2020年10月31日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第356回

 2020-10-31 @みなとみらいホール

小泉和裕:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

三浦文彰:バイオリン*

ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
ブルッフ:バイオリン協奏曲第1番ト短調 Op.26*
ブラームス:交響曲第2番ニ長調 Op.73


3曲とも弦は12型。

ブルッフ:バイオリン協奏曲が管弦のバランス良く、三浦くんの健闘も相まって素直に聴けた。

しかし、ワーグナーでは神奈フィル吹奏楽団に弦楽部が負けていた。

ブラームスは悪くなかったが、やはり、厚い弦のうねりがあってこそブラームスだ。そこがちょっと弱かったな。


♪2020-072/♪みなとみらいホール-18

2020年10月30日金曜日

横浜バロック室内合奏団定期演奏会95回 〜室内楽の楽しみ

 2020-10-30 @みなとみらいホール

横浜バロック室内合奏団

Vn小笠原伸子、根来由美、有馬希和子、小澤郁子
Va百武由紀、高山愛
Vc中垣文子、間瀬利雄

モーツァルト:弦楽四重奏曲第18番イ長調 K464
ベートーベン:弦楽四重奏曲第5番イ長調 作品18-6
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲変ホ長調 作品20
----------------
モーツァルト:ディヴェルティメント K.138から第3楽章


モーツァルト:弦楽四重奏曲18番、ベートーベン:同5番は調性も構成も同じで終わり方も似ている。後年のベートーベンとは別人のように軽やかで気楽。ハイドンやモーツァルトの影響が色濃いようだ。


メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲。

これは生では初聴きかも。


弦楽四重奏が2組という編成だが、同一楽器もほぼ常時役割が分割され、8種類の音が出ている。

耳からだけだとなかなか判別し難いが、近くで見ているとメンデルスゾーンがとても複雑な音作りをしているのがよくわかり、かつ、驚いた。

これが何と16歳の作だという。

先日、シューベルト18歳と19歳の作による交響曲(第2番と第4番)を聴いたが、シューベルトは歌曲はいざ知らず、合奏曲となるとメンデルスゾーンの豊かな才能には脱帽だろう。

♪2020-071/♪みなとみらいホール-17

2020年10月28日水曜日

NHK交響楽団 10月公演

 2020-10-28 @サントリーホール


鈴木雅明:指揮
NHK交響楽団

シューベルト:交響曲第2番変ロ長調 D.125
シューベルト:交響曲第4番ハ短調 D.417「悲劇的」


シューベルトの交響曲2番と4番。18歳と19歳の作?

2番は曲のせいか演奏のせいか、各パートが明瞭でなくいまいち入り込めなかった。

この作品に限らず、シューベルトはオーケストレーションが雑な感じがするよ。

4番は演奏に破綻なく、音楽の完成度も高くまずまず楽しめた。

それにしても、2本合わせて演奏時間はちょうど60分。N響定期(代演)でこんな軽いの2本なんて残念だ。しかも、定期会員でも割引なしの7千円(S席)はC/Pが悪い。

でも、最近は、コロナを嫌ってか、客足が鈍くいつも良席が取れるのは嬉しい(尤も僕の方も良席を取る為に相当努力はしているけど。)。今回も9月の席と全く同じ席で、前回の都響@サントリーでも少し前だが、いずれも甲乙つけがたい良席で、こんなところで聴けるのは誠にありがたい。

さて、ゲストコンマスの好漢白井圭も、こういう古典派から脱していない音楽ではあまりリードするところもなかったようだ。

彼には、浪漫が豪快に波打つ音楽をぐいぐい引っ張って欲しいな。


♪2020-056/♪サントリーホール-05

2020年10月25日日曜日

東京都交響楽団 都響スペシャル2020

 2020-10-25 @サントリーホール

小泉和裕:指揮
東京都交響楽団

ベートーベン:交響曲第4番変ロ長調 op.60
ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 op.90


9月の都響スペシャル@サントリーは役者が揃い、演奏も力強く完全燃焼できたが、今日はどうもそういう熱気が感じられなかった。

9月同様、弦は14型と、最近中々聴けない”Bigオケ”なのだけど、その弦に難点が多かった。

パサパサの響で潤いがない。高域はキンキンゴロゴロと美しくない。

映画「さようならをもう一度」ではブラームスの3番の3楽章が繰り返し流れた。ブラームスの数ある名旋律中の名旋律だ。

しかし、今日の演奏では、イングリット・バーグマンとアンソニー・パーキンスはデイトできないだろう。

気分が乗らないもの。

♪2020-069/♪サントリーホール-04

2020年10月18日日曜日

神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2020 グランドオペラ共同制作 プッチーニ作曲:オペラ「トゥーランドット」

 2020-10-18 @県民ホール


佐藤正浩:指揮

ダンス:H・アール・カオス
合唱:二期会合唱団
児童合唱:赤い靴ジュニアコーラス
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

演出・振付:大島早紀子

装置デザイン:二村周作
衣裳デザイン:朝月真次郎
照明デザイン:沢田祐二
合唱指揮:佐藤宏
振付助手:白河直子
演出助手:菊池裕美子/根岸幸
舞台監督:八木清市

プッチーニ作曲:オペラ「トゥーランドット」全3幕
イタリア語上演・日本語及び英語字幕付き/新制作

配役:10月17日(土)/10月18日(日)
トゥーランドット姫:田崎尚美/岡田昌子
皇帝アルトゥム:牧川修一/大野徹也
ティムール:ジョン ハオ/デニス・ビシュニャ
王子カラフ:福井敬/芹澤佳通
リュー:木下美穂子/砂川涼子
大臣ピン:萩原潤/大川博
大臣パン:児玉和弘/大川信之
大臣ポン:菅野敦/糸賀修平
役人:小林啓倫/井上雅人

冒頭の神奈川フィルの響きに痺れた。

感染対策なのか、今回はピットに入ったオケの後方部分は蓋されていた。ちょうど舞台が前方に拡張されたように見える。しかし、その部分にキャストは立ち入らなかった。

観客席からは舞台が近いのに遠いような感覚になる。

その奥まったピットから発せられた冒頭の強奏がなんとも美しく、それだけで公演の成功を予感させた。

-----------------

カラフ達が脇に引っ込んでからのバレエ、とりわけ白河直子の、天井からぶら下がった1本のロープを使った空中ソロダンスの素晴らしさには魂を抜かれた。

広い劇場空間を上手に使った美術(装置・衣装・照明)。

何よりドラマに説得力を持たせた演出が凄い。

1幕前半で媚薬を嗅がされてしまったので、その後は全てが夢のようだ。

こんなに充実した「トゥーラン」は初めて。

結末に納得できたのも初めて。

鑑賞前は振付家:大島早紀子なんて知らないし、大丈夫かなあと一抹の不安があったが、いや〜もう驚く舞台だ。

恐るべし大島早紀子!

リューの自決後、カラフとトゥーランドット姫の愛が成就する筋がどうも納得できないでいた。

昨夏の新国では苦し紛れにびっくりの幕切れにしていたが、これとて納得できない。

ところが、本作の力技の演出で初めて”ハッピー・エンド”に納得できた。

プッチーニが完成させたのはリューの自決迄だ。その後のはプッチーニが残したスケッチに基づいて他人が補筆して完成させた。

その為に、辻褄の怪しい芝居になりがちなのではないか、とも思ったりしていたが、今日の演出版を見ると、やはりプッチーニは得心できる結末を用意していたのだな、と分かる。

まあ、今日の演出も無限に可能性のある演出の一つに過ぎないから、今後、全く別解釈の物語が描かれるかもしれないが。

今回の楽しみ、マイ・ソプラノ:砂川涼子姫のリューも素晴らしかった!

センター・かぶりつきで、名唱の数々を、ホンに堪能できた。


♪2020-068/♪県民ホール-01

2020年10月17日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第361回横浜定期演奏会

 2020-10-17 @みなとみらいホール

角田鋼亮:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

辻彩奈:バイオリン*

J.S.バッハ:無伴奏Vn組曲第2番ニ短調 BWV1041から「シャコンヌ」*
J.S.バッハ:Vn協奏曲第1番イ短調 BWM1041*
J.S.バッハ:Vn協奏曲第2番ホ長調 BWM1042*
ブラームス:交響曲第4番ホ短調 op.98

シャコンヌで始まりシャコンヌで円環が閉じる洒落たプログラム。

前半は辻彩奈の独奏によるバッハ。

無伴奏組曲第2番から「シャコンヌ」。

次いでバイオリン協奏曲1番と2番。


バッハの作品そのものが素晴らしいのだけど、このまだ23歳のお嬢さんも素晴らしい。明瞭闊達でたっぷりと存在感を示す。

これまで何度も聴いているが、辻彩奈にハズレ無し。


バッハでの日フィル弦楽選抜隊も独奏バイオリンに丁寧に寄り添って引き立て、綺麗な合奏を聴かせた。

この前半・約1時間はまこと至福のひと時。


休憩後の後半はブラームスの交響曲第4番。

2番、1番に比べて演奏機会が少ないが、ホンに良くできた作品だ。

揺るぎない構成感。
美しい旋律。
抑制された情熱。

オケはバッハでの小編成を12型に拡張したが、それでも管楽器の数に比べると物足りない。

3楽章に至って調子が出て、終楽章は、ブラームスの「シャコンヌ」に雪崩うつ。


この楽章ではソナタ形式の枠組みも垣間見せつつ、シャコンヌ形式による30変奏が行われる。

なんて凄い!

残念ながら僕の耳は各変奏を区分できないが、スコアを見ながら聴くとブラームスの壮大な構想が分かる。

大波小波を繰り返し、最後は堂々の頂点に。

指揮はピンチヒッターの角田氏。

巧拙は分からないがオケと息が合って最後まで緊張を維持した。

本来なら大きな歓声に包まれるはずだが、発声御法度では精一杯の拍手で祝福するしかない。

♪2020-067/♪みなとみらいホール-16

2020年10月16日金曜日

新日本フィル:#34ルビー<アフタヌーン コンサート・シリーズ>

 2020-10-16 @すみだトリフォニーホール

外山雄三:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

上野耕平:サクソフォン*

外山雄三:交響曲
大澤壽人:サクソフォン協奏曲*
トマジ:アルト・サクソフォンと管弦楽のためのバラード*
ベートーベン:交響曲第7番イ長調 op. 92

1-2曲目はいずれも現代邦人作品。双方に村祭のDNAを感じた。

1曲目は本日の指揮の外山雄三の新作。


2曲目の大澤壽人、3曲目のトマジも知らない作曲家。

両者はsax協奏で共通。


3曲とも大括りで現代曲。多分初めて聴いたが、まずまず楽しめた。

問題は演奏がザワついていたこと。


最初の3曲はザワついていても、あまり違和感のない現代曲だが、本日のメインディッシュのベートーベン交響曲第7番では聴く側の集中力を削いだ。


特に外山雄三のテンポが非常に遅く、実測45分くらい。

そのテンポでオケの響きが美しくないと、これはなかなか気持ちが入らない。


新日フィルにしては珍しく出来が悪かった…。


♪2020-066/♪すみだトリフォニーホール-03

2020年10月14日水曜日

10月中席第2部

2020-10-14 @国立演芸場


落語 柳亭市次郎⇒
手紙無筆
落語 古今亭志ん陽⇒饅頭こわい
落語 柳家さん生⇒親子酒
奇術 伊藤夢葉
落語 柳家小満ん⇒盃の殿様

よく知っている噺ばかりだったが、楽しめない。過去に巧い噺家で聴いているからつい比較してしまうのかも。

一番笑えたのが夢葉の手品というのでは笑えない。

この人も、いつも同じ手品ばかりなのだけど話が巧いから飽きさせない。道具は百均で売っているらしいが。


2020-065/♪国立演芸場-07

2020年10月12日月曜日

オペラ「夏の夜の夢」

 2020-10-12 @新国立劇場


指揮:飯森範親
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
児童合唱:TOKYO FM 少年合唱団

演出・ムーヴメント:レア・ハウスマン
(デイヴィッド・マクヴィカーの演出に基づく)
美術・衣裳:レイ・スミス
照明:ベン・ピッカースギル(ポール・コンスタブルによるオリジナルデザインに基づく)

ブリテン「夏の夜の夢」全3幕〈英語上演/日本語及び英語字幕付〉
ニューノーマル時代の新演出版

予定上演時間:約3時間20分
 第1幕50分
  休憩25分
 第Ⅱ幕50分
  休憩20分
 第Ⅲ幕55分

オーベロン⇒藤木大地
タイターニア⇒平井香織
パック⇒河野鉄平
シーシアス⇒大塚博章
ヒポリタ⇒小林由佳
ライサンダー⇒村上公太
ディミートリアス⇒近藤圭
ハーミア⇒但馬由香
ヘレナ⇒大隅智佳子
ボトム⇒高橋正尚
クインス⇒妻屋秀和
フルート⇒岸浪愛学
スナッグ⇒志村文彦
スナウト⇒青地英幸
スターヴリング⇒吉川健一


子供の頃に原作を読み、映画(妖精の女王をミシェル・ファイファーが演じたもの。)も観たが、面白さが分からなかった。

この筋書きにブリテンによる調性拡張?音楽が加わった僕としては初見のオペラが「秋の午後の夢」となることは必至だな…と思いつつ臨んだが、これが存外退屈もせずに終幕に達した。

しかし、最後の妖精パックの口上のように《以上の物語は広い心を以て束の間の夢と受け入れ》なければ、ホンにアホらしい話で、このように物語の結末を「夢落ち」にすること自体にシェークスピアの力量を疑いたくなる…なんて、素人の大胆な発言!

音楽は美しくなく、耳に馴染む事もできないが、ぼんやりとした劇の内容をよく表していた。

ピット内は疎な配置で、弦が19人(他の楽器奏者16人)しか居ないので弦の響きは弱い。が、輪郭のはっきりした演奏で不満はなかった。

歌手も概ね健闘。

ただ、舞台が終始暗く、演者に表情が乏しいのは残念だ。

ニューノーマル時代の新演出とやらで、舞台上の歌手たちも互いの距離をとっていたが不自然さは感じさせなかった。

主役というべき、妖精の王を演じたカウンター・テナーの藤木大地の<地声>が一度炸裂した。これは如何なものか。

そもそも、僕はここでカウンターテナーを使うのも疑問なんだけど、これは演出ではなく、ブリテンがそのように書いているのだから仕方がないけど。

♪2020-064/♪新国立劇場-03

2020年10月10日土曜日

読売日本交響楽団第122回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2020-10-10 @みなとみらいホール


井上道義:指揮
読売日本交響楽団

仲道郁代:ピアノ*

ベートーベン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 作品73 「皇帝」*
ドボルザーク:交響曲第8番ト長調 作品88
----ENC----------------
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女*


コロナ対応で指揮がカーチュン・ウォンから井上道義に変更。ウォンも好感度高いが、井上師には大いに期待ができる。

実際、「皇帝」は収穫だった。

あの小柄なお姫様(仲道郁代)の細腕がオケ(12型)に負けない迫力。

また、協奏曲ではオケと独奏のアタックが僅かにずれることも多く、それはそれで勢いだし構わないと思うが、今日のは見事に揃っていて驚く。

井上-仲道の呼吸がぴったり。

オケも素晴らしい。
特に弦の美しさは特筆。全く難点がない。

で、前半は至福の時…だったが、アンコールを弾く前の仲道姫の説明がか細くて1F中央なのに聴き取れない。自分の聴力が不安になった。

しかし、終演後の井上師の話は良く聴こえて安心した。

話をするなら2千人ホールということを考えて話をして欲しいね。大声が出せないなら、黙って弾いてくれたら良かった。

さて、後半のドボルザーク交響曲第8番は大好物。
しかし、期待した程の出来ではなかった。

「皇帝」より金管が6本増えている。
だから弦は14型にするか、と思っていたが12型のまま。

そのせいか、冒頭のチェロ(旋律を奏でるのはチェロだけではないけど。)の美しい主題が、管(特にトロンボーン)に負けてしまった。

”読響吹奏楽団”は大活躍だったが、一方の弦は響きに厚みがない。協奏曲では丁度良かった編成だが、ドボ8では残念な結果に。

ところで、演奏中のオケの団員でマスク装着は数人(終わったら大勢に)。そもそも、マスクなんてしなくともいいのにと思うが、驚いたのは「皇帝」の終曲後。

井上-仲道両氏がどちらからというでなくハグをした。

やるね!

ちょっと嬉しかったね。

健康体であれば濃厚接触したって何の問題もない。

適切に健康チェックをしておればステージ上でSDもマスクも不要だ。

しかるに本末転倒の過剰防衛が音楽を生で聴く楽しみを削いでいる。

係る風潮を笑い飛ばすような2人のハグにブラボー!


♪2020-063/♪みなとみらいホール-15

2020年10月9日金曜日

10月歌舞伎公演第2部

 2020-10-09 @国立劇場


●新皿屋舗月雨暈  -魚屋宗五郎-
魚屋宗五郎          尾上菊五郎
宗五郎女房おはま   中村時蔵
宗五郎父太兵衛      市川團蔵
小奴三吉               河原崎権十郎
菊茶屋女房おみつ   市村萬次郎
鳶吉五郎               市村橘太郎
磯部召使おなぎ      中村梅枝
酒屋丁稚与吉         尾上丑之助
磯部主計之介         坂東彦三郎
家老浦戸十左衛門   市川左團次
岩上典蔵               片岡亀蔵
                              ほか

●太刀盗人
すっぱの九郎兵衛   尾上松緑
田舎者万兵衛       坂東亀蔵
目代丁字左衛門      片岡亀蔵
従者藤内     尾上菊伸

河竹黙阿弥=作
●新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)-魚屋宗五郎-

序 幕  片門前魚屋宗五郎内の場
ニ幕目  磯部邸玄関先の場
同           庭先の場

岡村柿紅=作
●太刀盗人(たちぬすびと)


●「魚屋宗五郎」は、もうそろそろ菊五郎には無理ではないか、もう少し若い人がやるべきではないか(芝翫の宗五郎は良かった。)と思っていたが、なかなか。

これまでに観た中で一番良かった。

芸は磨かれるし、まあ、僕の眼も少しは肥えてきたからかも。

以前は細部の不整合が気になったりしたが、もっとおおらかに観なくちゃいかんな。

気脈を通じ合った時蔵、團蔵、萬次郎らとの掛け合いは室内楽のような見事なアンサンブルだ。

こういう芝居では掛け声禁止が、客席の静寂(それにしても少ない。)と共にむしろ良い緊張感を生んでいると思った。

悲劇をベースにしながら、菊五郎酒乱の芸を楽しむ芝居でもある。

しこたま酔った宗五郎が酒樽を手に花道で見栄を切る。おかしくて哀れで、形がいい。

●「太刀盗人」は狂言由来。

田舎者/坂東亀蔵の太刀を騙し取ろうとする盗人/松緑がもう傑作だ。亀蔵にイマイチの弾けぶりが欲しかった。

♪2020-062/♪国立劇場-08

2020年10月7日水曜日

10月上席第2部

 2020-10-07 @国立演芸場


落語 
柳亭明楽⇒転失気
落語 柳亭小痴楽⇒道灌
落語 三笑亭可風⇒反魂香
曲独楽 やなぎ南玉
落語 柳亭楽輔⇒文七元結


寄席は8月に再開されたが、2部制になり、中入無しの短時間興行。料金不変なのでC/Pは半分に。

噺家の人数が少ないので、1人でも巧いのを聴けるといいが、下手が並んだ時は悲劇だ。
今日の出来は微妙。

人気の小痴楽は人気先行で芸はイマイチ。


トリの楽輔(この人はとても巧い噺家だと思う。)が「文七元結」を演った。
大好きな話だが、いかんせん時間不足。

名人・志ん朝はこの話に1時間超をかけている。

それだけの内容のある話を30分では味もコクも出ない。
残念ながら駆け足で筋を紹介しただけに終わった。


帰宅後、志ん朝のDVDを回したよ。


♪2020-061/♪国立演芸場-06

10月歌舞伎公演第1部

2020-10-07 @国立劇場

●ひらかな盛衰記
梶原源太景季 中村梅玉
腰元千鳥              中村扇雀
梶原平次景高       松本幸四郎
母延寿                中村魁春
                 ほか

●幸希芝居遊
久松小四郎     松本幸四郎
金沢五平次    大谷廣太郎
二朱判吉兵衛        中村莟玉
三国彦作            澤村宗之助
                                ほか

文耕堂ほか=作
●ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)
   -源太勘当-梶原館の場

鈴木英一=作
●幸希芝居遊(さちねがうしばいごっこ)
   常磐津連中


国立の歌舞伎は1月公演以来だ(2月は休演月。3月以降はコロナ休演)。

国立劇場ではコロナ再開後の興行形態が、寄席・文楽共々歌舞伎も変わった。

1日の公演数を多く(2公演)・短時間にして料金も少し安めだけど全公演を観たいから結局C/Pは悪い。


しかし、歌舞伎公演に関しては、僕の<指定席>と言っていい程こだわって取っていた2階最前列花道寄りは従来1等A席だったが、再開後は1〜3階が各1〜3等席と決められたので、嬉しいことに我が<指定席>2階最前列が2等席になって料金は半額以下となった。


1日2公演制になったが、両方観ても従来より安価だ。

逆に1階席ファンには気の毒なことに前より高くなった。


第1部は2本立て。

「ひらかな盛衰記」から”源太勘当”。「ひらかな〜」といえば、圧倒的に”逆櫓”の上演機会が多く、こちらは何度も観たが”勘当”は初めて。


宇治川の先陣争いでわざと勝ちを譲った梶原源太景季/梅玉を武家の建前から母/魁春が勘当するという話だが、源太の弟の小憎らしい平次/幸四郎や源太と恋仲の千鳥/扇雀が絡み、悲話だが笑いどころもあって面白い。


扇雀が声も姿も若々しいのに驚いた。

幸四郎は剽軽役も巧い。


2本目・新作「幸希芝居遊」でも幸四郎が主役で登場し、多くの有名な歌舞伎の見処を繋ぎ合わせて見せてくれる。

全篇に幸四郎の歌舞伎愛が溢れていて胸熱に!


♪2020-060/♪国立劇場-07

2020年10月5日月曜日

BTVN2020ピアノ「第九」❶演奏会

 2020-10-05 @みなとみらいホール


若林顕:ピアノ

ベートーベン(リスト編):交響曲第9番ニ短調「合唱付」
-----Enc---------------
J.S.バッハ(ジロティ編)」:「プレリュード」


本日の「驚愕〜」と来月の「革新の第九」という2つのユニークな「第九」演奏会の一発目!

リスト編によるPf独奏による「第九」だ。

Pf版によるベト交響曲はCカツァリスの全集を持っているし、第九だけならデュエット版も持っていてよく聴いている。


が、常々電気媒介音楽の限界は心得ていたものの、今日の<生演奏>にはもう愕然とした。

ピアノ音楽の素晴らしい表現力、ベートーベンの魅力が実にクリアに迫ってきた。

音響の良いホールだが今日は格別の音だった。

高音はカーンと抜けてゆき、低音は弦の震えが明瞭に伝わってくる。


それだけでも十分「驚愕」だったが、最初から最後まで耳に馴染んだ音楽であるにも関わらず、ピアノだけでの演奏で、声部の動きや構造が分かり易く伝わってくる。

そして、もう、ピアノ版こそ本物の「第九」のような気がしてくるのだ。


今日の演奏が格別だった理由は映像使用も奏功した。


後日の配信用なのか、ビデオカメラが何台もセットされていた。

そのカメラの映像がオルガン前に取り付けた大型スクリーンに映し出されるのだ。いろんな角度から。まるでTVの音楽番組の如し。特に素晴らしかったのは、天井から垂直に88鍵を俯瞰した映像だ。


その鍵盤上を、最近すっかりベートーベンぽくなってきた若林氏の両手が魔法のように動き回わるのにすっかり見惚れてしまう。


そうそう左ペダルを結構多用している事が良く分かった。

TV放送などではこういう角度で写さないので使っているかどうかが分かりにくい。


ひょっとして中央ペダルも使っていたのだろうか?

ともかく、この俯瞰映像で、演奏家がこまめに足も使いながら表情を変えている事が、百聞は一見に如かず、でよく分かった。


休みなしの67分くらい?汗を拭いながら一息に弾き終えた驚愕のピアニストには反則ブラボーも含めやんやの拍手!

♪2020-059/♪みなとみらいホール-14

ランチタイムコンサート 東京交響楽団 麗しのトリオ・ダンシュ

 2020-10-05 @ミューザ川崎シンフォニーホール

オーボエ:荒木奏美(首席オーボエ奏者)
クラリネット:吉野亜希菜(首席クラリネット奏者)
ファゴット:福士マリ子(首席ファゴット奏者)

モーツァルト(ウーブラドゥ編):ディヴェルティメント第1番 K439b
イベール:トリオのための5つの小品
オーリック:三重奏曲
--------------
モーツァルト:ディヴェルティメント第4番から第4楽章


今回は音楽への興味というより”麗しのトリオ”が目的…にしてはギリギリに出かけて2CBにしか席はなかった。

いや〜同志が多かったか、いつに無い盛況ぶりだ。

もういっぱいですという案内係の忠告にもかかわらず1Cから探して、2CAも空席なし。


2CB前列で聴く羽目になった。オケなら十分良席なのだけど。

始まってみると、そもそも木管トリオを2CBから聴くというのが間違いだと気づいた。息遣いが伝わらない。気持ちも入ってゆけなかった。音楽が初聴きばかりだったというのも原因の一つだろうけど。


3曲で計15楽章だったが、楽章が終わる度に3人ともリードや楽器の調子を整えるので、この間延び感が緊張を維持しづらい要素の一つだ。じっとリードを咥えたままで次の楽章に移ることはできないのだろうか。


東響は長く聴いているのに、先日の「おんがく交差点」でFgの福士嬢の存在を初めて知った。


Clの吉野嬢は今日が初めて。いや、これまで何度も見ているのだろうけど。

Obの荒木嬢は何かのコンクールで優勝したというニュースで存在を知った。

いずれにせよ、それぞれに可愛らしいお嬢さんたちだ。


つまり、もっとかぶりつきで聴きたかった。

それが残念。


♪2020-058/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-13