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2024年3月15日金曜日

東京フィル第999回サントリー定期シリーズ

2024-03-15 @サントリーホール



アンドレア・バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団*
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団*

ソプラノ:ヴィットリアーナ・デ・アミーチス*
カウンターテナー:彌勒忠史*
バリトン:ミケーレ・パッティ*

レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア第2組曲
オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」*
------アンコール----------------
オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」から「おお運命よ」





手短に言えば、これまでの多くのオケの「カルミナ・ブラーナ」の感動を粉砕して頂点に立ったよ。

精緻なのに、なんというドラマティックな演奏だ。
オケは美しい。
合唱も良かった。

独唱陣だけは2018年のオルガ・ペレチャッコら+N響@ NHK音楽祭の方が光っていたな。
とは言え、今回の独唱陣が悪かった訳ではない。十分楽しませてもらった。

実に素晴らしかった。
文句のつけようがない。

いつも文句をつけているサントリーの音響も、今日は、昼間のすみトリが不調だったこともあってか、ずっと明るくて見直し(聴き直し)たよ。

オケを聴く喜びに満たされた至福の2時間。

余談:先月の東フィルはチョンさんが難しい大曲を含む2曲を全部暗譜で振って素晴らしい出来だったが、今月のバッティも同じく2曲とも暗譜だ。彼はいつも暗譜(オペラ「アイーダ」も全曲暗譜だった!)?

大曲を演奏し終えて、CCが結構長かったが、まさかのアンコール。「おお運命よ」をやってくれるなんて、たい焼きのアンコがはみ出た幸せ。

先月の、本編の「春の祭典」から「大地の踊り」をアンコール演奏したのと同じパターンだ。
もう、そんなにサービスしてくれなくともいいのに。

♪2024-039/♪サントリーホール-07

2023年11月10日金曜日

東京フィル第992回サントリー定期シリーズ

2023-11-10 @サントリーホール



アンドレア・バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
佐藤晴真:チェロ*

《チャイコフスキー没後130年》
チャイコフスキー:幻想曲『テンペスト』Op.18
チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲 イ長調(原典版)Op.33*
チャイコフスキー:幻想序曲『ハムレット』Op.67a
チャイコフスキー:幻想序曲『ロメオとジュリエット』
----------------------
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番から「サラバンド」*








先月の東フィルは実に良かった。それは、演奏も良かったが、首都圏最悪のホールといつも悪口を言っているサントリーの響がとても良かったからだ。そして1年に一度あるかないかの響だとツィートした。

ありゃ~!
今月もだよ。とてもサントリーとは思えないような明るくて管弦の交わりの豊かさ、音の定位の良さ。なんだよ、サントリーでもやればできるのか!
…ではないね。
一つは、みつばちの仮説「雨の日はよく響く」に当たったこと。
弦14型で通したことがとても音の見通しを良くしたこと。
東フィルが、やっぱり巧いこと。
そしてバッティが実にオケを上手に束ね、実力を引き出したこと。
…を感じた。


それだけではなく、佐藤晴真のVcの豊かでまろやかな音の美しいことにもびっくりしたね。
1月弱前にみなとみらい小ホールで日フィルメンバーとの室内楽を聴いたが、あの最高級のホールでもその時のVcの音はもっと硬かった。
ひょっとして、室内楽用とコンチェルト用で楽器(又は弦)を変えているのかもしれない。同じ楽器とは思えないまろやかさだった。

プログラムは、チャイコ没130年ということで、全曲チャイコ。それもロココ以外は3曲とも「幻想(序)曲」というジャンルで、題材も3曲とも沙翁の作品から得ている。
なら、ロココでなくて、なんかピッタリするものがなかったのか…と思ったが、なさそうだな。

昼間の「すみとり」に大いに失望した後だったので、余計に良く聴こえたのかもしれないが、本格的な、大人の管弦楽を聴く喜びここに。

♪2023-192/♪サントリーホール-23

2023年3月10日金曜日

東京フィル第982回サントリー定期シリーズ

2023-03-10 @サントリーホール



アンドレア・バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
石丸由佳:オルガン*

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」
カゼッラ:狂詩曲「イタリア」
(カゼッラ生誕140年)
サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 作品78「オルガン付き」*


冒頭の「謝肉祭」。管弦がやや不揃いにスタートしたが、その響の見事な事。先日の神奈川フィルもシューマン1番の弦の強奏がN響より美しいと思ったが、今日の東フィルもこれぞ生の管弦楽を聴く喜び。N響もうかうかしておれんぞ。

が、2曲目、初聴きのカゼッラ「イタリア」は親しみやすいけど、内容は凡庸で琴線に届かない。演奏も少しバラつきが。

1番の楽しみ「ガン付き」の出来はさらに悪かった。

昨秋のN響@みみH、1月の神フィル@みみHで聴いた同曲が過去の名演を更新する良い出来だったので、これらを聴いていなければそれなりに感動したかもしれないが、つい比較してしまうと残念なり。

また、今日の1曲目「謝肉祭」でみせたまとまりの良さ・緊張感の持続・弦の透明感と比べてもイマイチだった。

いつもながら、良い演奏を聴くという事は不幸の始まりだ。

♪2023-041/♪サントリーホール-07

2022年9月16日金曜日

東京フィル第974回サントリー定期シリーズ

2022-09-16 @サントリーホール


アンドレア・バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

リスト(バッティストーニ編):『巡礼の年』第2年「イタリア」から
 第7曲 ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲(管弦楽版)
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調


個人的には10月ぶりのバッティ登場。前回は自作フルート協奏曲/チャイコフスキー交響曲第5番の組合わせ。
今回も似た趣向で、自らの管弦楽編曲でリスト「巡礼の年第2年〜」/マーラー交響曲第5番の組合せ。
前者の原曲は数回聴いているだけで馴染んでいないせいもあって、楽しむに至らず。編曲の巧拙は特に感じず。

マーラー5番は冒頭のトランペット・ソロ〜ホルンの旋律が先ずは聴き処だけど両者とも素晴らしい名演というのはなかなか巡り会えず。今回もトランペットは心配しながら…。ホルンはとても良かった。

さて、全体に《これと言って不満もなかった》が、東フィルの実力を出し切っていないと思ったね。
もっとすごい演奏ができるはずなのに!

いつもマーラーの終曲後はしばし疎外感を味わう。
前にも書いたが、どこのオケでもマーラーを演るといつもカーテンコールで客席は熱狂する。
悪くはないけど、彼の音楽で熱狂するくらいなら、ブラームスやベートーベンならバタバタ卒倒して死人が出てもいいくらいだと…いつも思うので、熱狂の輪に入れない。

♪2022-132/♪サントリーホール-16

2021年11月1日月曜日

東京フィル第960回サントリー定期シリーズ

2021-11-01 @サントリーホール




アンドレア・バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

トンマーゾ・ベンチョリーニ:フルート*

バッティストーニ:フルート協奏曲「快楽の園」(日本初演)*
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64
------------------------
J.S.バッハ:無伴奏フルートのための組曲BWV1013からサラバンド*
リスト(バッティストーニ編):『巡礼の年』第2年「イタリア」からサルヴァトール・ローザのカンツォネッタ

前半のバッティストーニ作:フルート協奏曲(日本初演)は、心配したほどややこしい音楽ではなく、楽器も木製?のような柔らかな音色で、初めて聴いたにしては全体として抵抗感はなかった…が再度聴きたいとは思わない。


チャイコフスキーの交響曲第5番は10月22-23(読響-神フィル)の両日に聴いたばかりでいささか辟易していた。


その前2回と異なり、東フィルの編成は、弦が12-10-8-8-6だった。チャイコの5番をこんなコンパクトな編成で聴いた記憶がない。

その割には音圧は高く、輪郭のはっきりした演奏で好感した。

ただし、終楽章の金管の咆哮に対し、流石に弦高域は厚みに欠けた。


さて、なぜか、チャイコ5番は今月中にあと2回聴くことになっている。1か月の間に5回も同じ交響曲を聴くって、取り憑かれている感じだ。


♪2021-098/♪サントリーホール-12

2021年8月6日金曜日

フェスタサマーミューザ2021 東京フィルハーモニー交響楽団 ≪次世代の巨匠。若獅子が満を持して初登場!≫

2021-08-06 @ミューザ川崎シンフォニーホール



指揮:アンドレア・バッティストーニ
東京フィルハーモニー交響楽団
ハープ:吉野直子*

ヴェルディ:歌劇「シチリア島の夕べの祈り」 から 序曲
レスピーギ:組曲「シバの女王ベルキス」
ニーノ・ロータ:ハープ協奏曲*
レスピーギ:交響詩「ローマの松」
-----------------------
M.トゥルニエ:演奏会用練習曲「朝に」*


フェスタサマーミューザ(FSM)も今日の東フィルで7公演目。あと2つ聴くが、聴かずとも決まった今夏FSM断突の金メダル!
まず、選曲が良かった。全作品伊国ものだが、中東の異国風味やイタリア古謡のスパイスも利かせた。
曲順にも工夫。Harp協が良い位置に収まって可憐な美しさを際立たせた。

オケの編成は、Harp協だけ弦8型+管打9という小規模は当然として、他は弦14-12-10-8-6に管打は26から最後の「松」では3組のバンダ、Pipeオルガンを加え40という今時珍しい総勢90人の大規模編成で、生でしか味わえない華麗な管弦楽の面白さをバッティがケレン味たっぷりに聴かせてくれた。

特に終曲「アッピア街道」。Timpのリズムに乗ってppで始まり徐々に盛り上がり、舞台後方左右のバンダも加わり、オルガンも加わり、猛り狂ったように音圧を上げてゆくと、身体中にアドレナリンが駆け巡る。生の《空間オーディオ》だ!


ところで、今日気づいたが、東フィルの弦の配置は実に整然としているので数えやすい。

演奏に直接関係はないだろうけど、見た目にも美しい。

そして、東フィルは、いつも全員 No Mask(知る限り他のオケでは読響・東フィル・横浜バロック室内合奏団だけ)。
これも、見た目に清々しく、プロの心意気を感ずる。

多くのオケはマスクだらけ。
中にはマスク指揮者いるよ(そんなに不安なら、いっそ、舞台袖で指揮してその映像を指揮台に置いた大型モニターで楽団員とお客さまにも見えるようにすればいいのに。)。

♪2021-081/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-022

2021年1月22日金曜日

東京フィル第946回サントリー定期シリーズ

 2021-01-22 @サントリーホール




バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第1組曲、第2組曲
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」1919年版

ホール到着までに予期せぬ出来事の連発で、ほうほうの体でギリギリ到着。

19時開演は繰り上げられていないことを事前に確認して出かけたので緊急事態宣言による要請の20時には終わらんだろうと思っていたら「本日は休憩なし」とある。

じゃあ終演は何時?

20時です。

なんと1時間公演か。
大変な思いをして出かけたのに。


で、久しぶりのバッティ氏。
開幕演奏会を飾れて良かったよ。


前半はまどろんで英気を養った。

後半は覚醒して聴いたがアドレナリンが駆け巡るという程の弾けた演奏ではなかったと思う。

カーテンコールの客席も儀礼を超える熱狂はなし。

え~これでおしまい?の気分。

♪2021-006/♪サントリーホール-01

2020年1月23日木曜日

東京フィル第130回東京オペラシティ定期シリーズ

2020-01-23 @東京オペラシティコンサートホール


アンドレア・バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

阪田知樹:ピアノ*

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調 Op30*
ベルリオーズ:幻想交響曲 Op14
-------------------
ラフマニノフ(阪田知樹編):ここは素晴らしい場所 Op21-7

ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は、全4曲の協奏曲中一番有名だろうか。聴く機会が多いが、今日は全然身が入らなかった。
阪田くんの演奏に問題がある訳ではない。集中できなかった。体調不十分もその原因の一つだが、演奏もあまり噛み合っていなかったように思う。

メインはベルリオーズ「幻想交響曲」。
熱い音楽を見た目も熱いバッティストーニが熱く振った。しかしこちらもその熱はあまり伝わらなかった。

今季から席を(全13定期・セット券での指定席中最後方)に変えてみたのだけどその響きに馴染めなかったのかも。このままずっと馴染めないのでは困ってしまうが、多分、その場所なりの聴き方ができるようになるだろう。

それにしても、今日の東フィルは管楽器の賑やかさに比べ16型にも関わらず弦が薄かった。これまで聴いてきたなかで一番がっかりさせる演奏だった。この点は席を変えたこととは関係ないと思う。

♪2020-010/♪東京オペラシティコンサートホール-01

2020年1月3日金曜日

NHKニューイヤーオペラコンサート

2020-01-03 @NHKホール


アンドレア・バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団
二期会合唱団
びわ湖ホール声楽アンサンブル
藤原歌劇団合唱部

■出演
大沼徹(バリトン) 
森谷真理(ソプラノ)
砂川涼子(ソプラノ)
中島郁子(メゾソプラノ) 
宮里直樹(テノール)
大西宇宙(バリトン)
田崎尚美(ソプラノ)
青山貴(バリトン)
大村博美(ソプラノ)
笛田博昭(テノール)
妻屋秀和(バス)
村上敏明(テノール)

グザヴィエ・ド・メストレ(ハープ)

林美智子(メゾ・ソプラノ)
森麻季(ソプラノ)
上江隼人(バリトン)
中村恵理(ソプラノ)
福井敬(テノール)
■司会
高橋克典(俳優)
髙橋美鈴アナウンサー

ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」から「行け、わが思いよ、金色の翼に乗って」
   合唱
ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」から「私は町の何でも屋」
   大沼徹(バリトン) 
ヴェルディ:歌劇「椿姫」から「ああ、そはかの人か」~「花から花へ」
   森谷真理(ソプラノ)
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」から 花の二重唱「桜の枝をゆすぶって」
   砂川涼子(ソプラノ) 中島郁子(メゾソプラノ) 
ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」から 友情の二重唱「われらの胸に友情を」
   宮里直樹(テノール) 大西宇宙(バリトン)合唱
ドボルザーク:歌劇「ルサルカ」から「月に寄せる歌」
   田崎尚美(ソプラノ)
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」から 夕星の歌「優しい夕べの星よ」
   青山貴(バリトン)
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から 復活祭の合唱「主はよみがえられた」
   中島郁子(メゾ・ソプラノ) 合唱
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」から「お聞きください」
   大村博美(ソプラノ)
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」から「泣くなリュー」~ 第1幕フィナーレ
   笛田博昭(テノール) 大村博美(ソプラノ) 妻屋秀和(バス)大沼徹(バリトン)
   宮里直樹(テノール) 村上敏明(テノール)合唱

“ハープによるオペラ・ファンタジー”
   グザヴィエ・ド・メストレ(ハープ) 林美智子(メゾ・ソプラノ) 森麻季(ソプラノ

ヴェルディ:歌劇「リゴレット」から「悪魔め、鬼め」
   上江隼人(バリトン)
ヴェルディ:歌劇「シモン・ボッカネグラ」から「悲しい胸の思いは」
   妻屋秀和(バス)合唱
ヴェルディ:歌劇「オテロ」から「アヴェ・マリア」
   大村博美(ソプラノ)
ヴェルディ:歌劇「運命の力」から「神よ、平和を与えたまえ」
   中村恵理(ソプラノ)
マスネ:歌劇「ウェルテル」から オシアンの歌「春風よ、なぜ私を目ざますのか」
   笛田博昭(テノール)
グノー:歌劇「ファウスト」から「宝石の歌」
   砂川涼子(ソプラノ)
ドニゼッティ:歌劇「愛の妙薬」から「人知れぬ涙」
   村上敏明(テノール)
プッチーニ:歌劇「ボエーム」から ムゼッタのワルツ「私が町を歩くと」
   森麻季(ソプラノ)
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」から「ある日、青空をながめて」
   福井敬(テノール)
ヴェルディ:歌劇「椿姫」から 乾杯の歌「友よ、さあ飲みあかそう」
   出演者全員 合唱

クラシック界の紅白歌合戦…でもないけど、楽しいお祭りに行ってきた。
今が旬の実力と人気を兼ね備えた
ソプラノ6人、
メゾソプラノ2人、
テノール4人、
バリトン4人、
バス1人。

馴染みのあるアリアの名曲釣瓶撃ち。まさに至福の2時間。

Eテレ生放送なので、帰宅後録画をチェックしたら、薄くなりかけた後頭部がしっかり写っていた。


2020-001/♪NHKホール-01

2019年10月6日日曜日

東京二期会オペラ「蝶々夫人」

2019-10-06 @東京文化会館


指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:宮本亜門
装置:ボリス・クドルチカ
衣裳:髙田賢三
照明:マルク・ハインツ
映像:バルテック・マシス 
合唱指揮:河原哲也
演出助手:澤田康子/島田彌六
舞台監督:村田健輔
公演監督:大島幾雄

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:二期会合唱団

蝶々夫人⇒大村博美
スズキ⇒花房英里子
ケート⇒田崎美香
ピンカートン⇒小原啓楼
シャープレス⇒久保和範
ゴロー⇒高田正人
ヤマドリ⇒大川博
ボンゾ⇒三戸大久
神官⇒白岩洵

プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」
全3幕〈イタリア語上演/字幕付〉

予定上演時間:約2時間45分
第Ⅰ幕 55分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕、第Ⅲ幕 85分

宮本亜門新演出の二期会公演。
大村博美への期待と新演出の不安は外れなかった。

今年4回目の「蝶々夫人」でいずれも其々に楽しんだが、大村・蝶々こそ今年の「蝶々」のシメにふさわしかった。

一方で、宮本亜門の新演出*は観客の気を散らせた。
終始、物語の傍観者であるが、物語に絡みようのない無言の青年の存在はドラマ没入の邪魔でしかなかった。

また、えらく簡素な舞台で、作り物はスカスカの小屋ひとつ。
場面切り替えはカーテンに映像投射のみ。
その結果、声の反射板になるべき装置がないので、歌唱は迫力に欠けた。これでは客席後方や上層階には十分届かなかったのではないか。
僕は1階前方中央という好位置だったが、それでも物足りなかった。そんな悪条件の下でもひとり大村博美の群を抜く声量がハンデを跳ね返していたのは凄い。

また、彼女の演技力にも唸った。2幕の最後、オケがゆったりと伴奏する中、夫ピンカートンの帰国3年後に、蝶々さんの想いが叶ってピンカートン一行(気の毒なことにアメリカの本妻を随行して。)が家を訪ねてくる前夜。
セリフも歌もなく、万感の思いを胸に、ひたすら夜明けを待つ場面。大村の目は真っ赤に充血し、大粒の涙が頬を伝う。もう、なり切っている!確かに18歳の蝶々さんがそこに居た。それを見て心揺さぶられない者はいないだろう。

人種差別、女性蔑視などの問題を含んだ「蝶々夫人」だが、初演後115年を経た今なお観客の胸を打つのは美しい音楽のせいだけではなく、蝶々さんの純粋な生き方(ある意味、サムライの凛々しさがある。)は古今東西を問わず普遍的な美しさがあるからだろう。


*蝶々さんとピンカートンの間にできた子供は蝶々さんの死後ピンカートンに引き取られ、アメリカで育つ…までは原作どおり。新演出は、アメリカに帰国後30年の現在、ピンカートンは死を迎え、今32歳となった青年(蝶々さんの遺児)が残された父の手紙によって初めて両親のラブストーリーを知る、という内容に膨らませてあり、冒頭にこの事情を示す寸劇が演じられ、本編から終幕までずっと青年は舞台のどこかから両親の出会いから蝶々さんの自決までの3年間の出来事を覗き見ているという仕掛け。

♪2019-151/♪東京文化会館-07

2019年4月16日火曜日

東京フィル第125回東京オペラシティ定期シリーズ

2019-04-16@東京オペラシティコンサートホール


アンドレア・バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
小山実稚恵:ピアノ*

番外:フランス国家
W.ウォルトン:戴冠式行進曲『王冠』
モーツァルト:ピアノ協奏曲第26番ニ長調 K537『戴冠式』*
チャイコフスキー:交響曲第4番へ短調 作品36
----------------
アンコール
E.エルガー:行進曲「威風堂々」第1番

東京フィルはわざわざチケットを買って聴きにゆく機会は少なかったが、オペラではピットに入っているオケのおそらく半分以上は東フィルではないかと思うので、演奏はそこそこ聴いていたものの、定期会員になったのは今季からが初めて。
都内で3定期公演しているようだが、中で一番音響の良いオペラシティ コンサートホール(タケミツメモリアル)の会員になった。

今日はそのオープニング。3定期の中でも一番最初だったので東フィルとしても今季のオープニング・コンサートだった。

冒頭、バッティストーニが(僕のヒアリング能力では)聴き取れない英語で、パリがどうとか言って始めた演奏が、フランス国歌だった。なぜ、予定外のフランス国歌を演奏したのか、分からなかったが、終演後東フィル職員に尋ねたら、この日ニュースとして飛び込んできたノートルダム大聖堂が火事で尖塔を失うなどの不幸な出来事に想いを寄せてのことだったそうだ。ほとんど練習もできなかったろうし、楽譜を用意するのも容易ではなかったろうけど。

こういう国際センスのによる対応は、極東で平和に暮らしている日本人にはなかなか発想できない感覚ではないかと思った。

そもそも、今回「戴冠式」関連の2曲が取り上げられたのも、平成から令和への代替わりへの祝意の現れだそうだ。今回の代替わりは、これに対応するには事前に準備可能だったが、他のオケでは4月ないし5月の定期で格別祝意を込めたプログラムは準備していない。
こういうところも感性の違いかな。

ウォルトンの作品は、以前に交響曲第1番を聴いたが、戴冠式行進曲『王冠』は初めて…のはずだけど、なんか耳馴染みがあったのは、吹奏楽版を聴いたことがあるのかもしれない。
勇ましくて親しみやすい祝典ムードに溢れた音楽だった。

次の「戴冠式」はどうかな。小山実稚恵のコンディションはベストではなかったように思ったが。果たして、彼女はこの曲を今回初めて演奏したのだそうだ。

チャイコの4番は、勇壮でかつ物悲しい管楽器のファンファーレがたまらなくいい。東フィルの演奏は、実に素晴らしい出だしだったが、トランペットが入るところで、少し乱れたのが残念。
とはいえ、全曲を通じて度々繰り返されるトランペットの咆哮が気分を高揚させてくれる。弦楽器がピチカートに終始する風変わりな第3楽章が消えるように終わって、アタッカのようにほんの一呼吸で始まる終楽章はハナから劇的だ。特に終盤は全曲冒頭のファンファーレが嵐のように畳み掛けて実に爽快だ。

席は必ずしも希望の席ではない。好みよりだいぶ前方だ。それだけに、こういう音楽では強烈な音圧に塗れて、音楽鑑賞というより音楽体験だ。幸せな体験ではあるが。
もっとも、どんな音楽にも、この席が合うとも思えないのがこの先の不安材料だ。

♪2019-048/♪東京オペラシティコンサートホール-01

2018年10月20日土曜日

神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2018 グランドオペラ共同制作 ヴェルディ:歌劇「アイーダ」

2018-10-20 @県民ホール


アンドレア・バッティストーニ:指揮
ジュリオ・チャバッティ:演出
マウリツィオ・ディ・マッティア:原演出

合唱:二期会合唱団
バレエ:東京シティ・バレエ団 ほか
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

アイーダ:モニカ・ザネッティン
ラダメス:福井敬
アムネリス:清水華澄
アモナズロ:今井俊輔
ランフィス:妻屋秀和
国王:ジョン・ハオ
巫女:針生美智子
伝令:菅野敦

ジュゼッペ・ヴェルディ「アイーダ」全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉/新制作
予定上演時間:約3時間25分
第Ⅰ幕45分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕50分
 --休憩20分--
第Ⅲ幕/第Ⅳ幕65分

分かり易い三角関係のドラマを軸に親しみやすい歌曲、スペクタキュラーな舞台、バレー(ソロと群舞)など、見どころ聴きどころ満載のオペラだ。

ただ、4月に新国立でゼッフィレッリ(演出・美術・衣裳)の「アイーダ」を観ているので、馬2頭まで登場する豪華絢爛な舞台と比較することはハナからできないとしても、舞台美術や衣装などがどこまで肉薄できるかが、関心の一つ。
特に、神奈川県民ホールは新国立劇場より間口が4m弱広いので、舞台装置が粗末だとスカスカの舞台になってしまう恐れがある。

実際の舞台を見て、その点はどうだったか、実はよく分からない。というのも、ピットから3列目のど真ん中で観たので、その位置からは見える舞台装置は十分に満足できるものだったから。後方、特に2階、3階席からはどんな感じだったのだろう。

♫---------
前奏が始まるやいなや幕が上がり、男女一組のバレエが始まった。これはアイーダとラダメスの運命を予感させるものだ。この演出はとても良かった。バレエの美しさはその後2幕でも堪能できる。

馬は登場しないが、凱旋の場面(2幕後半)では、アイーダトランペットが舞台上のギリギリ上手と下手に3人ずつ別れて陣取った。広い間口を活かした演出が功を奏していた。

幕内と第3幕〜第4幕の間の舞台転換は幕を下ろさず暗転したまま黒衣が登場して人力で大きな装置を動かしたが、これも気分を弛緩させることなくむしろ緊張を維持する上で良かったかもしれない。

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声楽陣はどうだったか。
タイトルロールのモニカ・ザネッティンを除いてみんな良かった。特にラダメス役の福井敬とアムネリス役の清水華澄が光っていた。清水華澄にとっては7年前、県民ホールで同役を歌うはずのところ、3.11で公演中止となったという因縁の舞台だった。
終演後のカーテンコールでは感極まって涙ながらにステージにひざまずいて床を撫でるようにしていたのは、それ自体が感動的だった。見事に県民ホールでアムネリスが凱旋を果たした訳だ。

肝心のザネッティンは残念ティンだったよ。
歌唱も表情も態度も、起伏に乏しく、アイーダの悲劇が伝わってこない。そういう演出なのかもしれないが、だとすれば、他の出演者とのバランスが取れない。
むしろ、日本人声楽陣の方が感情豊かだった。
これでは「アイーダ」というよりタイトルを「アムネリス」に変えた方がピッタリする。

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ピットに入ったのは東フィルだ。まあ、慣れたものなんだろう。とりわけ、バッティストーニは「アイーダ」は何度も経験しているそうだが、それにしても、全曲暗譜だったのには驚いた。

僕の席の前に2列あったが、県民ホールの席は前後で椅子の位置が半席分ずれているので、前席には人の頭が無い。最前列は空席だった(チケット完売だそうだが、気の毒に来れなかったらしい)。すると、目の前はバッティストーニのモジャモジャ頭だ。気合い十分な指揮ぶりだったが、肩から上しか見えないものの、スコアを捲っている様子は皆目見えない。それで、終演後、ピットの中の人に聞いたら、やはり完全暗譜だそうな。いやはやびっくり。正味2時間40分の大曲が全部頭に入っているとはすごいことだ。

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残念な部分もあったが、全体としては上出来。大いに楽しめた。とてもラグジュアリーな気分で帰路についたはいいものの、パラパラ降り出した雨が途中から本降りに。傘を持っていなかったのでずぶ濡れの「凱旋」となった。

♪2018-133/♪県民ホール-04