2023年6月27日火曜日

東京フィル第987回サントリー定期シリーズ

2023-06-27 @サントリーホール



尾高忠明:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
亀井聖矢:ピアノ*

《ラフマニノフ生誕150年》
尾高惇忠:オーケストラのための『イマージュ』
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18*
ラフマニノフ:交響曲第1番ニ短調 作品13



亀井クンの聖なる矢が大勢の観客のハートを射抜いたようで、ラフマニノフピアノ協奏曲第2番が終わるなり、ブラボーとも聞こえぬ奇声・喚声・拍手・喝采の嵐。立ち上がった人は多かったが特にピアニストかぶりつきゾーンはほぼ全員立ち上がっていた。後ろから見ていると年配の女性ばかり。

休憩を挟んだ後半になるとその近辺はだいぶ穴が空いていた。残っているのは、見慣れた頭髪の薄い中年以上の男性の頭ばかり見えたが。
いや、穴はその辺りだけでなく、僕の周りでもあちこちで穴だらけ。亀井くクンだけを聴きに(見に)来たお客が多かったようだ。

不思議なのは、かぶりつき席を彼女たちがどうやって確保したのか?30人近くが一個の集団のように見えたのは勘違いかもしれないが、そうだとしても、定期会員とは思えなかったなあ。

…ともかく、ラフマ協2番は、最初はテンポが遅いなと思ったが、徐々に聴き慣れた風な展開になって、まあ良かったか…くらいの感想しかないよ。なにしろ、今日もサントリーはピアノの音が悪い。ピアノの第一声で惹きつけるという要素がまるでないのでつまらない。

肝心のラフマ交響曲1番。
弦も管も綺麗な音で、流麗なるラフマニノフ・サウンドという感じか。しかし、印象薄く流れてしまった。
やむを得ない。6日前に同じサントリーでノセダ+N響の快演を聴いたばかり。

音楽の作り方の違いなんだろう。
一番違いが明確になったのは終楽章のクライマックス。
ノセダ+N響の時は、弦が「総員かかれ!」でガリガリと弾き倒すような荒々しい熱量が伝わってきたが、今日の東フィルは普通に「クライマックス」で、はみ出るような力強さがなかった。やればできるんだろうが、音楽の設計図が違うんだね。
まるで違う音楽を聴いているような心持ちだった。

♪2023-114/♪サントリーホール-14

2023年6月24日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 Dramatic Series 歌劇「サロメ」

2023-06-24 @みなとみらいホール



沼尻竜典:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

田崎尚美(サロメ)
福井敬(ヘロデ)⇒高橋淳(代役)
谷口睦美(へロディアス)
清水徹太郎(ナラボート)
大沼徹(ヨハナーン)
山下裕賀(小姓)
小堀勇介(ユダヤ人1)
新海康仁(ユダヤ人2)
山本康寛(ユダヤ人3)
澤武紀行( ユダヤ人4)
加藤宏隆(ユダヤ人5)
大山大輔(ナザレ人1)
大川信之(ナザレ人2)
大塚博章(兵士1)
斉木健詞(兵士2)
大山大輔(カッパドキア人兼務)
松下美奈子(奴隷)

<神奈川フィル、京響、九響 共同企画>
R.シュトラウス「サロメ」
全1幕〈ドイツ語上演/日本語字幕付〉

予定上演時間:約1時間40分(休憩なし)



思いの外楽しめた。
けど、先月末に新国立で観たばかりなので、インパクトの点で不足を感じた。
それに、はっきり言えば、このオペラを演奏会形式でやったのでは面白み半減必至なのだ。
本筋は聖書の教えなんぞでは全くなくて、七つのベールの踊りが代表するサロメの官能的魅力こそ主題ではないのか。

だいぶ前に、デュトワ+N響でも「サロメ」を演奏会形式で経験したがこの時もやはり物足りなかった。

今日も「踊り」は<字幕>だけだ。
この場面だけでもダンサーを入れられないものかな?

歌唱陣は、最初はピットのオケを相手にするのではないから、やや埋もれがちだったが、徐々に良く通りだした。

福井敬が急遽降板したのは残念で、高橋淳に交代したが、彼1人譜面台を持って動き回るのもおかしい。終演後のCCでは頻り恐縮して頭を下げていたが、歌唱はとても良かったし、代役を良く熟してブラボーだよ。

神奈川フィルの演奏は、歌と物語に集中ししていたせいもあるが、まったく瑕疵のない演奏だったのではないか。

Dramatic Seriesの第1回目というが、そう言えば、長く神奈川フィルを聴いていて、オペラ全曲を聴いたのは初めてだったかも。
今後も演奏会形式(プログラムにはセミステージ形式と書いてあったが、両者の違いに関する確立された見解はないようだ。)で、題材を選んで、取り上げてほしい。

https://youtu.be/wlU13Y7Oe9o

♪2023-113/♪みなとみらいホール-23

2023年6月23日金曜日

薮・井・佑・介  〜たったひとりのオーケストラ〜

2023-06-23 @アプリコホール(小ホール)


薮井佑介:電子キーボード

・映画「ひまわり」愛のテーマ
・銀河鉄道999
・Sing Sing Sing
・オリジナル曲 「風の如く 〜宇喜多秀家によせて〜」
など




アプリコの小ホールは初めて。広めの会議室のような造りで、「たったひとりのオーケストラ」にしては狭い。それに集まった人たち(多くが招待客のようだった)が、音楽や服飾、デザインなどの所謂<ギョウカイ人>が多くて場違いな感じもしたが、始まってみればクラシックコンサートのように両側・後ろに神経質のピリピリした様子の人は皆無で、お気楽なコンサートだった。

ウリが世界初の5次元キーボード奏者だそうで、特殊なセンサーがたくさん埋め込まれたキーボードがアコースティクな楽器を演奏しているように演奏できるというが、これは使いこなすのに相当な修練が必要みたい。

作曲・編曲も自分でやるのだそうで、冨田勲みたいな感じか。喧しいロックの爆裂音ではなく、穏やかな音楽が多く、まあ、ヒーリングミュージックと言えるかも。

惜しかったのは、拡声にホールのPA装置を使っていたことだ。やはり大出力アンプでドライブした専用の音響システムが欲しかったな。

https://youtu.be/R0IsAKFUMNg

♪2023-112/♪アプリコホール-01

2023年6月21日水曜日

第1988回 NHK交響楽団 定期公演 B-1

2023-06-21 @サントリーホール



ジャナンドレア・ノセダ:指揮
NHK交響楽団
庄司紗矢香:バイオリン*

J.S.バッハ(レスピーギ編):3つのコラール
レスピーギ:グレゴリオ風協奏曲 作品15*
ラフマニノフ:交響曲第1番ニ短調 作品13
-------------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第2番二短調 BWV1004から第3曲サラバンド*




ノセダにハズレなし。A定期に続いてB定期もワクワクさせる演奏だった。

最初に残念なところ。
今日のサントリーはえらく乾燥していて、特に弦に潤いがない。
しかし、ノセダのシャキシャキした音楽作りには、むしろこの響の硬さが好都合だったかもしれない。

レスピーギはとてもエキゾチックな音楽だった。
教会旋法で始まったらしいが、その後にOboeが先導する旋律はむしろ中東風な節回しが混ざり、ミクロス・ローザを思い出す。かと思うと第3楽章は冒頭西部劇の劇伴音楽みたい。

…と、あれやこれや興味深い旋律に乗せて庄司紗矢香の入魂の超絶技巧がほぼずっと鳴りっぱなしで聴き手の気持ち心地良く煽ってくれる。

ラフマニノフ交響曲第1番。これはとても珍しい。2-3番は聴く機会が多いが1番となると生で聴いたのはいつの事だったか。
で、そのとんでもなく久しぶりの(CDでは時々聴いているが、)ラフマが、なんとも面白い。これで初演失敗したなんて、本当に陰謀だったのかも。
ノセダのタクトは快調そのもので派手な音楽をうんと華々しく盛り上げて、ナマ管弦楽の醍醐味を満喫させてくれた。

♪2023-111/♪サントリーホール-13

シリーズ 未来につなぐもの 「楽園」

2023-06-21 @新国立劇場



【作】山田佳奈
【演出】眞鍋卓嗣

豊原江理佳
土居志央梨
西尾まり
清水直子
深谷美歩
中原三千代
増子倭文江
 ほか声の出演13名

「楽園」
予定上演時間:2時間30分
 --休憩なし--



登場人物は7人の女性だけ(他に声だけの出演や7人が語ることで存在が明らかになるが姿も見せず声も発しない人物も。)。

舞台は南方の島(明らかに沖縄をイメージさせる)の拝所。
時は現代。今日は、年に一度の神事が行われる日。しきたりで、女だけで執り行われる。
が、折しもこの日は村長選挙の日。現職村長と区長が争っている。7人の中には村町の娘、区長の嫁、出戻り女、過疎が進んで若い女性も駆り出されている。東京から来たTV取材の女も。

そんな状況の中で、いろんな対立が生まれ、秘め事も顕になってゆき、神事は進まない。

ここでは、今、我らが社会が背負っているいろんな問題が文字どおりの縮図として提示され、他人事ではない。

一方で、声を出して笑ってしまうところもあって、なかなかよく考えられたお話だと感心した。すっきり解決ではないけど、作者の人を見る目の誠実さが感じられて、読後感がいい。

♪2023-110/♪新国立劇場-12

2023年6月18日日曜日

篠崎史紀の公開レッスン&コンサート~ブラボー!未来の名手たち~

2023-06-18 @みどりアートパーク



篠崎史紀:バイオリン
小澤佳永:ピアノ

ドボルザーク:ユーモレスク
ドボルザーク:ソナチネ ト長調 Op.100
クライスラー:美しきロスマリン
       愛の悲しみ
       愛の喜び
ポルディーニ(クライスラー編):踊る人形
レハール(篠崎史紀編):メリー・ウィドウ・ワルツ
ジーツィンスキー(篠崎史紀編):ウィーン我が夢の街



前半約1時間は小学生〜高校生5人のバイオリンレッスン。
低学年から順番で、最初は小学1年生が2人続いて、お世辞にも上手とは言えない。
小学3年、5年、高校1年生はそれなりに上手だが、まだまだ。
それが、マロさんがちょこっとアドバイスをすると、確実に音の流れが良くなり、音程も確かになった。緊張が解けたせいもあるだろうけど。

指遣いやボウイングには全く言及せず、専ら音楽の構成を教えて、そこに適当に作った物語を載せて、この人の気持ちで弾きなさい〜というような指導だが、子どもには効果覿面だなと感心した。

後半は、バイオリン小品集。

プログラムに曲目解説がなかった(あえて載せなかったのだと思う)から、と言って、各曲の説明をしてくれるのだけど、どうも、マロ製の大甘の物語もだいぶ混じっているみたいで面白く、その話を真に受けてから演奏を聴くとしみじみと心に沁みてくるのだから困った(いつもは小品だからと言って軽い気持ちで聴いている「愛の悲しみ」が今日程胸に迫ったことはなかった。)。

もちろん、演奏はもうベタベタ甘くて情緒たっぷり。他のクラシックコンサートではこんな弾き方はしない…と思う。
一種の遊びでもあったけど、客席には子ども連れも多く、こういう音楽への誘導は悪くないなと思った。

♪2023-109/♪みどりアートパーク-03

2023年6月15日木曜日

みなとみらいランチタイムコンサート 〜中川英二郎 X 塩谷哲

2023-06-15 @みなとみらいホール



中川英二郎:トロンボーン
塩谷哲(しおのやさとし):ピアノ

塩谷哲:Spanish Waltz
J.S.バッハ:Air on the G Strings
中川英二郎:Secret Gate
塩谷哲:Funwari
中川英二郎:Trisense
--------------------------
モンティ:czardas


6回シリーズの中で唯一異色のジャズコンサート。
ピアノの塩谷哲は初めてだったけど、今日の主役、トロンボーンの中川英二郎はミューザで度々…とは言え、今日のようにピアノとのデュエットは初めて。

室内楽向けに確保した正面かぶりつき席なので、彼が少し顔を上げて演奏すると朝顔の奥まで視線が一直線になり、強力な音圧で、ピアノさえ借りてきた猫状態。

まあ、達者な人で、舌が2-3枚あるのではないかと思う程、超速のタンギング。
また、スライドトロンボーンなのに、その速さでツボにピタッと嵌るのも凄い。クラシックではこんな超絶技巧を要求される曲は無いのではないか?

♪2023-108/♪みなとみらいホール-22

2023年6月14日水曜日

横浜交響楽団 第724回定期演奏会 【ロマン派の音楽】

2023-06-14 @県立音楽堂


田中健:指揮
横浜交響楽団

シューベルト:劇音楽「キプロスの女王ロザムンデ」から(抜粋)
 序曲(歌劇「アルフォンスとエストレッラ」の序曲)
 間奏曲Ⅲ
 狩人の合唱
 バレエ音楽Ⅱ
 間奏曲Ⅰ

メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調 作品56「スコットランド」 



シューベルト作品もメンデルスゾーン作品もいずれも重量級だった。

前半の劇音楽「キプロスの女王ロザムンデ」からの5曲の抜粋がこれ迄に聴いた組合せとは異なり、少なくとも
「序曲」は初演時と同じ「アルフォンスとエストレッラ」の転用序曲で、これは初聴き。
間奏曲Ⅲは一番有名だが、最後に演奏された
間奏曲Ⅰも多分初聴きかな。これこそ未完成交響曲のフィナーレだという説があるそうだ。曲順を変えて最後に持ってきたのは、その重々しさゆえだろうな。これは複雑な音楽だなと感じたよ。

「スコットランド」。
好きな曲だけど、今日改めてなかなか難しい音楽だなと思った。アマオケが手こずったからというのではなく、横響は善戦していたが、音楽自体の重さに気付かされた思い。

余談(俄勉強):シューベルトは、劇音楽「キプロスの女王ロザムンデ」の初演に「序曲」が間に合わなかったので、自作・歌劇「アルフォンスとエストレッラ」の序曲を転用した。
その後シューベルトの死後60年以上経過して楽譜が出版される際に混乱が生じ、これも自作・歌劇「魔法の竪琴」の序曲が本作の序曲としても演奏されるようになった。
現在ではこちらが「序曲」として一般的になっているが、今回の演奏は、本来の姿に戻った。と言ってもどうせ、転用なのだけど。

間奏曲Ⅲの主題は次の作品にも転用されている…とあれこれに書いてある。

弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」D804
ピアノ即興曲変ロ長調 D935-3

しかし、この2作品以外にもロザムンデの旋律はシューベルトの他の作品でも転用している気がしてならないけど分からないので隔靴掻痒。

♪2023-107/♪県立音楽堂-07

2023年6月13日火曜日

バレエ「白鳥の湖」

2023-06-13 @新国立劇場



【指揮】ポール・マーフィー
【振付】マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ/ピーター・ライト
【演出】ピーター・ライト
【共同演出】ガリーナ・サムソワ
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【美術・衣裳】フィリップ・プロウズ
【照明】ピーター・タイガン
【芸術監督】吉田都

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【オデット/オディール】米沢唯
【ジークフリード王子】福岡雄大

バレエ「白鳥の湖」全3幕
予定上演時間:約2時間55分
第Ⅰ-Ⅱ幕 70分
  休憩25分
第Ⅲ幕   40分
  休憩20分
第Ⅳ幕   20分




18年10月の新制作と同じ演出による「白鳥の湖」。
白鳥と王子の役は米沢唯と福岡雄大。前回とは異なる配役を選んだが前回も良かったし、今回にも不満なし。

要点を先に書けば、やはりバレエの王様?
音楽/オケ良し。バレエも見どころ多く堪能できた。

矢継ぎ早に、耳に馴染んだ名曲に合わせ、バラエティのある踊りが続くが、中でも好きなのが2幕の「4羽の白鳥の踊り」と3幕の黒鳥の片脚32回転だ。

こういうシーンでは、今日はこれ以上は近づけないという席だったのでその利点が大いに発揮された。

演出面では、前回も終幕がよく分からなかったのだけど、今回もストンと落ちない。2人は「死んで生まれ変わろう」と(…最近も聞いたなあ)いうことらしいが、無言劇なので、なかなか想像するのが難しい。


●最前列で観ると…
今回は、興味本位で最前列中央やや上手で観た。
オケの音はどうか⇒ピットに入ったオケの音は直接耳に入るより中でブレンドされ天井に反射して降り注いでくるようでガサガサせずまろやかだ。Vnのソロもで弾く場合よりよく響く(東フィルの依田氏のVnが美しい!)。

が、問題もあった。
公演毎にピットの深さや客席との境の壁の高さが異なるので、常に、という訳ではないが、今日のように壁が低くては最前列でなくとも(おそらく1桁列からは)ピット内部が目に行ってしまい、オケの後ろ半分は見えてしまうし、その部分が明るく舞台に集中し難い。

また、あまりに舞台に近いので、ソロやデュエットはとても見易いが、32羽の白鳥たちの群舞はその統制された動きがわかり辛い。

やはり、バレエもオペラも席は10列目以降15列目程度が好都合だと思った次第。

♪2023-106/♪新国立劇場-11

2023年6月10日土曜日

NHK交響楽団1983回A定期 05月公演

2023-06-10 @NHKホール




ジャナンドレア・ノセダ:指揮
NHK交響楽団
べフゾド・アブドゥライモフ:ピアノ*

プロコフィエフ:交響組曲「3つのオレンジへの恋」作品33bis
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番ト短調 作品16*
カゼッラ:歌劇「蛇女」からの交響的断章(日本初演)
[第2組曲]
 Ⅰシンフォニア
 Ⅱ前奏曲
 Ⅲ戦いとフィナーレ
[第1組曲](切れ目なしに演奏)
 Ⅰアルティドール王の夢の音楽
 Ⅱ間奏曲
 Ⅲ戦士の行進
------------------------
ラフマニノフ:13の前奏曲 作品32から第5番ト長調*



ノセダはほぼ8年ぶりだ。その前回が初めてで大きな衝撃を受けた。是非もう一度、それもN響で聴きたいと思っていたが、ようやく果たせた。

前回の「運命」があまりに強烈な印象を残したので、今回は、もう始まる前から、おそらくこんな感じの音楽だろうな、と想像を膨らませていたが、いやはやそのとおりになった。

実は、プロコの「3つのオレンジへの恋」は”行進曲”以外ナマでは聴いたことがないし、カゼッラの「歌劇『蛇女』からの交響的断章」は日本初演なので当然聴いたこともない。にもかかわらず、音楽の感じは想定したとおり、期待したとおりだった。

テンポが良く、シャキシャキとして歯切れの良い音楽だ。
聴いていて小気味良い。

プロコのPf協2番は、多分3番程には有名ではないと思うが、今回初聴きのアブドゥライモフのPfがプロコらしいのだけど、それ以上にノセダらしい音楽だった。
そう言えば、前回聴いた際もプロコPf協3番を演ったのは、お得意のレパートリーなのかもしれない。

また、今日のNHKホールの響の良いこと。今のシーズンはPf向きなのだろうか?このホールの響も好きだけど、Pfがかくもキラキラと美しく鳴ったのはずいぶん久しぶりの感じだ。

さて、問題は、日本初演だ。
カゼッラなんて聞いたこともなかったよ。今年生誕140年というからラフマより10歳若い。レスピーギより4歳若いだけなのでほぼ同世代のイタリア人。
歌劇「蛇女」からの交響的断章は初演が1932年だそうだが、こんな時代の人の作品が日本初演というのに驚く。

2つの組曲(各3曲)で構成されているが、普通は第1組曲から演奏されるところ、今回は、急遽、第2ー第1の順に変えられた。第1組曲は3曲が切れ目なしに演奏される。そして、こちらの方が派手なエンディングを迎えるので、この変更は大正解だったと思う。

実に分かり易く、まるで真面目に構成した軽音楽のようでもあり、映画音楽のようでもあり、聴きながら、昨日聴いた吉松隆の交響曲第3番と感じが似ているなと思った。もちろん吉松作は和のテイストが散りばめられているが、カゼッラの場合は、イタリアの…ローマの…はっきり言えばレスピーギのテイストがそこここに匂い立つ。
イタリアの青い空を思い浮かべて心地良く帰途についた。

そう言えば、Bプロではラフマとレスピーギを取り上げる。これもとても楽しみだ。

♪2023-105/♪NHKホール-05

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 令和5年6月歌舞伎鑑賞教室(第103回歌舞伎鑑賞教室) 『日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―』

2023-06-10 @国立劇場



●解説「歌舞伎のみかた」
 中村虎之介
 中村祥馬

●日本振袖始 一幕
―八岐大蛇と素戔嗚尊―
出雲国簸の川川上の場

岩長姫実ハ八岐大蛇 ⇒中村扇雀
稲田姫       ⇒中村鶴松
素戔嗚尊       ⇒中村虎之介


令和5年6月歌舞伎鑑賞教室
『日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―』

●解説「歌舞伎のみかた」

近松門左衛門=作
戸部銀作=脚色
●日本振袖始 一幕
 ―八岐大蛇と素戔嗚尊―
(にほんふりそではじめ-やまたのおろちとすさのおのみこと-)
  二世藤間勘祖=振付
  高根宏浩=美術
  野澤松之輔=作曲
  十一世田中傳左衛門=作調
出雲国簸の川川上の場



夏の恒例観賞教室。「日本振袖始」は18年にも観賞教室で観ている。その時は時蔵・錦之助(兄弟)で。今回は扇雀・虎之助(親子)。

虎之助を初めて観たのは10年前(その時15歳)で、ずいぶん上手くなったというか、達者になっているので驚いた。

今回は、「解説」も担当したが、中村祥馬との掛け合いも面白く、これまでに何回も観賞教室を観ているが、その「解説」の中で一番堂に入って面白かった。1階客席を埋めた高校生(中学生も?)に大いに受けていたが2階席の高齢者ゾーン?も大いに楽しんだ。

『日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―』は近松の作とも思えないような、スペクタクル時代ものだが、舞踊劇で、あまりセリフはない。しかし、早替わりの大蛇と7人(頭?)の分身が同じ衣装を纏って素戔嗚尊と立ち回る。

浄瑠璃・三味線が4人ずつ、御簾の中ではなく舞台で演奏し、大薩摩も登場して賑やかで見栄えのする舞台だ。

♪2023-104/♪国立劇場-07

2023年6月9日金曜日

東京シティ・フィル第361回定期演奏会

2023-05-10 @東京オペラシティコンサートホール



高関健” / 山上紘生"" :指揮
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
務川慧悟:ピアノ*

シベリウス:悲しきワルツ 作品44”
グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 作品16”*
吉松隆:交響曲第3番 作品75””
---------------------------------
ビゼー(ホロヴィッツ編):カルメン幻想曲*



好漢藤岡幸夫を楽しみにしていたが、なんと肺炎の為入院。急遽前半2曲を高関健に、後半を指揮研究生の山上紘生に変更された。山上は高関の藝大での教え子でもあり、シティ・フィルで吉松作品の練習指揮を担当していたので、急なデビューとなった。

結果は上出来で吉松本人にも祝福された華々しく感動的なデビューとなった。

さて、まずは、前半のグリーグPf協が素晴らしかった。先日、みなとみらいHでこれ以上のPf協は聴けないかと思うほどに素晴らしくブリリアントな演奏(コバケン+小山実稚恵+日フィル)を聴いたが、武満MEMもいつも良くなるホールとは言え、これ程までに美しい響だとは驚き。件のPf協にかなり肉薄している。煌めくPfだった。
まずは音が美しい。Pfとオケとの協奏の妙味が発揮されている。時に丁々発止の緊張関係がある。もちろん、ホールを知り尽くした高関健とシティ・フィルのサポートも按配を心得ているのだ。


後半、吉松隆:交響曲第3番は初めて聴いた。これまで、交響曲は6番ばかり。結論を言えば、今日の3番の方が俄然面白い。45分という大作だが、現代作品にありがちなコケ威や意表を突く爆音もないではないけど、それ以上に旋律が耳に馴染みやすい。終楽章など、ラヴェルの「ボレロ」の高揚部分を延々と続け、クライマックスは未曾有の超爆音で燃焼した。
ま、聴きながら、色々考えることはあったが、「現代」に交響曲となれば、これは意義のある作品ではないかと思ったよ。

劇的デビューを果たした山上クンはやんやの拍手喝采。
腕に嵌めていたApple Watchのノイズメーターが94dBを指したよ。

♪2023-103/♪東京オペラシティコンサートホール-04

新日本フィル:すみだクラシックへの扉#15

2023-06-09 @すみだトリフォニーホール



デリック・イノウエ:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
藤木大地:カウンターテナー*

メンデルスゾーン:劇音楽「夏の夜の夢」序曲 op. 21
モーツァルト:交響曲第36番ハ長調 K.425「リンツ」
パッヘルベル:カノンとジーグニ長調
ヘンデル:歌劇「セルセ」HWV40から「オンブラ・マイ・フ(なつかしい木陰)」*
ヘンデル:歌劇「リナルド」HWV7から「涙の流れるままに」*
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K.492から序曲/「恋とはどんなものかしら」*
モーツァルト:歌劇「ポントの王ミトリダーテ」K.87から「執念深い父がやってきて」*
モーツァルト:モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K.618*
グルック:歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」から「精霊の踊り」/「エウリディーチェを失って」*
---------------------------------
ヴォーン・ウィリアムズ(マーティン・カッツ編):「オルフェウスがリュートをとれば」*



前半はオケのみ。
メンデルスゾーン「真夏の夜の夢」は良。だがプログラム全体の中では座り心地が悪かったのではないか。
というのも後半も含め、その他はヘンデル、モーツァルト等バロック・古典一色だったから。

後半は声休めを兼ねたオケのみ演奏の2曲以外は藤木大地のカウンターテナー・リサイタルの様相。この為彼のレパートリーから古色中心になったのだろう。

前半は弦14型。これがなかなか美しい。
昨日、読響を残念席で聴いて楽しめなかったせいもあるが、やはり自分で納得して選んだいつもの席で聴くって幸せだよ。

後半は10型(一部は弦楽のみも)とコンパクトな編成にチェンバロが加わった。カウンターテナーのレパートリーとしてはこれ以上ないという風な名曲揃いで大変結構でした。

♪2023-102/♪すみだトリフォニーホール-04

2023年6月8日木曜日

日本テレビ 読響プレミア

 2023-06-08 @ミューザ川崎シンフォニーホール

















米田覚士:指揮
読売日本交響楽団
三浦謙司:ピアノ*

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ラフマニノフ:パガニー二の主題による狂詩曲*
チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲
------アンコール-------------------
ドビュッシー:月の光*
チャイコフスキー:弦楽セレナードハ長調 作品48 第2楽章 ワルツ



開演時間に十分間に合うように家を出たが途中電車が止まって動かない。結局開演時刻には間に合わなかったので、2曲目から4F席で聴くことになった。普通なら、曲間に入れてくれるが、今日はTV収録コンサートということもあってか、前半は4Fで、後半を1Fの自席で聴くことになった。何しろ無料なんだし遅参したのだから文句は言えない。

長らくミューザに通っていても4Fは座ったことがなかったので、どんな響きがするのか、むしろ、楽しみだった。

しかし今年6回目の「パガニー二の主題による狂詩曲」はさっぱりだった。あまりにも音源が遠すぎる。角が取れて真ん丸になったオケは気の抜けたビールの如し。ピアノはもうピアノとは思えない。あまりに音が酷くて鑑賞に値しない。

後半の本来の指定席も良い席とは言えなかったが、さすがはミューザの1F。やっと精気のある音を聴いた。左翼だったので見た目のバランスは悪いけど、音は許容範囲だ。ミューザは懐が深い。

でもコンマスの背中を斜め後ろから見ながら聴くのは落ち着かない。読響の魅力が伝わることはなかった。

♪2023-101/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-12

2023年6月6日火曜日

MUZAランチタイムコンサート 6月 徳永兄弟フラメンコギターデュオ ーLunch Time Oléー

2023-06-06 @ミューザ川崎シンフォニーホール



ギターデュオ:徳永兄弟(健太郎、康次郎)
パーカッション:KAN

徳永兄弟:ブレリア・デ・パドレ
徳永兄弟:魂の旅人
アロルド・ロボ、ニルティーニョ:トリステーザ
ビゼー(編曲/徳永兄弟):カルメン・フラメンコ・ファンタジー
 Ⅰアラゴネーズ
 Ⅱハバネラ~闘牛士
ピアソラ:リベルタンゴ
------アンコール-------------------
ホセ・マンソ・ペローニ:コーヒー・ルンバ



久しぶりにナマ・フラメンコギターを聴いた。アコースティック・ギター2本にパーカッション。
こういうのがフラメンコと言うのかどうか知らないのだけど、昔から抱いているイメージとはだいぶ違って、まあ、とにかく、細かく、速い。超絶技巧ギターだ。

演奏曲も、フラメンコというより、ルンバ、サンバ、ボサノバなど中南米にルーツのある音楽が多く、全体に速弾きなので、何を聴いても似たような音楽だった。

Youtubeを探したら、ちょうど今日のアンコールと同じ曲を見つけたので貼っておこう。

https://youtu.be/vOz3NJbTrrU

♪2023-100/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-11