2016年1月9日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第314回横浜定期演奏会

2016-01-09 @みなとみらいホール


大植英次:指揮
チェンバロ:大植英次*
バイオリン:木野雅之*
日本フィルハーモニー交響楽団

ビバルディ:バイオリン協奏曲集《四季》*
ドボルザーク:交響曲第9番《新世界から》
--------------------------
アメイジング・グレイス(弦楽バージョン)

「四季」と「新世界から」って、どういうコンセプトなのだろう。なんだか、お子様ランチみたいで気恥ずかしい。
けど、「四季」って全曲聴く機会は少ないから、まあ良かったかも。

指揮は大植英次。その存在を知らなかった。
日フィルには初登場だそうだ。
経歴を読むと国際的に活躍しているようで、日本人指揮者として初めてバイロイト音楽祭で指揮をしたそうだ。現在は大阪フィルの桂冠指揮者、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー名誉指揮者その他いろいろ。
アメリカの小さなエリー市(人口30万足らず)のエリー・フィルの音楽監督時代の功績をたたえて、その市には彼の名前の通りがあリ、彼の誕生日は市の休日になっているというから驚く。どうやら大変な情熱家らしい。

プログラムには「新世界から」は大植がこだわりの独自解釈を聴かせる、と書いてある。これは楽しみだ。

まず、「四季」は大植のチェンバロ、日フィル・ソロ・コンマスの木野のソロ・バイオリンと弦楽5部、合計40人という編成だった。
もう少し小さな規模で聴くことが多いけど、これだけ揃うと弦の透明感に厚みが加わって響がいい。

大植マジックなここでは発揮されず、ほとんど正統的な「四季」で、なかなか好感のもてる演奏だった。

次いで、問題の「新世界から」は、びっくりの連続。
これまで聴き馴染んでいて標準的なテンポが頭のなかにできあがっているのだけど、それに比べると全体にテンポが遅い。とりわけ終楽章はつんのめりそうなテンポで始まった。
終始遅いのかというとそうでもなく、当然のことだけど、部分的にアッチェレランドやリタルダンドなどで音楽に表情がつけられるけどこれがまた聴き馴染みのない形なのだ。
明らかにやり過ぎという感じがした。俗っぽいのだ。
素人ウケ狙いというか、炎のコバケンがナマコンサートで披露する極端な色付けと同じだ。

http://www.lajimotomusic.com から

しかし、妙に、嫌味はなかった。
ひょっとして、もうそんなレベルは通り越しているのかもしれない。

テンポや表情に馴染みがないというだけではなく、これまでさんざん聴いてきた「新世界から」だが、これまでに聴いたことがないような管楽器のフレーズが時々明瞭に顔を出すのにも驚いた。
いくらなんでも楽譜を書き換えている訳ではないだろうから、ドボルザークが書いたとおりに演奏しているのだと思うが(ドボルザーク自筆のファクシミリ版を使ったと後で知った。)、これまではほかのパートに埋もれて聴こえていなかったのかもしれない。いや、そうなのだろう。
本来聴こえるべき音を聴こえるように演奏するという当たり前のことに忠実なのだろうか。

解釈が正しいかどうかは分からないけど、熱のこもった指揮ぶりで、日フィルもこれに応えた熱演だった。

11月(県民ホール)、12月(サントリーホール)の定期演奏会がイマイチぴりっとしなかったが、今回の日フィルは名誉挽回。きれいなアンサンブルで聴き応えがあった。
大植英次の指揮は今後も是非とも聴いてみたい。


♪2016-003/♪みなとみらいホール-01