2019年4月16日火曜日

東京フィル第125回東京オペラシティ定期シリーズ

2019-04-16@東京オペラシティコンサートホール


アンドレア・バッティストーニ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
小山実稚恵:ピアノ*

番外:フランス国家
W.ウォルトン:戴冠式行進曲『王冠』
モーツァルト:ピアノ協奏曲第26番ニ長調 K537『戴冠式』*
チャイコフスキー:交響曲第4番へ短調 作品36
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アンコール
E.エルガー:行進曲「威風堂々」第1番

東京フィルはわざわざチケットを買って聴きにゆく機会は少なかったが、オペラではピットに入っているオケのおそらく半分以上は東フィルではないかと思うので、演奏はそこそこ聴いていたものの、定期会員になったのは今季からが初めて。
都内で3定期公演しているようだが、中で一番音響の良いオペラシティ コンサートホール(タケミツメモリアル)の会員になった。

今日はそのオープニング。3定期の中でも一番最初だったので東フィルとしても今季のオープニング・コンサートだった。

冒頭、バッティストーニが(僕のヒアリング能力では)聴き取れない英語で、パリがどうとか言って始めた演奏が、フランス国歌だった。なぜ、予定外のフランス国歌を演奏したのか、分からなかったが、終演後東フィル職員に尋ねたら、この日ニュースとして飛び込んできたノートルダム大聖堂が火事で尖塔を失うなどの不幸な出来事に想いを寄せてのことだったそうだ。ほとんど練習もできなかったろうし、楽譜を用意するのも容易ではなかったろうけど。

こういう国際センスのによる対応は、極東で平和に暮らしている日本人にはなかなか発想できない感覚ではないかと思った。

そもそも、今回「戴冠式」関連の2曲が取り上げられたのも、平成から令和への代替わりへの祝意の現れだそうだ。今回の代替わりは、これに対応するには事前に準備可能だったが、他のオケでは4月ないし5月の定期で格別祝意を込めたプログラムは準備していない。
こういうところも感性の違いかな。

ウォルトンの作品は、以前に交響曲第1番を聴いたが、戴冠式行進曲『王冠』は初めて…のはずだけど、なんか耳馴染みがあったのは、吹奏楽版を聴いたことがあるのかもしれない。
勇ましくて親しみやすい祝典ムードに溢れた音楽だった。

次の「戴冠式」はどうかな。小山実稚恵のコンディションはベストではなかったように思ったが。果たして、彼女はこの曲を今回初めて演奏したのだそうだ。

チャイコの4番は、勇壮でかつ物悲しい管楽器のファンファーレがたまらなくいい。東フィルの演奏は、実に素晴らしい出だしだったが、トランペットが入るところで、少し乱れたのが残念。
とはいえ、全曲を通じて度々繰り返されるトランペットの咆哮が気分を高揚させてくれる。弦楽器がピチカートに終始する風変わりな第3楽章が消えるように終わって、アタッカのようにほんの一呼吸で始まる終楽章はハナから劇的だ。特に終盤は全曲冒頭のファンファーレが嵐のように畳み掛けて実に爽快だ。

席は必ずしも希望の席ではない。好みよりだいぶ前方だ。それだけに、こういう音楽では強烈な音圧に塗れて、音楽鑑賞というより音楽体験だ。幸せな体験ではあるが。
もっとも、どんな音楽にも、この席が合うとも思えないのがこの先の不安材料だ。

♪2019-048/♪東京オペラシティコンサートホール-01