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2021年1月23日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団音楽堂シリーズ第18回定期演奏会

 2021-01-23 @県立音楽堂


川瀬賢太郎:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

モーツァルト・シンガーズ・ジャパン*
[タミーノ:望月哲也、パミーナ:文屋小百合、夜の女王:針生美智子、パパゲーナ:鵜木絵里、パパゲーノ・構成:宮本益光]

魔法の鈴(ダンス):作本美月*
語り:長谷川初範*
魔法の笛(フルート):山田恵美子*

イベール:モーツァルトへのオマージュ
チャイコフスキー:組曲第4番ト長調Op.61「モーツァルティアーナ」
モーツァルト:歌劇「魔笛」K.620(MSJ版)*


雨の「紅葉坂」というとロマンチックに聞こえるが、この坂を登らなきゃ音楽堂にはゆけない。
若い頃は「坂」という意識もなかったがこの頃キツい。
雨が降ってはなおコワイ。
しかし、今日の神フィルは坂の辛さを吹き飛ばす好企画。好演奏!

前半にイベール「モツ〜オマージュ」。これが先ずは良かった。

久しぶりの音楽堂。「雨の日のホールは良く響く」という僕の思い込みが当たって、とても良い響きだ。

元々少し硬めだけど音楽堂はよく鳴る。
下手なオケは一層下手に、上手なオケは一層美しく響く。
今日の神奈川フィルは後者。

今日は振替につき席が選べず、選択可能なら絶対に座らない席だったが、やはり良いホールだ。期待せず座った席でも実にクリアに響いてくる。特に弦が美しい。

2曲目のチャイコ「モーツァルティアーナ」は第3曲は度々聴くが、全曲は初めて。凝った作りでコンマス、Clにソロの妙技あり。

何と言っても「モーツァルト・シンガーズ・ジャパンMSJ」によるMC付き70分版「魔笛」が素晴らしかった。

そのMCに若干難点を感じたが、5人の歌手による名歌の連射が聴いている者をぐいぐい幸福の沼に引き摺り込む。音楽に溺れる幸せ。

神フィルの演奏も文句なしで、これを1度きりとは実に勿体ない。

♪2021-007/♪県立音楽堂-01

2018年10月20日土曜日

神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2018 グランドオペラ共同制作 ヴェルディ:歌劇「アイーダ」

2018-10-20 @県民ホール


アンドレア・バッティストーニ:指揮
ジュリオ・チャバッティ:演出
マウリツィオ・ディ・マッティア:原演出

合唱:二期会合唱団
バレエ:東京シティ・バレエ団 ほか
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

アイーダ:モニカ・ザネッティン
ラダメス:福井敬
アムネリス:清水華澄
アモナズロ:今井俊輔
ランフィス:妻屋秀和
国王:ジョン・ハオ
巫女:針生美智子
伝令:菅野敦

ジュゼッペ・ヴェルディ「アイーダ」全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉/新制作
予定上演時間:約3時間25分
第Ⅰ幕45分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕50分
 --休憩20分--
第Ⅲ幕/第Ⅳ幕65分

分かり易い三角関係のドラマを軸に親しみやすい歌曲、スペクタキュラーな舞台、バレー(ソロと群舞)など、見どころ聴きどころ満載のオペラだ。

ただ、4月に新国立でゼッフィレッリ(演出・美術・衣裳)の「アイーダ」を観ているので、馬2頭まで登場する豪華絢爛な舞台と比較することはハナからできないとしても、舞台美術や衣装などがどこまで肉薄できるかが、関心の一つ。
特に、神奈川県民ホールは新国立劇場より間口が4m弱広いので、舞台装置が粗末だとスカスカの舞台になってしまう恐れがある。

実際の舞台を見て、その点はどうだったか、実はよく分からない。というのも、ピットから3列目のど真ん中で観たので、その位置からは見える舞台装置は十分に満足できるものだったから。後方、特に2階、3階席からはどんな感じだったのだろう。

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前奏が始まるやいなや幕が上がり、男女一組のバレエが始まった。これはアイーダとラダメスの運命を予感させるものだ。この演出はとても良かった。バレエの美しさはその後2幕でも堪能できる。

馬は登場しないが、凱旋の場面(2幕後半)では、アイーダトランペットが舞台上のギリギリ上手と下手に3人ずつ別れて陣取った。広い間口を活かした演出が功を奏していた。

幕内と第3幕〜第4幕の間の舞台転換は幕を下ろさず暗転したまま黒衣が登場して人力で大きな装置を動かしたが、これも気分を弛緩させることなくむしろ緊張を維持する上で良かったかもしれない。

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声楽陣はどうだったか。
タイトルロールのモニカ・ザネッティンを除いてみんな良かった。特にラダメス役の福井敬とアムネリス役の清水華澄が光っていた。清水華澄にとっては7年前、県民ホールで同役を歌うはずのところ、3.11で公演中止となったという因縁の舞台だった。
終演後のカーテンコールでは感極まって涙ながらにステージにひざまずいて床を撫でるようにしていたのは、それ自体が感動的だった。見事に県民ホールでアムネリスが凱旋を果たした訳だ。

肝心のザネッティンは残念ティンだったよ。
歌唱も表情も態度も、起伏に乏しく、アイーダの悲劇が伝わってこない。そういう演出なのかもしれないが、だとすれば、他の出演者とのバランスが取れない。
むしろ、日本人声楽陣の方が感情豊かだった。
これでは「アイーダ」というよりタイトルを「アムネリス」に変えた方がピッタリする。

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ピットに入ったのは東フィルだ。まあ、慣れたものなんだろう。とりわけ、バッティストーニは「アイーダ」は何度も経験しているそうだが、それにしても、全曲暗譜だったのには驚いた。

僕の席の前に2列あったが、県民ホールの席は前後で椅子の位置が半席分ずれているので、前席には人の頭が無い。最前列は空席だった(チケット完売だそうだが、気の毒に来れなかったらしい)。すると、目の前はバッティストーニのモジャモジャ頭だ。気合い十分な指揮ぶりだったが、肩から上しか見えないものの、スコアを捲っている様子は皆目見えない。それで、終演後、ピットの中の人に聞いたら、やはり完全暗譜だそうな。いやはやびっくり。正味2時間40分の大曲が全部頭に入っているとはすごいことだ。

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残念な部分もあったが、全体としては上出来。大いに楽しめた。とてもラグジュアリーな気分で帰路についたはいいものの、パラパラ降り出した雨が途中から本降りに。傘を持っていなかったのでずぶ濡れの「凱旋」となった。

♪2018-133/♪県民ホール-04

2015年4月4日土曜日

気軽にオペラ!コジ・ファン・トゥッテ

2015-04-04 @みなとみらいホール


指揮・チェンバロ:田島亘祥
演出:今井伸昭
ピアノ:朴令鈴
ヘアメイク:星野安子

舞台監督:渡邊真二郎

フィオルディリージ:針生美智子(S)
ドラベラ:堀万里絵(Ms)
フェランド:大川信之(T)
グリエルモ:増原英也(Br)
デスピーナ:鷲尾麻衣(S)
ドン・アルフォンソ:鹿野由之(Bs)
合唱: コロ・ルナ

モーツァルト作曲 歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」
全2幕・原語(イタリア語)上演・日本語字幕付


昨年も同じ時期に「セヴィリアの理髪師」を気軽!に楽しんだが、毎年1回のこのシリーズ。今年はモーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」だった。

音楽はいい。とても印象的なアリア、というのは残念ながらないと思うけど、デュエットから6重唱までのアンサンブルが楽しい。
モーツァルトならではの陽気さに溢れている。

伴奏はピアノ1台と指揮者が自ら弾くハープシコード(レシタティーヴォ用)1台だけという簡素なものだし、舞台装置もしかり。
でも、音楽の面では何の不満も感じなかった。
歌手たちはみんな上手だった。
特に、デスピーナを演じた鷲尾麻衣さんは役柄にもピッタリで良かった。

みなとみらいホールは、時に残響が大きすぎるように思うけど、今回のような声楽には好都合だったようだ。


しかし、である。
オペラを生で聴く(観る)機会は少ないけど、「コジ・ファン・トゥッテ」は極めて稀なことに2回めだった。
だいぶ昔に日生劇場で観たが、その時も、そして、最近放映されたMETの録画を観た時も、そして今回の鑑賞でも、物語の意図については、やはり、よく分からない。

モーツァルトの意図、というより脚本を書いたダ・ポンテの意図というべきかもしれないが、モーツァルトも、この脚本に満足して作曲したのだろうから、半分くらいは彼にも責任があるだろう。


「コジ・ファン・トゥッテ」は「女はみんなこうしたもの」という意味だそうだ。
2人の青年が老哲学者にそそのかされて、他人に変装してそれぞれの相手の許嫁(姉妹)に求愛して口説き落とせるか、という賭けをする。青年たちは自分の許嫁の貞節を信じているが、友人の許嫁を相手にしては求愛にも熱が入ってくる。

果たして…という物語で、大変不道徳な、非倫理的な、はたまた女性に大変失礼な話である。

僕が分からないのは、よくぞこういう物語をオペラ化したものだというダ・ポンテやモーツァルトの本音だ。
18世紀のヨーロッパ貴族社会において、スワッピングは文学的モチーフとしては非常に好まれたと書いたものを読んだ記憶がある。
そういう事情を背景にした、これは、単なる悪ふざけ、軽口程度の話なのだろうか。
あるいは、深い精神性や智慧に発するものなのだろうか(最後の哲学者のアリアはそのような含みもないでもないが。)。

青年たちと姉妹はとうてい気持ちを整理できるとは思えないのだけど、かなり強引なハッピーエンド。

立派な古典の名作だ。その辺りの疑問を解き明かしてくれる解説はいくらでも表されているのだろうが、ネットで探す限り見当たらないでいる。





♪2015-26/♪みなとみらいホール-11