2023年8月31日木曜日

ブラームス バイオリン・ソナタ全曲演奏会 -林直樹 & 去川聖奈-

2023-08-31 @みなとみらいホール



林直樹:ピアノ
去川聖奈:バイオリン

《ブラームス バイオリンソナタ全曲演奏会》
ブラームス:F.A.Eソナタ ハ短調 WoO2 から
「第3楽章スケルツォ」
ブラームス:ピアノとバイオリンのためのソナタ
 第1番ト長調 作品78「雨の歌」
ブラームス:ピアノとバイオリンのためのソナタ
 第2番イ長調 作品100
ブラームス:ピアノとバイオリンのためのソナタ
 第3番ニ短調 作品108
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ブラームス:6つの小品から「間奏曲」作品118-2



ピアノの林直樹もバイオリンの去川聖奈も名前も聞いた事がなく当然初聴きだが、みなとみらい小ホールでブラームスバイオリンソナタ全曲やるというのでこれは聴き逃せないと出かけた。
2人とも昭和音大出身で国際コンクールにも入賞しているとはいえ、マイナーな存在?だと思うので、どんなものかなあという一抹の不安…は最初の1音で消し飛んだ。

かぶりつき席だったこともあるかもしれないが、バイオリンの音が生々しく、エネルギッシュで、”全曲”を通じて(ここが勘所)ブラームス愛に満ちた世界を共有できた。

一般に「バイオリン・ソナタ」と呼ばれている作品は、正式には「ピアノとバイオリンのためのソナタ」であるはず。
本編を弾き終えて去川嬢が「バイオリンよりピアノの方が音符が多くて大変なんです」と林君に敬意を表していたが、いや、実際今日は聴きながら、ホンにピアノとバイオリンのための作品だなあと受け止めたよ。

アンコールは「間奏曲」作品118の2番。
本来はピアノ曲のはずで、今日の二重奏版は初聴き。これはブラームス自ら編曲したのだろうか?ともかく、僕の大好物だ。
「ブラームス愛」の物語は、クララに献呈した美しい小品でちょっと感動!の大団円となった。

♪2023-147/♪みなとみらいホール-29

2023年8月27日日曜日

ミューザ川崎 市民交響楽祭2023

2023-08-27 @ミューザ川崎シンフォニーホール



今井治人:指揮
かわさき市民オーケストラ2023
(幹事オーケストラ:宮前フィルハーモニー交響楽団)

ラフマニノフ:交響的舞曲 op.45
 第1楽章 ノン・アレグロ
 第2楽章 アンダンテ・コン・モート
    (テンポ・ディ・ヴァルス)
 第3楽章 レント・アッサイ-アレグロ・ヴィヴァーチェ

ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68
 第1楽章 ウン・ポコ・ソステヌート-アレグロ
 第2楽章 アンダンテ・ソステヌート
 第3楽章 ウン・ポコ・アレグレット・
     エ・グラツィオーソ
 第4楽章 アダージョ・ピウ・アンダンテ・
     アレグロ・ノントロッポ・マ・コン・ブリオ

----アンコール-------------
J.シュトラウスⅡ:トリッチ・トラッチ・ポルカ



川崎市の4つのアマオケ合同らしいが、均等に編成しているのか、毎年輪番制で変わる幹事オケを中心としているのか分からない。2019年に初めて聴いて、かなりの高水準だったので、その後、毎年聴いている。

ラフマニノフ:交響的舞曲は、昨年までは2年に1回くらいの割合だったが、今年に限れば本日現在3回目だ。やはり生誕150年だからだろう。
処々に散りばめられた情緒的で、エキゾチックな美しい旋律が馴染みやすく、映画音楽のようでもある。終楽章の終盤、テンポが早くなったところから、リズミカルな波が押し寄せて、その中にラフマ印とも言える「怒りの日」の旋律が小出しで登場し、徐々に旋律を支配して盛り上がってゆくところは一番ワクワクさせてくれる。

この作品が、自身覚悟の”白鳥の歌”となったそうだが、悲壮なところはまるでない。

今日のオケの弦編成は、アマオケにありがちなやや歪なもので、Vn1から順に14-14-13-10-10と、滅多に経験できないコンバス10本は凄い。音楽的必然というより、合同オケの事情だろう。

後半のブラームスでは低弦を少し整理するかと思っていたが、そうではなく前半と同編成だった。

ラフマをかなり豪快に演奏したので、ブラームスも大いに期待したが、管楽器は難しいのだろうか、前半は数か所で小さなエラーが続いた。が、だんだん調子が出てきて終楽章、Tymp連打の後、アルペンHr風のHrソロが見事に決まって、あとは緊張感を保って終曲した。

今更だけど、ブラームスって人は音楽に初めて「知性」を持ち込んだ作曲家ではないか、と、これはふと出た思いつき…。

♪2023-146/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-23

2023年8月23日水曜日

神奈川フィル”ブランチ”ハーモニー① 〜 金管五重奏 〜 in かなっくホール

2023-08-23 @かなっくホール



林辰則(トランペット)
中村諒(トランペット)
坂東裕香(ホルン)
府川雪野(トロンボーン)
宮西純(チューバ)
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榊原徹(司会/神奈川フィルハーモニー管弦楽団音楽主幹)

フレール・ジャック
◆楽器紹介◆
ガブリエリのオーボエ/モリコーネ
となりのトトロ メドレー
花/滝廉太郎(曲)、石川亮太(編)
映画「サウンド・オブ・ミュージック」から
------アンコール------------------
聖者の行進




6月に読響ブラスを聴いたが、その時は楽器の種類は同じだが、人数が倍以上の11人もいたので、今回の金管五重奏と比べ、当然、迫力は違うし、表現力の面でも多彩だった。

しかし、神奈川フィル金管五重奏団も全員、非常に美しい音なので驚いた。美しい楽器の音は、ずーっと聴いていたいと思わせる。
もちろん技術も達者だが、かなっくホールの響の良さも手伝ったと思う。

紅一点、Hrの坂東裕香は、2017年秋の入団以来、神奈川フィルHr陣の救世主だ。彼女が加わって、Hr部門はとても安定した。今日も、彼女のHrが全体をまとめるのに大いに力を発揮していたと思う。

美しい音と優れたテクニックだが、あいにくと、この編成で書かれたオリジナルの作品はなく、全て編曲ものだった。

金管五重奏の限界なのか、編曲に工夫が足らないのか、もうちょっと面白くできそうなのに…と思いながら聴いた曲もあった。

余談:アンコールがあるとしたら、この編成では「聖者の行進」しか思いつかんなあ…と思っていたら、正にそのとおり。お客さんの手拍子も入って賑やかに盛り上がって終わった。
その際、僕としては後拍でリズムをとったのだけど、炭坑節じゃあるまいに前拍で手拍子する人の方が多いような気がした。そういう中で後拍を維持するのは結構難しい。

♪2023-145/♪かなっくホール-12

2023年8月11日金曜日

工藤重典 フルート・スペシャル・プログラム 素晴らしいフルート・アンサンブルの世界

2023-08-11 @みなとみらいホール



フルートⅠ:工藤重典、岩佐和弘、梶川真歩、神田勇哉、山内豊瑞、瀧本実里
フルートⅡ:成川結衣、坂本伽耶、高橋綾野、伊藤里桜、大場藍、松田実
(この6人は、第38回かなが音楽コンクールフルート部門優秀者)**
ピアノ:工藤セシリア*

①J.S.バッハ:「音楽の捧げもの」 BWV1079から「6声のリチェルカーレ」
②ドビュッシー:「小組曲」から*
 1小舟にて/2行列/3メヌエット/4バレエ
③F.ドップラー / K.ドップラー:リゴレット幻想曲 Op.38*
④ギオー:ディベルティメント・ジャス
⑤R.コルサコフ(神田寛明編):「シェヘラザード」Op.35から第3曲「若い王子と王女」
⑥パガニーニ:常動曲ハ長調 Op.11,MS72
⑦モーツァルト(エンゲル編):きらきら星変奏曲*
⑧チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」組曲から**
 1小序曲/2マーチ/3トレパック/4金平糖の踊り/
 5アラビアの踊り/6中国の踊り/7葦笛の踊り
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⑨編曲者不明:五木の子守唄**

①〜⑦まではフルートⅠから曲により2〜6人が参加。
⑧、⑨はフルートⅠ全員とフルートⅡが加わり、工藤重典は指揮に回った。




工藤重典のフルートは4回目。ギターデュオのほか複数のフルートとピアノによるアンサンブルを聴いてきたが、今回は、本人含んで6人とピアノ。過去最大編成。5人は工藤の弟子筋のようだが、オケで言えば首席クラス。

演奏作品は、6本のフルートによるもの、フルート2本とピアノ、フルートのみの四重奏など、多様な形式の作品を、ピッコロ、フルート、アルトフルート、バスフルート、コントラバスフルート、ダブルコントラバスフルートと多様なフルートを使って、多彩に繰り広げた。

どれも面白かったが、特に本編の最後の「くるみ割り人形」とアンコール曲「五木の子守唄」では本来のアンサンブル・メンバー5人(工藤は指揮に回った)に加えて、第38回かながわ音楽コンクールフルート部門優秀者の6人(全員女性!)が加わって、11人による6種類のフルートを使った演奏だったが、これまで聴いたことのない響に驚いた。

本来は管弦楽曲だがフルートだけでもそこそこやれますよ、といったレベルではなく、新しいアンサンブルの形を垣間見た気がした。本格的に発展させるためには「五木の子守唄」のような、斬新な編曲が必要だし、この編成の為の新曲を聴いてみたいと思ったが、人数を増やし、楽器の種類を同族限定にせよ増やせば、それは面白いことができるだろうけど、際限がないし、却ってフルートアンサンブルの面白味を危うくすることになるのかなあ…と複雑。

とにかく、休憩除いても110分という長丁場だったが、作品毎に工藤の説明が入り、バラエティに富んだ編成と楽器構成でとても充実した時間を過ごせた。

2023-144/♪みなとみらいホール-28

2023年8月10日木曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 辻井のショスタコと熱狂の『英雄の生涯』

2023-08-10 @ミューザ川崎シンフォニーホール



沼尻竜典:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
辻井伸行:ピアノ*

オネゲル:交響詩「夏の牧歌」
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番ヘ長調 Op.102*
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」Op.40(Vn独奏 石田泰尚)
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ショパン:夜想曲第20番嬰ハ短調(遺作)*




オネゲル「夏の牧歌」は初聴き。20世紀の作品と思えないほど、分かり易くて親しみやすく、文字どおり「牧歌」的な小品だった。

ショスタコのPf協2番は珍しく、僕は2回目だった。
1番も最近初めて聴いた。2曲とも自作のVn協やVc協曲のような重みはなく、軽くて短くて面白くて冗談のような音楽だ。ショスタコの作品とは思えないけど、よく聴いているとショスタコ印が浮かんでくる。

終曲後は、本編よりCCとEncの方が長かったのでは(そんなことないけど)と思わせるような、辻井くんに向けられた盛大な拍手喝采。Encはショパン:夜想曲第20番C#mで満員の管内を唸らせた。

後半の「英雄の生涯」は、オケとしては相当力が入っていた。沼さんがプレトークで「auの障害」とかダジャレ飛ばして受けていたが、冒頭の低弦から一気に駆け上がり、リズムを刻むとHrが英雄のテーマを朗々と歌う。坂東女史が今日も巧い。もう、この辺でかなり気持ちを掴まれた。

気になる部分もあったけど、全体としては、神奈川フィルの高水準ぶりを聴かせてくれた。

チケ完売というだけでなく出席率も極めて高く、オルガン横の左右の最上層までお客が入っていた。
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今年の、僕のFSMuzaのオケ・コンサート全10本は今日で終わった。
チケット完売になったのは、東響・N響・新日フィル、そして今日の神奈川フィルだそうだ。
東響はMuzaがホームだし、開幕・閉幕を受け持つのだから、まあ、そうだろうな。
新日フィルはミッキー人気だったか。
神奈川フィルは…沼さん、石田組長。何より神奈川フィルの人気…と言いたいけど、ま、それもあったろうけど、なんといっても辻井くん目当てなんだろうな。その彼がチャイコ、ラフマ、ショパンなどの定番ではなくショスタコを選んだのが面白かった。

何が一番だったか?
読響の「指環アドベンチャー」か。音楽もいいが読響の底力を感じた。
次点⇒カーチュン・ウォンの「展覧会の絵」、東フィルの「幻想交響曲」、神奈川フィル「英雄の生涯」かな。

今年はN響がダブリで聴けなかったのは残念だった。

♪2023-143/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-22

2023年8月9日水曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 日本フィルハーモニー交響楽団 カーチュン・ウォンの描く『展覧会の絵』

2023-08-09 @ミューザ川崎シンフォニーホール



カーチュン・ウォン:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
須川展也:サクソフォン*

ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
菅野祐悟:サクソフォン協奏曲「Mystic Forest」*
ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」
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真島俊夫:シーガルから*
エルガー:「エニグマ」変奏曲から「ニムロッド」



「カーチュン・ウォンにハズレなし」とこれまで何度書いたろう。今日も上書きしておこう。
尤も、2曲目の菅野祐悟SAX協はダメ。3月にも日フィル・須川コンビで聴いたが、その時も楽しめず、今回も面白いとは思えなかった。

まず、「運命の力」。
8分足らずの小品だが。最弱音から最強音までの細部にわたって、「力」が入っていた。ウォンの彫琢の跡だ。

その発展形が「展覧会の絵」で、ここでは各曲の終わり毎、いや、時にはフレーズの終わり毎のそれぞれの結び目に落款が押してあるようだった。

その決め方にこだわり、どんな些細なフレーズもおろそかにせず、ウォン流を貫こうとしているふうだ。

そんなふうに聴き始めると、いつもの「展覧会の絵」は聴き馴染んだ心地良い娯楽作品ではなくなって、「カーチュン・ウォンの習作集」みたいになってくる。
敢えて「習作」というのは、けっして完成形ではないから。
オケも「カーチュン・ウォンの絵」をまだ自分のものとはしていない様子だった。

でも、あと2-3回演奏すれば「カーチュン・ウォンの絵」になるのだろう。
新鮮で発見に満ちた「絵」を再び聴いてワクワクしてみたい。

♪2023-142/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-21

2023年8月8日火曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 日本センチュリー交響楽団 天下の台所からクラシックフルコース

2023-08-08 @ミューザ川崎シンフォニーホール



秋山和慶:指揮
日本センチュリー交響楽団
HIMARI:バイオリン*

シューベルト:交響曲第5番変ロ長調 D.485
ブルッフ:バイオリン協奏曲第1番ト短調 Op.26*
ドボルザーク:交響曲第8番ト長調 OP.88
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ナタン・ミルシテイン:パガニーニアーナ*



居ながらにして地方のオケを聴けるのがFSMuzaの楽しみの一つ。日本センチュリーは初めて。びっくりするほどの出来でもなかったけど、ともかく「整然」という言葉がピッタリの演奏だった。

オーストリア、ドイツ、チェコのロマン派のやや通好みの作品3本立て。これでは2時間に収まるまいと思った…とおりで、だいぶ時間を超過したが、これは幸せな時間だった。

3曲とも弦編成は12型を通した。それで1-2曲目は程良い感じだったが、ドボ8はやはりこれは14型で演って欲しかったな。
管、特に金管の「整然」とした勢いに対して弦が薄い。薄いだけでなく、低域にもう少し「やんちゃな」勢いが欲しかった。こちらも「整然」としすぎだ。
とはいえ、終楽章のHrの嘶(いなな)きが素晴らしい。指揮者によっては、ふつうのTrillで済ませる場合もあるが、あそこは、もう、強力に嘶いてほしいところだ。今日は、新日フィルの日高氏が客演していたが、期待に応えてくれたよ。

初めて聴いたのはオケだではなく、ブルッフでVn独奏したHIMARI嬢(12歳)だ。こちらもかなりの難曲だと言われているが、「整然」とこなした。年齢の割には相当な腕前なのだろうが、オケと協奏曲をやるには身体が出来上がっていないのではないか。枯れ枝の如き細腕からは本来ソリストに要求される周囲を圧するような音量は無理なのだろう。狭いダイナミックレンジの中で上手に弾いてはいても、とても協奏曲にはなっていなかったな。まあ、将来の楽しみにしよう。

たまたま見つけた8歳の娘さんの演奏がなかなか優れもの。
https://youtu.be/kQ9CXQm4UzM


♪2023-141/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-20

2023年8月7日月曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 昭和音楽大学 若き音楽家たちが祝う、ラフマニノフ生誕150周年

2023-08-07 @ミューザ川崎シンフォニーホール



時任康文:指揮
昭和音楽大学管弦楽団
テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ

モーツァルト:交響曲第32番ト長調 K.318
 第1部 アレグロ・スピリトーソ
 第2部 アンダンテ
 第3部 プリモ・テンポ
フォーレ :ドリー組曲 Op.56(H.ラボーによる管弦楽編)
 第1曲 子守唄
 第2曲 ミ・ア・ウ
 第3曲 ドリーの庭
 第4曲 キティ・ワルツ
 第5曲 優しさ
 第6曲 スペインの舞曲
ラフマニノフ:交響的舞曲 Op.45
 第1楽章 ノン・アレグロ
 第2楽章 アンダンテ・コン・モート(テンポ・ディ・ヴァルス)
 第3楽章 レント・アッサイ ― アレグロ・ヴィヴァーチェ
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ラフマニノフ:ヴォカリーズ



プログラムのキャッチコピーに「国も時代も編成も異なる三作品…」とあったが、こういう大雑把な括り方が可能なら、もうプログラムなんて何でもありだ。メインは生誕150周年のラフマニノフなんだから、その関連でまとめたら良かったのに。

モーツァルト交響曲第32番とフォーレ「ドリー組曲」の弦編成は同じ10型。時代も音楽の形も全然違うのだけど、こじんまりとまとまった点では同じような印象を受けた。先般聴いた東大オケに感じた不満と似ている。小綺麗にまとまりすぎ。

後半のラフマニノフ「交響的舞曲」は14型にサイズアップし管打も増えたが、数の割に迫力に欠ける。最近では5月に東フィルで聴いたが、その時の音楽と同じとも思えない。

ようやく終楽章に入って、ラフマ印の「怒りの日」のテーマが現れ、大人数ならではの迫力が出てきて、ティンパニとドラが大きな音を立てて、こうでなくちゃと気持ちも落ち着いた。

ずいぶん時間が余ったのでEncをやるな、と思ったら、カーテンコールは形ばかりにして始まった。冒頭の1小節ですぐ分かった。ラフマニノフのヴォカリーズだ。
その選曲が心憎い。
なんて美しい。心が洗われるようだ。

そんな訳で、終わり良ければすべて良し。

♪2023-140/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-19

2023年8月6日日曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 新日本フィルハーモニー交響楽団 〜広上淳一のザ・ベートーヴェン!〜

2023-08-06 @ミューザ川崎シンフォニーホール


広上淳一:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

ベートーべン:交響曲第6番ヘ長調 「田園」 Op.68
ベートーべン:交響曲第5番ハ短調 「運命」 Op.67



今日のプログラムは、本来ならミッキー(井上道義)が振る予定だったが、病気のために広上淳一に代わった。
その時に曲目もご破産にすべきところ、これを変えず、しかも、ミッキーの考えた趣向をそのまま取り入れてやることになった…とプログラムや開演前の説明にある。

一体どんな趣向だったのか?詳らかには知る由もなし。
ベト6番を小編成で、ベト5番を大編成で、ということだったのだろうか?
であるなら、そのなぜそうするのか、理由を明らかにしてくれないと聴いている方は気分がもやもやだ。

独りよがりの企画を受け継いだ方も独り合点して本来の「趣旨」…そんなものが本当にあったのか疑問だが…は聴衆に正しく伝わったのだろうか?


とまれ、6番の弦編成はVn1から順に8-6-4-4-2計24人という極小サイズだった。こんなに小さくても8型と言うのだろうか?言っては誤解を招くと思うが。

5番は16-14-12-10-8という16型の標準形だった。計60人だ。

どちらも現代の感覚では小さすぎー大きすぎる。
5番も6番も12型か14型が多い。5番を16型で演奏した例は「何でも16型でやりたい都響」以外では聴いたことがない。

べートーべンが書いた管打楽器の数は決まっているので、それに相応しい弦の数として、12-14型に落ち着いてきているのだろう。
なのに、両方とも極小-極大にして演奏した趣旨は那辺に在りや!

なお演奏はいつもの新日フィルの演奏で、問題はなかったし、それなりに楽しめたけど、やはり6番は薄かったな。


そもそも、ベトの5番-6番初演時の弦の編成はどうだったのか?
これがなかなか分からない。

そこで、しょっちゅう嘘を答えて謝ってばかりのChatGPTに尋ねてみた。

添付画像はその時の答えだ。
アテにはできないが、反証できないし、こんな感じかなとも思う。


♪2023-139/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-18

2023年8月5日土曜日

あこがれ in かなっく オペラハイライト プッチーニ「トスカ」

2023-08-05 @かなっくホール



髙橋健介:指揮

トスカ:嘉目真木子(ソプラノ)
カヴァラドッシ:澤原行正(テノール)
スカルピア:大川博(バリトン)
アンジェロッティ&従者:髙倉群(バリトン)
牧童:油木田聖都/油木田寛務(少年)

ピアノ:寺本佐和子

プッチーニ「トスカ」
全3幕イタリア語上演日本語字幕付き

上演時間 2時間00分(休憩30分含む)
第1幕
休憩 (15分)
第2幕
休憩 (15分)
第3幕





真面目なのか遊び心なのかよく分からない「あこがれ実行委員会」なる集団の制作。
歌手の中には日生劇場、文化会館、県民ホールオペラなどで数回聴いている人が2人。それ以外は初聴き。

オペラハイライトというから60分程度の短縮版かと思っていたが、2時間超あった。休憩を除くと正味90分なので、全曲版より2〜30分ばかり短い。カヴァラドッシと堂守のやりとり、テ・デウムの準備場面、スカルピアと部下のやりとりなどが省略されていたが、有名なアリアは網羅されており、これはこれで違和感はなかった。

伴奏はピアノだけ。合唱もなし。
舞台は簡素な置物だけ。

素人の耳には、みんな上手なので歌唱の面で不満はないし、むしろアリアを明瞭に聴くことができて、声楽リサイタルの趣も楽しんだ。

それに、かなっくホールは響が良いので不満は感じたことがないけど、今日はとりわけ良く鳴った。端的にはピアノの音色が素晴らしい。どんなに響の良いホールでもいつも同じ音色ではない。多くの偶然が重なって、ある時、天上の音楽が舞い降りる。今日は運が良かったのだ。

♪2023-138/♪かなっくホール-11

2023年8月2日水曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 東京フィルハーモニー交響楽団 俊英マエストロ&円熟のピアニスト ~ドラマティック名曲集~

2023-08-02 @ミューザ川崎シンフォニーホール



出口大地:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
清水和音:ピアノ*

ハチャトゥリアン:組曲『仮面舞踏会』から ワルツ
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 Op.23 *
ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14
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ラフマニノフ(ワイルド編):「何という苦しさ」Op21-12*
ハチャトゥリアン:組曲『仮面舞踏会』から マズルカ



指揮の出口大地は昨年7月の東フィル定期で聴いて以来2度目。この人のおかげで?ハチャトゥリアン指揮者コンクールなるものの存在を知った。
それで前回はハチャ~一色のプログラムだったが、今回は、最初の1曲だけ…かと思いきや、Encも同じ作品からお祭りを締めくくるにふさわしい賑やかな作品を演奏した。

なかなか好感の持てる青年だ(34歳?)。
すごく自然で、まっすぐな指揮ぶり。どの音楽も爽快に感じた。

チャイコのPf協1番の独奏は清水和音(でこの曲を聴くのは3回目。)。
圧倒的な演奏で、Pf協とはこういうふうにやるんだ、と言わんばかり堂に入っている。Pfを弾きながらオケも実質的に指揮をしているようだった。指揮者との連携が良かったのだけど。

後半の幻想交響曲は、昨日の読響を彷彿とさせた。
「指環」に比べると楽器編成の規模や多彩さはだいぶ地味だけど、「幻想」オーケストラル・アドベンチャーも、「指環」の完成に40年以上先立つ作品とは思えない程に派手な管弦楽が売り物。どこのオケがやってもたいてい満足できる(中でも5月の大植英次+神奈川フィルは大満足だった。)が、東フィルも見事なもので、これもオペラ絵巻に聴こえてくる。

ところで、3楽章のE-Hrと掛け合いをするバンダのObはどこで吹いていたのだろう?よく「舞台裏」で吹くと解説してあるが、現実には本舞台以外のことを指しているようで、多くの場合袖で吹いていると思うが、今日は舞台の真ん中あたりから聞こえてきたので不思議に思ったよ。

今日のミューザは天井からスピーカーが降りていたが、まさか、あそこから?

♪2023-137/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-17

2023年8月1日火曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 読売日本交響楽団 サマーミューザ初登場!オペラの名匠ヴァイグレ×指環

2023-08-01 @ミューザ川崎シンフォニーホール



セバスティアン・ヴァイグレ:指揮
読売日本交響楽団

ベートーべン:交響曲第8番ヘ長調 Op.93
ワーグナー/フリーヘル編:楽劇「ニーベルングの指環」 
 -オーケストラル・アドベンチャー-




FSMuzaは今年は10本聴くが、中で1番の楽しみが今日の読響…というより、指環オケ版だ。

しかも、ヴァイグレも1年ぶりだが、コンマスがVn界の百済観音、日下紗矢子姫❤️だというのが誠に嬉しい。
スリムな長身で、コンマスならではのメリハリのあるボウイングが美しい。

さて、指環。
いろんな編曲ものがあり、生でもCDでもいろいろ聴いているが、中でも今日のフリーヘルによるものが一番成功している気がするし、好きだ。また、多くのオケが取り上げるのもこの版が多く、N響9月のCプロもこの版だ(楽しみ!)。

この編曲では、全4部の物語の順番に沿って音楽を選択している。
声楽部分は当然カットされているが、それを器楽で補うことをせず、ワーグナーが書いた管弦楽の美味しい部分をその楽譜のまま用いている。
フリーヘルが手を加えたのは、楽曲の接合部分だけで、これが実に自然で全く違和感がない。
全曲60分強にわたって一度も休止することなく、ワーグナーの描いた絵巻がオペラ本編をイメージしながら味わえるところがたまらない魅力だ。

で、どうだったか。
多分全曲中一番難しいのが第1曲だと思うが、最弱音から同一(分散)和音を執拗に繰り返す(5分超!)、もやもやの霧の中で世界が目覚めてゆくように管楽器が加わって増えてゆくが、ここがやや不本意な出来だった。
しかし、その後は、段々よく鳴る法華の太鼓で、一気に指環の世界を展開させた。

終曲のタクトはなかなか降りない。まあ、これだけの大曲だ、簡単には気持ちの整理がつかないのだろう。
感心したのは客席で、同じように呼吸を整えて、タクトが降りるのをずっと待った。野暮な飛び出しはなし。完全にヴァイグレのタクトが降りきって、初めて、どっとブラボーの嵐。

いつも愛想のないヴァイグレも繰り返しCCに応じ、だいぶご機嫌だったようだ。そういえば、FSMuzaは初めての登場だったな。相当良い印象を残したろう。また来年も来ておくれ。コンマスは日下紗矢子❤️で!

♪2023-136/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-16