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2022年5月8日日曜日

豊竹咲太夫文化功労者顕彰記念 文楽座命名150年 文楽公演第Ⅱ部

2022-05-08@国立劇場


●競伊勢物語 (はでくらべいせものがたり)
 玉水渕の段
口 豊竹亘太夫/鶴澤清𠀋
奥 竹本織太夫/鶴澤清友

 春日村の段
中 竹本小住太夫/鶴澤清馗
次 豊竹藤太夫/鶴澤藤蔵
切 竹本千歳太夫/豊澤富助/琴:鶴澤清公
************************
人形役割
娘信夫⇒    吉田一輔
磯の上豆四郎⇒吉田玉勢
鉦の鐃八⇒  吉田簑一郎
代官川島典膳⇒吉田玉輝
亭主五作⇒  桐竹勘次郎
母小よし⇒  吉田和生
紀有常⇒   吉田玉男
在原業平⇒  吉田玉彦
井筒姫⇒   吉田和馬


「競伊勢物語」は東京では35年ぶりの上演だそうだ。勿論、初めての観賞。

朝廷の争いに巻き込まれた公家・紀有常が忠義の為に実の娘を手に掛け、その若い夫も自害するという悲惨な話。

それに先行して、これも忠義で犯した大罪の、類が実母に及ばぬように、必死でわざと実母に悪態をつき、なんとか勘当してもらおうとするが、母の限りのない我が子への深い情愛がそれを受け付けない。このやりとりがウルっとなる。

ところで、伝統芸能でジェンダー不平等やセクハラ・パワハラは洋の東西を問わないが、身代わりに我が子の首を差し出す児童虐待?は日本のお家芸かも。

追記:
文楽では初めて観たけど、過去の記録を見ていたら2015年の歌舞伎座秀山祭で、吉右衛門・菊之助・染五郎*・東蔵・米吉*(*当時の名前)らの豪華版で(歌舞伎では)観ていた。
強烈な話なのにもう忘れているなんてかなりショックだ。

♪2022-064/♪国立劇場-03

2021年12月6日月曜日

国立劇場開場55周年記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年12月公演

2021-12-06@国立劇場




国立劇場開場55周年記念
仮名手本忠臣蔵 (かなでほんちゅうしんぐら)
 桃井館本蔵松切の段
 下馬先進物の段
 殿中刃傷の段
 塩谷判官切腹の段
 城明渡しの段
 道行旅路の嫁入


桃井館本葳松切の段
 竹本小住太夫/鶴澤清丈
下馬先進物の段
 竹本南都太夫/竹澤團吾
殿中刃傷の段
 豊竹靖太夫/野澤錦糸
塩谷判官切腹の段
 竹本織太夫/鶴澤燕三
城明渡しの段
 竹本碩太夫/鶴澤清允
道行旅路の嫁入
 小浪:豊竹呂勢太夫/鶴澤清志郎
 戸無瀬:豊竹咲寿太夫/鶴澤清公
 豊竹亘太夫/野澤錦吾
 竹本聖太夫/鶴澤燕二郎
 豊竹薫太夫/鶴澤清方

*****************************
人形役割
桃井若狭助⇒ 吉田玉佳
加古川本蔵⇒ 吉田勘市
妻戸無瀬⇒    豊松清十郎
娘小浪⇒ 吉田簑紫郎
高師直⇒ 吉田玉助
鷺坂伴內⇒    桐竹紋秀
塩谷判官⇒  吉田簑二郎
早野勘平⇒  吉田玉路
茶道珍才⇒  吉田蓑悠
原郷右衛門⇒ 桐竹亀次
石堂右馬丞⇒ 吉田玉輝
薬師寺次郎左衛門⇒吉田文哉
大星カ弥⇒  吉田簑太郎
大星由良助⇒ 吉田玉志
顔世卿前⇒  桐竹紋吉
その他 大ぜい

今から5年前の2016年。国立劇場では開場50年記念に、歌舞伎は3部(1か月公演X3回)、文楽の方は2部(昼夜公演)構成で全段通し「仮名手本忠臣蔵」をやった。
それが僕の文楽の初見で以後病みつきになった。

2019年には大阪の国立文楽劇場の開場35年で春・夏・秋に3部に分けて全段通しをやった。これも観に行った。

そして、今年は国立劇場開場55年記念の年だ。

そこで、記念の公演という訳だが、今回は、二、三、四、八段目からの抜粋だ。これは寂しい。

四段目のほかにも面白い七段目、九段目がない。これでは見どころは切腹の段のみというのも辛い。

それにどういう訳か、今回は太夫・三味線・人形ともに重鎮が出ていない。普通なら人間国宝級全員とは言わずとも出演するものだ。ましてや記念の公演なのに。
ま、今日の出演者の中では、個人的には織太夫とか呂勢太夫は好きだけど。
どれにしては寂しい公演だった。

同時に別興行で観賞教室をやっているがこっちの方が面白かった!


♪2021-146/♪国立劇場-11

2019年2月15日金曜日

人形浄瑠璃文楽平成31年02月公演 第2部

2019-02-15 @国立劇場


近松門左衛門=作
大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)
 大経師内の段
     中⇒希太夫/鶴澤清丈
     奥⇒文字久太夫/鶴澤藤蔵

 岡崎村梅龍内の段
     中⇒睦太夫/鶴澤友之助
     奥⇒呂太夫/竹澤團七

 奥丹波隠れ家の段
     三輪太夫・南都太夫・咲寿太夫/鶴澤清友
     
  人形▶吉田和生・吉田簑紫郎・吉田勘一・吉田玉勢・
               吉田簑一郎・吉田玉志・吉田玉也

近松門左衛門の<世話物>の中でも、「大経師昔暦」は「冥途の飛脚」、「曾根崎心中」、「女殺油地獄」、「心中天網島」などと並んで、非常に有名な作品だが、あいにくこれまで文楽でも歌舞伎でも観たことはなかった。

この話も、おさん・茂兵衛にとって、ほんのちょっとしたはずみの事故のような出来事が、悪い方へ悪い方へと転がり、糸がもつれもつれて絡み合い、もう、どうにもならずに最悪の逃避行へと転落する。

茂兵衛への恋心から茂兵衛に味方した下女のお玉は京に近い岡崎村の伯父・梅龍の元に預けられ、おさん・茂兵衛は逃避行の傍、そこを尋ね、その後奥丹波に隠れ住むが、それも長くは続かず、ついに追っ手の手にかかる。
そこに梅龍が、お玉の首を持参し、全ての罪はお玉にあるので成敗した。おさん・茂兵衛に罪はない、と役人に申し立てるが、2人の不義は濡れ衣だと証明できる唯一の証人を殺してしまったと梅龍の早計を惜しみ、梅龍は地団駄踏んで悔しがる。

このラストチャンスまで、むしろ善意が3人の人生を踏み潰してしまうという悲劇に慄然とする。

それでも、おさん・茂兵衛はお互いに真実の愛を知らぬまま今日に至り、思いがけない地獄への道行きの中で、純愛に準ずることができたのがせめてもの幸いか。

今回は、ここまでの上演だったが、近松の原作ではその後2人は助命されるそうだ。にもかかわらず、実話の方は両者磔、お玉は獄門晒し首になるそうで、劇中、それを予告するかのように、おさん・茂兵衛の影が磔の姿に、お玉は窓から顔を出したその影が獄門首に見えるように演出されていて、これはかなり気味が悪い。

余談:
この話も「桂川連理の柵」同様、実話が基になっている。
それを最初に浮世草子として発表したのが井原西鶴(「好色五人女」の中の「暦屋物語」)で、その33年後に近松門左衛門が同じ題材で浄瑠璃「大経師昔暦」を発表した。
両者の話の細部は知らないので相違も知らなかったが、これらを原作にした溝口健二監督の名作映画「近松物語」は何度も観てよく知っているので、近松の浄瑠璃「大経師昔暦」もおよそ、この映画のストーリーに近いものだと思い込んでいたが、実際に観てみると少し様子が異なる。

後からの俄か勉強だが、そもそも西鶴の描いた物語と近松の物語とではおさん・茂兵衛の関係がだいぶ違うようだ。加えて、溝口が映画化した際は、その両者を合体させてシナリオを作ったという。

映画の方は合理的な筋の展開で無理がなく共感するものが多いが、文楽「大経師昔暦」ではおさんと茂兵衛が不義の仲になる設定に無理がある。

大経師の女房おさんと下女お玉が寝所を交代する目的は、おさんがお玉のふりをして亭主・以春のお玉への夜這いの現場を押さえ、懲らしめる事にあった。
一方、茂兵衛は昼間自分を助けようとしてくれたお玉に礼を言おうと寝所に忍び込む。暗闇で顔が分からないとしても、茂兵衛が言葉は発しないとしても、おさんには忍び込んで来た男が自分の亭主でないことくらい素ぶりで分かるはず。にも関わらず、抵抗もせず、情を通じてしまうのも不可解。
だからこそ、溝口はここを改めて、すぐお互いが意中の人ではないと気がつくが、何しろ深夜の寝所に2人でいるところを見られたことで不義が疑われるという筋に変えている。

床本(シナリオ)を読む限り、2人はお互いの顔を確認した上で、互いに予期する相手ではなかったが、それでも結ばれるという筋立てに変更する演出は可能だし、そうすればその後の逃避行もよく分かるのだが、「伝統芸能」の世界では、新劇のような自由な解釈は許されないのだろうな。

♪2019-017/♪国立劇場-04

2018年9月9日日曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年9月公演 第2部「夏祭浪花鑑」

2018-09-10 @国立劇場


●夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)
 住吉鳥居前(すみよしとりいまえ)の段
  咲太夫・睦太夫/鶴澤友之助・野澤勝平
 内本町道具屋(うちほんまちどうぐや)の段
  亘太夫・三輪太夫/鶴澤清公・竹澤宗介 
 道行妹背の走書(みちゆきいもせのはしりがき)
  織太夫・芳穂太夫・文字栄太夫・南都太夫/
  竹澤團吾・鶴澤清丈・野澤錦吾・鶴澤燕二郎
 釣船三婦内(つりぶねさぶうち)の段
  小住太夫・呂勢太夫/鶴澤寛太郎・鶴澤清治
 長町裏(ながまちうら)の段
  織太夫・三輪太夫/清志郎
 田島町団七内(たじまちょうだんしちうち)の段
  文字久太夫・希太夫/清介・清丈

◎人形⇒桐竹勘十郎・吉田玉男・吉田文昇・吉田玉也・豊松清十郎・吉田勘彌・吉田文司・吉田清五郎・桐竹勘壽・吉田玉也・吉田簑助

昨夏、大坂の国立文楽劇場で観たのでおよそのところは頭に入っているつもりだったけど、今回は本格的な全6段*構成だから、大阪で観たものよりずっと長い。
大坂では「︎住吉鳥居前の段」、「釣船三婦内の段」、「長町裏の段」で構成されていたから今回のほぼ半分だ。どおりで、頭に入っているつもりというのが実は怪しいのも筋書きが端折られていたから…というのは言い訳で、今回、全6段を通して観ても、やはりややこしくて細かい点ではその場での理解は困難だった。

登場人物が多く筋も複雑だ。
誰が主人公か。
やくざ者の団七九郎兵衛を中心に据えていると思うが、彼の義兄弟の一寸徳兵衛、彼らを助ける老侠客の釣船三婦も重要な役回り。さらにそれぞれの女房たちもただの飾り物ではない。
この一団をきりきり舞いにさせるのが厄介な若殿様に彼を取り巻く女たち。
彼らの外縁には悪党どもが取り巻いている。

今回、鑑賞後に、解説本などを読み直してようやく全体像がつかめたが、やはり、では、どこが観どころか、と考えるに、ぼんやりしてしまう。

昨夏は「長町裏の段」で終わっていた。
語りも三味線も沈黙しただんまりの世界で、団七がやむを得ず舅を殺す。褌一丁になり井戸の水を汲んで全身の倶利伽羅紋紋に浴びた返り血を流し、着物を羽織って、夏祭りの喧騒の中に消えてゆく。
なるほど、こういう終わり方も粋だなあとそれなりの得心をしたが、今回は「田島町団七内の段」が続くので、少し話の性格が方向を変えたように思う。

まだまだ、理解不足だ。筋を追っているようでは鑑賞とは言えない。今後の楽しみとしよう。

*原作は全9段だそうだ。
今回の6段構成でも公演時間は4時間34分(計50分の休憩含む)だから、全9段では6時間位かかるのかもしれない。もっともそういう形での上演がありうるのかどうか知らないが。

♪2018-110/♪国立劇場-13

2018年2月19日月曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年2月公演 第2部「花競四季寿」、「八代目竹本綱太夫五十回忌追善/豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫襲名披露 口上」、「追善・襲名披露狂言 摂州合邦辻」

2018-02-19 @国立劇場


●花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)
 〜万才・鷺娘
  豊竹睦太夫
  竹本津國太夫
  竹本小住太夫
  竹本碩太夫
  野澤喜一朗
  鶴澤清丈
  鶴澤寛太郎
  鶴澤清公
  鶴澤燕二郎
 ◎人形
  吉田玉勢⇒太夫
  桐竹紋臣⇒才蔵
  吉田文昇⇒鷺娘 

●八代目竹本綱太夫五十回忌追善/豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫襲名披露 口上
 豊竹咲太夫
 竹本織太夫

●追善・襲名披露狂言
 摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
 〜合邦住家の段
中 竹本南都太夫
  鶴澤清馗
切 豊竹咲太夫*
  鶴澤清治**
後 竹本織太夫
  鶴澤燕三
 ◎人形
  吉田和生⇒合邦道心**
  桐竹勘壽⇒合邦女房
  桐竹勘十郎⇒玉手御前
  吉田玉佳⇒奴入平
  吉田簑二郎⇒浅香姫
  吉田一輔⇒高安俊徳丸
          ほか(**は人間国宝。*は切場語り)

今月の国立劇場文楽公演は全3部制で、そのうち第2部が八代目竹本綱太夫五十回忌追善/豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫襲名披露 口上を含む記念の公演で、綱太夫追善と新・竹本織太夫の襲名披露の演目は「摂州合邦辻」〜合邦住家の段だ。
これだけだと短いし、祝いごとなので、「花競四季寿」から春と冬の場が演じられた。

「摂州合邦辻」は歌舞伎では観たことがある。お家騒動を軸に、義理の関係とはいえ母(玉手御前)が息子(俊徳丸)に恋をするというとんでもない設定だ。それも、義理の息子に毒を飲ませて面体を醜く崩し、彼の許嫁には結婚を思いとどまらせようとする。この女難を避けて出奔した俊徳丸を玉手御前はさらに追いかけて私と一緒になろうと詰め寄る。とはなんという無茶苦茶な話か、と思いきや、ちゃんと筋が通るようにできてはいるものの、そんなバカな、という類の話だ。

見方によっては、これも一つの愛の形なのかもしれないが、なかなか共感はしにくい。


さて、この演目は織太夫夫の襲名披露ということもあってか、強力な、あるいは身内のスタッフが揃った。
中で三味線を弾いた鶴澤清馗は織太夫の弟だ。
切場を担当したのは目下、唯一の切り場語りで太夫最高格の咲太夫が語った。その三味線を弾いたのは人間国宝であり織太夫の伯父に当たる鶴澤清治だ。
また、人形では合邦を人間国宝・吉田和生が遣った。
つまり太夫・三味線・人形の各分野の最高格が部分的にせよ勤めたのだ。贅沢なものであった。

咲甫太夫の頃からよく通る声と豊かな感情表現が見事で、大いに楽しみな新・織太夫だが、この出し物は元々八代目綱太夫の得意狂言だったようで、それで追善の演目として選ばれたらしいが、織太夫の面目躍如とまではゆかなかったような気がした。もっと、派手な語りこそ彼にはよく似合うのではないか。
しかし、今後も非常に楽しみな太夫の一人であることには違いない。初めて咲甫太夫を聴いたのは「仮名手本忠臣蔵」の九段目、出床で妹・お軽と兄・平右衛門の凄惨な絡みの場の迫力に圧倒されたものだ。また、ああいうすごい義太夫を是非とも聴いてみたい。

♪2018-021/♪国立劇場-03

2017年12月13日水曜日

12月文楽鑑賞教室「日高川入相花王」ほか

2017-12-13 @国立劇場


●日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)
     渡し場の段


豊竹芳穂太夫
豊竹靖太夫
豊竹咲寿太夫
豊竹亘太夫
竹本碩太夫

鶴澤清丈
鶴澤友之助
鶴澤清公
野澤錦吾
鶴澤清允

<人形>
吉田簑紫郎
吉田文哉

●解説 文楽の魅力

豊竹希太夫
鶴澤寛太郎
吉田玉誉

●傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)
     新口村の段

口 竹本小住太夫
  鶴澤清公
前 豊竹呂勢太夫
  鶴澤燕三

後 竹本千歳太夫
  豊澤富助

<人形>
吉田勘一
桐竹勘次郎
吉田勘彌
豊松清十郎
吉田玉男 ほか


文楽の「鑑賞教室」は初めてだった。
文楽鑑賞歴は短いものの熱心に足を運び、家でもビデオ鑑賞したりしてだいぶ勉強が行き届いてきたので、学生向けの解説は既に承知のことばかり…と思いきや色々と学ぶところは多かった。

文楽は、三味線・義太夫・人形遣いの3つの分野で成り立っているが、それぞれの分野から解説者が立った。歌舞伎の鑑賞教室だと歌舞伎役者の若手が説明に立つが、彼らは大舞台で喋るのが商売だからうまくて当たり前。それに比べると文楽の場合は太夫は声を使う仕事とは言え、喋るというより語るのだからだいぶ違う。ましてや三味線も人形遣いも一言も発さないのが本来であるから、舞台に立って解説をするというのは慣れない仕事だろう。それにしてはいずれもなかなか上手な説明だった。

配ってくれた解説のパンフレットも簡潔にまとめてあってこれからも重宝しそうだ。


「日高川入相花王〜渡し場の段」は安珍・清姫の物語だ。清姫が愛しい安珍とその婚約者を追って日高川の渡し場まで来るが、船頭は先に渡した安珍からお金をもらって清姫が来ても船に乗せないでくれと言われているので必死に頼む清姫の願いを拒絶する。

嫉妬に狂った清姫はついに大蛇になり日高川を泳いで安珍の後を追う…という場面だが、ここで、有名な「角出しのガブ」という頭が使われる。知識として走っていたが、ホンモノを見たのは初めてだ。きれいな娘の顔が一瞬にして口が裂け、目が充血して角膜が黄金色に変わり、頭からは角が出る。よくできているが、コワイ。


「傾城恋飛脚」は近松の「冥途の飛脚」を後年菅専助、若竹笛躬が改作したもので、2月に観た「冥途の飛脚」の最終段は「道行き相合かご」で、かごを帰した梅川と忠兵衛がこれから忠兵衛の故郷<新口村>の親に逢いにゆこうとするところで終わるが、「傾城恋飛脚」では、この段を「新口村の段」に改作して、雨の場を雪に変え、忠兵衛は父親に会えるのだが追手が近づいてきたということで終わる。この趣向がとても良いというので、「冥途の飛脚」の公演でも「新口村の段」を取り入れているものもあると聞くが観たことはない。

鑑賞教室ということで、2本とも1段(場)のみだったが、気軽な文楽鑑賞を楽しむことができた。

♪2017-201/♪国立劇場-20

2017年6月30日金曜日

国立文楽劇場文楽既成者研修発表会 第5回(17回) 文楽若手会

2017-06-30 @国立劇場


●寿柱立万歳 (ことぶきはしらだてまんざい)
 豊竹睦太夫・豊竹靖太夫・竹本小住太夫
 鶴澤寛太郎・野澤錦吾・鶴澤燕二郎・鶴澤清允
 (人形役割)
 太夫⇒吉田簑太郎
 才三⇒桐竹紋臣 

●菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
◎車曳の段
 竹本小住太夫・豊竹咲寿太夫・豊竹睦太夫・
 豊竹亘太夫・豊竹靖太夫/鶴澤清丈
◎寺入りの段
 豊竹亘太夫/鶴澤清公
◎寺子屋の段
 豊竹芳穂太夫・豊竹希太夫/鶴澤清馗・豊澤龍爾
 (人形役割)
 梅王丸⇒吉田簑太郎
 桜丸⇒吉田玉誉
 杉王丸⇒吉田簑之
 松王丸⇒吉田玉翔
 左大臣時平⇒吉田文哉
 よだれくり⇒吉田玉路
 菅秀才⇒桐竹勘昇
 女房戸浪⇒桐竹紋吉
 女房千代⇒吉田簑紫郎
 武部源蔵⇒桐竹紋秀
 春藤玄蕃⇒吉田玉彦
      ほか

「文楽若手会」って初めて存在を知ったが、東京では今年が第5回目で、本場大阪では17回目だそうだ。
「若手」の定義がどこにも書いてない。公演チラシには副題で「文楽既成者研修発表会」とある。これもよく分からない。
太夫の中で最高の格にある豊竹咲太夫のイケメン弟子で例示すると、咲甫太夫は非若手、咲寿大夫は若手に名を連ねているのでこの辺が区切りらしい。

出演者の顔ぶれを見ると、太夫、三味線、人形遣いとも、本公演でも見かける顔が並んでいるので、研修発表会と言いながら結構本格的なものだ。特に文楽に関しては昨年12月に初めて舞台を経験したド素人の僕からはみんな大した技量を備えているように思える。

内容は、5月文楽公演と基本的に同じで、「茶筅酒の段」、「喧嘩の段」、「訴訟の段」、「桜丸切腹の段」が省略され、冒頭に「車曳の段」が加わっていた。
好みで言えば、「車曳の段」はカットしてもいいが「桜丸切腹の段」がなかったのは残念だ。これが演じられることで、「寺子屋の段」、とくに終盤の松王丸夫妻の嘆きが広がりを見せるのだと思っている。

5月の本公演での呂太夫の襲名披露「寺入りの段」や唯一人<キリ>を務める、咲太夫の「寺子屋の段」を思い浮かべると、多分、まだまだ大きな違いがあるのだろうが、僕の鑑賞眼では十分に面白く楽しめた。

♪2017-110/♪国立劇場-11