2016-01-07 @国立劇場
河竹黙阿弥生誕二百年
河竹黙阿弥=作
木村錦花=改修
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
最初に発表された場割 |
通し狂言 小春穏沖津白浪 -小狐礼三ー 四幕
(こはるなぎおきつしらなみ こぎつねれいざ)
国立劇場美術係=美術
序 幕
開幕
上野清水観音堂の場
二 幕
第一場(雪)矢倉沢一つ家の場
第二場(月)足柄越山中の場
第三場(花)同 花の山の場
三 幕
第一場 吉原三浦屋格子先の場
第二場 同 二階花月部屋の場
第三場 隅田堤の場
第四場 赤坂圃道の場
大 詰
第一場 赤坂山王稲荷鳥居前の場
第二場 高輪ヶ原海辺の場
修正された場割。公演では更に修正された。 |
尾上菊五郎⇒日本駄右衛門
中村時蔵⇒船玉お才(修行者経典/地蔵尊のご夢想)
尾上菊之助⇒人形遣い/子狐礼三(八重垣礼三郎/娘胡蝶)
坂東亀三郎⇒奴弓平
坂東亀寿⇒三浦屋小助/雪村三之丞
中村梅枝⇒月本数馬之助
中村萬太郎⇒花田六之進/礼三の手下友平
市村竹松⇒所化天錦
尾上右近⇒三浦屋傾城花月
市村橘太郎⇒三上の中元早助/三浦屋遣り手お爪
片岡亀蔵⇒三上一学
河原崎権十郎⇒漁師牙蔵
市村萬次郎⇒三浦屋傾城深雪
市川團蔵⇒月本円秋
坂東彦三郎⇒荒木左門之助
ほか
いつ頃からかしらないけど、国立劇場の正月公演は菊五郎劇団と決まっているらしい。そしてこの公演では、復活上演、通し狂言が続いている…というのか、最初からそういうことで出発したのかどうか知らないけど。
古典の復活、は国立劇場として重要な使命の一つだろう。
通し狂言は、一つの物語が(一応)完結するので理解しやすい。
それに演ずる方も、各幕・場面毎に工夫(閑話休題の遊び心)を凝らすゆとりがあるから観ている方も楽しみが多い。
菊五郎劇団という仲間内の組み合わせなので、歌舞伎座で他の一門の大御所と一緒に演るよりはずっと自由な冒険もできるだろう。今回、菊五郎が監修という立場でも参加しているのは、まさにやりたいことをやりたいようにやっているのだと思う。
今年は河竹黙阿弥の生誕200年ということもあって、「子狐礼三」が取り上げられたようだ。
これも2002年に国立劇場での138年ぶりの復活上演を今年14年ぶりにブラッシュアップしたと聞く。
物語は歌舞伎の定番、お家騒動・家宝の紛失・勧善懲悪。
この安定感のある筋立てを安定感のある配役と芝居で楽しめる。
三幕十場と数えるのか、十一場なのか、とにかく細かく場を分けてた舞台美術や大道具の仕掛けも盛りだくさんで、この面でも歌舞伎の面白さが詰まっている。
プログラムに一枚紙が挟み込まれて、「演出上の都合により場割と配役を変更した」とある<最終改訂>。
プログラムでは除幕は「上野清水観音堂の場」となっているが、変更後はその前に「幕開き」が追加されている。
また、大詰めの第一場だった「赤坂山王稲荷田圃道の場」は第三幕の最後に繰り上がっている。
それよりも、事前のチラシでは、三幕目以降の場所の設定は、大磯、花水川、鎌倉、稲村ヶ崎とあったのが、すっかり江戸に場所を移し替えている(国立劇場のホームページ、チラシでは江戸版に改まっている。<一次改訂>)。
それがさらに細部を詰めてゆく過程で最終改訂の形をとったのだろう。チラシの初版しか読んでいなかった人には場面が違うということになるし、プログラムを読んだが、変更のチラシに気が付かなかった人にも違和感があったろう。
ギリギリまで最善を求めたのだろうけど、この調子では千穐楽までに小さな変更はあるのかもしれない。
そういえば、昨年の「八犬伝」でも微修正を告知する1枚紙が挟まれていたな。
さて、菊五郎は要所を締めるだけで、ほとんど最初から最後まで菊之助の大奮闘だ。
見せ所は直径20mの回り舞台を全部使った山王稲荷の千本鳥居(と言っていいのかな?)の上での大立ち回りで、これは「八犬伝」の大屋根の立ち回りを髣髴とさせる。
次いで時蔵の船玉お才も立ち回りも含めて出番が多く、これまでに何度も観ているが今回が一番大きな役のような気がした。この人の安定感のある芝居が好きだ。
舞台装置も雪月花の場の早変わりや千本鳥居も見事。
最後に菊之助と時蔵が舟に乗って花道を去るのには驚いた。
大人二人乗せた大きな舟が狭い花道に入ってゆくところは怖いくらいだったが、一体どういう仕掛けだろう。
♪2016-001/♪国立劇場-01