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2023年3月15日水曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 歌舞伎名作入門「源氏の旗揚げ」 「鬼一法眼三略巻 一條大蔵譚」「五條橋」

2023-03-15 @国立劇場大劇場



●入門「源氏の旗揚げ」
ご案内 片岡亀蔵

●文耕堂・長谷川千四=作《鬼一法眼三略巻》
「一條大蔵譚」二幕
一條大蔵卿長成 中村又五郎
吉岡鬼次郎   中村歌昇
鬼次郎女房お京 中村種之助
勘解由妻鳴瀬  中村梅花
播磨大掾広盛  嵐橘三郎
八剣勘解由   片岡亀蔵
常盤御前    中村魁春 ほか

●「五條橋」一幕
武蔵坊弁慶   中村歌昇
牛若丸     中村種之助 ほか



「鬼一法眼三略巻」は度々観ているが、一度として同じ構成はない。とてもややこしい。今回は、元の文楽の四、五段目だが、四段目中「檜垣茶屋」は省略し、上演が極めて珍しい「曲舞」と、こちらもなかなか上演されない五段目の「五條橋」が加わった。
これ迄縺れていた知識を解きほぐしてようやく全体の構成が分かるようになった。

その上演されることの少ない両方の幕(場)とも初見だったが、面白い。

見どころは、鑑賞教室ではここ数年主役を演ずることがあったが、本舞台での主役=大蔵卿を初役で演じた中村又五郎。
吉右衛門が当たり役のようにしていたし、その舞台も観ているので、阿呆の場面ではしっくりこなかったが、正気を表す場面では”又五郎”が出てきて興味深かった。

新発見は種之助の牛若丸。随分前から観ているのに莟玉、米吉ほどの優しげな顔立ちではないので、女方ではあまり印象的な芝居が思い出せない人だが、今日の彼の牛若丸はなんと美しい。
「大蔵譚」でも女役だったが、全く別人のようだ。今後要注目。

余談:3月13日からのマスク着用のルールが緩和されたのに伴って、入場に当たってマスクはお客各人の判断に委ねられた。大いに結構。
ただし、歌舞伎の完全復活はまだ遠いな。何しろ、「大向こう」が封じられている。前回の公演から、決められたエリアから(一般客は立ち入れない)大向こうの”専門家”による模範的掛け声が始まったが、人数も少なく、雰囲気が盛り上がらない。
歌舞伎は双方向芸術だ。客席とのやりとりがあって、初めて見得も決まる。

♪2023-044/♪国立劇場-04

2018年2月1日木曜日

二月大歌舞伎 昼の部

2018-02-01 @歌舞伎座


一、春駒祝高麗(はるこまいわいのこうらい)
工藤祐経⇒梅玉
曽我五郎⇒芝翫
大磯の虎⇒梅枝
喜瀬川亀鶴⇒梅丸
化粧坂少将⇒米吉
曽我十郎⇒錦之助
小林朝比奈⇒又五郎
     
二、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣/奥殿
一條大蔵長成⇒染五郎改め幸四郎
常盤御前⇒時蔵
お京⇒孝太郎
吉岡鬼次郎⇒松緑
茶亭与市⇒橘三郎
女小姓⇒宗之助
八剣勘解由⇒歌六
鳴瀬⇒秀太郎
     
三、歌舞伎十八番の内 暫(しばらく)
鎌倉権五郎⇒海老蔵
鹿島入道震斎⇒鴈治郎
那須九郎妹照葉⇒孝太郎
成田五郎⇒右團次
小金丸行綱⇒彦三郎
加茂三郎⇒坂東亀蔵
桂の前⇒尾上右近
大江正広⇒廣松
埴生五郎⇒弘太郎
荏原八郎⇒九團次
足柄左衛門⇒男女蔵
東金太郎⇒市蔵
局常盤木⇒齊入
宝木蔵人⇒家橘
加茂次郎⇒友右衛門
清原武衡⇒左團次
     
北條秀司作・演出
四、井伊大老(いいたいろう)
井伊大老⇒吉右衛門
お静の方⇒雀右衛門
昌子の方⇒高麗蔵
宇津木六之丞⇒吉之丞
老女雲の井⇒歌女之丞
仙英禅師⇒歌六
長野主膳⇒梅玉

高麗屋3代同時襲名披露公演の第2弾、と言っても3人が揃うのは夜の部で、これは3等席以下の切符が取れない。2等席といっても1万5千円だ。これなら日生劇場のS席に回したい。
昼は新・幸四郎が一条大蔵卿に出ただけで新・白鸚も新・染五郎も夜の部だけだ。それに夜の部には高麗屋の3人以外に菊五郎、仁左衛門、玉三郎、猿之助、藤十郎などのスターが登場するので、昼のぶとは比べ物にならない豪華さだ。
昼夜の配役の偏りは大いに不満。
それで料金は同じなんだものなあ。
結局、昼の部だけではなく夜の部も観せようという商魂か。
いや、それだけではなく「仮名手本〜七段目」ではお軽勘平を偶数日と奇数日で、玉三郎+仁左衛門と菊之助+海老蔵というダブルキャストにして、よければ二度とも観てくださいという魂胆であるのが腹立たしい。


その高麗屋の貴重な出番「一條大蔵譚」では新・幸四郎の阿呆ぶりはもっとハジけたかった。この芝居は何回か観ているが、誰が演っても無理があって、面白いと感じたことはない。大義のために阿呆なふりをしているが、ここ一番では正気に戻ってかっこよく見せ問題が片付くとまた阿呆に戻るのだが(もう、戻る必要はないのではないか、という気がしてならないのだけど。)、こういう変化はなんかお客を喜ばせるにはとても安易でどうも気分が乗れない。
ま、ここぞというところで、一條大蔵卿が孔雀の羽を広げるように豪華な衣裳を見せて見得を切るというところが、歌舞伎の華々しいところで、これはこれでいいのだろうけど。

「暫」は前に七之助の「女暫」を観たが、本家?は今日が始めて。海老蔵がさすがの貫禄。長い刀を振り回して大勢の首を跳ねるところは「女暫」で経験していたが、面白い。
「井伊大老」はえらく地味な科白劇だが、2幕途中から登場する吉右衞門と雀右衛門のシットリ芸がいい。

♪2018-013/♪歌舞伎座-01

2017年7月3日月曜日

平成29年7月歌舞伎鑑賞教室「鬼一法眼三略巻 一條大蔵譚(きいちほうげんさんりゃくのまき いちじょうおおくらものがたり)」

2017-07-03 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた 坂東亀蔵

文耕堂・長谷川千四=作
中村吉右衛門=監修
鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)
                     
一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり) 二幕          
 檜垣茶屋の場
 大蔵館奥殿の場

(主な配役)
一條大蔵卿長成  尾上菊之助
常盤御前     中村梅枝
鬼次郎女房お京  尾上右近
吉岡鬼次郎    坂東彦三郎
          ほか

本来は五段ものの文楽から歌舞伎に移植されたが、歌舞伎においては今では三段目、四段目のみが上演されるらしい(本家、文楽では四段目は曲が残っておらず上演されることはないそうだ。)。

僕が初めて観た時は<清盛館>・<菊畑>・<檜垣>・<奥殿>で構成されていたが、このうち<菊畑>が三段目、<檜垣>・<奥殿>が四段目に当たるらしいから、<清盛館>は一段目か二段め(の一部?)なのかな。
四段目のみの公演の方が多いようで、その場合は「一條大蔵譚」の外題が使われるそうで、今回がまさしくそういう構成だった。

前回は昨年の歌舞伎座・秀月祭で観たが、その時は菊之助が吉岡鬼次郎、梅枝がその女房お京という配役だったが、今回はそれぞれが出世して菊之助が一條大蔵卿、梅枝が常盤御前となった。
菊之助にとっては、岳父吉右衛門の得意芸を引き継ぐ初舞台だ。果たして…。

顔立ちが端正すぎて阿呆の役がスッキリしなかったな。
本当は阿呆ではない、と正体を明らかにする場面が所謂<ぶっかえり>という衣裳の瞬間転換でここが見どころの一つだが、初日とあって、ハラハラさせた。

坂東兄弟(彦三郎・亀蔵)は好みの役者だ。ふたりとも声がよく通り、滑舌も良い。芝居に気迫がある。故に吉岡喜次郎を演じた彦三郎はとても良かったが、芝居には出演せず、解説のみに回った亀蔵は、これも初日だったからかもしれないが、固さが取れず魅力発揮とまでは行かなかったのは残念。

♪2017-114/♪国立劇場-12

2016年9月5日月曜日

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部

2016-09-05 @歌舞伎座


右田寅彦 作
松岡 亮 補綴
一 碁盤忠信(ごばんただのぶ)
佐藤忠信⇒染五郎
塩梅よしのお勘実は呉羽の内侍⇒菊之助
右平太⇒歌昇
左源次⇒萬太郎
万寿姫⇒新悟
三郎吾⇒隼人
小車の霊⇒児太郎
浮橋⇒宗之助
壬生の小猿⇒桂三
摺針太郎⇒由次郎
宇都宮弾正⇒亀鶴
江間義時⇒松江
番場の忠太⇒亀蔵
横川覚範⇒松緑
小柴入道浄雲⇒歌六

岡村柿紅 作
二 太刀盗人(たちぬすびと)
すっぱの九郎兵衛⇒又五郎
田舎者万兵衛⇒錦之助
従者藤内⇒種之助
目代丁字左衛門⇒彌十郎
 
三 一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣/奥殿/三代目中村吉之丞襲名披露
一條大蔵長成⇒吉右衛門
吉岡鬼次郎⇒菊之助
お京⇒梅枝
八剣勘解由⇒吉之助改め吉之丞
鳴瀬⇒京妙
茶亭与一⇒橘三郎
常盤御前⇒魁春


3作の内前2作は初めてだったが、いずれもよくできていて、それぞれに異なる歌舞伎の味わいを楽しめた。

「碁盤忠信」は「碁盤」が付くからといって忠臣蔵のスピンオフ「碁盤太平記」とは全然関係がない。しかしここに登場する「忠信」は「義経千本桜」の忠信と同一人物らしいが、「義経~」では狐として登場するので、両者の関係は分からない。まあ、別々に歴史上の人物をヒントに面白おかしく作り上げた物語だろうから、首尾一貫していなくとも問題では無いのだろう。

ま、ともかく、やたら碁盤を持って暴れるのだが、その様(荒事)が見どころで、実に歌舞伎の一つの典型を見る思いだ。

染五郎、菊之助、松緑という人気役者が揃うのだけど、あいにく、松緑の出番があまりに少ないのが残念だった。

「太刀盗人」は狂言を移し替えたもので、ほぼ、狂言そのものと言ってよい。
大勢の人で賑わう都に出てきた田舎者の万兵衛(錦之助)が持っていた刀をスリの九郎兵衛(又五郎)が市中の雑踏(…と言っても舞台には2人しか登場しないのも狂言の形を踏襲している。)の中で奪おうとする。盗られまいと刀を離さない万兵衛との間で、口論が始まり、変事を聞いてお役人(彌十郎)が駆けつけ、一体どちらに所有権があるのかの詮議始める。やがて泥棒の方は役人の追及に耐えかねてとうとう逃げ出す。「やるまいぞ、やるまいぞ」と追う役人と万兵衛。まさしく狂言仕立てのおかしさ。

「一條大蔵譚」は4年近く前に国立劇場で同じ吉右衛門の一条大蔵卿(と鬼一法眼の2役)主演で「鬼一法眼三略巻」清盛館・菊畑・檜垣・奥殿の構成で見たことがあり、2年前の秀山祭では菊畑を観ている(この時の鬼一法眼は歌六)が、どうも、話として各段の連携は密でなく(だからこそ、それぞれ独立して上演されるのだろうが)、なかなか頭に入ってこない。
ま、源氏再興のために阿呆のふりをしている一条大蔵卿が、ここぞという場面で正気を表し悪党を成敗するというまあ格好いい話だ。吉右衛門にとっては家の芸だそうで、身のこなし、セリフ回しの使い分けが面白い。
ふりをしている、のは大蔵卿だけではなくその妻常盤御前(魁春)も源氏への思いも忘れ揚げ弓に興じてばかりで、様子を見に来たかつての家来筋に当たる鬼次郎夫婦(菊之助・梅枝)は呆れ果てて弓を取り上げ打擲する始末。実は、これも世を忍ぶ仮の姿という訳でその後に常盤御前の長台詞で真実が明らかにされる。
話の流れは、このことがあってから、大蔵卿の阿呆ぶりも仮の姿であることが明らかになるので(観客は既にこの話の筋書きを知っているから驚きもしないが)、鬼次郎夫婦は大いにびっくりしただろうと、ちょいとおかしくなってしまう。
面白ければなんでもありだ。

♪2016-118/♪歌舞伎座-06