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2026年3月10日火曜日

オペラ「ドン・ジョヴァンニ」

2026-03-10 @新国立劇場



【指揮】飯森範親
【演出】グリシャ・アサガロフ
【美術・衣裳】ルイジ・ペーレゴ
【照明】マーティン・ゲップハルト

【ドン・ジョヴァンニ】ヴィート・プリアンテ*1
【騎士長】田中大揮
【レポレッロ】フランチェスコ・レオーネ*2
(交代⇦ダニエル・ジュリアニーニから)
【ドンナ・アンナ】イリーナ・ルング*3
【ドン・オッターヴィオ】デイヴ・モナコ
【ドンナ・エルヴィーラ】サラ・コルトレツィス
【マゼット】近藤圭
【ツェルリーナ】盛田麻央

*1『フィガロの結婚』21年アルマヴィーヴァ伯爵
*2『ラ・ボエーム』23年コッリーネ
*3『椿姫』17年ヴィオレッタ/『ルチア』21年ルチア/『シモン・ボッカネグラ』23年アメーリア


オペラ『ドン・ジョヴァンニ』/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

Don Giovanni / Wolfgang Amadeus Mozart
全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約3時間25分
 第1幕   95分
  休憩25分
 第Ⅱ、Ⅲ幕 85分



新国の「ドン・ジョヴァ」はもう長く演出が変わっていない。そして観る度におかしいと思い、納得できないのは、場所を原作のスペインからベニスに変えていることだ。
演出家はモデルにしたと思われるカサノヴァの生まれ育った場所がベニスだからだと変更の理由を説明しているが、それで全幕無理なく通るのならいいけど、早々のカタログの歌で破綻する。この歌では明らかに今、居る場所はスペインだと歌うのだからおかしい。

冒頭ゴンドラが登場するのでベニスだと分かる。
その後背景にもう一度ゴンドラが登場するが、ベニスだからというだけでそれ以上の意味はない。

最初にここがいつも引っ掛かる。
ベニスだ、ゴンドラだというなら、その後の物語の進展にそれが生かされなくてはとても不自然だ。
例えば地獄落ちは運河に引き摺り込まれるとか、工夫をしなくちゃ演出家の自己満足に終わっている。

緻密な物語ではないから、本当は、いくつかアリアをカットしても良いのではないか…などと大胆な提言だけど、無駄に長いと思う。二幕とも平均90分もあるのだもの。

それに内容が、世の女性たちがよく腹を立てて公演禁止を訴えないものだと思うが(「コジ・ファン・トゥッテ」はもっとひどい)、最後は地獄に落ちるからいいのかな。

とはいえ、若い頃は好きになれなかったモーツァルトのオペラも、年老いて、あまり抵抗がなくなり、加えて、どんどん馴染んできたせいもあって、繰り出される軽快なアリアの連射は、心地良いものだ。

お得意の四重唱〜七重唱(実質)も、オペラならではの楽しみに溢れている。

♪2026-028/♪新国立劇場-07

2023年11月22日水曜日

オペラ:ジュゼッペ・ヴェルディ/シモン・ボッカネグラ

2023-11-21 @新国立劇場



【指揮】大野和士
【演出】ピエール・オーディ
【美術】アニッシュ・カプーア
【衣裳】ヴォイチェフ・ジエジッツ
【照明】ジャン・カルマン

【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

シモン・ボッカネグラ⇒ロベルト・フロンターリBr❶
マリア・ボッカネグラ(アメーリア)⇒イリーナ・ルングSp❷
ヤコポ・フィエスコ⇒リッカルド・ザネッラートBs❸
ガブリエーレ・アドルノ⇒ルチアーノ・ガンチTn❹
パオロ・アルビアーニ⇒シモーネ・アルベルギーニBsBr❺
ピエトロ⇒須藤慎吾Br
隊長⇒村上敏明Tn
侍女⇒鈴木涼子Ms

--------新国立劇場出演履歴-------
❶98年『セビリアの理髪師』フィガロ、2002年『ルチア』エンリーコ、15年『トスカ』スカルピア、23年5-6月『リゴレット』
❷17年『椿姫』ヴィオレッタ、21年『ルチア』タイトルロール
❸19年『トゥーランドット』ティムール
❹初登場
❺22年『ドン・ジョヴァンニ』タイトルロール

ヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」<新制作>
プロローグ付き全3幕
〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間50分
 プロローグ・第Ⅰ幕85分
  休憩25分
 第Ⅱ・Ⅲ幕60分





チラシなどの配色にも見られるが、舞台美術は黒・赤・白で統一されている。セットは簡潔で大胆な抽象的造形だ。衣装もこの3色が中心で、そのデザインは現代のもの。
この美術センスを含め、演出が見事。

史実に基づく物語は、本来は14世紀前半のジェノヴァが舞台なのだが、ここで眼に訴えるものは時空を超越している。
ゆえにこれも一種の「読み替え」なのかもしれないが、ヴェルディが描こうとしたものから、普遍的な内容を抽出した結果がこのような美術になった。だからヴェルディの世界観をちっとも邪魔をしていないのが良い。
ややもすると頭の悪い演出家が自己陶酔でとんでもない設定で出発したはいいものの、2幕目で既に辻褄が合わなくなるという例をいっぱい見てきた。

ピエール・オーディという演出家は優れた人だと思う。
大胆な美術だけど、これが人間ドラマの邪魔をしていない。今回は、巷で変に流行っている紗幕を全く使っていない。
全編、暗い舞台なのだけど、適切な照明が歌手をきれいに浮かび上がらせ、表情もはっきり見え、そのせいか、歌声もストレートに響いてくるのも良い。
簡潔さが、むしろ、観客の期待を舞台に集中させる力がある。

ついでに言えば、大野和士:東フィルの演奏が、ほとんど存在を感じさせないのも、終わってみたら、見事だった。オペラはオケの演奏を聴きにきているのじゃないもの。もちろん、音楽的に舞台上と一体となってよく練られたドラマを盛り上げているのだけど、はいはい、オケも頑張っていますよ!という感じがしなかったのは実によろしい。

主要な5人の歌手たち(いずれも海外勢)のうち、唯一のテノールであるガブリエーレを歌ったルチアーノ・ガンチのみが新国初登場で、他の4人は1~4回は登場しているので、いずれも経験済みだった。巧拙は判断しかねるが、満足できた。

このオペラは、声楽的にはバリトンのオペラだ。高域はマリアSpとガブリエーレTnだけ。そのアリアが巧みに配されて一本調子にならない。これはヴェルディの巧さ。

終幕の悲劇に向かって、ますます、舞台も客席も熱を帯びてくる。となりのご婦人は肩を震わせて嗚咽をこらえていたよ。

欲を言えば、物足りない部分もあったのだけど、新制作だし、この演出を継続して再演を期待する。その過程で手直しもされてゆくだろう。

久しぶりに一本取られたという上出来オペラだった。

2023-198/♪新国立劇場-17

2017年11月28日火曜日

オペラ「椿姫」

2017-11-28 @新国立劇場


指揮:リッカルド・フリッツァ
演出・衣裳:ヴァンサン・ブサール
美術:ヴァンサン・ルメール
照明:グイド・レヴィ
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団

ヴィオレッタ⇒イリーナ・ルング
アルフレード⇒アントニオ・ポーリ
ジェルモン⇒ジョヴァンニ・メオーニ*
フローラ⇒小林由佳
ガストン子爵⇒小原啓楼
ドゥフォール男爵⇒須藤慎吾
ドビニー侯爵⇒北川辰彦
医師グランヴィル⇒鹿野由之
アンニーナ⇒森山京子
*レヴェンテ・モルナールの代役

ジュゼッペ・ヴェルディ:「椿姫」全3幕〈イタリア語上演/字幕付〉

ナマの舞台は初めてだが、ビデオは5種類持っていて、一番お気に入りはアンジェラ・ゲオルギウがスカラ座で演じたもの。
N・デセイもA・ネトレプコ(痩せていた頃のもの)も好きだけど、いずれも演出がイマイチ。
ディアナ・ダムラウ(スカラ座版)はヒロインが健康的過ぎてイマイチ。

で、今回のヴィオレッタを演じたイリーナ・ルングはオペラ歌手にしては痩身で、結核を患って死に至るヒロインとして違和感がなかった。オペラ歌手というのは細身の身体であっても大きな声が出るものだと、いつも感心する。

一幕目の超絶技巧風なアリアでまずは実力を感じさせた。

演出面では最終場面のカーテン越しの会話が不自然に思った。
生と死を分けるカーテンなのだろうけど、無くたって話は通ずるのに。

第1幕では実際にも大勢が登場したが、舞台下手に配置した天井から床までの巨大な鏡(フィルム状)に舞台上の人々が写って倍増効果で賑やかな開幕だった。乾杯の歌はやっぱりこの混雑の中で歌われるのがふさわしいな。
舞台の床面も鏡になっていたようだが、1階の前方だったので床はほとんど見えなかった…と思う。はっきりとは思い出せないのだけど。

アリアのタイトルが実際の曲と一致するまでは頭に入っていないけど音楽はほとんどが耳に馴染んでいるので全編大いに楽しめた。
舞台に登場する人数はとても多いけど、主要人物は3人だけだから物語に混乱は生じないし、休憩30分挟んで2時間40分という短さもオペラを手軽に楽しむのにはもってこいの作品だ。

♪2017-190/♪新国立劇場-08