2019年3月31日日曜日

新日本フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会 第8回 サファイア<横浜みなとみらいシリーズ>

2019-03-31 @みなとみらいホール


上岡敏之:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
合唱:栗友会合唱団

森谷真理:ソプラノ
カトリン・ゲーリング:メゾ・ソプラノ

マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」

上岡敏之が指揮をする「復活」。
この人はいつも何かしら独自色を発揮してくれる。良し悪しはよく分からぬ。が、それが面白い。それが楽しみだ。

今日は、CD収録かステージにはマイクが林立して開演前から既に会場全体がが上気していた。
案の定、気合の入った指揮とメリハリの効いた演奏に高度なテンションは演奏時間85分という長尺だが終幕まで維持された。
もっとも、いつものように「復活」の終楽章は長すぎると思いながら。

演奏が終わって暫時休止後客席を向いた上岡の顔がくしゃくしゃになっていて驚いた。一曲入魂とはまさにこれだ。

さてさて、本当に熱演だったと思うよ。
弦はなかなか良い音だったし、管と弦の混ざり具合も適度で良い響きだ。欲を言えば、管の一部が完全ではなかったけど生演奏としては許容範囲。

カーテンコールも熱が入り、特にトランペットの某氏がはしゃいでいたのは今日で退団だったらしい。珍しいことに楽屋口にもたむろする人がいたのはお知り合いなのかもしれないな。

個人的には好きな音楽ではない。俗臭紛々な上に、85分もの長さが必要だとは思えない。特に終楽章が、これだけで35分も要するのはバランスが悪い。けど、世の大勢はこういう音楽を受け入れている。一部には狂喜をもって受け入れている。だからオーケストラは集客のために必ずシーズン中にマーラーを最低でも1回はプログラムに入れるのだ。

僕も、マーラーの全てが嫌いという訳ではない。4番などとても親しみやすいと思う。

また、思い切り俗っぽいとしても時にはこういう大げさな音楽も管弦楽の面白さを味わうには好都合だ。

*余談
同じ演目を昨夜はサントリーだった。昨日のS券は8千円。今日のみなとみらいホールは7千円だ。
サントリーより音響的にも優れたホールなのに低価格設定は何故?
横浜人としては、新日フィルのこの差別的ローカル扱いが不満である。

♪2019-039/♪みなとみらいホール-13

2019年3月30日土曜日

第6回音大フェスティバル・オーケストラ演奏会

2019-03-30 @東京芸術劇場


小林研一郎:指揮
音楽大学フェスティバル・オーケストラ
(首都圏9音楽大学+北海道・沖縄2音楽大学選抜オーケストラ)

【参加音楽大学】上野学園大学、国立音楽大学、昭和音楽大学、洗足学園音楽大学、東京音楽大学、東京藝術大学、東邦音楽大学、桐朋学園大学、武蔵野音楽大学、札幌大谷大学(北海道)、沖縄県立芸術大学(沖縄)

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」
チャイコフスキー:序曲「1812年」
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14

以前は、首都圏の音大だけだったのが、最近は2校増えて11大学になっている。
だからという訳でもないだろうが、大編成だ。
弦18型+倍管+特大バンダ付きで、演奏曲目もそれにふさわしい派手なものばかり。

毎年、このコンサートでは次元を超える<超特大管弦楽>に翻弄される悦びが味わえる。今年は特に序曲「1812年」では信じられないような特大別働隊(バンダ)が編成され、2階の中央にずらっと並んだ。数えられないが、何十人という編成だ。2階だけで一つの吹奏楽団が演奏するという感じだった。

僕は1階中央で聴いていたので、前の舞台と後ろの2階席からの両方から金管と打楽器が嵐のような演奏を繰り広げてくれた。

これでもっとホールの響がよければ素晴らしいのだけど、藝劇の弦は乾ききっていて美しくないねのが大いに残念。

♪2019-038/♪東京芸術劇場大ホール-02

2019年3月27日水曜日

東京・春・音楽祭-2019-ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽〜ピアノ四重奏の夕べ

2019-03-27 @東京文化会館


バイオリン:ノア・ベンディックス=バルグリー
ビオラ:アミハイ・グロス
チェロ:オラフ・マニンガー
ピアノ:オハッド・ベン=アリ

マーラー:ピアノ四重奏曲(断片) イ短調
シューマン:ピアノ四重奏曲変ホ長調 op.47
ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番ト短調 op.25

東京・春・音楽祭ではほぼ毎年このメンバーの演奏を聴いているが、いつも大満足できる。

ベルリン・フィルのトップ奏者たちってなんて凄腕なんだろう。ほとほと感心するよ。こんな高水準の演奏を聴くことは誠にもって幸福なことだが、一方で、この高い水準が他の演奏を聴くときの物差しになるのが不幸なことでもある。

今回は、ピアノ四重奏曲集だ。
最初はマーラーの12分くらいの単一楽章の作品だった。これはマーラー唯一の室内楽作品だそうな。作品、と言っても<断片>で終わっている。作曲したのは15歳(16歳説も)らしい。
かなり、劇的で、将来のマーラーを予感させる部分も見えたが、多くの部分は古典派やロマン派の諸先輩の作品を倣ったように思える。

シューマンの室内楽は多品種少量作曲でその多くがピアノを含んでいる。ピアノ四重奏という編成では今日の作品が唯一だ。時々CDを回すのだけど、いまいちとらえどころがなくて入り込めないでいたが、今日の演奏で霧が晴れた感じがした。やはりナマで聴かないと音楽の琴線に触れるということができないようだ。

最後のブラームス。これは大いに期待をしていたが、その期待をも軽々超えてしまう上出来であった。40分近い大曲だが、全く飽きさせない。最初にパズルのピース、あるいは手札のカードを配っておいて、それが徐々に形を成してゆく過程を聴きながらスリリングに味わった。

どの楽章も面白いが、何と言っても舞曲風に仕上げた最終楽章の高揚感は半端ではない。ハンガリアンダンス風で中間部にはロマを思わせる泣かせるメロディーが仕込まれていて、もうこれは本当に胸をかきむしられるようで、不覚の落涙…とまではゆかないものの、こんなにも哀愁に満ちた音楽を巧妙に構築しているブラームスの才能に感服した。
もちろん、ベルリン・フィルのトップ奏者たちの息の合った演奏が見事なのだけど。

この日は東京で桜の満開が宣言された。

♪2019-37/♪東京文化会館-02

2019年3月26日火曜日

新国立劇場オペラ「ウェルテル」

2019-03-26 @新国立劇場


指揮:ポール・ダニエル
演出:ニコラ・ジョエル
美術:エマニュエル・ファーヴル
衣裳:カティア・デュフロ
照明:ヴィニチオ・ケリ

合唱⇒新国立劇場合唱団
児童合唱⇒多摩ファミリーシンガーズ
管弦楽⇒東京交響楽団

ウェルテル⇒サイミール・ピルグ
シャルロット⇒藤村実穂子
アルベール⇒黒田博
ソフィー⇒幸田浩子
大法官⇒伊藤貴之
シュミット⇒糸賀修平
ジョアン⇒駒田敏章

ジュール・マスネ:オペラ「ウェルテル」
全4幕〈フランス語上演/字幕付〉
予定上演時間:約3時間10分
第Ⅰ幕45分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕35分
 --休憩25分--
第Ⅲ・Ⅳ幕60分

メゾソプラノの藤村実穂子。日本が生んだ世界的なメゾソプラノと称されているが、コンサートではしばしばマーラー等を聴いていたが、単品歌曲では真価はなかなか分からない。
藤村美穂子の、歌劇での演技・歌唱は初めてだった。

そもそもこのオペラの原作はゲーテの「若きウェルテルの悩み」である。青春の通過儀礼として僕も若かりし頃読んだ。読むには読んだが、当時(十代?)でさえ、共感できなかったのだから、老いてはなおのこと気持ちが乗らない。

ナマ舞台は今回初だが、記録映像を2種類持っている。これまで積極的にそのディスクを見たことはなかったが、今回の予習のために早回しでざっと見たが、やはり到底共感できない。

音楽に関しては、一番有名なのが(コンサートで単独にも取り上げられることが多い)ウェルテルが歌うアリア「オシアンの歌」だと思うが、この曲はなかなか胸に沁みるものがある。

が、心動かすのはそれだけで、そもそも話の筋がつまらないので観ているのがあほらしくなるのだ。

青年の、美しく・甲斐甲斐しく・家庭的な女性に一目惚れすることは許そう。しかし、相手には婚約者があり、現に間も無く結婚するのだが、それが分かっていて、なおも身を焦がすというのは如何なものか。いや、焦がしても良い。良いが、その気持ちを彼女に執拗に訴えてどうなるものでもなかろう。彼女=シャーロットを困らせるだけだ。結婚後も大量の情熱的な手紙を送りつけるので、シャーロットも(彼女もアホーであるが)心動かされてしまうのだ。

2人とももっと大人になれよ!
と他人事ながら腹が立ってくる。
いや、そこまで、僕が気合いを入れることもないのだが、いずれほとぼりを冷ませばそれで良いのだけど、ウェルテルは恋が成就できぬと知った途端、ピストル自殺してしまうのだもの、もう、良い加減にしろい!と思うのであります。

そういうドラマをゲーテほどの知性のある人間がなぜ書き残したのか、といえば、一説には、自分の気持ちをこの小説を書くことによって鎮めたそうだ。この辺が教養人だな。
自分はスッキリしたろうが、この作品の悪影響を受けて青年たちの自殺がどっと増えたというから罪な話だ。

純粋、無垢、情熱、恋愛…そして死。なんたる甘美な罠だろうか。

青春の一時は染まっても良いが、なるべく早く覚醒し卒業しなくちゃいけない。

マスネもなんでこんな原作に惹かれたのだろう。
彼もまた、内なる情熱を作品に閉じ込めて放出することで、平衡感覚を保とうとしたのだろうか。

「ウェルテル」という物語はそんな筋書きなのだ。
到底共感できるものではないから、オペラの形をとっても先述のようになかなか共感できないでいたが、生の舞台ではどんなものだろうか。
途中で席を蹴って帰る!なんて純粋な情熱はもう残っていないので最後まで観るとしても、ウェルテルたちに共感できるだろうか、オペラ作品として楽しめるだろうか、かなり不安だった。

が、やはり生の持つ求心力は凄い。

Ⅰ、Ⅱ幕は平凡だがⅢ幕こそ見せ場、聴かせどころで、例の「オシアンの歌」の切々たる美旋律が胸を打つ。また、この旋律を組み合わせて綴られるこの幕の音楽の完結性も高い為、甘ったるい小児性を脱却できていないもののドラマもそれなりの説得力があるので、続く最終幕もさほどの違和感もなく大団円を受け入れてしまった。

ウェルテル役ピルグは、1年前に同じく新国立劇場の「愛の妙薬」を聴いたが、今回の方がずっと良い感じだった。
藤村もなるほど世界のメゾの実力を感じた。
メゾというよりソプラノでも通るような高域もトランペットのように歌って吃驚。幸田浩子も黒田博も健闘。

舞台装置もシックで豪華。

今回のピットは東響。…今日の出来はイマイチ。

♪2019-036/♪新国立劇場-03

2019年3月23日土曜日

東京交響楽団 川崎定期演奏会 第69回

2019-03-23 @カルッツかわさき


クシシュトフ・ウルバンスキー:指揮
東京交響楽団
ヴェロニカ・エーベルレ:バイオリン*

モーツァルト:バイオリン協奏曲第5番イ長調* K219「トルコ風」
ショスタコーヴィチ:交響曲第4番ハ短調 作品43
----------------------
プロコフィエフ:無伴奏バイオリンソナタニ長調 作品115 第2楽章から*

カルッツかわさきでのクラシック・コンサートは先月初めの名曲全集以来の2度目。
そもそも、このホールはアコースティックな音響効果はうまくチューニングされていないのではないかと思う。

個人的な好みもあるが、このホールの響は乾きすぎていると思う。弦に潤いがない。とはいえ、管・打楽器では音はよく出ているので、芸術劇場のように舞台上で音が閉じ込められているような不快感はないのだけど。

ともかく、クラシック向きとは思えない。

まだ、しばらくミューザが改修のために使えないので東響川崎定期も名曲全集もカルッツで開催されるのが、辛いところだ。

ヴェロニカ・エーベルレは初めてだとばかり思っていたら、2015年に読響との共演でメンデルスゾーンの協奏曲を聴いていた。その時の記録には可もなく不可もなく、あまり印象に残らなかったようだ。で、今回もまあ上手な演奏だと思うけど、モーツァルトじゃ独自色も出せないのかもしれない。

なぜ、モーツァルトとショスタコーヴィチがカップリングなのか分からない。プログラムにもコンセプトが書いてない。

政権に翻弄されたショスタコーヴィチにとって色々な思いのこもった作品なのだろうが、何しろ馴染みがほとんどないので、楽しめるというところまでは至らなかったけど、モーツァルトとの対比では編成の規模が倍ほど大きく(ショスタコの全交響曲15曲中最大編成だそうな。)、楽器も多彩なので、退屈することもなかった。

後刻、Wikipediaを読むと弦の編成も指定してあるようで、それによると22型!で弦だけで90人。菅・打楽器を含め合計134人を必要とすると書いてある。
この日の東響は大編成ではあったが、これほどではなかった。第一、134人もステージに並ばないのではないか。一度見てみたいし聴いてみたいが。

♪2019-023/♪カルッツかわさき-02

2019年3月19日火曜日

三月歌舞伎公演(小劇場)元禄忠臣蔵/積恋雪関扉

2019-03-19 @国立劇場


(主な配役)
『元禄忠臣蔵』
徳川綱豊卿⇒中村扇雀
富森助右衛門⇒中村歌昇
中臈お喜世⇒中村虎之介
新井勘解由⇒中村又五郎
                     ほか
『積恋雪関扉』
関守関兵衛実ハ大伴黒主⇒尾上菊之助
良峯少将宗貞⇒中村萬太郎
小野小町姫/傾城墨染実ハ小町桜の精⇒中村梅枝

真山青果=作
真山美保=演出
●元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)二幕五場
 御浜御殿綱豊卿 (おはまごてんつなとよきょう)
      伊藤熹朔=美術
      中嶋八郎=美術
第一幕 御浜御殿松の茶屋
第二幕 御浜御殿綱豊卿御座の間
        同      入側お廊下
        同      元の御座の間        
        同      御能舞台の背面

宝田寿来=作
●積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと) 
 常磐津連中
 国立劇場美術係=美術

小劇場での公演は12年ぶりだそうな。僕は初めての経験だ。小劇場だから2階はない。故に、第劇場公演ならいつも決まって席を取るお気に入りの2階最前列花道寄り通路側で観ることもできない。で、どうせ1階で観るなら前方花道寄りがよかろうとその辺をとったが、これが大正解だった。

個々の役者の熱心なファンという訳ではないので、役者がよく見えるより、舞台全体を俯瞰したいというのが2階最前列の意図なのだけど、今回は、役者の近くに座ってみ、なるほどこういう楽しみ方もあるかと納得した。

やはり迫力がある。セリフが聞き取りやすい。

さて、小劇場での公演は、国立劇場の説明によると、「上演が途絶えていた名作の復活や、次代を担う俳優が初めて大役を勤める舞台など“挑戦する小劇場歌舞伎”として上演を重ねてきました。」そうだ。

なるほど、それで、大看板は出ていないが、ベテランに中堅を配し、かなり意欲的な布陣とみた。

「元禄忠臣蔵」では扇雀、又五郎というベテランに対し、歌昇と虎之介が担ったのは彼らがこれまで演じていた役より少し大きめの役であったように思う。そこでの彼らの熱演は、これまでの2人の印象をガラッと変えてしまった。
歌昇も虎之助も実にうまい。なるほど与えられたら大きな役もできる力を持っているのだ、と大いに感心した。

常磐津の大曲『積恋雪関扉』での菊之助と梅枝も同様で、菊之助の場合は既に中看板くらいの存在になっていると思うが、それでも大伴黒主は初役だそうだ。因みに、今回の歌昇、虎之介、梅枝が演じた役もすべて初役。)。

これまでにも大ベテランで観たことがある演目であるが、その面白さは分からないでいたが、この2人も実に熱の入った演技で目が覚めるように話がよく分かって踊りも楽しむことができた。

国立劇場ならではの企画だが、見事に成功したと思う。何年かに一度はこういう機会を若手に与えることは大切なことだと、観客にも納得させる内容だった。

♪2019-034/♪国立劇場-05

2019年3月18日月曜日

プレシャス・ストーン <NJP特典コンサート>

2019-03-18 @すみだトリフォニーホール


藤井将矢:コントラバス
中舘壮志 & マルコス・ペレス・ミランダ:クラリネット
腰野真那:パーカッション
上岡敏之:ピアノPf

グリエール:プレリュードとスケルツォ 作品32 藤井+上岡
グリエール:インテルメッツォとタランテラ 作品9   藤井+上岡
ブラームス:クラリネット・ソナタへ短調 作品120-1 中舘+上岡 
ブラームス:クラリネット・ソナタ変ホ長調 作品120-2 ミランダ+上岡
J.ダドウル:スノーブラインド 腰野+上岡

新日本フィルの、定期会員や年間セット券購入者(先着順)に対するサービスの室内楽コンサートだった。これがなければすみだトリフォニーまで出かけることはなかったろうな。昔2度ばかり行ったことがあったが、リタイア後は足が遠のき、多分10年ぶりくらいだ。

6曲演奏されたが、ピアノとコントラバス、ピアノとクラリネット、ピアノとパーカッションという組み合わせで、ブラームスのクラリネットソナタ2曲以外は現代曲だ、皆目知らない作曲家の作品だった。

ブラームスのソナタも、CDは持っているし、何度か聴いているけどクラリネット五重奏や三重奏に比べると格段に馴染みが薄く、生で聴くのも初めてだった。そういう意味では良い機会だったが、室内楽を聴くには会場が広く(キャパ1800席)、席は遠すぎて(23列センター)気持ちが入り込まなかった。

やはり、室内楽は小ホールに限る。大ホールでもせめて5列以内程度に座りたい。

♪2019-033/♪すみだトリフォニーホール-01

みなとみらいクラシック・マチネ~名手と楽しむヨコハマの午後〜 セドリック・ティベルギアン ピアノ・リサイタル

2019-03-18 @みなとみらいホール


セドリック・ティベルギアン:ピアノ

【第1部】
ベートーベン:15の変奏曲とフーガ変ホ長調「エロイカ変奏曲」 作品35
ブラームス:シューマンの主題による変奏曲 作品9
【第2部】
ドビュッシー:12のエチュード
----アンコール------------
ドビュッシー:前奏曲第1巻第10曲「沈める寺」

先月、イブラギモヴァとのブラームス・バイオリン・ソナタ全曲を好感を以って聴いたばかり。今回はソロ。

Ⅰ部では独音楽の変奏曲の大曲2つ。
Ⅱ部はドビュッシーエチュード。
なぜこの組み合わせか分からなかった。

3曲とも複数の曲で構成されている。
ベートーベンの所謂「エロイカ変奏曲」は序奏-主題に続いて第1から第15変奏までと続いてフーガとコーダで終わるので、全18曲とカウントすることもできる。

ブラームスの変奏曲は主題と16の変奏だ。

性格は異なるがドビュッシーはタイトルどおり12曲の短い曲で構成されている。

なので、音楽の本質とは関係ないが、聴きながら指を折って現在地を確認するのだけど、大抵途中で迷子になってしまう。そうなると、全曲の終わりがに自信が持てないで、困ってしまう。

この「エロイカ変奏曲」のテーマはその名のとおり、ベートーベンの交響曲第3番「英雄=エロイカ」の終楽章でも用いられたほか、バレエ音楽「プロメテウスの創造物」でも使われているベートーベンお気に入りの旋律だ。多分、変奏にもふさわしい性格を持っているのだろう。

そんな訳で、その主題の旋律に馴染みが深い、というだけでなく、CDも聴いているので、迷子になる程度ではあるが慣れ親しんだ曲を生で聴くことができて、これは収穫だった。

ブラームスがシューマンの旋律を主題にした変奏曲はCDも持っていないし初めて聴いたが、何しろこの2人の組み合わせであるからは、相当コンプリケートなものであることは覚悟して聴いたが、いやはや緻密な音楽だ。
ベートーベンの作品のように揺るぎないテーマが骨太に貫いている訳ではなく、素人の耳には、旋律の変奏というより心情の変奏が繰り返されているように聴こえた。枯れて老練なピアニズムの味わいだ。とはいえ、ブラームス21歳の作品だというからその精神構造はどうなっているのだろうと思う。

ドビュッシーの練習曲もナマでは初めて聴いた。
各曲に練習曲としての目的が副題のように付されているので、なるほどと思いながら聴いた。
例えば、第1曲は「チエルニー氏に倣って」で、チェルニーの練習曲風に機械的で初歩的な指使いを繰り返す音楽だ。
第8曲は装飾音のための練習、第11曲はアルペジオのための作品。
という次第で、まことに正統的なアピア練習のための作品集のようでもあるが、そこはドビュッシーの作品で、ほとんど調性は無視されている。全音音階や教会旋法などが取り入れられているが、ベートーベンとブラームス2曲を聴いた後では、とても不思議な響きと雰囲気を漂わせるが、ピアノ音楽の世界を一挙に拡大した新たな世界が面白い。

♪2019-032/♪みなとみらいホール-12

2019年3月17日日曜日

輝けるテノール 錦織健テノール・リサイタル

2019-03-17 @みなとみらいホール


錦織健:テノール
多田聡子:ピアノ*

サン=サーンス:ノッテ・ステラータ〈星降る夜〉
ニーノ・ロータ:ロミオとジュリエット
ショパン:別れの曲
スッペ:恋はやさし野辺の花よ
服部良一:蘇州夜曲
多忠亮:宵待草
滝廉太郎:荒城の月
大中恩:しぐれに寄せる叙情
武満徹:小さな空
武満徹:死んだ男の残したものは
喜納昌吉:花
宮沢和史:島唄
バッサーニ:眠っているのか、美しいひとよ
カッチーニ:麗しのアマリッリ
スカルラッティ:すみれ
プッチーニ:「トゥーランドット」より“誰も寝てはならぬ”
バーンスタイン:「ウェスト・サイド・ストーリー」より “マリア”
ビクシオ:マリウ愛の言葉を
ラカジェ:アマポーラ
モリコーネ:ネッラ・ファンタジア 
----------------
ドビュッシー:月の光*
QUEEN:We will Rock you
      伝説のチャンピオン
  Love of my life
              Don't stop me now

「輝けるテノール」と題された独唱会。相変わらず輝いていたなあ。この人は話が(様子も)おかしいのでいつも本当に楽しめる。
「第九」などのソリストでの登壇とは人格が異なるようだ。

前半日本の歌、後半伊国の歌、Encはクィーンで大サービス。あんたはチャンピオンだよ。

♪2019-031/♪みなとみらいホール-11

2019年3月15日金曜日

国立演芸場03月上席

2019-03-15@国立演芸場


落語            瀧川鯉斗⇒転失気
曲芸            鏡味よし乃
落語            六華亭遊花⇒麦札
バイオリン漫談  マグナム小林
落語            雷門助六⇒代りめ
      ―仲入り―
落語    三遊亭遊之介⇒真田小僧
俗曲            桧山うめ吉
落語            三遊亭遊三⇒柳田格之進

二つ目瀧川鯉斗は近々真打になるらしいが、見所があった。今後も精進を続けてくれたらいいが、真打になって成長の止まる噺家のなんと多いことか。

今席の楽しみは遊三の「柳田格之進」。好きな人情噺だ。
が、大いにがっかりした。
筋書きを語るだけで、物語になっていない。遊三といえば、81歳。真打になってから半世紀以上だが、それでもこんな程度だ。三代目志ん朝のCDでも聴いてしっかり勉強して欲しいよ。

うめ吉姐さんも相変わらず声が小さくてこのままだとダメだよ。
鏡よしの乃の1人曲芸に目新しさはないが好感。

♪2019-030/♪国立演芸場-04

2019年3月14日木曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2019前期 川久保賜紀 & 小菅優 デュオ・リサイタル

2019-03-14 @みなとみらいホール


川久保賜紀:バイオリン
小菅優:ピアノ

ブラームス:バイオリン・ソナタ第1番ト長調「雨の歌」作品78
  〃  :バイオリン・ソナタ第2番イ長調 作品100
  〃  :バイオリン・ソナタ第3番ニ短調 作品108
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シューマン:「3つのロマンス」から第2曲 作品94-2
ブラームス:「FAEソナタ」から第3楽章スケルツォ

先月イブラギモヴァ&ティベルギアンで聴いたばかりの同じプログラムを(この時は小ホール)、今日は同じみなとみらいホールの大ホールで。

あいにくこのアフタヌーンコンサート・シリーズではうっかりして先行発売に出遅れて良席が得られず、真ん中だが列番20番台。あまりに遠い。オーケストラならこの辺も一興だ(個人的にはもっと前が好き。)が、独奏・二重奏を含む室内楽となると音源から離れすぎだ。

音は聞こえるが音楽が聴こえてこない。

イブラギ〜の、前から2列目のど真ん中という、演奏家の息遣いが聴こえるかぶりつきで聴いた至福の時と、つい比べてしまうと、もう隔靴掻痒・切歯扼腕で妄想ばかりが駆け巡った。

このシリーズ前期だけであと4回と思うと悲しくなる。
尤も今回はイブラギ〜の印象が鮮明だったせいもある。
家でCD回しているような音だったが、残りはなんとか態勢を立て直して演奏に集中できるように努めよう。

♪2019-029/♪みなとみらいホール-10

2019年3月10日日曜日

新国立劇場オペラ「ドン・ジョヴァンニ」

2019-03-10 @新国立劇場


指揮:河原忠之(オペラ研修所音楽主任講師)
演出・演技指導:粟國淳(オペラ研修所演出主任講師)
装置:横田あつみ
照明:稲葉直人(ASG)
衣裳コーディネーター:加藤寿子
舞台監督:須藤清香
合唱⇒新国立劇場合唱団
バレエ⇒新国立劇場バレエ団
管弦楽⇒新国立アカデミーアンサンブル

新国立劇場オペラ研修所
 第19期生、第20期生、第21期生、賛助出演:松中哲平(16期修了)
ドン・ジョヴァンニ⇒高橋正尚
ドンナ・アンナ⇒平野柚香
ドン・オッターヴィオ⇒水野優
ドンナ・エルヴィーラ⇒十合翔子
レポレッロ⇒伊良波良真
マゼット⇒井上大聞
ツェルリーナ⇒斉藤真歩
騎士長⇒松中哲平

新国立劇場オペラ研修所修了公演
モーツァルト:オペラ「ドン・ジョヴァンニ」
【全2幕 イタリア語上演/字幕付】

予定上演時間:約3時間15分
第Ⅰ幕90分
 --休憩20分--
第Ⅱ幕85分

新国立劇場に設置されているオペラ研修所というところはそもそも入所するのが大変難関なのだそうだ。司法試験に合格してから入所する司法研修所みたいなものか。
3日間の公演に日替わりで出演した研修生というのも、各自半端なキャリアではなく、ほぼ全員が音大・大学院を卒業し、海外留学やコンクール入賞、オペラ出演経験済みで入所してくるというから、アマチュアとはいえない経歴の持ち主ばかりだ。

修了公演といっても本格的なもので、中劇場での公演だったが、ナマのオーケストラがピットに入って、舞台もそこそこのものが作られていた。

そういう基礎的な実力は備えた人達による公演なので、全体としてはちゃんとオペラが楽しめる結構良い出来だった。

が、やはり百戦錬磨のプロとは一味違う。
歌唱力もさることながら一番物足りないのは演技力かな。
歌唱時は演技していても、待っている時間が役になりきっていない感じだった。
それで観ている側の感情移入が十分にできない。

なんて偉そうに、無責任なコメントをしているが、今後も継続する大変な努力と幸運に恵まれて世に出るスター歌手がこの中から生まれるかもしれない。そうあってほしいね。


♪2019-028/♪新国立劇場-02

2019年3月9日土曜日

読売日本交響楽団第110回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2019-03-09 @みなとみらいホール


シルヴァン・カンブルラン:指揮
読売日本交響楽団
サラ・ルヴィオン:フルート*

イベール:寄港地
イベール:フルート協奏曲*
ドビュッシー(ツェンダー編):前奏曲集
ドビュッシー:交響詩「海」
----------------
ドビュッシー:シランクス*

カンブルラン事実上横浜最後の舞台…のせいか、オケも良い緊張感に包まれて得意の仏音楽集で見事な演奏を聴かせて有終の美を飾った。
イベール「寄港地」は初聴きだったが、まるでドビュッシー。夢見心地でイタリアの港を周遊。Fl協はルヴィオンのハッタリ不足!

首席Flの感じで、独奏Flならもう少しメリハリつけても良かったのでは。
が、Encでパンの笛をやってくれたのは嬉しかった。長く聴いていなかった。
後半ドビュッシの前奏曲集はツェンダーによる管弦楽版。原曲も馴染みが薄いが、この作品は日本初演だった。どおりで聴いたことなかったよ。

シメはドビュッシー「海」。今日の読響の管・弦・鍵・打のアンサンブルの美しさがここにきて極まった。かくも精緻な演奏は滅多に聴けない。
盛大な拍手歓声はお世辞ではなかった。カンブルランも満足げで良かった。
僕はというと遠藤さんと2度目が合った…のでこれもちと嬉しい。

♪2019-027/♪みなとみらいホール-09

2019年3月5日火曜日

国立演芸場03月上席

2019-03-05@国立演芸場

落語    柳家ほたる⇒猫と金魚
落語            柳家小八⇒唖の釣
音曲漫才      めおと楽団ジキジキ
落語            林家きく麿⇒陳宝軒
落語            柳家小里ん⇒蜘蛛駕籠
     ー仲入りー
漫才            ホームラン
落語            橘家文蔵⇒寄合酒
奇術            マギー隆司
落語            柳家小満ん⇒盃の殿様

聴く側の態勢も不十分だったが、大入りの割には盛り上がらなかった。
漫才の「ホームラン」がせいぜい「ヒット」を飛ばしたのが1番の上出来で、肝心の落語に聴くべきモノなし。
真打に上がってしまえば落ちることがないという世界も緊張感を欠いているよ。

♪2019-026/♪国立演芸場-03

2019年3月2日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第345回横浜定期演奏会

2019-03-02 @みなとみらいホール


ダレル・アン:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
周防亮介:バイオリン*

【輝け!アジアの星☆第11弾】
マイアベーア:歌劇《預言者》より「戴冠式行進曲」
ラロ:スペイン交響曲ニ短調 op.21*
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ラヴェル:《ダフニスとクロエ》第2組曲
-----アンコール-----
タレガ:アルハンブラの思い出(無伴奏バイオリン版)
サティ(ドビュッシー編):ジムノペディ第1番(管弦楽版)

マイアベーアって、名前は知っているけど作品に関しては全く知識がなかったが「戴冠式行進曲」は聴き馴染みのある曲だった。とはいえ、オーケストラ演奏で聴くのは初めてだ。おそらく、吹奏楽で聴いたことがあるのだと思う。Youtubeで探してもHitするのはほとんど吹奏楽版だ。

そのせいか、どうか、日フィルの演奏もまるで吹奏楽のようだった。そういう譜面なのだからそれでいいのだけど。

さて、今日のプログラムは、スペイン交響曲以下ドビュッシーもラヴェルも華やかな管弦楽技法が駆使されているものばかり。その華やかさの大部分は増強された多彩な管楽器と珍しい打楽器が担っている。
その華やかな<管・弦楽>を、最初に聴いたマイアベーアの<吹奏楽>の印象をそのまま引き摺って聴くことになってしまった。
つまり、本日の演奏は<日フィル吹奏楽団>に弦楽アンサンブルが付属したような感じに終始した。

そういう音楽なのだから、それが悪い訳ではないし、華やかなオーケストレーションを楽しむことができたのだけど、どうも弦楽アンサンブルの部分が弱く聴こえてしまう。
以前なら、同じ音楽を聴いてなんの違和感もなかったし、これぞ管弦楽の楽しさと受け止めていたのに、この日の演奏は、いつも鳴りの良い日フィルの弦楽パートの魅力はほとんど発揮されない。
そんな不審を抱きながら聴いていると、ラロもドビュッシーもラヴェルも、音楽の良い部分はほとんど管楽器に任せ、弦は音楽の下支えだったり、ボリュームを付けることにしか使っていないような気がしてきたけど、本当かなあ。

ところで、スペイン交響曲で独奏バイオリンを担当した周防(すほう)亮介は初聴きだった。
名前から男だと分かっていたが、チラシなどの写真では女性のようでもある。衣装や靴もおよそ男らしさがない。そういう趣味らしい。それをよしとする生き方を認めなければならない面倒な世の中だ。男なら男らしくしろ!なんて時代錯誤なことを言っていたらこの社会からつまみ出されそう。バイオリンさえ上手に弾いてくれたらそれでよし。

…ところが、出だしのソロの音程が微妙に外れた。
ここでも最初の印象に最後まで引き摺られ、注意深く音程チェックしながら聴くことになってしまった。そして、全体として音程に甘い、という結論に達した。

最初に<音程事故>がなければそんな聴き方はしないのだけど、これはお互いに不幸なことだ。

ま、音程の少々の甘さはさほど問題にはならない。
生演奏だし、どんな名人・上手にも稀にはあることだ。そういうことを気にせず弾きまくる大ベテランを聴いたことがある。ロストロポーヴィチも晩年は大甘だった。そんなことよりもっと大切なものがあると言わんばかりだ。
そうかもしれない。
でも、そう言えるのは熟成して良い味が出るようになってからだろう。

僕にとっては、どんな味よりも先ず以てピッチが大切だけど。

♪2019-025/♪みなとみらいホール-01