分という長大曲にしては構成が悪いのではないか。

今日の指揮は、首席客演指揮者のヤクブ・フルシシャ。
既に何度か定期演奏会で聴いているし、定期外でも、昨年の我が鑑賞ステージの有終の美を飾ったのが、彼の指揮による都響「第九」だった。
その前日のブロムシュテット+N響の「第九」には薄皮一枚及ばなかったと記録しているが、好感度の大きな若手指揮者だ。しかも、彼はチェコの出身であるからには、「わが祖国」に対する思い入れも強かろうし、現に、全曲を暗譜で振った。

第1曲めは2台のハープの掛け合いで始まるが、今日の配置は1台を舞台上手に、他方を下手に置いて、耳目を舞台に惹きつける効果的な演出だったが、やはり、その後に始まる管楽器のアンサンブルが美しくない。これはN響でも全く同じく感じたことだ。演奏の上手い下手ではなく、オーケストレーションが悪いに違いない。

かくして、期待薄のまま前3曲が終わり、休憩に入った。

しかし、後半の3曲はだんだんよくなる法華の太鼓だ。
楽器も時間を経て奏者に馴染んで来たのか、あるいは、オーケストレーションが分かりやすいからか。
特に5曲めはユニゾンを中心にした管・弦の強奏のフレーズが多くなり、これが実に力強いアンサンブルだ。
そして、凱歌と共に第1曲のテーマが重なり、圧倒的なフィナーレになだれ込んだ。
このへんまで来ると、既に失聴していたスメタナの執念の作品であることや、その後も精神を病んで亡くなったスメタナの生涯、その「わが祖国」たるチェコ(当時はオーストリア・ハンガリー帝国ボヘミア)への作曲家の思いに、彼にとっても「わが祖国」であるヤクブ・フルシャのスメタナと故郷への思いとが幾重にも重なったかのように熱く盛り上がった。
もちろん、後半充実してきた都響の力強いアンサンブルが素晴らしかったのは言うまでもなし。

フェスタサマーミューザの初日の、ホームオケである東響によるオープニングコンサートよりもお客が多かったような気がする。見渡す限り空席は上層階や舞台後方に数える程でしかなくほぼ満席と言っていいだろう。これはフルシャ人気、都響人気もない訳ではなかろうが、開演時間が他のオケのように15時ではなく、19時だったのも集客に寄与したのではないか。

その満席の観客席は、終演後、ミューザとしては記録的な大きな拍手と歓声に長く包まれた。
儀礼を確実に超えた熱いカーテンコールにフルシャは何度も応えて大いに愛想を振りまいた。もう、オケの団員があらかた引き上げた後も拍手は鳴り止まず、遂に引き出されたフルシャは舞台近くで立ち上がっていた客の何人かと握手をしながら名残惜しそうに袖に消えた。

今日のコンサートで、一番感動したのは、多分、熱烈歓迎を受けたヤクブ・フルシャだったに違いない。しかし、指揮者、オケの団員、お客のすべてが、暖かい空気に包まれた事で、観客もホクホクした心持ちで帰途に着いたのも間違いない。

♪2017-128/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-17

2017年7月25日火曜日

フェスタサマーミューザ2017 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 ≪典雅なるバロック名曲集≫

2017-07-25 @ミューザ川崎シンフォニーホール


村上寿昭:指揮
有希マヌエラ・ヤンケ:バイオリン*
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

●ビバルディ:「四季」全曲*
●ヘンデル(ハーティ編):組曲「水上の音楽」
 1アレグロ
 2エア
 3ブーレ
 4ホーンパイプ
 5アンダンテ・エスプレッシーヴォ
 6アレグロ・デチーゾ
●J.S.バッハ(マーラー編):管弦楽組曲
 1序曲
 2ロンドとバディヌリー
 3アリア
 4ガヴォット

指揮の村上寿昭さんて、初めて。小澤征爾の弟子筋に当たるみたいだ。
東京シティ・フィルも年に1回、このフェスタサマーミューザで聴くだけ。
たくさんの在京オケが登場する中で、東京シティ・フィルはやや、マイナーな印象を受けるが、これまで数回聴いたところでは、他の有名オケとも遜色のない演奏だと思うけど、どうだか。

有希マヌエラ・ヤンケは、昨春、ギターのエマヌエーレ・セグレとのデュオ・リサイタルをこのミューザ川崎シンフォニーホールで聴いた。オーケストラとの競演を聴くのは初めて。
彼女が登場したのはビバルディの「四季」全曲の独奏バイオリンだ。
彼女の指揮振りではなく、村上氏がタクトを振った。
まあ、よく聴く普通の「四季」だ。あまり闘争的ではないのが物足りない。

何しろ、昨年の「熱狂の日」でアンナ・マリア・スタシキェヴィチの弾き振りによるポーランド室内管弦楽団との格闘技のような「四季」を聴いて以来、どんな演奏を聴いても満足できないのは困ったものだ。

J.S.バッハの管弦楽組曲は全4曲だが、このうちから第2番の序曲、ロンドとバディヌリ、第3番のアリアとガヴォットをなんとマーラーが編曲をしているとは知らなかった。この編曲は、オーケストラものをオーケストラに編曲しているのだから、シューマンの交響曲などの編曲と同じということだ。原曲の楽器構成を維持し音符も加工はしても追加・削除はしていないそうだ。通奏低音の強化などは行っている。これによって、少しメリハリが付いたのかもしれないが、シューマンの作品を編曲したい気持ちが起こったのは分からないでもないが、よくぞ大バッハの作品に手を付けたものだなあ。

で、耳で聴いてどうなの?と言われても、ほとんど変わりはないのだから区別はつかない。できれば1曲くらい原曲と編曲版を続けて聴かせてほしかったよ。

♪2017-127/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-16

2017年7月23日日曜日

フェスタサマーミューザ2017 特別参加公演 オーケストラ・アンサンブル金沢 ≪パイプオルガンとオーケストラの饗宴≫

2017-07-23 @ミューザ川崎シンフォニーホール


井上道義:指揮
ルドヴィート・カンタ:チェロ#
ティエリー・エスケシュ:オルガン*
オーケストラ・アンサンブル金沢

エスケシュ:与えられたテーマによる即興演奏(オルガンのみ)*
シューベルト:交響曲第7番ロ短調「未完成」D.759#
サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番イ短調 op.33
エスケシュ:オルガン協奏曲(2016年度オーケストラ・アンサンブル金沢委嘱作品)*
---------------
アンコール
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番から サラバンド#

エスケシュという作曲家・オルガニストは初聴き。
最初に、井上道義が、伊福部昭の「ゴジラ」から有名なテーマとシューベルト「未完成」の冒頭のメロディをピアニカで鳴らし、それをエスケシュが聴き取って、この2つの旋律を元にしたパイプオルガンの即興演奏をした。これがなかなか面白く出来上がった。もちろん、事前に打ち合わせをしていたのだろうけど。

その後のプログラムは理解不能な組合せ。

シューベルトの「未完成」はまあ良かったかな。
オケは総勢40名程度なので、各パートの旋律線がよく分かるのがいい。もちろん、少人数であるためにシンフォニックサウンドは期待できない。しかし、作曲された当時のオケの規模は、多分こんなものなのだろう。我々は、今、モダン楽器で相当拡大された規模のオケで豊かな弦の共鳴を普通に楽しんでいるので、こういう室内アンサンブルでは頭の切り替えをしなくてはならない。

次のサン=サーンスのチェロ協奏曲は生では初聴きだった。
シューマンのチェロ協奏曲同様3部構成だが単一楽章として演奏される。こういう非常にロマンチックかつドラマチックな音楽は、もう少し規模の大きいオケの方が一層味わい深いだろうと思った。

最後に、冒頭の即興演奏をしたエスケシュの作曲によるオルガン協奏曲をエスケシュ自身のオルガン独奏で演奏した。これが、どんな音楽だったか思い出せないが、走り書きのメモに悪評は書いていないところをみると、現代音楽にしてはそれなりに楽しめたのだろう。

それにしても、今日のミューザの客席は、舞台回りと最上層にお客が1人も入っていない。ミューザの職員に聞いたら、チケットを売らなかったのだそうだ。集客に不安があったのだろうが、せっかくのホールが客席側から見るとガラガラの印象で寂しい。
フェスタサマーミューザのコンサートは毎回がリーズナブルな料金設定だが、このアンサンブル金沢は特別参加という位置づけで、在京オケの料金とは別建てで、特に安価な設定だったから、売ればお客が入ったのではないか。
尤も、「当日券あります」という告知があったところをみるとあれでも売れ残っていたのだ。

ま、名の売れたスタープレーヤーも出なかったし、プログラムが地味過ぎたな。

♪2017-126/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-15

2017年7月22日土曜日

フェスタサマーミューザ2017 東京交響楽団オープニングコンサート ≪ジョナサン・ノットが贈る、運命物語≫

2017-07-22 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ジョナサン・ノット:指揮
東京交響楽団

シェーンベルク:浄められた夜 作品4(1943年改訂版)
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」


「浄められた夜」は音楽史的に有名だけど、聴いたことがなかった。シェーンベルクと言えば12音技法の発明者!面白くもない現代音楽をフェスタサマーミューザ2017のオープニングに演奏するのか、と少々呆れ顔で臨んだのだけど、これは勉強不足で、この作品は彼がまだ25歳、無調音楽移行する前の、初期の作品なので、後期ロマン派とでも言える作風だった。

オリジナルは弦楽6重奏曲で、これを1917年に弦楽合奏用に編曲し、さらに1943年に改訂した。本日の演奏はこの改訂版による。
全1楽章約30分間。これと言って劇的な展開がなく、ワーグナーの無限旋律のようでもあるが、一応それなりの旋律も形式感もあって捉えやすく、弦楽合奏としてのシンフォニックなアンサンブルの美しさもあり、悪くないなあと思った次第。

メインが「春の祭典」。
「浄められた夜」が弦楽合奏であったので、5管編成という超特大管弦楽の魅力が一層際立った。
変拍子の塊のような作品で、昔は大指揮者でも失敗することがあったそうだが、近年、どんな曲であれ、コンサートで演奏が止まったなんて話を聞かないのは、指揮者もオケの方もレベルが上っているのだろうな。

今回も、もちろんノットの指揮は澱みなく、オケは爆音を轟かせて「春の祭典」ならぬ「夏の祭典」をのオープニングを華々しく飾った。

♪2017-125/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-14

2017年7月19日水曜日

平成29年度7月中席

2017-07-19 @国立演芸場


落語 三遊亭ぐんま⇒たらちね
落語 三遊亭美るく⇒真田小僧
落語 月の家小圓鏡⇒たけのこ
漫談   ひびきわたる
落語 橘家文蔵⇒手紙無筆    
落語 古今亭志ん輔⇒三枚起
~仲入り~ 
漫才 ホームラン
落語 桂ひな太郎⇒幇間腹
俗曲 柳家小菊
落語 桂文楽⇒心眼

この日は、大幅に遅刻した上チケットを持ってゆくのを忘れたのでだいぶ入場が遅れてしまった。オマケに眠くてしようがない。ようやく覚醒したのが、漫才のホームラン(ひびきわたるの代役)。彼らはいつも高水準で笑わせてくれる。
その後もシャキッとした出し物がなく、本日の最高点はホームランだった。
俗曲の柳家小菊はいい味なんだけど、客あしらいがイマイチ。トリの桂文楽はなかなか噺巧者だけど、僕の気分が乗れなかったな。

2017-124/♪国立演芸場-12

2017年7月16日日曜日

東京交響楽団 川崎定期演奏会 第61回

2017-07-16 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ジョナサン・ノット:指揮
東京交響楽団
東響コーラス♪
藤村実穂子:メゾ・ソプラノ*
天羽明恵:ソプラノ+

細川俊夫:「嘆き」〜メゾ・ソプラノとオーケストラのための*
マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」(シュタルク=フォイト&キャプランによる新校訂版)*+♪

細川俊夫の「嘆き」は副題のとおりの編成だが、初演時(2013年)の女声はソプラノだったが、2年後に今日のソロを歌った藤村実穂子のためにメゾ・ソプラノに改訂されたそうだ。当然音程を変えたんだろうな。てことは、オケの方もズルっと下げたのだろうか。

よく理解できない音楽だった。
ほとんどかけらも記憶に残っていない。

マーラーの第2番「復活」は最新研究の成果が生かされた新校訂版だが、ほとんど音楽上の追加・削除はなく、小節数も変わっていないという。であるから、素人の耳にはこれまで聴いてきた音楽と変わりはないといえるのだろう。

変わりがなければいつものようにこの大げさな音楽を楽しめるはずだったが、珍しくも、今日の「復活」にはピンと来るものがなかった。東響には悪いけど、決して演奏が悪かったというのじゃないけど、まあ、こんな日もある。

♪2017-123/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-13

2017年7月15日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第329回横浜定期演奏会

2017-07-15 @みなとみらいホール


西本智実:指揮
菊池洋子:ピアノ*
日本フィルハーモニー交響楽団

ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調 作品11*
モーツァルト:歌劇《後宮からの誘拐》序曲 K384
レスピーギ:交響詩《ローマの祭》作品P157
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アンコール
ドゥーセ:ショピナータ*
レスピーギ:リュートのための古代舞曲とアリア第3組曲からシチリアーナ

西本智実の指揮ではこれまで(得意の?)ロシアものを聴く機会が多かったが、今日はコンセプトがよく分からないプログラム編成。でも、それぞれの出来栄えはかなりのものだった。

菊池洋子のピアノを前回聴いたのはやはり日フィルの定期で、その時はモーツァルトの26番「戴冠式」。指揮は三ツ橋敬子。今回同様2人の女花の競演とかキャッチコピーに書いてあったな。これが松尾葉子の指揮だったらなんて書くんだろう。女流実力派とかになるのかな。

ショパンの協奏曲については、元々大好き、という訳でもないのでまあ、こんなものかと思いながら聴くともなく、もの思いに耽りながら気がつけば終わっていた。

何といっても、本日のメインイベントは「ローマの祭」だ。
こういう、超特大編成、しかも、バンダあり、オルガンあり、打楽器は多種多様出、凝りに凝ったオーケストレーションこそ、管弦楽を聴く楽しみだ。
やや荒っぽい部分もあったように感じたが、何より派手で大音量がうれしい。
定期演奏会だからオケのアンコールはないと思っていたが、あった。それも同じくレスピーギのリュートのための古代舞曲とアリア第3組曲からシチリアーナ(弦楽合奏)と、これは気の利いた選曲だった。

♪2017-122/♪みなとみらいホール-30

2017年7月14日金曜日

N響「夏」2017

2017-07-14 @NHKホール



ラファエル・パヤーレ:指揮
ヴァディム・レーピン:バイオリン*
NHK交響楽団

ブラームス:悲劇的序曲 作品81
ブルッフ:バイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26*
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調 作品36
---------------
アンコール
パガニーニ:ヴェニスの謝肉祭*
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」からポロネーズ

先日放映された「題名のない音楽会」に登場したかつての神童レーピンだが、「白鳥」でピッチを外して頼りないなあ、と心配していたが、その後弾いたブルッフの協奏曲(放映は第3楽章のみ)では問題なく達者なところを見せていたが、今日のN響との競演は如上の理由で一抹の不安を抱いて臨んだ。

ひょっとして音を外すんじゃないか、という不信感を抱きながら音楽を聴くというのはどうも正しい鑑賞方法ではないな。おかげで、なかなか音楽にのめり込めなかった。
しかし、ほとんど問題なく(少し怪しいものを感じた箇所があったがこの程度は他のプロでもごくフツーだ。)、やはり、卓越したテクニシャンだということを感じさせた。
ブルッフもさることながら、アンコールで弾いたパガニーニの超絶技巧ぶりは凄まじい。なるほど、神童の片鱗は確かに残っていた。
そのアンコールを弾き始める前にコンマスの篠原氏に何やら話しかけ、それから弾き始めたが、主題をひととおり弾いた後、ピチカートでアルペジオを弾いて、弦パートに合図をしたら、バイオリンパートがそのアルペジオを弾き始め、低弦は3連符の頭だけを弾き始めた。ビオラがどうだったか記憶になし。これは打ち合わせ無しだったのだろうか?事前に一度はさらっておいたのだろうか?
通常はバイオリンのアンコールと言えば、ソロで無伴奏と決まったものだけど、オケも巻き込んだアイデアはとても楽しめた。
尤も、どうやらこの余興はレーピンがあちこちでやっているみたいでYoutubeでも少しバージョンが異なるものの同じヴェニスの謝肉祭の演奏を後刻見つけた。

指揮のラファエル・パヤーレは、デュダメルの後塵を拝して登場した1980年ベネズエラ生まれ。36歳だから、若手ではあるけど、もう相当経験も積んでいるようだ。今回がN響初登場。
何しろ頭がアフロヘアーでこのマッシュルームのような部分が異様にでかい。顔がその分小さく見える。

指揮ぶりに変わったものはなく、奇を衒うようなところも感じなかった。ただ、今日のプログラムは全曲いずれもドラマチックな内容で、本人の好みかどうか知らないけど、あるいはこういう傾向の音楽がラテンの血を騒がせて向いているのかもしれない。

今日のN響。うーん。もっともっと良い演奏をするN響を知っているからなあ。一応及第点だけど。細部まで神経が行き届いているとは思えなかった。これが客演指揮者とのリハーサル不足が原因としたら、もっとしっかり時間をとって完璧になるまでリハを繰り返して欲しいね。

2017-121/♪NHKホール-06

2017年7月10日月曜日

東京都交響楽団 第836回 定期演奏会Aシリーズ

2017-07-10 @東京文化会館


マルク・ミンコフスキ:指揮
東京都交響楽団

ハイドン:交響曲第102番 変ロ長調 Hob.I:102
ブルックナー:交響曲第3番ニ短調 WAB103《ワーグナー》(1873年初稿版)

ハイドンは、都響にしては珍しくバラバラの感じ。

ブルックナーはジャスト60分、やはり長いと感ずる。

今日のブルックナーは初稿版出そうな。でも版による違いは分からない(どうせ、素人の耳には大した違いはあるまい、と思って興味が沸かない。)。

第2楽章以外は全て大げさな終結部だ。
どうして、こんなに大音量でドラマチックに終曲する必要があるのか、疑問だ。

都響の演奏はいつもの安定感があり、破綻がない。でも、ハイドンもそうだったが、最善のアンサンブルとは思えなかった。

一度、感服するような演奏でブルックナーの3番を聴いてみたいものだ。そうでないと、いつまでたってもこの曲を好きになれそうにない。

♪2017-120/♪東京文化会館-11

平成29年度7月上席 真打昇進披露公演

2017-07-10 @国立演芸場


落語 昔昔亭金太郎⇒子ほめ
落語 昔昔亭A太郎⇒皿屋敷
落語 春風亭愛橋⇒魚根問
奇術 北見伸&スティファニー
落語 昔々亭慎太郎⇒家族旅行作文
落語 桂歌春⇒強情灸
〜仲入り〜
真打昇進披露口上
落語 瀧川鯉昇⇒粗忽の釘
落語 昔昔亭桃太郎⇒金満家族
歌謡漫談 東京ボーイズ
落語 昔昔亭桃之助⇒船徳

今月の上席は落語芸術協会で真打ち昇進2名が出て、この日は昔昔亭桃之助(他日が笑福亭和光)の披露公演だった。

いつもの寄席と違うのは、中入り後に幹部級が揃って真打ち昇進披露の口上を述べる時間があること、昇進したばかりの桃之助が今日はトリを務めるということだ。
披露向上と言っても旧悪を披露されるくらいがオチで、まあ、これが落語界のお祝いのスタイルなのだ。

桃之助は桃太郎の弟子だが、桃太郎自身があまり巧い噺家とは思えない。癖がありすぎて楽しめない。桃之助はまだその点素直な感じで、このまま延びてゆけばいいのにと思ったが、やはり、そもそもトリを務める器ではない。

落語では鯉昇が一番面白かった。何しろ、顔立ちがいい。黙って座っていてもおかしくなるような人相で大いに得をしているのではないか。

全体の中で一番良かったのは、奇術の北見伸だ。いつもながらに鮮やかなもので、感心するよ。
でも、奇術が一番では寄席として寂しいな。

2017-119/♪国立演芸場-11

2017年7月9日日曜日

ミューザ川崎ホリデーアフタヌーンコンサート2017前期 「月の光 / ロジェ plays ドビュッシー」 パスカル・ロジェ ピアノ・リサイタル

2017-07-09 @ミューザ川崎シンフォニーホール


パスカル・ロジェ:ピアノ

【オール・ドビュッシー・プログラム】
アラベスク第1番 ~「2つのアラベスク」から
雨の庭 ~「版画」から
水の反映 ~「映像第1集」から
金色の魚  ~「映像第2集」から
沈める寺 ~「前奏曲集第1集」から
子供の領分
ベルガマスク組曲
そして月は廃寺に落ちる ~「映像第2集」から
月の光が降り注ぐテラス ~「前奏曲集第2集」から
亜麻色の髪の乙女 ~「前奏曲集第1集」から
グラナダの夕べ ~「版画」から
喜びの島
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アンコール
サティ:ジムノペティ第1番
ドビュッシー:前奏曲集第1集より第12曲「ミンストレル」

パスカル・ロジェの名前は随分昔から知っていたから、以前に聴いた気がしていたけど、どうやら初めてらしい。手持ちCDリストを見たらサン=サーンスのピアノ協奏曲全集がロジェの演奏なので、そういうこともあって頭に入っていたのかも。

フランスものでは当代一流のピアニストらしい。

そんな訳で、今日のプログラムはオール・ドビュッシーだ。
独墺の音楽ほどには普段からあまり聴かないので途中で寝てしまうのではないかと多少不安もあったが、蓋を開けてみたらほとんど知っている曲ばかりでしっかり覚醒して楽しめた。
技量や音楽性は分からないのだけど、心地よい音楽を心地よく演奏してくれて大いに満足。
「映像」や「版画」と名付けた作品集があることからも分かるように、印象派の絵画をイメージできるような音楽だ。ドイツ音楽にはない流麗さが確かにあるなあ。

♪2017-118/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-12

2017年7月8日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第331回

2017-07-08 @みなとみらいホール


ユベール・スダーン:指揮
佐藤俊介:バイオリン*
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

モーツァルト:歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲 K621
モーツァルト:バイオリン協奏曲第5番イ長調 K219「トルコ風」
シューマン:交響曲第2番ハ長調 作品61(マーラー編曲版)
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アンコール
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第3番メヌエット

ユベール・スダーンといえば、東響の音楽監督を長く努めた人で、僕が聴いたのも、東響を指揮したものばかり。神奈川フィルへの客演は今回が初めてだそうな。

佐藤俊介の協奏曲は何度か聴いていたが、特に可もなく不可もなし。この人は古楽とモダンの両刀遣いらしいが、一度古楽の演奏を聴いてみたいな。

シューマンが問題だ。
シューマンは好きな作曲家ベスト5くらいには入るだろうか。
いい作品がいっぱいあるのに、どうにもこの交響曲第2番だけは近づき難いのだ。というか、率直に言って、少なくとも第1楽章は失敗作ではないのか、と大胆にも思っている。
他の3曲は、いずれも冒頭の掴みにそこそこ力があるので、スーッと入ってゆきやすいが、2番だけはもうオケがバラバラの感じでついてゆけない。これを上手に演奏した例も知らない。

マーラーがこの曲を他楽器へ移し替えるのではなく、管弦楽そのままという形で編曲し直したのは、曲に魅力はあるけど、オーケストレーションに問題があると感じたからではないか。

さて、そこで、本日のシューマン交響曲第2番はマーラー編曲版なのだ。どこをどう編曲したのか、そこが興味の焦点だが、あいにくと、オリジナル版も聴き馴染むほどに聴いていないので、違いなど分からないままであった。こういう比較をするなら、やはりスコアを見ながらCDを聴くに限るけど、CDはともかく(スダーン+東響でマーラー版シューマン交響曲全集が出ている。スダーンはやはりマーラー版がお好みのようだ。)、スコアの方はマーラー編曲版と銘うったものにお目にかかったことがないので見比べ、聴き比べもできない。

今日のマーラー版で、ひょっとして、と思ったのは第1楽章冒頭部分の金管と弦のメロディラインがオリジナルよりはっきりしていたような気がしたのと、同楽章と第4楽章の終わり方の派手派手しいところがマーラーの筆になるのかもしれない…かな。

♪2017-117/♪みなとみらいホール-29

2017年7月7日金曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2017前期 ≪ロシア・ピアノの真髄≫ボロス・ベレゾフスキー ピアノ・リサイタル

2017-07-07 @みなとみらいホール


ボロス・ベレゾフスキー:ピアノ

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調 作品106「ハンマークラヴィーア」
ショパン:4つの即興曲
 第1番変イ長調 作品29
 第2番嬰ヘ長調 作品36
 第3番変ト長調 作品51
 幻想即興曲(遺作)嬰ハ短調 作品66
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの3楽章
 第1楽章:ロシアの踊り
 第2楽章:ペトルーシュカの部屋
 第3楽章:謝肉祭
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アンコール
グリーグ:抒情小品集第2集から 1子守唄、4ハリング
 同第5集から3小人の行進
 同第8集から6トロルドハウゲンの婚礼の日

大きな体。横から見ると三角おむすび。
頭も背中もほとんど身体は動かない。手首だけで間に合わせているような軽い弾き方だが、それで大きな音が出ないわけではなくて、しっかり轟音も出す。やはり身体能力やらテクニックやらのゆとりがなせる技だろう。

一体何度目?
近々では5月の「N響午後のクラシック」でチャイコフスキーのピアノ協奏曲を聴いた。
2014年の熱狂の日では3度聴いている。

ベレゾフスキーのコンサートは前半のハンマークラヴィアが軽快に出たが、途中で眠くなってしまった。でも、聴いてはいたので、不思議な感覚だった。
ベートーベンはあまり面白くなかったし、ショパンもどうだかな。向いていないのではないか。ところが、ストラビンスキーとなると俄然水を得た魚のごとし。

超絶技巧である。
A・ルービンシュタインの依頼でストラヴィンスキー自身がピアノ独奏用に編曲したが、ルービンシュタインから「過去のどの曲よりも難しいもの」と注文を受けたために、部分的には4段譜、5段譜が使われているらしいが、手は2本しかないのに一体どんな楽譜なのだろう。

また、アンコールでグリーグの小品を4曲弾いてくれたが、気持ちが乗っていたな。全部が初聴きだったが、面白い音楽だ。

♪2017-116/♪みなとみらいホール-28

2017年7月4日火曜日

みなとみらいクラシック・マチネ~名手と楽しむヨコハマの午後~ 永野英樹ピアノリサイタル

2017-07-04 @みなとみらいホール


永野英樹:ピアノ

ラヴェル:ソナチネ
矢代秋雄 : ピアノ・ソナタ(1961年改訂)
ベートーベン: ピアノ・ソナタ 第30番ホ長調 作品109
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アンコール
シューベルト:楽興の時 第3番ヘ短調

永野英樹は初聴きだった。プログラムの紹介欄を読むと凄い成績優秀な人だ。あちこちの学校で首席卒業だ。その優れた才能を残念ながら僕の凡庸な感性は理解できないけど。

ラヴェルと矢代とベートーベンという一見繋がりの分からないプログラムだったが、解説を読むと関連性を意識して構成されたようだ。
ラヴェルと矢代は友にパリ音楽院で学んだ。
その矢代のピアノ・ソナタはベートーベンの30番ソナタを意識して作られた。

その今日のメインと言うべきベートーベンではなんと、冒頭、ちょっと弾いて止め、すぐ弾き直した。何か、違和感を感じたのだろうな。

どの曲も楽しく聴けたが、特に、今日のピアノの音は素晴らしいかった。いつも同じとは限らないのが音響の不思議さだが、この小ホールで聴くピアノはたいてい美しい。

♪2017-115/♪みなとみらいホール-27