2021年1月25日月曜日

オペラ「トスカ」

2021-01-25 @新国立劇場


指揮:ダニエレ・カッレガーリ
合唱⇒新国立劇場合唱団
管弦楽⇒東京交響楽団

演出:アントネッロ・マダウ=ディアツ
美術:川口直次
衣裳:ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ
照明:奥畑康夫

トスカ⇒キアーラ・イゾットン
カヴァラドッシ⇒フランチェスコ・メーリ
スカルピア⇒ダリオ・ソラーリ
アンジェロッティ⇒久保田真澄
スポレッタ⇒今尾滋
シャルローネ⇒大塚博章
堂守⇒志村文彦
看守⇒細岡雅哉
羊飼い⇒渡邉早貴子

オペラ『トスカ』/ジャコモ・プッチーニ
Tosca/ Giacomo PUCCINI 全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間55分
第Ⅰ幕 50分
 休憩 25分
第Ⅱ幕 45分
 休憩 25分
第Ⅲ幕 30分

コロナ仕様演出とあったが、主演の2人は抱き合うし、気になるようなことはなかった。カーテンコールで出演者達が手を繋がないのはもう当たり前の景色だし。

強いて言えば…というかこれは大きな問題だったが…ピットがいつもより深い。それに弦12型では響きに厚みを欠いた。

常連の東フィルに今回変わって登場した東響が下手とは言わないけど、ピットの深さに加え、過密スケジュールによる疲れがあったかも。

迫力不足はオケだけではない。
歌手達の演唱もこじんまり収まっている感じがした。

フレンチェスコ・メーリはとても美しい声だが熱唱系じゃない。

物足り無さを覚え、帰宅後アラーニャやグリゴーロの肺腑を抉るアリア「星は光ぬ」を聴き直した。


尤も「トスカ」の魅力は音楽だけではない。
とりわけこのプロダクションの2幕「テ・デウム」の舞台美術の壮麗さは息を呑む思いだ。世界の他劇場にも引けを取らない。

左右の作り物が上手・下手に開き、奥の舞台もさらに奥へ広がり、大合唱が聖堂に響き渡る様は、バレエこそ無いがこれぞグランドオペラの魅力。



♪2021-008/♪新国立劇場-01

2021年1月23日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団音楽堂シリーズ第18回定期演奏会

 2021-01-23 @県立音楽堂


川瀬賢太郎:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

モーツァルト・シンガーズ・ジャパン*
[タミーノ:望月哲也、パミーナ:文屋小百合、夜の女王:針生美智子、パパゲーナ:鵜木絵里、パパゲーノ・構成:宮本益光]

魔法の鈴(ダンス):作本美月*
語り:長谷川初範*
魔法の笛(フルート):山田恵美子*

イベール:モーツァルトへのオマージュ
チャイコフスキー:組曲第4番ト長調Op.61「モーツァルティアーナ」
モーツァルト:歌劇「魔笛」K.620(MSJ版)*


雨の「紅葉坂」というとロマンチックに聞こえるが、この坂を登らなきゃ音楽堂にはゆけない。
若い頃は「坂」という意識もなかったがこの頃キツい。
雨が降ってはなおコワイ。
しかし、今日の神フィルは坂の辛さを吹き飛ばす好企画。好演奏!

前半にイベール「モツ〜オマージュ」。これが先ずは良かった。

久しぶりの音楽堂。「雨の日のホールは良く響く」という僕の思い込みが当たって、とても良い響きだ。

元々少し硬めだけど音楽堂はよく鳴る。
下手なオケは一層下手に、上手なオケは一層美しく響く。
今日の神奈川フィルは後者。

今日は振替につき席が選べず、選択可能なら絶対に座らない席だったが、やはり良いホールだ。期待せず座った席でも実にクリアに響いてくる。特に弦が美しい。

2曲目のチャイコ「モーツァルティアーナ」は第3曲は度々聴くが、全曲は初めて。凝った作りでコンマス、Clにソロの妙技あり。

何と言っても「モーツァルト・シンガーズ・ジャパンMSJ」によるMC付き70分版「魔笛」が素晴らしかった。

そのMCに若干難点を感じたが、5人の歌手による名歌の連射が聴いている者をぐいぐい幸福の沼に引き摺り込む。音楽に溺れる幸せ。

神フィルの演奏も文句なしで、これを1度きりとは実に勿体ない。

♪2021-007/♪県立音楽堂-01

2021年1月22日金曜日

東京フィル第946回サントリー定期シリーズ

 2021-01-22 @サントリーホール




バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第1組曲、第2組曲
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」1919年版

ホール到着までに予期せぬ出来事の連発で、ほうほうの体でギリギリ到着。

19時開演は繰り上げられていないことを事前に確認して出かけたので緊急事態宣言による要請の20時には終わらんだろうと思っていたら「本日は休憩なし」とある。

じゃあ終演は何時?

20時です。

なんと1時間公演か。
大変な思いをして出かけたのに。


で、久しぶりのバッティ氏。
開幕演奏会を飾れて良かったよ。


前半はまどろんで英気を養った。

後半は覚醒して聴いたがアドレナリンが駆け巡るという程の弾けた演奏ではなかったと思う。

カーテンコールの客席も儀礼を超える熱狂はなし。

え~これでおしまい?の気分。

♪2021-006/♪サントリーホール-01

2021年1月21日木曜日

とつかニューイヤーコンサート2021 〜クラシック音楽と出会う「希望」〜

2021-01-21 @さくらプラザホール

遠藤香奈子:Vn
遠藤和歌子:Pf

宮城道雄:春の海
中田章:早春賦
ショパン:華麗なる大円舞曲
クライスラー:レシタティーヴォとスケルツォ・カプリス
ビバルディ:「四季」から「冬」、「春」
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
-----------
ドボルザーク:ユーモレスク


都響の第2バイオリン首席の遠藤香奈子さんと妹さん(ピアノ)によるコンサート。

二人の地元、戸塚駅前のホールで、もう6回目の新年演奏会だそうな。

今回初めて出かけた。

さくらプラザホールという会場も初めて。


冒頭のピアノの響きにまずはびっくり。それを追うバイオリンの響きも素晴らしい。

こんなによく鳴るホールだとは吃驚!


特に音響のために贅を尽くしたとはとても思えない簡素な造りなのに、みなとみらい小ホール・東京文化会館小ホールにもヒケを取らない豊かな響きだ。

こういう響きだったら、音階練習でさえ音楽になりそう。


で、姉妹の演奏も心地よい。

残響に埋もれる事なくバイオリンもピアノも発音明瞭。

加えて自前MCに表れる姉妹の人柄の良さ。


都響のマドンナ・香奈子さんの方は都響定期でいつもにこやかにしておられるのを拝顔しているが、今日もMC中は笑顔を絶やさず、客席を暖かく包み込んでくれた。

演奏曲はいずれもライトなものだったが、響きの良さと人柄の良さが相まって、大満足の75分だった。

♪2021-005/♪さくらプラザホール-01

2021年1月15日金曜日

新日本フィル:#36ルビー<アフタヌーン コンサート・シリーズ>

 2021-01-15 @すみだトリフォニーホール


佐渡裕:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

ピアノ:田部京子*

ベートーベン:交響曲第8番ヘ長調 op. 93
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K. 466*
ベートーベン:交響曲第6番ヘ長調 op. 68 「田園」

ずいぶん久しぶりに佐渡裕の指揮で聴いた。
ベートーベン交響曲第8番+第6番にモーツァルトピアノ協奏曲第20番(Pf:田部京子)という満腹プロ。

8番冒頭の管弦強奏の響が見事に美しい。
最近、こういう響を新日フィルでは聴いていなかった。

生演奏は最初の2小節が勝負。初め良ければ、好感を持って聴き続けられる。

3曲とも好演だったが、特に第6番「田園」は出色の出来。
中でも第2楽章冒頭の空気感は近年稀に見る柔らかな管弦の交わりだった。

一緒に聴いていた友人も終演後の開口一番が期せずしてその一言だった。

佐渡氏のダメ出しが隅々に行き渡っているかのような仕上がりぶりを大いに楽しんだ。

♪2021-004/♪すみだトリフォニーホール-01

2021年1月10日日曜日

Classic Innovate New Year Opera Gala Concert 2021

 2021-01-10 @かなっくホール


大音絵莉Sp
吉田美咲子Sp
安江秋Sp
滝口小夜子Ms
近野桂介Tn
小仁所良一Br
高橋宏典Br
二宮周平Br
<伴奏>前田明子
<特別ゲスト>小林久美恵Sp、工藤健詞Tn
<MC>岡田直樹Tn

ジーツィンスキー:ウィーン我が夢の街(全員)
Jシュトラウス:春の声(大音)
モーツァルト:オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」から”岩のように動かず”(吉田)
プッチーニ:オペラ「ジャンニ・スキッキ」から”私のお父さん”(安江)
ロッシーニ:オペラ「セヴィリアの理髪師」から"金貨のことを考えると"(近野・高橋)
コルンゴルト:オペラ「死の都」から”ピエロの歌”(小仁所)
ドニゼッティ:オペラ「愛の妙薬」から”ラララの二重唱”(吉田・近野)
マスカーニ:オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」から”ああ、主がアルフィオさんをよこしてくれたのだわ”(滝口・二宮)
レハール:オペレッタ「メリー・ウィドウ」から”メリーウィドウ・ワルツ”(安江・小仁所)
--------------
ビゼー:オペラ「カルメン」から”闘牛士の歌”(高橋)
ビゼー:オペラ「カルメン」から”セギディーリャ”(滝口)
レハール:オペラ「微笑みの国」から”君こそ我が心の全て”(近野)

プッチーニ:オペラ「蝶々夫人」から”可愛がってくださいね<愛の二重唱>”(<特別ゲスト>小林久美恵・工藤健詩)

プッチーニ:オペラ「蝶々夫人」から”桜の枝を揺さぶって<花の二重唱>”(大音・滝口)
プッチーニ:オペラ「ラ・ボエーム」から”それでは、本当に終わりなんだね”(吉田・岡田・安江・小仁所)
Jシュトラウス:オペレッタ「こうもり」から”シャンパンの歌”(全員)


主催者団体の事は全く知らない。登場した8人+ゲスト2人も全く知らない。ゲスト以外はみんな若手だ。中に素人耳にも△な感じの歌もあったがそれは例外で、みんな巧い。よく声が出る。すごく気に入った歌手もいた。

選曲も、多くはそのオペラの定番アリアではなく、2番手、3番手の歌が多かった。

これは嬉しい。こういう歌はアリア集CDにも入っていないしリサイタルかオペラ本舞台でしか聴けない。

また、独唱から二重唱、四重唱、全員合唱(シャンパンの歌)迄趣向を凝らせた17曲正味2時間。堪能できた。

♪2021-003/♪かなっくホール-01

2021年1月9日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第364回横浜定期演奏会

 2021-01-09 @県民ホール


永峰大輔:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

神尾真由子:バイオリンと指揮*

ピアソラ:《ブエノスアイレスの四季》*
 (神尾真由子による弾き振り)
ベートーベン:交響曲第7番イ長調 op.92
-----アンコール-----
グリーグ:「ホルベアの時代から」サラバンド

神尾真由子の弾き振りによるピアソラの「ブエノスアイレスの四季」が目玉で、それを楽しみにしていたが、済まんこってす。寝てしまった。

秋から始まって、冬の途中で冬眠状態に。
終曲の拍手で我に帰る。

またの機会を楽しみにしていよう。
ま、ともかく猛烈な睡魔には逆らえない。

その代わり、永峰大輔が振ったベートーベン交響曲第7番はしっかり聴いた。

県民ホールは響きがややデッドなホールだが、実力あるアンサンブルにかかれば残響多めのホールとは一味違う味わいを聴かせてくれる。

今日の日フィルの弦はその渋い味を放った。
特に中低域が気持ち良い。

永峰氏が処々に嫌味のない独自の色付けをしていた。工夫の跡だ。好感!


♪2021-002/♪県民ホール-01

2021年1月3日日曜日

第64回NHKニューイヤーオペラコンサート

 2021-01-03 @NHKホール


広上淳一:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団/二期会合唱団/藤原歌劇団合唱部

■出演
 ソプラノ:伊藤晴/大村博美/幸田浩子/砂川涼子/田崎尚美/中村恵理/森麻季/森谷真理
メゾソプラノ:林美智子
テノール:笛田博昭/福井敬/宮里直樹/村上敏明/望月哲也
バリトン:上江隼人
バス:妻屋秀和
ピアノ:反田恭平

■司会
秋元才加
森田洋平アナウンサー

ベートーベン:交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱つき」第4楽章から「歓喜の歌」
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」
 Tn宮里直樹
ベッリーニ:歌劇「清教徒」から「ラッパの響きが聞こえ」
 Br上江隼人、Bs妻屋秀和
ヴェルディ:歌劇「椿姫」から「ああ、そはかの人か~花から花へ」
 Sp伊藤晴、Tn宮里直樹
ヴェルディ:歌劇「仮面舞踏会」から「あの草を摘みとって」
 SP中村恵理
ヴェルディ:歌劇「トロヴァトーレ」から「見よ、恐ろしい火よ」
 Sp田崎尚美、Tn笛田博昭
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」から「慕わしい人の名は」
 Sp幸田浩子
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」から 女心の歌「風の中の羽のように」
 Tn望月哲也
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」から 四重唱「美しい乙女よ」
 Sp幸田浩子、Ms林美智子、Tn望月哲也、Br上江隼人
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」から 巡礼の合唱「ふるさとよ、また見る野山」
チャイコフスキー(リスト編):歌劇「エフゲーニ・オネーギン」から「ポロネーズ」
 Pf反田恭平
シューマン(リスト編)」:献呈
 Pf反田恭平
カタラーニ:歌劇「ワリー」から「さようなら、ふるさとの家よ」
 Sp田崎尚美
ビゼー:歌劇「カルメン」からハバネラ 「恋は野の鳥」
 Ms林美智子、Tn村上敏明
ビゼー:歌劇「カルメン」から 花の歌 「おまえが投げたこの花は」
 Tn村上敏明
プッチーニ:歌劇「つばめ」から「ドレッタの夢」
 Sp森麻季
プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」から「はなやかに着飾っても」
 Sp砂川涼子
グノー:歌劇「ロメオとジュリエット」から ジュリエットのワルツ「私は夢に生きたい」
 Sp森谷真理
ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」から「われらの胸に友情を」
 Tn笛田博昭、Br上江隼人
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」から「ある晴れた日に」
 Sp大村博美
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」から「ある日、青空をながめて」
 Tn福井敬
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から「親方たちをさげすんではならぬ」
 全員(と合唱)
ヨハン・シュトラウス:喜歌劇「こうもり」から「ぶどう酒の燃える流れに」
 全員(と合唱)

大晦日の東京のコロナ新規感染者1,300人超えで、危険がいっぱいの東京に行くのは止めようかと思ったが(横浜だって危険がいっぱいなんだけど🥲)、やはり我慢はできぬ。

僕には抗体がある!と暗示をかけていざ、NHKホールへと出かけた。

久しぶりのNHKホールだが、これまで以上に警戒厳重で、中に入るのもしっかりSDを保たないと叱られる。

不安を抱えつつのコンサートだが、第1曲(全員で「第九」の「歓喜の歌」)が始まった途端、来て良かった!と思った。

考えてみれば、「歓喜の歌」が昨年の聴き納めだったが、新年の聴き初めも「歓喜の歌」だった。
元気を出すにはもってこいの音楽だ。

そのあとはどの歌もどの歌手も愛おしい。
その一瞬一瞬が宝のようだ。

馴染んだ名曲の釣瓶打ちに癒されるというか、じわじわと幸福感に満たされてゆく。

最後はオペレッタ「こうもり」から”シャンパンの歌”を全員で賑やかに歌って〆たが、その前が「マイスタージンガー」の親方の歌。

「国が滅びても芸術は残る」の趣旨。
ここでは歌がその芸術だ。誠に感無量で聴いた。

帰宅後、録画をざっ~と見たが、最後の最後に1階客席がぼんやり写り無観客ではないこと、拍手はウィーン・フィルのニューイヤーコンサートのようにオンラインではなくお客がその場で手を打っているという事が分かる。

しかし、そこに至る迄は、客席は見事なくらい映らないので、今時観客入れて開催するのか!という批判に気を使ったのかと思った。少なくとも昨年は客席がもっと鮮明に映ったし、1階席前方にいたみつばち先生の薄くなった頭頂部を確認できた。

でも、よく開催してくれたよ。
同じ場所で3日前の「紅白」は無観客だったし(見てないけど)。

関係者のひとかたならぬ苦労があったのだろうな。

在仏の大村博美の出演も嬉しいかった。

我がマドンナ砂川涼子姫は並々ならぬ美声の持ち主であることを再確認した。やはり、ナマでないと伝わらないものがある。

リスクを冒して出かけたが、この至福の2時間は僕にコロナ抗体を植え付けてくれたように思う。

2021-001/♪NHKホール-01