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2022年1月5日水曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)」

2022-01-05 @国立劇場大劇場


犬山道節⇒尾上菊五郎
犬坂毛野⇒中村時蔵
網乾左母二郎/犬飼現八⇒尾上松緑
犬塚信乃⇒尾上菊之助
犬田小文吾⇒坂東彦三郎
犬川荘助⇒坂東亀蔵
蟇六娘浜路⇒中村梅枝
犬村大角⇒中村萬太郎
横堀在村⇒市村竹松
甘利掻太⇒市村光
犬江親兵衛⇒尾上左近
軍木五倍二⇒市村橘太郎
大塚蟇六⇒片岡亀蔵
馬加大記⇒河原崎権十郎
蟇六女房亀笹
市村萬次郎
簸上宮六⇒市川團蔵
足利成氏⇒坂東楽善
扇谷定正⇒市川左團次
ほか

国立劇場開場55周年記念
曲亭馬琴=作/渥美清太郎=脚色/尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴

通し狂言 南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)  五幕七場
序 幕  (武蔵)  大塚村蟇六内の場
          本郷円塚山の場
二幕目  (下総)  滸我足利成氏館の場
         芳流閣の場
三幕目  (下総)  行徳古那屋裏手の場
四幕目  (武蔵)  馬加大記館対牛楼の場
大 詰  (上野)  扇谷定正居城奥庭の場

国立劇場の初春歌舞伎は菊五郎劇団と決まっている。

毎年、お正月らしい派手な演目で、7年前も同じ「八犬伝」だった。


今日、プログラムを買ったら、配役と筋書きの一部変更の1枚紙が入っていた。ギリギリまで練り直していたという訳だが、7年前も同様だったというのがおかしい。

帰宅後、残してある過去のプログラムも読み直してみたが、7年前のプログラムに印刷された筋書きとその一部訂正、今回のプログラムの筋書きとその一部訂正という計4種類の筋書きがほぼ同じで、宿敵をその場で倒すか後日譚に任せるかの違いを毎回、手直ししている。


どうせ、スペクタクルが売り物の演目なので、そんなに拘ることもなかろうと思うけど…。


見どころの多い芝居だが、やはり、1番の見ものは菊之助と松緑の芳流閣の大屋根での立ち回りではないか。


灰色の瓦と白い漆喰の網目模様。

その上で真っ赤な着物の菊之助と金襴緞子の松緑が絡んでは見得を切る。

その姿が絵に描いたように美しい。


ところで、菊五郎御大の動きに力がなかったが、大丈夫だろうか。


国立劇場の歌舞伎として、久々の大入りは同慶の至り。


♪2022-002/♪国立劇場-01

2021年6月9日水曜日

6月歌舞伎鑑賞教室

 2021-06-09 @国立劇場


●解説 歌舞伎のみかた

●三遊亭円朝=口演

竹柴金作=脚色
尾上菊五郎=監修
人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)二幕四場
      国立劇場美術係=美術

序 幕  第一場 本所割下水長兵衛内の場
    第二場 吉原角海老内証の場
二幕目  第一場 本所大川端の場
     第二場 元の長兵衛内の場

●「解説 歌舞伎のみかた」
解説                    中村種之助

●『人情噺文七元結』
左官長兵衛          尾上松緑
女房お兼                  中村扇雀
和泉屋手代文七       坂東亀蔵
鳶頭伊兵衛              中村種之助
娘お久                    坂東新悟
和泉屋清兵衛          市川團蔵
角海老女房お駒       中村魁春
                                ほか


この芝居は落語から移し替えられた。

本家落語版では、なんと言っても名人志ん朝の「文七元結」が大好きだ。何十回も聴いているが、おかしくて、ほろっとさせられる。


落語は時空が噺家の自在になるが、芝居ではそうもゆかないので、落語の話を少し端折ってあるが、うまく繋いであるので少しも違和感がない。

この芝居、昨年菊五郎ほか豪華版で楽しんだが、今回は主役長兵衛を松緑に譲り(初役)、菊五郎は監修に回った。

やはり松緑こそ実年に近く味わいもピッタリだ。菊之助では長兵衛は務まらない。


毎回、こんなバカな話はないぞ、と思いながらも惹き込まれ、ホクホク、ウルウルしてくる。

娘が身を売って拵えた50両の大金を、長兵衛は店の金を無くして身投げ寸前の文七に逡巡の挙げ句人の命にゃ変えられない、とやってしまう。


長兵衛の女房(お兼=扇雀)はどうせ博打で擦ったのだろうと大喧嘩。この扇雀も巧い。2人の絡みの面白さで話に説得力が生まれ、バカな話もありそうな話になってくる。


今月(来月も)は観賞教室として開催されているので、中・高生の団体がたくさん入っていて、2階最前列の好きな席は取れなかったが、その後取り消しが相次いだようで、結局、2階はガラガラだった。よほどか、空いてる席に移りたかったが、ま、それはじっと我慢して後ろの方で観ていたよ。


本篇に先立って恒例の歌舞伎案内を今回は種之助が務めた(本篇も)が、手際良く、滑舌良く、上手だった。



♪2021-051/♪国立劇場-04

2020年10月9日金曜日

10月歌舞伎公演第2部

 2020-10-09 @国立劇場


●新皿屋舗月雨暈  -魚屋宗五郎-
魚屋宗五郎          尾上菊五郎
宗五郎女房おはま   中村時蔵
宗五郎父太兵衛      市川團蔵
小奴三吉               河原崎権十郎
菊茶屋女房おみつ   市村萬次郎
鳶吉五郎               市村橘太郎
磯部召使おなぎ      中村梅枝
酒屋丁稚与吉         尾上丑之助
磯部主計之介         坂東彦三郎
家老浦戸十左衛門   市川左團次
岩上典蔵               片岡亀蔵
                              ほか

●太刀盗人
すっぱの九郎兵衛   尾上松緑
田舎者万兵衛       坂東亀蔵
目代丁字左衛門      片岡亀蔵
従者藤内     尾上菊伸

河竹黙阿弥=作
●新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)-魚屋宗五郎-

序 幕  片門前魚屋宗五郎内の場
ニ幕目  磯部邸玄関先の場
同           庭先の場

岡村柿紅=作
●太刀盗人(たちぬすびと)


●「魚屋宗五郎」は、もうそろそろ菊五郎には無理ではないか、もう少し若い人がやるべきではないか(芝翫の宗五郎は良かった。)と思っていたが、なかなか。

これまでに観た中で一番良かった。

芸は磨かれるし、まあ、僕の眼も少しは肥えてきたからかも。

以前は細部の不整合が気になったりしたが、もっとおおらかに観なくちゃいかんな。

気脈を通じ合った時蔵、團蔵、萬次郎らとの掛け合いは室内楽のような見事なアンサンブルだ。

こういう芝居では掛け声禁止が、客席の静寂(それにしても少ない。)と共にむしろ良い緊張感を生んでいると思った。

悲劇をベースにしながら、菊五郎酒乱の芸を楽しむ芝居でもある。

しこたま酔った宗五郎が酒樽を手に花道で見栄を切る。おかしくて哀れで、形がいい。

●「太刀盗人」は狂言由来。

田舎者/坂東亀蔵の太刀を騙し取ろうとする盗人/松緑がもう傑作だ。亀蔵にイマイチの弾けぶりが欲しかった。

♪2020-062/♪国立劇場-08

2020年2月6日木曜日

2月大歌舞伎 夜の部

2020-02-06 @歌舞伎座


十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言
一、八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)
 湖水御座船の場
佐藤正清⇒我當
斑鳩平次⇒進之介
正木大介⇒萬太郎
鞠川玄蕃⇒松之助
轟軍次⇒片岡亀蔵
雛衣⇒魁春

二、羽衣(はごろも)
天女⇒玉三郎
伯竜⇒勘九郎

三遊亭円朝 口演
榎戸賢治 作
三、人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)
左官長兵衛⇒菊五郎
和泉屋清兵衛⇒左團次
女房お兼⇒雀右衛門
和泉屋手代文七⇒梅枝
娘お久⇒莟玉
小じょくお豆⇒寺嶋眞秀
家主甚八⇒片岡亀蔵
角海老手代藤助⇒團蔵
角海老女房お駒⇒時蔵
鳶頭伊兵衛⇒梅玉

十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言
四、道行故郷の初雪(みちゆきこきょうのはつゆき)
忠兵衛⇒梅玉
万才⇒松緑
梅川⇒秀太郎

夜の部は4本立。好みは人それぞれとは言え、僕は断然「文七元結」に期待。
というのも落語では志ん朝のが好きで何十回となく聴いているが、歌舞伎で観るのは初めて。
楽しみであると同時に、志ん朝のように上手に江戸っ子の心意気や人情が表現できるかと不安もあり。

落語のように時空を瞬間移動できない芝居ではある程度話を整理しなくてはならないので、面白い部分が一部カットされていたのはやむを得ないが、歌舞伎版も繰り返し上演されているようにこれはこれで実におかしくもあり、ジーンと胸を打つ。

左官の長兵衛⇒菊五郎、その女房⇒雀右衛門、娘お久⇒莟玉(前・梅丸。なんて可愛らしい!)、家主⇒片岡亀蔵。
ほかに梅玉、時蔵、左団次など達者が揃った。

落語も同様だが、悪人が1人も出ず、粋でほろっとさせる話は江戸前ならではだと思う。


♪2020-016/♪歌舞伎座-01

2020年1月11日土曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 菊一座令和仇討」

2020-01-11 @国立劇場


四世鶴屋南北=作『御国入曽我中村』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「菊一座令和仇討」
(きくいちざれいわのあだうち)四幕十場
             国立劇場美術係=美術

序   幕 鎌倉金沢瀬戸明神の場
               飛石山古寺客殿の場
               六浦川堤の場
二幕目   朝比奈切通し福寿湯の場
               鈴ヶ森の場
三幕目   下谷山崎町寺西閑心宅の場
               大音寺前三浦屋寮の場
               元の寺西閑心宅の場
大   詰 東海道戸塚宿境木の場
        同   三島宿敵討の場

(主な配役)
幡随院長兵衛/寺西閑心実ハ蒲冠者範頼⇒尾上菊五郎
三日月おせん実ハ佐々木の娘風折/頼朝御台政子御前⇒中村時蔵
笹野権三⇒尾上松緑
白井権八⇒尾上菊之助
大江志摩五郎/梶原源太景季⇒坂東彦三郎
江間小四郎義時/おせんの手下長蔵⇒坂東亀蔵
権八妹おさい⇒中村梅枝
大江千島之助/笹野の家来・岩木甚平⇒中村萬太郎
安西弥七郎景益⇒市村竹松
権三妹八重梅⇒尾上右近
新貝荒次郎実重⇒市村光
万寿君源頼家⇒尾上左近
茶道順斎/湯屋番頭三ぶ六⇒市村橘太郎
同宿残月/判人さぼてんの源六/和田左衛門尉義盛⇒片岡亀蔵
今市屋善右衛門/秩父庄司重忠⇒河原崎権十郎
白井兵左衛門⇒坂東秀調
遣手おくら⇒市村萬次郎
笹野三太夫/大江因幡守広元⇒市川團蔵
家主甚兵衛⇒坂東楽善
         ほか

国立劇場の正月公演は、毎年、菊五郎劇団の奇想天外な芝居と決まっている。
今年は「菊一座令和仇討」。
槍の権三、白井権八、幡随院長兵衛、頼家、北条政子など知った名前が蘇我の仇討ちを拝借しながら時空を超えて絡み合う。令和は取ってつけただけ。
正月にふさわしい華麗な舞台。

いつもながら、彦三郎・亀蔵兄弟の滑舌の良さが気持ち良い。
松緑も久しぶりに大きな役で菊之助といいコンビだった。

国立劇場での両花道は8年ぶりだそうな。僕は観ているはずだが、思い出せない。
その両花道は下手が松緑、上手が菊之助で、同時に出たり引っ込んだりするのだが、右を見て左を見てと忙しい。

♪2019-002/♪国立劇場-01

2019年2月26日火曜日

初世尾上辰之助三十三回忌追善 二月大歌舞伎 昼の部

2019-02-26 @歌舞伎座


初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
一 義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)〜すし屋
いがみの権太⇒松緑
弥助実は三位中将維盛⇒菊之助
娘お里⇒梅枝
若葉の内侍⇒新悟
梶原の臣⇒吉之丞
梶原の臣⇒男寅
梶原の臣⇒玉太郎
六代君⇒亀三郎
弥左衛門女房おくら⇒橘太郎
鮓屋弥左衛門⇒團蔵
梶原平三景時⇒芝翫

初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
長谷川 伸 作 / 村上元三 演出
二 暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)
暗闇の丑松⇒菊五郎
丑松女房お米⇒時蔵
浪人潮止当四郎⇒團蔵
料理人作公⇒男女蔵
料理人伝公⇒彦三郎
料理人巳之吉⇒坂東亀蔵
料理人祐次⇒松也
建具職人熊吉⇒萬太郎
建具職人八五郎⇒巳之助
杉屋遣手おくの⇒梅花
湯屋番頭甚太郎⇒橘太郎
お米の母お熊⇒橘三郎
杉屋妓夫三吉⇒片岡亀蔵
岡っ引常松⇒権十郎
四郎兵衛女房お今⇒東蔵
四郎兵衛⇒左團次

三 団子売(だんごうり)
杵造⇒芝翫
お臼⇒孝太郎

「義経千本桜」から「すし屋」の段。
「義経千本桜」は五段続きだそうな。そのうちのいくつかは歌舞伎と文楽で観ていたが、「すし屋」は初めてだった。

凡その筋は知っているものの「すし屋」の前段に当たる「小金吾討死」の話が前に置かれるのかと思ったていたがそうではなく、いきなりの「すし屋」で、少しまごついた。予習しておいてよかったよ。

しかし、権太=松緑、維盛=菊之助の配役は、当代では最適・最好のコンビではなかったか。いずれも初役ということで、多分、厳しい目にはまだ役がこなれていないのだろうが、僕の目には十分楽しめた。この2人で再演を観たいものだ。

「暗闇の丑松」も初見。これは興味深い物語だった。
昭和初期の作品で、新歌舞伎といわれるジャンルだ。
新劇のような凝った構成と演出に唸る。
止むを得ず人を殺め、人混みの中に消えてゆく幕切れは「夏祭浪花鑑」を思わせた。底辺に暮らす無法者となった男や哀れ。

♪2019-023/♪歌舞伎座-01







2019年1月10日木曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 姫路城音菊礎石」五幕九場

2019-01-10 @国立劇場


並木五瓶=作 『袖簿播州廻』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「姫路城音菊礎石」(ひめじじょうおとにきくそのいしずえ)五幕九場
国立劇場美術係=美術

序 幕  曽根天満宮境内の場
二幕目  姫路城内奥殿の場
           同    城外濠端の場
三幕目  姫路城天守の場
四幕目  舞子の浜の場
           大蔵谷平作住居の場
           尾上神社鐘楼の場
大 詰  印南邸奥座敷の場
           播磨潟浜辺の場

印南内膳⇒尾上菊五郎
生田兵庫之助/碪(きぬた)の前⇒中村時蔵
古佐壁主水/百姓平作実ハ与九郎狐/加古川三平⇒尾上松緑
弓矢太郎実ハ多治見純太郎/主水女房お辰/小女郎狐⇒尾上菊之助
印南大蔵/奴灘平⇒坂東彦三郎
久住新平⇒坂東亀蔵
桃井陸次郎/桃井八重菊丸⇒中村梅枝
高岡源吾⇒中村萬太郎
庄屋倅杢兵衛⇒市村竹松
傾城尾上⇒尾上右近
平作倅平吉実ハ桃井国松⇒寺嶋和史
福寿狐⇒寺嶋眞秀
金子屋才兵衛/早川伴蔵⇒市村橘太郎
飾磨大学⇒片岡亀蔵
牛窓十内⇒河原崎権十郎
中老淡路⇒市村萬次郎
近藤平次⇒兵衛市川團蔵
桃井修理太夫⇒坂東楽善
 ほか

初春恒例は菊五郎劇団のスペクタクルな娯楽大作。尤も、近年は当方が歳のせいか、話がややこしくて、筋書き手元に舞台を見ても話を追えない。もう一度観ないと頭に入ってこないようだ。ま、そこは気にしないのが正しい鑑賞法かもしれないけど。

菊五郎、時蔵、松緑、菊之助、彦三郎、2亀蔵、萬次郎、團蔵、楽善など気心の知れた仲間内とのチームワークは抜かりなし。今回は菊五郎の孫2人(和史・眞秀)が揃って出演。オバ様方が黄色い声。個人的には彦三郎、片岡・坂東の両亀蔵、松緑が大きな役で活躍が嬉しい。

これも恒例の手ぬぐい撒きは、大方1階席に沈没。舞台両翼にいた松緑と彦三郎だけが2階席まで届くホームラン数本。自席は最前列なので、腕を伸ばしたが、あと30cmくらいのところで届かず。右近、梅枝など本来は腕力があるだろうが、役柄を引き摺っては遠投もできまい。


♪2019-001/♪国立劇場-01

2018年5月22日火曜日

團菊祭五月大歌舞伎 昼の部

2018-05-22 @歌舞伎座


成田山開基1080年
二世市川團十郎生誕330年
安田蛙文・中田万助 作
奈河彰輔 演出
藤間勘十郎 演出・振付
通し狂言
一、雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)
市川海老蔵五役相勤め申し候
鳴神上人⇒海老蔵
粂寺弾正⇒海老蔵
早雲王子⇒海老蔵
安倍清行⇒海老蔵
不動明王⇒海老蔵


雲の絶間姫⇒菊之助
秦民部⇒彦三郎
文屋豊秀⇒松也
秦秀太郎⇒児太郎
小野春風/矜羯羅童子⇒廣松
錦の前⇒梅丸
八剣数馬/制多迦童子⇒九團次
小原万兵衛実は石原瀬平/黒雲坊⇒市蔵
白雲坊⇒齊入
小松原中納言⇒家橘
関白基経⇒錦之助
八剣玄蕃⇒團蔵
小野春道⇒友右衛門
腰元巻絹⇒雀右衛門

二、女伊達(おんなだて)
女伊達木崎のお光⇒時蔵
男伊達中之島鳴平⇒種之助
同  淀川の千蔵⇒橋之助

「雷神不動北山櫻」は僕にとって初めての演目だった。
全4幕の通し狂言で、そのうちに歌舞伎十八番(市川宗家のお家芸として選定された荒事の演目。)に選ばれている「毛抜・鳴神・不動」の3作を含むというのだから、1作で3度おいしい作品という言える。
尤も、歌舞伎十八番も現代も実際に演じられているのは8作品程度で、残りは今ではほとんど演じられることはないそうだ。内容が伝承されていないので、演るとすれば新作を作り上げるに等しいらしい。
「毛抜・鳴神・不動」も実際に舞台にかかるのはほぼ「毛抜」だけと言ってもよい状態のようだ。

僕も、「毛抜」は数回観たが、「鳴神」も「不動」も観たことはないし、今回の鑑賞で初めてそういう作品があることを知った次第だ。

1人口上から4幕大詰まで海老蔵が5役出ずっぱりで八面六臂の大活躍。外連味たっぷりの見得がこれ程似合うのは海老蔵だけか。
菊之助との絡みも見所。

筋の運びが必ずしも滑らかではないし、長過ぎるような気もするが、歌舞伎の面白さ、楽しさ、美しさをたっぷり詰め込んだ力作だ。

余談だが、「毛抜」が単独で演じられる時は、何故か劇中劇の形をとる。今回も2幕目がそれに当たるが、やはり、この幕だけは、舞台上手と下手に芝居小屋の看板が掲げられ、粂寺弾正が若衆や腰元にちょっかい出しては失敗する度に客席に向かって頭を下げ、「面目次第もござりませぬ」と言い訳するところも今回の「通し」上演でも同じだった。

♪2018-058/♪歌舞伎座-03





2018年4月5日木曜日

四月大歌舞伎 昼の部

2018-04-05 @歌舞伎座


●明治百五十年記念
真山青果作「江戸城総攻」より
松竹芸文室 改訂
大場正昭 演出
一、西郷と勝(さいごうとかつ)
西郷隆盛⇒松緑
山岡鉄太郎⇒彦三郎
中村半次郎⇒坂東亀蔵
村田新八⇒松江
勝海舟⇒錦之助

●通し狂言
梅照葉錦伊達織(うめもみじにしきのだており)
二、裏表先代萩(うらおもてせんだいはぎ)
大場道益宅
足利家御殿
同  床下
小助対決
仁木刃傷
下男小助/仁木弾正⇒菊五郎
乳人政岡⇒時蔵
細川勝元⇒錦之助
下女お竹/沖の井⇒孝太郎
倉橋弥十郎⇒松緑
荒獅子男之助⇒彦三郎
渡辺民部⇒坂東亀蔵
鶴千代⇒亀三郎
松島⇒吉弥
大場宗益⇒権十郎
横井角左衛門⇒齊入
栄御前⇒萬次郎
八汐⇒彌十郎
大場道益⇒團蔵
渡辺外記左衛門⇒東蔵

メインは、通し狂言「梅照葉錦伊達織」〜「裏表先代萩」。
と、ポスターや筋書きに書いてあるが、この意味がよく分からない。長大な通し狂言「梅照葉錦伊達織」の中の「裏表先代萩」の幕という意味ではなさそうで、どちらも同じ芝居を指しているようだが、どうしてこんなタイトルになっているのか。「梅照葉錦伊達織」という演目で上演されたこともあるようだ。内容は「伽羅先代萩」の変形なので「裏表先代萩」という言い方の方が伝わりやすいところから、いつしか、今のような形になったのかもしれない。

なにゆえ「裏表」なのか、と言えば、<時代物>である「伽羅先代萩」を「表」とし、そのスピンオフとして町人を主人公にした<世話物>を「裏」として、裏から初めた物語を次は表と交互に綴り、一本の話として成立させているのだ。
実に面白い趣向であるが、更に加えて両方の主人公格(表の伽羅先代萩では仁木弾正、裏では下男小助)を一人の役者が二役をするというのが通例になっているようで、時には最大4役を演じたという記録があるそうな。一人で主役格の複数の役をこなすというのもこの芝居の趣向となっているようだ。

今回は菊五郎がその両者を演じている。

そんな訳で、一粒で二度美味しいアーモンドグリコのような芝居だが、惜しいのは表と裏が交錯しないという点だ。もちろん話はつながっているのだけど、そのつながりが弱く、良いアイデアなのに二つの話が別々に進行してゆくのがイマイチもったいない。

さて、本日の歌舞伎座はガラガラだった。こんなに空席が目立つのも珍しい。やはり、一月、二月と高麗屋三代襲名で大勢の役者が揃った反動で、所謂、人気スターがお休みか、あるいは地方巡業に回ったのではないか。

しかし、今回歌舞伎座で留守を守る役者たちはどちらか言えば好みの
渋い役者が揃っている。

菊五郎、時蔵、錦之助、孝太郎、松緑、彦三郎、坂東亀蔵、萬次郎、彌十郎、團蔵、東蔵など。

中でも、彌十郎の八汐、東蔵の外記左衛門は驚いた。男女の役割が逆様だ。東蔵の立役は初めてでは無いけど、僕の鑑賞歴では非情に珍しい。彌十郎が女形を演じたのは、我が記録・記憶にはなく、多分今回が初めてだった。
2014年の11月国立劇場の「伽羅先代萩」では坂東彌十郎が渡辺外記左衛門(荒獅子男之助も)を、東蔵が栄御前を演じていたが、まあ、この配役が普通の形だろう。

元々声のよく通る彌十郎がひときわ大音声で勤めるので八汐の怖さ倍増だ。いやはや、珍しいものを観せてもらった。

♪2018-035/♪歌舞伎座-02

2018年3月3日土曜日

三月歌舞伎公演「増補忠臣蔵」/「梅雨小袖昔八丈」

2018-03-03 @国立劇場

●『増補忠臣蔵』


桃井若狭之助⇒中村鴈治郎
三千歳姫⇒中村梅枝
井浪伴左衛門⇒市村橘太郎
加古川本蔵⇒片岡亀蔵
        ほか

●『梅雨小袖昔八丈』


髪結新三⇒尾上菊之助
下剃勝奴⇒中村萬太郎
白子屋手代忠七⇒中村梅枝
白子屋娘お熊⇒中村梅丸
白子屋後家お常⇒市村萬次郎
紙屋丁稚長松⇒寺嶋和史
家主女房お角⇒市村橘太郎
家主長兵衛⇒片岡亀蔵
加賀屋藤兵衛⇒河原崎権十郎
弥太五郎源七⇒市川團蔵
         ほか

明治150年記念

一、増補忠臣蔵(ぞうほちゅうしんぐら)一幕二場
 ―本蔵下屋敷―(ほんぞうしもやしき)
     国立劇場美術係=美術
  
  第一場 加古川家下屋敷茶の間の場
  第二場 同        奥書院の場

河竹黙阿弥=作
尾上菊五郎=監修
二、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)三幕六場
 ―髪結新三―(かみゆいしんざ)
     国立劇場美術係=美術
  
  序幕  白子屋見世先の場
      永代橋川端の場
  二幕目 富吉町新三内の場
          家主長兵衛内の場
        元の新三内の場
  大詰    深川閻魔堂橋の場

国立の歌舞伎は通し狂言が多いが、昨年の秋に続いて今回は2本立てだった。
最初の「増補忠臣蔵」は僕には初モノだが、「仮名手本忠臣蔵」
の九段目(山科閑居)の前日譚だとは承知していたので楽しみだった。ここで主人公は加古川本蔵が仕える桃井若狭之助であるが、筋立てからは本蔵の方が重い役にも思える。「仮名手本〜」全体を通じても重要なキーパーソンであり、なかなか魅力的な人物だ。

「増補」と付いているのは、「仮名手本〜」の話の一部を膨らませたという意味だが、出来たのが明治の始め頃らしい。最初は人形浄瑠璃で、明治30年が歌舞伎版の初演。初代鴈治郎が桃井若狭之助を演じ、二代目も三代目(現・藤十郎)も得意とし、歴代鴈治郎が演じてきたが、当代の鴈治郎としては今回初役であり、先代までは東京では演じてこなかったので、東京での公演は65年ぶりなのだそうだ。

1幕2場で公演時間もちょうど1時間というこじんまりした作品だ。登場人物も少なく筋も簡単で分かりやすい。

ほとんど、若狭之助(鴈治郎)と本蔵(片岡亀蔵)の主従のやりとりで、若狭之助に見送られて虚無僧姿で出立するところでこの芝居は終わるが、忠臣蔵の物語としてはこの後に九段目が続くと思うと、なかなかその別れも味わい深いものがある。

今日は初日だったせいか、竹本と2人のセリフに少しズレというほどでもないけどぴったり感のない箇所があったような気がした。

また、これは本質的なことだけど、鴈治郎の芝居と亀蔵の芝居がそもそもタイプが違うというか、木に竹継いだようで、うまく噛み合っていなかったように思う。

2本めがいわゆる「髪結新三」だ。菊之助初役。
この人は美形過ぎてヤクザな新三には不似合いだと思っていたが、なかなかどうして、ほとんど違和感がなかった。
ただ、最初の方で忠七(梅枝)の髪を整えるところの仕草はちっとも髪結いには見えなかったな。誰だったか、現・芝翫だったか、松緑だったか思い出せないが、多分ふたりとも今日の菊之助より髪結いらしかったな。

まあ、こちらの腕も徐々に上がるだろう。
家主長兵衛とのやり取りなど、とてもおかしい。初役はひとまずは成功だと思う。

この長兵衛を片岡亀蔵が演じていて、ここではまことに嵌り役だ。この人は軽めの(こってりしない)芝居が合っているのではないか。

梅丸は既に何度か観て娘役として実にかわいらしいのでとても男が演じているとは思えない。

♪2018-026/♪国立劇場-005

2018年1月10日水曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 世界花小栗判官」4幕10場

2018-01-10 @国立劇場


近松徳三・奈河篤助=作『姫競双葉絵草紙』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 世界花小栗判官(せかいのはなおぐりはんがん) 四幕十場

発端   (京) 室町御所塀外の場
序幕<春>   (相模)鎌倉扇ヶ谷横山館奥御殿の場
              同  広間の場
                江の島沖の場
二幕目<夏> (近江)堅田浦浪七内の場
           同 湖水檀風の場
三幕目<秋> (美濃)青墓宿宝光院境内の場
              同 万屋湯殿の場
                  同 奥座敷の場
大  詰<冬> (紀伊)熊野那智山の場

尾上菊五郎⇒盗賊風間八郎
中村時蔵⇒執権細川政元/万屋後家お槙
尾上松緑⇒漁師浪七実は美戸小次郎/横山太郎秀国
尾上菊之助⇒小栗判官兼氏
坂東彦三郎⇒横山次郎秀春/細川家家臣桜井新吾
坂東亀蔵⇒膳所の四郎蔵/細川家家臣七里源内
中村梅枝⇒浪七女房小藤/万屋娘お駒/横山太郎妻浅香
中村萬太郎⇒奴三千助
市村竹松⇒風間の子分鳶の藤六
尾上右近⇒照手姫
市村橘太郎⇒瀬田の橋蔵
片岡亀蔵⇒鬼瓦の胴八
河原崎権十郎⇒万屋下男不寝兵衛
坂東秀調⇒局常陸
市村萬次郎⇒万屋女中頭お熊
市川團蔵⇒横山大膳久国
坂東楽善⇒小栗郡領兼重 ほか

初めての狂言だった。国立劇場のサイトでも下調べはしたし、いつものようにプログラムを買って開幕前にざっと目を通して臨んだ。開幕を告げる館内放送が「〜4幕10場」を「よまくとおば」とアナウンスした。そこで少し引っかかった。
歌舞伎や文楽などの幕や場の数え方で、4を「よ」と読むなら1、2、3を「ひーふーみー」と読むのか、と言えばそんな読み方は聴いたことがない。10を「とお」と読むなら、7、8、9を「ななやーここのつ」と読むのか、と言えばこれも聞いたことがない。
普通に読めば「よんまくじゅうば」ではないのかな?などと考えていたら芝居の始まりに乗り遅れてしまった。

「よまくとおば」はこの世界の慣習的な読み方なのかもしれないな。

事前にプログラムに目を通しておきながら大切なことに気づくのが遅くなった。「よんまく」であれ「よまく」であれ「4幕」なのだ。そして、それぞれの幕は「四季」の移ろいを表現している。もちろん、各「幕」に幾つかの「場」が分けてあって、それぞれに舞台美術が変化するので、意識してみていないと幕毎に四季が変わっていくことに気が付かないだろう。僕は最後の冬の幕でようやく「そうか全体は四季を表していたんだ」と気がついた始末。

尤も、四季の変化に気が付かなくとも筋書きは楽しめる。
しかし、最後の幕のハット息を呑むような雪世界と舞台の早替わりの仕掛けで突如現れる那智の滝の見事さは、各幕の舞台美術の変化の仕上げだと思うとそれなりに話がまとまるように思った。

今回は菊之助の大立ち回りも宙乗りも無いが「馬乗り!」がある。かなり危なっかしいが、それなりの見どころだ。大立ち回りは菊の助に代わり、今回はこの菊五郎劇団の常連(2016年は出演していなかったが)である松緑が長丁場の立ち回りを演じてこれも見ものではあった。

物語は…というと、これがあんまり面白くない。まあ、それでもよいのか。大勢のスター役者が揃い、派手な舞台を楽しむのが正月興行の楽しさでもあるからな。

坂東彦三郎・亀蔵兄弟は滑舌良く気持ちが良い。右近がなかなかきれいだ。尤も梅枝も良く似ているので時々白塗りの2人が分からなくなるが。

♪2018-002/♪国立劇場-001

2017年2月16日木曜日

江戸歌舞伎三百九十年 猿若祭二月大歌舞伎

2017-02-16 @歌舞伎座


田中青滋 作
一、猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)
猿若⇒勘九郎
出雲の阿国⇒七之助
若衆⇒宗之助
若衆⇒児太郎
若衆⇒橋之助
若衆⇒福之助
若衆⇒吉之丞
若衆⇒鶴松
福富屋女房ふく⇒萬次郎
奉行板倉勝重⇒彌十郎
福富屋万兵衛⇒鴈治郎
  
初代桜田治助 作
  戸部銀作 補綴
二、大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)
「黒髪」長唄連中
正木幸左衛門実は源頼朝⇒松緑
地獄谷の清左衛門実は文覚上人/北条時政⇒勘九郎
おます実は政子の前⇒七之助
清滝⇒児太郎
熊谷直実⇒竹松
畠山重忠⇒廣太郎
佐々木高綱⇒男寅
三浦義澄⇒福之助
下男六助⇒亀寿
家主弥次兵衛⇒團蔵
女房おふじ実は辰姫⇒時蔵
  
河竹黙阿弥 作
三、四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)
四谷見附より牢内言渡しまで
野州無宿富蔵⇒菊五郎
女房おさよ⇒時蔵
伊丹屋徳太郎⇒錦之助
浅草無宿才次郎⇒松緑
寺島無宿長太郎⇒菊之助
黒川隼人⇒松江
頭⇒亀三郎
三番役⇒亀寿
下谷無宿九郎蔵⇒萬太郎
ぐでんの伝次⇒橘太郎
下金屋銀兵衛⇒松之助
穴の隠居⇒由次郎
数見役⇒権十郎
石出帯刀⇒秀調
生馬の眼八⇒團蔵
隅の隠居⇒歌六
うどん屋六兵衛⇒東蔵
浜田左内⇒彦三郎
牢名主松島奥五郎⇒左團次
藤岡藤十郎⇒梅玉
    
四、扇獅子(おうぎじし)
鳶頭⇒梅玉
芸者⇒雀右衛門

1★★★…いわば、江戸歌舞伎の発祥を祝う長唄に乗せた所作事(舞踊)中心。華やかでいい。

2★★…この幕は寝てよし。

3★★★…これは菊五郎と梅玉が双方いい味出すのだけど、世話物として物足りない。牢屋の仕組みを知らなかった当時の普通の生活者にとって、このリアルさに惹きこまれたのかもしれないけど。

4★★★…清元による所作事。鏡獅子ならぬ扇獅子。四季の移り変わりを愛でる舞踊。梅玉と雀右衛門。ここでの雀右衛門はいいと思った。

勘九郎、七之助はいい。優れたDNAを受け継いでいると思う。
菊之助、松緑は出番少なし。

♪2017-024/♪歌舞伎座-01