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2023年1月12日木曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 通し狂言「遠山桜天保日記」

2023-01-12 @国立劇場大劇場



竹柴其水=作
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「遠山桜天保日記」六幕十一場
    -歌舞伎の恩人・遠山の金さん-
      (とおやまざくらてんぽうにっき)
        国立劇場美術係=美術

序  幕 第一場  河原崎座楽屋の場
   第二場  花川戸須之崎政五郎内稽古所の場
   第三場  隅田川三囲堤の場
二幕目 安房国山中の場
三幕目 第一場  花川戸須之崎政五郎内の場
    第二場  山の宿尾花屋の場
    第三場  大川橋六地蔵河岸の場
四幕目 第一場  新潟行形亭座敷の場
    第二場  同    庭先の場
五幕目 北町奉行所白洲の場
大 詰 河原崎座初芝居の場

羅漢尊者⇒市川左團次
笛方六郷新三郎/旅の一座の座頭⇒市村橘太郎
捕手頭 佐藤清介⇒市村竹松
楽屋番紋助⇒市村光
行形亭女将お滋⇒市村萬次郎
待乳山のおえん⇒尾上右近*
尾花屋丁稚辰吉⇒尾上丑之助*
遠山金四郎⇒尾上菊五郎
尾花屋小三郎後ニ羅漢小僧小吉⇒尾上菊之助*
八州廻り宮森源八⇒尾上左近*
生田角太夫⇒尾上松緑*
尾花屋番頭 清六⇒片岡亀蔵
座元河原崎権之助/須之崎の政五郎⇒河原崎権十郎
角太夫女房おもと⇒中村時蔵*
政五郎養女おわか⇒中村梅枝*
若太夫河原崎権三郎/八州廻り咲島千介⇒中村萬太郎*
遠山家用人河原崎権三郎/与力大里忠平⇒坂東亀蔵*
佐島天学/⇒坂東彦三郎*
遠山家家老簑浦甚兵衛⇒坂東楽善
        ほか
小川大晴**
寺嶋眞秀**
坂東亀三郎**
*は大詰めの河原崎座役者を兼務*又はそれのみの出演**










毎年、国立の正月公演は菊五郎劇団と決まっている。
いつもは見た目重視の派手な出し物が多いが、今年は初代国立の最後の正月公演なのに地味な世話物?

しかし正月らしい目配りが効いた芝居で大いに満足。

所謂遠山の金さんの話だが、裁きより人情噺に重点。

菊之助の長男、丑之助君を前回見たのは昨年10月だったが、今回は芝居も長く科白も多く、それを見事にこなしている。才能あるものが打ち込んでいるとこんなに早く成長するんだと、近年退化の一途を辿る身としては、驚くとともに反省頻り。
菊五郎も菊之助も同じ舞台に立って喜びこの上なしだろ。

遠山の金さんという人は、天保の改革で取り潰されそうになっている芝居三座を浅草猿若町への所替えで救ったそうで、謂わば歌舞伎の恩人でもある。
そこで今日の芝居では、一件落着後の終幕に主要な役者が、<歌舞伎役者>として登場し、桜尽くしの中、総出で踊って華やかに幕を閉じた。

ここで、本編には登場しなかった、
小川大晴(ひろはる=中村梅枝の長男 7歳)
寺嶋眞秀(まほろ=寺島しのぶの長男 10歳)
坂東亀三郎(かめさぶろう=坂東彦三郎の長男 9歳)が
尾上丑之助(うしのすけ=菊之助の長男 9歳)と共に揃いの衣装で登場した。まあ、可愛らしいこと。
揃って、セリフを先走ったので舞台上も客席も大笑い。
めでたし。

♪2023-004/♪国立劇場-01

2020年1月11日土曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 菊一座令和仇討」

2020-01-11 @国立劇場


四世鶴屋南北=作『御国入曽我中村』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「菊一座令和仇討」
(きくいちざれいわのあだうち)四幕十場
             国立劇場美術係=美術

序   幕 鎌倉金沢瀬戸明神の場
               飛石山古寺客殿の場
               六浦川堤の場
二幕目   朝比奈切通し福寿湯の場
               鈴ヶ森の場
三幕目   下谷山崎町寺西閑心宅の場
               大音寺前三浦屋寮の場
               元の寺西閑心宅の場
大   詰 東海道戸塚宿境木の場
        同   三島宿敵討の場

(主な配役)
幡随院長兵衛/寺西閑心実ハ蒲冠者範頼⇒尾上菊五郎
三日月おせん実ハ佐々木の娘風折/頼朝御台政子御前⇒中村時蔵
笹野権三⇒尾上松緑
白井権八⇒尾上菊之助
大江志摩五郎/梶原源太景季⇒坂東彦三郎
江間小四郎義時/おせんの手下長蔵⇒坂東亀蔵
権八妹おさい⇒中村梅枝
大江千島之助/笹野の家来・岩木甚平⇒中村萬太郎
安西弥七郎景益⇒市村竹松
権三妹八重梅⇒尾上右近
新貝荒次郎実重⇒市村光
万寿君源頼家⇒尾上左近
茶道順斎/湯屋番頭三ぶ六⇒市村橘太郎
同宿残月/判人さぼてんの源六/和田左衛門尉義盛⇒片岡亀蔵
今市屋善右衛門/秩父庄司重忠⇒河原崎権十郎
白井兵左衛門⇒坂東秀調
遣手おくら⇒市村萬次郎
笹野三太夫/大江因幡守広元⇒市川團蔵
家主甚兵衛⇒坂東楽善
         ほか

国立劇場の正月公演は、毎年、菊五郎劇団の奇想天外な芝居と決まっている。
今年は「菊一座令和仇討」。
槍の権三、白井権八、幡随院長兵衛、頼家、北条政子など知った名前が蘇我の仇討ちを拝借しながら時空を超えて絡み合う。令和は取ってつけただけ。
正月にふさわしい華麗な舞台。

いつもながら、彦三郎・亀蔵兄弟の滑舌の良さが気持ち良い。
松緑も久しぶりに大きな役で菊之助といいコンビだった。

国立劇場での両花道は8年ぶりだそうな。僕は観ているはずだが、思い出せない。
その両花道は下手が松緑、上手が菊之助で、同時に出たり引っ込んだりするのだが、右を見て左を見てと忙しい。

♪2019-002/♪国立劇場-01

2019年1月10日木曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 姫路城音菊礎石」五幕九場

2019-01-10 @国立劇場


並木五瓶=作 『袖簿播州廻』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「姫路城音菊礎石」(ひめじじょうおとにきくそのいしずえ)五幕九場
国立劇場美術係=美術

序 幕  曽根天満宮境内の場
二幕目  姫路城内奥殿の場
           同    城外濠端の場
三幕目  姫路城天守の場
四幕目  舞子の浜の場
           大蔵谷平作住居の場
           尾上神社鐘楼の場
大 詰  印南邸奥座敷の場
           播磨潟浜辺の場

印南内膳⇒尾上菊五郎
生田兵庫之助/碪(きぬた)の前⇒中村時蔵
古佐壁主水/百姓平作実ハ与九郎狐/加古川三平⇒尾上松緑
弓矢太郎実ハ多治見純太郎/主水女房お辰/小女郎狐⇒尾上菊之助
印南大蔵/奴灘平⇒坂東彦三郎
久住新平⇒坂東亀蔵
桃井陸次郎/桃井八重菊丸⇒中村梅枝
高岡源吾⇒中村萬太郎
庄屋倅杢兵衛⇒市村竹松
傾城尾上⇒尾上右近
平作倅平吉実ハ桃井国松⇒寺嶋和史
福寿狐⇒寺嶋眞秀
金子屋才兵衛/早川伴蔵⇒市村橘太郎
飾磨大学⇒片岡亀蔵
牛窓十内⇒河原崎権十郎
中老淡路⇒市村萬次郎
近藤平次⇒兵衛市川團蔵
桃井修理太夫⇒坂東楽善
 ほか

初春恒例は菊五郎劇団のスペクタクルな娯楽大作。尤も、近年は当方が歳のせいか、話がややこしくて、筋書き手元に舞台を見ても話を追えない。もう一度観ないと頭に入ってこないようだ。ま、そこは気にしないのが正しい鑑賞法かもしれないけど。

菊五郎、時蔵、松緑、菊之助、彦三郎、2亀蔵、萬次郎、團蔵、楽善など気心の知れた仲間内とのチームワークは抜かりなし。今回は菊五郎の孫2人(和史・眞秀)が揃って出演。オバ様方が黄色い声。個人的には彦三郎、片岡・坂東の両亀蔵、松緑が大きな役で活躍が嬉しい。

これも恒例の手ぬぐい撒きは、大方1階席に沈没。舞台両翼にいた松緑と彦三郎だけが2階席まで届くホームラン数本。自席は最前列なので、腕を伸ばしたが、あと30cmくらいのところで届かず。右近、梅枝など本来は腕力があるだろうが、役柄を引き摺っては遠投もできまい。


♪2019-001/♪国立劇場-01

2018年11月4日日曜日

平成30年度(第73回)文化庁芸術祭協賛 明治150年記念 11月歌舞伎公演 通し狂言「名高大岡越前裁」

2018-11-04 @国立劇場


河竹黙阿弥=作
国立劇場文芸研究会=補綴
国立劇場美術係=美術
通し狂言「名高大岡越前裁」(なもたかしおおおかさばき)六幕九場

序   幕 第一場  紀州平沢村お三住居の場
            第二場  紀州加田の浦の場
二幕目              美濃長洞常楽院本堂の場
三幕目 第一場  大岡邸奥の間の場
            第二場  同       無常門の場
            第三場  小石川水戸家奥殿の場
四幕目              南町奉行屋敷内広書院の場
五幕目              大岡邸奥の間庭先の場
大 詰              大岡役宅奥殿の場

大岡越前守忠相⇒中村梅玉

大岡妻小沢⇒中村魁春
法沢後二天一坊⇒市川右團次
田口千助⇒中村松江
吉田三五郎⇒市川男女蔵
下男久助/池田大助⇒坂東彦三郎
大岡一子忠右衛門⇒市川右近
お三⇒中村歌女之丞
僧天忠/久保見杢四郎⇒嵐橘三郎
土屋六郎右衛門⇒大谷桂三
伊賀亮女房おさみ⇒市川齊入
平石治右衛門⇒坂東秀調
名主甚右衛門⇒市村家橘
山内伊賀亮⇒坂東彌十郎
徳川綱條⇒坂東楽善
下女お霜⇒中村梅丸
               ほか

昨日が初日で今日は日曜日。にもかかわらず客席は閑散としていた。
梅玉、魁春、右團次、彦三郎、彌十郎など渋い役者が渋い芸を見せてくれるのだけど華には不足するなあ。

越前守(梅玉)が天一坊(右團次)一味の騙りを鮮やかに裁くよくある話とは趣向を変えてあり、尻尾を掴ませない悪党たちの為に、越前守、その妻(魁春)、嫡男(右近)が切腹の危機に陥る。

この越前守の、奉行としてあくまでも自分の直感を信じて真実を見極めたいとする業のような真摯な人柄と、それによって思いもよらぬ窮地に落ち込むさまを通して、これまでの大岡裁きモノとは異質な、人間越前守を描こうとしているのだろう。

悪事の証拠を収集すべく遠国に派遣した家来たちが中々帰参せず、切腹の刻限が迫って来る。
屋敷で待ち受ける忠臣大介(彦三郎)は、気が気でならず、越前守に「今、暫くお待ちくだされ」と必死に頼みながら同士の帰りを今か今かと焦って待っている。
ここは、恰も「忠臣蔵」四段目の如し。

時事ネタ入れて笑える場面も。

悪党、天一坊を右團次が演じているが、この人がこんな大きな役を演じるのを観たのは初めて。梅玉との掛け合いで彼のセリフの出るのが遅い場面があって、これはヒヤッとしたが、全体としてはまずまずの出来かな。

若手役者ではいつもながら梅丸がよろしい。
まるで女性にしか見えない。

https://youtu.be/Do1quJB4pa8

♪2018-140/♪国立劇場-015

2018年1月10日水曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 世界花小栗判官」4幕10場

2018-01-10 @国立劇場


近松徳三・奈河篤助=作『姫競双葉絵草紙』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 世界花小栗判官(せかいのはなおぐりはんがん) 四幕十場

発端   (京) 室町御所塀外の場
序幕<春>   (相模)鎌倉扇ヶ谷横山館奥御殿の場
              同  広間の場
                江の島沖の場
二幕目<夏> (近江)堅田浦浪七内の場
           同 湖水檀風の場
三幕目<秋> (美濃)青墓宿宝光院境内の場
              同 万屋湯殿の場
                  同 奥座敷の場
大  詰<冬> (紀伊)熊野那智山の場

尾上菊五郎⇒盗賊風間八郎
中村時蔵⇒執権細川政元/万屋後家お槙
尾上松緑⇒漁師浪七実は美戸小次郎/横山太郎秀国
尾上菊之助⇒小栗判官兼氏
坂東彦三郎⇒横山次郎秀春/細川家家臣桜井新吾
坂東亀蔵⇒膳所の四郎蔵/細川家家臣七里源内
中村梅枝⇒浪七女房小藤/万屋娘お駒/横山太郎妻浅香
中村萬太郎⇒奴三千助
市村竹松⇒風間の子分鳶の藤六
尾上右近⇒照手姫
市村橘太郎⇒瀬田の橋蔵
片岡亀蔵⇒鬼瓦の胴八
河原崎権十郎⇒万屋下男不寝兵衛
坂東秀調⇒局常陸
市村萬次郎⇒万屋女中頭お熊
市川團蔵⇒横山大膳久国
坂東楽善⇒小栗郡領兼重 ほか

初めての狂言だった。国立劇場のサイトでも下調べはしたし、いつものようにプログラムを買って開幕前にざっと目を通して臨んだ。開幕を告げる館内放送が「〜4幕10場」を「よまくとおば」とアナウンスした。そこで少し引っかかった。
歌舞伎や文楽などの幕や場の数え方で、4を「よ」と読むなら1、2、3を「ひーふーみー」と読むのか、と言えばそんな読み方は聴いたことがない。10を「とお」と読むなら、7、8、9を「ななやーここのつ」と読むのか、と言えばこれも聞いたことがない。
普通に読めば「よんまくじゅうば」ではないのかな?などと考えていたら芝居の始まりに乗り遅れてしまった。

「よまくとおば」はこの世界の慣習的な読み方なのかもしれないな。

事前にプログラムに目を通しておきながら大切なことに気づくのが遅くなった。「よんまく」であれ「よまく」であれ「4幕」なのだ。そして、それぞれの幕は「四季」の移ろいを表現している。もちろん、各「幕」に幾つかの「場」が分けてあって、それぞれに舞台美術が変化するので、意識してみていないと幕毎に四季が変わっていくことに気が付かないだろう。僕は最後の冬の幕でようやく「そうか全体は四季を表していたんだ」と気がついた始末。

尤も、四季の変化に気が付かなくとも筋書きは楽しめる。
しかし、最後の幕のハット息を呑むような雪世界と舞台の早替わりの仕掛けで突如現れる那智の滝の見事さは、各幕の舞台美術の変化の仕上げだと思うとそれなりに話がまとまるように思った。

今回は菊之助の大立ち回りも宙乗りも無いが「馬乗り!」がある。かなり危なっかしいが、それなりの見どころだ。大立ち回りは菊の助に代わり、今回はこの菊五郎劇団の常連(2016年は出演していなかったが)である松緑が長丁場の立ち回りを演じてこれも見ものではあった。

物語は…というと、これがあんまり面白くない。まあ、それでもよいのか。大勢のスター役者が揃い、派手な舞台を楽しむのが正月興行の楽しさでもあるからな。

坂東彦三郎・亀蔵兄弟は滑舌良く気持ちが良い。右近がなかなかきれいだ。尤も梅枝も良く似ているので時々白塗りの2人が分からなくなるが。

♪2018-002/♪国立劇場-001

2017年7月3日月曜日

平成29年7月歌舞伎鑑賞教室「鬼一法眼三略巻 一條大蔵譚(きいちほうげんさんりゃくのまき いちじょうおおくらものがたり)」

2017-07-03 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた 坂東亀蔵

文耕堂・長谷川千四=作
中村吉右衛門=監修
鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)
                     
一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり) 二幕          
 檜垣茶屋の場
 大蔵館奥殿の場

(主な配役)
一條大蔵卿長成  尾上菊之助
常盤御前     中村梅枝
鬼次郎女房お京  尾上右近
吉岡鬼次郎    坂東彦三郎
          ほか

本来は五段ものの文楽から歌舞伎に移植されたが、歌舞伎においては今では三段目、四段目のみが上演されるらしい(本家、文楽では四段目は曲が残っておらず上演されることはないそうだ。)。

僕が初めて観た時は<清盛館>・<菊畑>・<檜垣>・<奥殿>で構成されていたが、このうち<菊畑>が三段目、<檜垣>・<奥殿>が四段目に当たるらしいから、<清盛館>は一段目か二段め(の一部?)なのかな。
四段目のみの公演の方が多いようで、その場合は「一條大蔵譚」の外題が使われるそうで、今回がまさしくそういう構成だった。

前回は昨年の歌舞伎座・秀月祭で観たが、その時は菊之助が吉岡鬼次郎、梅枝がその女房お京という配役だったが、今回はそれぞれが出世して菊之助が一條大蔵卿、梅枝が常盤御前となった。
菊之助にとっては、岳父吉右衛門の得意芸を引き継ぐ初舞台だ。果たして…。

顔立ちが端正すぎて阿呆の役がスッキリしなかったな。
本当は阿呆ではない、と正体を明らかにする場面が所謂<ぶっかえり>という衣裳の瞬間転換でここが見どころの一つだが、初日とあって、ハラハラさせた。

坂東兄弟(彦三郎・亀蔵)は好みの役者だ。ふたりとも声がよく通り、滑舌も良い。芝居に気迫がある。故に吉岡喜次郎を演じた彦三郎はとても良かったが、芝居には出演せず、解説のみに回った亀蔵は、これも初日だったからかもしれないが、固さが取れず魅力発揮とまでは行かなかったのは残念。

♪2017-114/♪国立劇場-12

2017年6月14日水曜日

平成29年6月歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)」

2017-06-14 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた 中村隼人 
                                 
歌舞伎十八番の内 「毛抜」一幕 小野春道館の場

(主な配役)

粂寺弾正⇒中村錦之助
腰元巻絹⇒片岡孝太郎
八剣玄蕃⇒坂東彦三郎
小野春風⇒尾上右近
八剣数馬⇒大谷廣太郎
秦秀太郎⇒中村隼人
錦の前⇒中村梅丸
小原万兵衛⇒嵐橘三郎
秦民部⇒坂東秀調
小野春道⇒大谷友右衛門
 ほか

中村隼人が女性に人気があるとは知っていたけど、女子高生までにも人気があるとは知らなかった。
その隼人が「歌舞伎のみかた」の解説を努めた。流暢に口が回るがもう少しゆとりが必要。間合いを取らなくちゃ聴いていてもせわしない。

幕が上がると写真撮影禁止は常識だが、今回は撮影タイムが設けられた。スマホで写真を撮って「歌舞伎見たよ」のタグを付けてSNSで発信してくださいという意図だ。良いアイデアで、若い人達に歌舞伎を観ようという気運が出れば良し。

さて、本篇。「毛抜」は前にも観ているので内容は理解しているつもりだったが、今回はプログラムの説明で気がついたのだけど、これが劇中劇という構成だということだ。尤も前回観たのは一番最近でも3年前なので演出には記憶がない。

今回の国立劇場の演出と同じだったかどうか。
ともかく、今回は舞台上に黒い額縁が作ってあり、それが芝居小屋を表している。上手の柱には演目「歌舞伎十八番の内毛抜一幕」、下手には「中村錦之助相勤め申し候」と大書してある。

錦之助演ずる粂寺弾正が若衆や腰元にちょっかい出しては袖にされると「面目次第もござりませぬ」と客席に向かって言い、幕切れのセリフも「〜然らば、お開きといたしましょう」と見得を切って揚幕に消えるのも劇中劇ならではの演出だ。

歌舞伎十八番に入っているだけあって、歌舞伎の多様な見処(弾正の荒事・色気と愛嬌・連続する5つの見得など)が多い。
毛抜が場面に応じて小から大に変化するのも面白い。
筋書きも滑稽味ある推理劇としても楽しめる。

♪2017-101/♪国立劇場-10

2017年1月23日月曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 しらぬい譚(しらぬいものがたり)五幕九場 尾上菊之助筋交いの宙乗り相勤め申し候

2017-01-23 @国立劇場


国立劇場開場50周年記念
柳下亭種員ほか=作『白縫譚』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=脚本
通し狂言 しらぬい譚(しらぬいものがたり)五幕九場
尾上菊之助筋交いの宙乗り相勤め申し候
 詳細は1月3日参照

尾上菊五郎⇒鳥山豊後之助
中村時蔵⇒烏山家の乳母秋篠/将軍足利義輝
尾上松緑⇒鳥山秋作
尾上菊之助⇒大友若菜姫
 詳細は1月3日参照

2度め。今度は2等B席(3階最前列)だが、話が良く分かっているし、不満はなかった。強いて言えば菊之助の宙乗りの2回めのぶら下がったままの芝居が2階席に比べると少し遠かったが、それでも普段は見られない至近距離だ。

2度の筋交い宙乗りだけでなく屋台崩しや景色の一変など舞台装置の仕掛けも驚かせ、楽しませてくれるのだが、一番驚いたのは、ピコ太郎だ。

初日にも登場したが、それは謎の参詣人として片岡亀蔵が化けていたのだけど、今日は亀蔵版ピコ太郎に続いて本物のピコ太郎が登場したのにはもうびっくり。あとで聞くとこの日だけの特別な演出だったそうだ。
まあ、正月興行の華やかなお遊びということでこれもいいのではないか。

でも、よくよく考えると、話の筋書きにはかなり無理のある話だ。
元の話を換骨奪胎しているそうだから、いっそもっと刈り込んで、話を整理しても良かったのではないか。

♪2017-009/♪国立劇場-002

2017年1月3日火曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 しらぬい譚(しらぬいものがたり)五幕九場 尾上菊之助筋交いの宙乗り相勤め申し候

2017-01-03 @国立劇場


国立劇場開場50周年記念
柳下亭種員ほか=作『白縫譚』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=脚本
通し狂言 しらぬい譚(しらぬいものがたり)五幕九場
尾上菊之助筋交いの宙乗り相勤め申し候

発端 若菜姫術譲りの場
除幕 博多柳町独鈷屋の場
二幕目
 第一場 博多菊地館の場
 第二場 同 奥庭の場
三幕目 博多鳥山邸奥座敷の場
四幕目
 第一場 錦天満宮鳥居前の場
 第二場 室町御所の場
大詰め 島原の塞の場

尾上菊五郎⇒鳥山豊後之助
中村時蔵⇒烏山家の乳母秋篠/将軍足利義輝
尾上松緑⇒鳥山秋作
尾上菊之助⇒大友若菜姫
坂東亀三郎⇒菊地貞行
坂東亀寿⇒鳥山家家臣瀧川小文治
中村梅枝⇒秋作の許嫁照葉
中村萬太郎⇒雪岡家家臣鷲津六郎
市村竹松⇒足利家家臣三原要人
尾上右近⇒傾城綾機/足利狛姫/多田岳の山猫の精
尾上左近⇒菊地貞親
市村橘太郎⇒大蛇川鱗蔵
片岡亀蔵⇒大友刑部/謎の参詣人
河原崎権十郎⇒独鈷屋九郎兵衛/海賊玄海灘右衛門
坂東秀調⇒医者藪井竹庵
市村萬次郎⇒足利家老女南木
市川團蔵⇒雪岡多太夫
坂東彦三郎⇒錦が岳の土蜘蛛の精
 ほか

お家騒動、仇討ち、忠義の自己犠牲の話に、妖術、怪猫、霊力の宝物などが登場し、筋交い宙乗り(というのは珍しいのだろうな。舞台に直行するのは何度か見たが斜め横断は初めて見た。)や屋台崩しなどの大道具の仕掛けのほか、思いがけない小道具を含め全編がどっちから見ても外連味一杯の正月らしい派手な舞台だ。

「発端」で描かれる経緯が分かりにくかったが、その後の進行は見たとおりに理解できる。
まあ、乳母の献身ぶりには、それはないでしょう、と思ってしまうが、これも歌舞伎らしい。

ピコ太郎も登場するし、何でもありだ。

菊之助の宙乗りは舞台下手から3階席上手までという客席上を斜め横断だ。そのために、1階席よりむしろ2階席、3階席の方が楽しめる。
僕は2階席前から3列目中央だったので、ちょうど菊之助が止まって芝居をするのがほとんど目の前で、こんなに近くから役者を見るのは初めてだった。やはり、菊之助はなかなか妖しい魅力を振りまいていた。
松緑も「仮名手本忠臣蔵」では役不足を感じたが、今回は活躍場面が多くて楽しめた。

♪2017-001/♪国立劇場-001

2016年1月20日水曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 小春穏沖津白浪―小狐礼三―(こはるなぎおきつしらなみ こぎつねれいざ)」再見

2016-01-20 @国立劇場


河竹黙阿弥生誕二百年
河竹黙阿弥=作
木村錦花=改修
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴

通し狂言 小春穏沖津白浪  -小狐礼三ー 四幕
 (こはるなぎおきつしらなみ こぎつねれいざ)
         国立劇場美術係=美術

序 幕
 開幕
 上野清水観音堂の場
二 幕
 第一場(雪)矢倉沢一つ家の場
 第二場(月)足柄越山中の場
 第三場(花)同 花の山の場
三 幕
 第一場 吉原三浦屋格子先の場
 第二場 同 二階花月部屋の場
 第三場 隅田堤の場
 第四場 赤坂圃道の場
大 詰
 第一場 赤坂山王稲荷鳥居前の場
 第二場 高輪ヶ原海辺の場

尾上菊五郎⇒日本駄右衛門                  
中村時蔵⇒船玉お才(修行者経典/地蔵尊のご夢想)                  
尾上菊之助⇒人形遣い/子狐礼三(八重垣礼三郎/娘胡蝶)         
坂東亀三郎⇒奴弓平       
坂東亀寿⇒三浦屋小助/雪村三之丞         
中村梅枝⇒月本数馬之助
中村萬太郎⇒花田六之進/礼三の手下友平
市村竹松⇒所化天錦
尾上右近⇒三浦屋傾城花月
市村橘太郎⇒三上の中元早助/三浦屋遣り手お爪
片岡亀蔵⇒三上一学
河原崎権十郎⇒漁師牙蔵        
市村萬次郎⇒三浦屋傾城深雪
市川團蔵⇒月本円秋
坂東彦三郎⇒荒木左門之助          
     ほか


2回目の観賞。
初回で十分楽しめたが、セリフの聴き取れなかった部分があったり、どうでもいいようなことだけどラストの舟の仕掛けが気になったりで再見した。もちろん、面白い芝居をもう一度観たいというのが、最大の動機だけど。

2度目ではっきりしたことがある反面、初回には気が付かなかった(不思議に思うゆとりがなかった)不思議に気づいたこともある。
歌舞伎という伝統芸の約束事が十分頭に入っていないためだろうが、新劇を観る目で歌舞伎を観るという感覚が残っているからでもある。

最初に用意された筋書き(場割)を変えて冒頭に置かれた菊之助演ずる人形遣いが狐のぬいぐるみを手に舞台中央のセリから上がってくるシーンは幻想的できれいだし、人形の遣い方も上手で、最初から見せ場となっている。
このシーンはこの芝居の主人公が狐の妖術を使うことを暗示しているのだろうが、それではその人形遣いは誰なのか?
再度登場することはないので一体誰なのかは遂に分からなかった。
分からなくとも良いのだという考え方もある。全体として狐の妖術なのだと解釈できるけど、ちょっと無理があるな。

こういうことを疑問に思うようでは歌舞伎の道はまだまだ険しいか。

第2幕の所謂「だんまり」も、その場面の直前までは日本駄右衛門、礼三、お才が絡みの芝居をしていたのところ、登場していなかった数馬之助、花月、弓平までもが急遽何の脈絡もなく登場し、全員だんまりで暗闘するのも新劇的視点からは理解を超越するのだけど、ここは閑話休題、主要キャストの顔見世だということを頭に入れておかなくてはならない。

さて、最後に菊之助と時蔵を乗せた舟がどうして本舞台から狭い花道に曲がり進んでゆく事ができるのか?
昔は中に人が入って操舵していたという話を聞いたが、現代の舞台でも同様だろうか。もしそうなら舟の前方に覗き穴があるはず。

2回めはちょうど花道のすぐ上の席だったので、単眼鏡でしっかり作りを確認したが、舟の前方には舞台を見透すための小窓もなく、仕掛けが分からなかった。

そこで、国立劇場に問い合わせたら教えてくれた。
やはり舟は電動で動くが、操舵は中に入っている人間がハンドルで操作する。船の前方の底の波模様の部分に覗き窓があリます、ということであった。
いや~気が付かなかった。

そんな低い位置に覗き穴があるなら、中で操舵する人はえらく窮屈な姿勢を強いられるが、それにしても、狭い場所で上手に操舵するものだ。

♪2016-007/♪国立劇場-02

2016年1月7日木曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 小春穏沖津白浪―小狐礼三― (こはるなぎおきつしらなみ こぎつねれいざ)」

2016-01-07 @国立劇場


河竹黙阿弥生誕二百年
河竹黙阿弥=作
木村錦花=改修
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴

最初に発表された場割
通し狂言 小春穏沖津白浪  -小狐礼三ー 四幕
 (こはるなぎおきつしらなみ こぎつねれいざ)
         国立劇場美術係=美術

序 幕
 開幕
 上野清水観音堂の場
二 幕
 第一場(雪)矢倉沢一つ家の場
 第二場(月)足柄越山中の場
 第三場(花)同 花の山の場
三 幕
 第一場 吉原三浦屋格子先の場
 第二場 同 二階花月部屋の場
 第三場 隅田堤の場
 第四場 赤坂圃道の場
大 詰
 第一場 赤坂山王稲荷鳥居前の場
 第二場 高輪ヶ原海辺の場


修正された場割。公演では更に修正された。
尾上菊五郎⇒日本駄右衛門                  
中村時蔵⇒船玉お才(修行者経典/地蔵尊のご夢想)                  
尾上菊之助⇒人形遣い/子狐礼三(八重垣礼三郎/娘胡蝶)         
坂東亀三郎⇒奴弓平       
坂東亀寿⇒三浦屋小助/雪村三之丞         
中村梅枝⇒月本数馬之助
中村萬太郎⇒花田六之進/礼三の手下友平
市村竹松⇒所化天錦
尾上右近⇒三浦屋傾城花月
市村橘太郎⇒三上の中元早助/三浦屋遣り手お爪
片岡亀蔵⇒三上一学
河原崎権十郎⇒漁師牙蔵        
市村萬次郎⇒三浦屋傾城深雪
市川團蔵⇒月本円秋
坂東彦三郎⇒荒木左門之助          
 ほか


いつ頃からかしらないけど、国立劇場の正月公演は菊五郎劇団と決まっているらしい。そしてこの公演では、復活上演、通し狂言が続いている…というのか、最初からそういうことで出発したのかどうか知らないけど。

古典の復活、は国立劇場として重要な使命の一つだろう。
通し狂言は、一つの物語が(一応)完結するので理解しやすい。
それに演ずる方も、各幕・場面毎に工夫(閑話休題の遊び心)を凝らすゆとりがあるから観ている方も楽しみが多い。

菊五郎劇団という仲間内の組み合わせなので、歌舞伎座で他の一門の大御所と一緒に演るよりはずっと自由な冒険もできるだろう。今回、菊五郎が監修という立場でも参加しているのは、まさにやりたいことをやりたいようにやっているのだと思う。

今年は河竹黙阿弥の生誕200年ということもあって、「子狐礼三」が取り上げられたようだ。
これも2002年に国立劇場での138年ぶりの復活上演を今年14年ぶりにブラッシュアップしたと聞く。

物語は歌舞伎の定番、お家騒動・家宝の紛失・勧善懲悪。
この安定感のある筋立てを安定感のある配役と芝居で楽しめる。
三幕十場と数えるのか、十一場なのか、とにかく細かく場を分けてた舞台美術や大道具の仕掛けも盛りだくさんで、この面でも歌舞伎の面白さが詰まっている。

プログラムに一枚紙が挟み込まれて、「演出上の都合により場割と配役を変更した」とある<最終改訂>。
プログラムでは除幕は「上野清水観音堂の場」となっているが、変更後はその前に「幕開き」が追加されている。

また、大詰めの第一場だった「赤坂山王稲荷田圃道の場」は第三幕の最後に繰り上がっている。

それよりも、事前のチラシでは、三幕目以降の場所の設定は、大磯、花水川、鎌倉、稲村ヶ崎とあったのが、すっかり江戸に場所を移し替えている(国立劇場のホームページ、チラシでは江戸版に改まっている。<一次改訂>)。
それがさらに細部を詰めてゆく過程で最終改訂の形をとったのだろう。チラシの初版しか読んでいなかった人には場面が違うということになるし、プログラムを読んだが、変更のチラシに気が付かなかった人にも違和感があったろう。

ギリギリまで最善を求めたのだろうけど、この調子では千穐楽までに小さな変更はあるのかもしれない。
そういえば、昨年の「八犬伝」でも微修正を告知する1枚紙が挟まれていたな。


さて、菊五郎は要所を締めるだけで、ほとんど最初から最後まで菊之助の大奮闘だ。
見せ所は直径20mの回り舞台を全部使った山王稲荷の千本鳥居(と言っていいのかな?)の上での大立ち回りで、これは「八犬伝」の大屋根の立ち回りを髣髴とさせる。

次いで時蔵の船玉お才も立ち回りも含めて出番が多く、これまでに何度も観ているが今回が一番大きな役のような気がした。この人の安定感のある芝居が好きだ。

傾城花月を演じた右近は、あの長い顔を感じさせない美形ぶりにちょっと驚いた。けっこう艶めかしいところがある。

舞台装置も雪月花の場の早変わりや千本鳥居も見事。
最後に菊之助と時蔵が舟に乗って花道を去るのには驚いた。
大人二人乗せた大きな舟が狭い花道に入ってゆくところは怖いくらいだったが、一体どういう仕掛けだろう。


♪2016-001/♪国立劇場-01

2015年7月27日月曜日

平成27年7月第88回歌舞伎鑑賞教室「義経千本桜」 (平成27年度神奈川県歌舞伎鑑賞教室)

2015-07-27 @県立青少年センター



渡海屋銀平・新中納言知盛⇒ 尾上菊之助
銀平女房お柳・典侍の局⇒ 中村梅枝
九郎判官義経⇒ 中村萬太郎
入江丹蔵⇒ 尾上右近
亀井六郎(尾上菊市郎)⇒ 尾上菊史郎
片岡八郎(尾上菊史郎)⇒
伊勢三郎(市川荒五郎)⇒ 尾上音之助
駿河次郎(尾上音之助)⇒ 市川荒五郎
相模五郎⇒ 坂東亀三郎
武蔵坊弁慶(市川團蔵)⇒ 尾上菊市郎

( )は当初予定された配役。團蔵丈故障のため配役変更

解説 歌舞伎のみかた     
 中村萬太郎                                                    
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
中村吉右衛門=監修
国立劇場美術係=美術

義経千本桜 (よしつねせんぼんざくら)一幕二場 
  渡海屋の場
  大物浦の場



菊之助が鑑賞教室に出演するのが初めてかどうか知らないけどとにかく人気がある。その菊之助が知盛役を初めて演ずるということも今回の鑑賞教室の人気を煽ったようで前人気が高い。おそらく普段は「鑑賞教室」なんて見向きもしなかったコアな歌舞伎ファンも引き寄せたのだろう。
競争率が高い上に予約開始日を間違えて出遅れ、国立劇場でのチケットは入手できなかった。

しかし、7月の鑑賞教室は毎年2日間の神奈川公演があることを今回初めて知って、すぐNET予約にアクセスしてそこそこ良い席を確保できた。

それにしても灯台下暗し。
地元でも歌舞伎鑑賞教室をやっているなんて知らなかったよ(40年ほど前からと聞いてなおびっくり!)。
青少年センターなんて40年前だってもう用はなかったものなあ。

僕が出かけたのは27日の午後の部。つまりこれにて打ち上げという最後の舞台だ。
国立劇場で3日から24日まで、休みなしの1日2公演で44公演。中1日を休んで青少年センターで4公演。計48公演の48番目の芝居を観た訳だ。いまさらでもないけど、演ずる方は大変な重労働だなあ。

しかし、慣れない舞台で演技の間隔も感覚も異なるだろうに、疲れを見せずに熱演してくれたのはまことにありがたい。


さて、知盛を演じた菊之助のセリフ、衣装、立ち居振る舞いが見ものだ。
前半は仮の姿、渡海屋銀平として。後半は幽霊に化けた白装束の~やがて血染めに変わるその変化がまことに歌舞伎らしく、とりわけ、碇を持ち上げ(作り物でもあれほど大きいと重いだろう。)、客席を向いたまま、反っくり返るように海中に没する場面こそクライマックスだが、まことに見事な絵になる。

これまで観てきた菊之助とは別人のような印象を持ったが、良かったのか悪かったのか。
知盛の妻を梅枝が演じてこれもずいぶん評判が高かったが、まあ、そうなのかもしれない。実は、あまり興味を持ってみていなかったので…。

義経は、衣装のせいもあって桃太郎に見えてしようがなかった。
弁慶については後述するように團蔵欠場で拍子抜けの感あり。

ま、歌舞伎の華々しさが見どころの舞台だっただけに、やはり国立劇場の大舞台で観たかった。

弁慶役の團蔵さんが怪我で欠場、これに伴う役者変更は国立劇場での公演が始まる前にアナウンスされていたように思う。
解説本などは刷り上がっているから訂正できず、青少年センターでも会場にその事情が掲示されていた。
手元の解説本に誰がどの役に変わったかというのを書き込んだが、どうも腑に落ちないのは義経の四天王の一人、片岡八郎の役を演ずる役者が埋まらない。

翌日、国立劇場に問い合わせたら、今回は片岡八郎の役をなくして、それに伴い関係する役者のセリフも書き直したのだそうだ。
こんなことってあるのか、とびっくり!
ある意味、貴重な鑑賞経験をさせてもらった。

義経千本桜第二段、三段、四段相関図


♪2015-71/♪県立青少年センター-1