ラベル 梅玉 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 梅玉 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年10月21日木曜日

10月歌舞伎公演「通し狂言 伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」

2021-10-21 @国立劇場


近松徳三=作
通し狂言「伊勢音頭恋寝刃」(いせおんどこいのねたば)
 三幕七場
 国立劇場美術係=美術       

序幕
 第一場 伊勢街道相の山の場
 第二場 妙見町宿場の場
 第三場 野道追駆けの場
 第四場 野原地蔵前の場
 第五場 二見ヶ浦の場

二幕目 
 第一場 古市油屋店先の場
 第二場 同 奥庭の場

福岡貢          中村梅玉
藤浪左膳/料理人喜助    中村又五郎
油屋お紺         中村梅枝
油屋お鹿         中村歌昇
奴林平          中村萬太郎
油屋お岸         中村莟玉
徳島岩次実ハ藍玉屋北六   片岡市蔵
藍玉屋北六実ハ徳島岩次   坂東秀調
今田万次郎        中村扇雀
仲居万野         中村時蔵
              ほか



2015年に梅玉の主演で国立劇場では初めて通し狂言としてかけられたのを観た。


今回は、同じく「通し」といっても初演時に比べて一幕少ない。

コロナ以降の芝居は、概ね短縮形になっている。


役者も梅玉の他は莟玉(当時は梅丸)が同じ役で出ている他は多分全員変わっている。


歌舞伎としては色々見処(二見ヶ浦の場、油屋奥庭など)があるが、主人公が妖刀のせいにして殺される程の罪もない者8人ばかりに斬りつけ、その部下が「切れ味お見事!」と持ち上げて幕という構成や演出にちょいと疑問あり。

返り血を浴びた梅玉の見得などは残酷美でもあるが陰惨な印象が残った。


中村莟玉が同じ役で出ている(前回は10代だった!)が、6年経って女の色っぽさが益々磨かれたようで同慶の至り。

梅枝もいい女方だし、いずれは父時蔵が演じた大きな役の仲居万野を演るようになるのだろう。


今回は歌昇が生涯初めての女方だそうだが、滑稽な味も出して初めてとは思えない良い出来だった。


♪2021-113/♪国立劇場-08

2020年10月7日水曜日

10月歌舞伎公演第1部

2020-10-07 @国立劇場

●ひらかな盛衰記
梶原源太景季 中村梅玉
腰元千鳥              中村扇雀
梶原平次景高       松本幸四郎
母延寿                中村魁春
                 ほか

●幸希芝居遊
久松小四郎     松本幸四郎
金沢五平次    大谷廣太郎
二朱判吉兵衛        中村莟玉
三国彦作            澤村宗之助
                                ほか

文耕堂ほか=作
●ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)
   -源太勘当-梶原館の場

鈴木英一=作
●幸希芝居遊(さちねがうしばいごっこ)
   常磐津連中


国立の歌舞伎は1月公演以来だ(2月は休演月。3月以降はコロナ休演)。

国立劇場ではコロナ再開後の興行形態が、寄席・文楽共々歌舞伎も変わった。

1日の公演数を多く(2公演)・短時間にして料金も少し安めだけど全公演を観たいから結局C/Pは悪い。


しかし、歌舞伎公演に関しては、僕の<指定席>と言っていい程こだわって取っていた2階最前列花道寄りは従来1等A席だったが、再開後は1〜3階が各1〜3等席と決められたので、嬉しいことに我が<指定席>2階最前列が2等席になって料金は半額以下となった。


1日2公演制になったが、両方観ても従来より安価だ。

逆に1階席ファンには気の毒なことに前より高くなった。


第1部は2本立て。

「ひらかな盛衰記」から”源太勘当”。「ひらかな〜」といえば、圧倒的に”逆櫓”の上演機会が多く、こちらは何度も観たが”勘当”は初めて。


宇治川の先陣争いでわざと勝ちを譲った梶原源太景季/梅玉を武家の建前から母/魁春が勘当するという話だが、源太の弟の小憎らしい平次/幸四郎や源太と恋仲の千鳥/扇雀が絡み、悲話だが笑いどころもあって面白い。


扇雀が声も姿も若々しいのに驚いた。

幸四郎は剽軽役も巧い。


2本目・新作「幸希芝居遊」でも幸四郎が主役で登場し、多くの有名な歌舞伎の見処を繋ぎ合わせて見せてくれる。

全篇に幸四郎の歌舞伎愛が溢れていて胸熱に!


♪2020-060/♪国立劇場-07

2020年2月6日木曜日

2月大歌舞伎 夜の部

2020-02-06 @歌舞伎座


十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言
一、八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)
 湖水御座船の場
佐藤正清⇒我當
斑鳩平次⇒進之介
正木大介⇒萬太郎
鞠川玄蕃⇒松之助
轟軍次⇒片岡亀蔵
雛衣⇒魁春

二、羽衣(はごろも)
天女⇒玉三郎
伯竜⇒勘九郎

三遊亭円朝 口演
榎戸賢治 作
三、人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)
左官長兵衛⇒菊五郎
和泉屋清兵衛⇒左團次
女房お兼⇒雀右衛門
和泉屋手代文七⇒梅枝
娘お久⇒莟玉
小じょくお豆⇒寺嶋眞秀
家主甚八⇒片岡亀蔵
角海老手代藤助⇒團蔵
角海老女房お駒⇒時蔵
鳶頭伊兵衛⇒梅玉

十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言
四、道行故郷の初雪(みちゆきこきょうのはつゆき)
忠兵衛⇒梅玉
万才⇒松緑
梅川⇒秀太郎

夜の部は4本立。好みは人それぞれとは言え、僕は断然「文七元結」に期待。
というのも落語では志ん朝のが好きで何十回となく聴いているが、歌舞伎で観るのは初めて。
楽しみであると同時に、志ん朝のように上手に江戸っ子の心意気や人情が表現できるかと不安もあり。

落語のように時空を瞬間移動できない芝居ではある程度話を整理しなくてはならないので、面白い部分が一部カットされていたのはやむを得ないが、歌舞伎版も繰り返し上演されているようにこれはこれで実におかしくもあり、ジーンと胸を打つ。

左官の長兵衛⇒菊五郎、その女房⇒雀右衛門、娘お久⇒莟玉(前・梅丸。なんて可愛らしい!)、家主⇒片岡亀蔵。
ほかに梅玉、時蔵、左団次など達者が揃った。

落語も同様だが、悪人が1人も出ず、粋でほろっとさせる話は江戸前ならではだと思う。


♪2020-016/♪歌舞伎座-01

2018年11月4日日曜日

平成30年度(第73回)文化庁芸術祭協賛 明治150年記念 11月歌舞伎公演 通し狂言「名高大岡越前裁」

2018-11-04 @国立劇場


河竹黙阿弥=作
国立劇場文芸研究会=補綴
国立劇場美術係=美術
通し狂言「名高大岡越前裁」(なもたかしおおおかさばき)六幕九場

序   幕 第一場  紀州平沢村お三住居の場
            第二場  紀州加田の浦の場
二幕目              美濃長洞常楽院本堂の場
三幕目 第一場  大岡邸奥の間の場
            第二場  同       無常門の場
            第三場  小石川水戸家奥殿の場
四幕目              南町奉行屋敷内広書院の場
五幕目              大岡邸奥の間庭先の場
大 詰              大岡役宅奥殿の場

大岡越前守忠相⇒中村梅玉

大岡妻小沢⇒中村魁春
法沢後二天一坊⇒市川右團次
田口千助⇒中村松江
吉田三五郎⇒市川男女蔵
下男久助/池田大助⇒坂東彦三郎
大岡一子忠右衛門⇒市川右近
お三⇒中村歌女之丞
僧天忠/久保見杢四郎⇒嵐橘三郎
土屋六郎右衛門⇒大谷桂三
伊賀亮女房おさみ⇒市川齊入
平石治右衛門⇒坂東秀調
名主甚右衛門⇒市村家橘
山内伊賀亮⇒坂東彌十郎
徳川綱條⇒坂東楽善
下女お霜⇒中村梅丸
               ほか

昨日が初日で今日は日曜日。にもかかわらず客席は閑散としていた。
梅玉、魁春、右團次、彦三郎、彌十郎など渋い役者が渋い芸を見せてくれるのだけど華には不足するなあ。

越前守(梅玉)が天一坊(右團次)一味の騙りを鮮やかに裁くよくある話とは趣向を変えてあり、尻尾を掴ませない悪党たちの為に、越前守、その妻(魁春)、嫡男(右近)が切腹の危機に陥る。

この越前守の、奉行としてあくまでも自分の直感を信じて真実を見極めたいとする業のような真摯な人柄と、それによって思いもよらぬ窮地に落ち込むさまを通して、これまでの大岡裁きモノとは異質な、人間越前守を描こうとしているのだろう。

悪事の証拠を収集すべく遠国に派遣した家来たちが中々帰参せず、切腹の刻限が迫って来る。
屋敷で待ち受ける忠臣大介(彦三郎)は、気が気でならず、越前守に「今、暫くお待ちくだされ」と必死に頼みながら同士の帰りを今か今かと焦って待っている。
ここは、恰も「忠臣蔵」四段目の如し。

時事ネタ入れて笑える場面も。

悪党、天一坊を右團次が演じているが、この人がこんな大きな役を演じるのを観たのは初めて。梅玉との掛け合いで彼のセリフの出るのが遅い場面があって、これはヒヤッとしたが、全体としてはまずまずの出来かな。

若手役者ではいつもながら梅丸がよろしい。
まるで女性にしか見えない。

https://youtu.be/Do1quJB4pa8

♪2018-140/♪国立劇場-015

2018年9月6日木曜日

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部

2018-09-06 @歌舞伎座


  祇園祭礼信仰記
一、金閣寺
此下東吉実は真柴久吉⇒梅玉
雪姫⇒児太郎
狩野之介直信⇒幸四郎
松永鬼藤太⇒坂東亀蔵
此下家臣春川左近⇒橋之助
同   戸田隼人⇒男寅
同   内海三郎⇒福之助
同   山下主水⇒玉太郎
腰元⇒梅花
腰元⇒歌女之丞
十河軍平実は佐藤正清⇒彌十郎
松永大膳⇒松緑
慶寿院尼⇒福助

  萩原雪夫 作
  今井豊茂 補綴
二、鬼揃紅葉狩(おにぞろいもみじがり)
更科の前実は戸隠山の鬼女⇒幸四郎
平維茂⇒錦之助
侍女かえで⇒高麗蔵
侍女ぬるで⇒米吉
侍女かつら⇒児太郎
侍女もみじ⇒宗之助
従者月郎吾⇒隼人
従者雪郎太⇒廣太郎
男山八幡の末社⇒玉太郎 
男山八幡の末社⇒東蔵

  河竹黙阿弥 作
  天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)
三、河内山(こうちやま)
上州屋質見世
松江邸広間
同  書院
同  玄関先
河内山宗俊⇒吉右衛門
松江出雲守⇒幸四郎
宮崎数馬⇒歌昇
大橋伊織⇒種之助
黒沢要⇒隼人
腰元浪路⇒米吉
北村大膳⇒吉之丞 
高木小左衛門⇒又五郎
和泉屋清兵衛⇒歌六
後家おまき⇒魁春

「金閣寺」、「鬼揃紅葉狩」、「河内山」3本立て。それぞれに歌舞伎らしい作品だ。

「金閣寺」では久し振りに大きな役の松緑を楽しんだ。
児太郎が女形の大役「雪姫」に初役で挑んだ。児太郎はこれまで何度も観ていたけど大きな役は無かったので声の具合に着目したことがなかったから、今日の出来が普段どおりなのか喉の具合が悪かったのか判断できないが、少し嗄れるところが気になった。若いお姫様としてはもう少し済んだ声がほしいが。

その「金閣寺」で、5年近い病休から復帰した中村福助の登場では館内がどっと湧いた。

昼の部の吉右衛門の出番は「河内山」だけだが、声がよく通って良かった。七五調での聴かせどころは最後の二幕目第三場「玄関先の場」だが、ここでは大向うから盛んに掛け声が飛んだ。

こういうところは、歌舞伎が役者と観客とで成り立っている芸だなと実感する。

幸四郎は全作に登場し、夜の部にも出ている。そんなに器用に働いて芸が枯渇しないか?

個人的に好感している米吉くん。今日も良かった。

♪2018-105/♪歌舞伎座-05

2018年2月1日木曜日

二月大歌舞伎 昼の部

2018-02-01 @歌舞伎座


一、春駒祝高麗(はるこまいわいのこうらい)
工藤祐経⇒梅玉
曽我五郎⇒芝翫
大磯の虎⇒梅枝
喜瀬川亀鶴⇒梅丸
化粧坂少将⇒米吉
曽我十郎⇒錦之助
小林朝比奈⇒又五郎
     
二、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣/奥殿
一條大蔵長成⇒染五郎改め幸四郎
常盤御前⇒時蔵
お京⇒孝太郎
吉岡鬼次郎⇒松緑
茶亭与市⇒橘三郎
女小姓⇒宗之助
八剣勘解由⇒歌六
鳴瀬⇒秀太郎
     
三、歌舞伎十八番の内 暫(しばらく)
鎌倉権五郎⇒海老蔵
鹿島入道震斎⇒鴈治郎
那須九郎妹照葉⇒孝太郎
成田五郎⇒右團次
小金丸行綱⇒彦三郎
加茂三郎⇒坂東亀蔵
桂の前⇒尾上右近
大江正広⇒廣松
埴生五郎⇒弘太郎
荏原八郎⇒九團次
足柄左衛門⇒男女蔵
東金太郎⇒市蔵
局常盤木⇒齊入
宝木蔵人⇒家橘
加茂次郎⇒友右衛門
清原武衡⇒左團次
     
北條秀司作・演出
四、井伊大老(いいたいろう)
井伊大老⇒吉右衛門
お静の方⇒雀右衛門
昌子の方⇒高麗蔵
宇津木六之丞⇒吉之丞
老女雲の井⇒歌女之丞
仙英禅師⇒歌六
長野主膳⇒梅玉

高麗屋3代同時襲名披露公演の第2弾、と言っても3人が揃うのは夜の部で、これは3等席以下の切符が取れない。2等席といっても1万5千円だ。これなら日生劇場のS席に回したい。
昼は新・幸四郎が一条大蔵卿に出ただけで新・白鸚も新・染五郎も夜の部だけだ。それに夜の部には高麗屋の3人以外に菊五郎、仁左衛門、玉三郎、猿之助、藤十郎などのスターが登場するので、昼のぶとは比べ物にならない豪華さだ。
昼夜の配役の偏りは大いに不満。
それで料金は同じなんだものなあ。
結局、昼の部だけではなく夜の部も観せようという商魂か。
いや、それだけではなく「仮名手本〜七段目」ではお軽勘平を偶数日と奇数日で、玉三郎+仁左衛門と菊之助+海老蔵というダブルキャストにして、よければ二度とも観てくださいという魂胆であるのが腹立たしい。


その高麗屋の貴重な出番「一條大蔵譚」では新・幸四郎の阿呆ぶりはもっとハジけたかった。この芝居は何回か観ているが、誰が演っても無理があって、面白いと感じたことはない。大義のために阿呆なふりをしているが、ここ一番では正気に戻ってかっこよく見せ問題が片付くとまた阿呆に戻るのだが(もう、戻る必要はないのではないか、という気がしてならないのだけど。)、こういう変化はなんかお客を喜ばせるにはとても安易でどうも気分が乗れない。
ま、ここぞというところで、一條大蔵卿が孔雀の羽を広げるように豪華な衣裳を見せて見得を切るというところが、歌舞伎の華々しいところで、これはこれでいいのだろうけど。

「暫」は前に七之助の「女暫」を観たが、本家?は今日が始めて。海老蔵がさすがの貫禄。長い刀を振り回して大勢の首を跳ねるところは「女暫」で経験していたが、面白い。
「井伊大老」はえらく地味な科白劇だが、2幕途中から登場する吉右衞門と雀右衛門のシットリ芸がいい。

♪2018-013/♪歌舞伎座-01

2017年11月8日水曜日

11月歌舞伎公演「坂崎出羽守(さかざきでわのかみ)」「沓掛時次郎(くつかけときじろう)」

2017-11-08 @国立劇場


平成29年度(第72回)文化庁芸術祭協賛

山本有三生誕百三十年
山本有三=作
二世尾上松緑=演出
坂崎出羽守(さかざきでわのかみ)四幕
   中嶋正留=美術
第一幕       茶臼山家康本陣
第二幕       宮の渡し船中
第三幕(一)駿府城内茶座敷
   (二)同 表座敷の一室
第四幕       牛込坂崎江戸邸内成正の居間
--------------------
長谷川伸=作
大和田文雄=演出
沓掛時次郎(くつかけときじろう)三幕
   釘町久磨次=装置
序幕    (一)博徒六ッ田三蔵の家の中
    (二)三蔵の家の外
    (三)再び家の中
    (四)再び家の外
    (五)三たび家の中
二幕目    中仙道熊谷宿裏通り
大詰    (一)熊谷宿安泊り
    (二)喧嘩場より遠からぬ路傍
    (三)元の安泊り
    (四)宿外れの路傍

中村梅玉⇒徳川家康/沓掛時次郎
中村魁春⇒三蔵女房おきぬ
尾上松緑⇒坂崎出羽守成正/六ッ田の三蔵
中村松江⇒南部左門/大野木の百助
坂東亀蔵⇒本多平八郎忠刻/苫屋の半太郎
中村梅枝⇒家康の孫娘千姫
中村歌昇⇒松川源六郎
市村竹松⇒坂崎の小姓
市川男寅⇒松平の使者
中村玉太郎⇒坂崎の小姓
尾上左近⇒三蔵倅太郎吉
市村橘太郎⇒三宅惣兵衛/安宿の亭主安兵衛
中村歌女之丞⇒安兵衛女房おろく
嵐橘三郎⇒本多佐渡守正信
河原崎権十郎⇒本多上野介正純
市村萬次郎⇒刑部卿の局
坂東楽善⇒八丁徳
市川左團次⇒金地院崇伝
   ほか

新歌舞伎2本立て。僕としては国立劇場では初めての経験。
竹本も三味線もなし。戦場のざわめき、風、雨、波などの自然音の録音(あるいは効果音?)が使われる。

幕は、普通は定式幕だが、今回はすべて暗転と緞帳が上ったり降りたり。

見得はない。
色々と普段の歌舞伎とは勝手が違うので、拍手のタイミングも難しく、僕は声を掛けたりしないけど、大向こうも出番に窮していたようだ。

かわった出し物であるせいか、今日の客席はせいぜい半分ほどしか埋まっていない。これじゃ役者も気合いが入らないだろう。

坂崎出羽守
無骨にして直情径行の男が、焼け落ちる大阪城天守から自らの顔面の半分を焼きながらも千姫を救い出す。家康が救いだせば嫁にやろうと言われ、急に恋心が芽生える。一旦芽生えると激しい性格ゆえに、千姫一途となるが、肝心の千姫は無骨な坂崎に振り向こうともせず、祖父の家康に縁談を断る。千姫は仏門に入るという理由で縁談を断り、その際、誰にも嫁がないという確認をとってなんとか承知したが、後日、恋敵に嫁ぐことを知ってその行列に狼藉に及ぶという話だ。
まったく、戦場でしか役に立たない男ゆえの悲劇だが、あまりに初心なので彼に感情移入できないのは残念。松緑は祖父のために書かれた芝居を父に次いで今回ようやく初役で勤めるので思い入れもあるだろうし、良い味を出しているけど、現代人が観るには芝居に無理があるなあ。

沓掛時次郎
うーむ。これはイマイチ良さが分からなかった。第一、梅玉のような品のある役者にヤクザものは似合わない。物語もピンと来ない。時次郎は一宿一飯の義理で、土地の博徒の頭を斬り捨てるが、その博徒には妻と幼い子供が居た。今際の際に「女房、子供を頼む」と言われた時次郎はそれを引き受けて以後3人で旅が始まる…。もう、この設定が理解不能だ。後は、人情噺としてそれなりに分からないでもないけど、とても共感できる話ではなかった。
演技のスタイルも、歌舞伎というより新派とか新国劇風だ。国立劇場向きとは思えない。

♪2017-173/♪国立劇場-17

2017年5月11日木曜日

團菊祭五月大歌舞伎 七世尾上梅幸二十三回忌 十七世市村羽左衛門十七回忌追善

2017-05-11 @歌舞伎座


初 代坂東楽善
九代目坂東彦三郎 襲名披露狂言
三代目坂東亀蔵
六代目坂東亀三郎 初舞台

一 壽曽我対面(ことぶきそがのたいめん )
  〜劇中にて襲名口上申し上げ候
工藤祐経⇒菊五郎
曽我五郎⇒亀三郎改め彦三郎
近江小藤太⇒亀寿改め坂東亀蔵
八幡三郎⇒松也
化粧坂少将⇒梅枝
秦野四郎⇒竹松
鬼王家臣亀丸⇒初舞台亀三郎
梶原平次景高⇒橘太郎
鬼王新左衛門⇒権十郎
梶原平三景時⇒家橘
大磯の虎⇒萬次郎
曽我十郎⇒時蔵
小林朝比奈⇒彦三郎改め楽善
     
二 伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
〈御殿〉
乳人政岡⇒菊之助
八汐⇒歌六
沖の井⇒梅枝
松島⇒尾上右近
栄御前⇒魁春

〈床下〉
仁木弾正⇒海老蔵
荒獅子男之助⇒松緑

〈対決・刃傷〉
細川勝元⇒梅玉
山名宗全⇒友右衛門
大江鬼貫⇒右之助
黒沢官蔵⇒九團次
山中鹿之助⇒廣松
渡辺外記左衛門⇒市蔵
渡辺民部⇒右團次
仁木弾正⇒海老蔵
     
戸崎四郎 補綴
三 四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり )

〈神功皇后と武内宿禰〉
〈三社祭〉
〈通人・野暮大尽〉
〈石橋〉

武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精⇒松緑
神功皇后/善玉/通人/獅子の精⇒亀寿改め坂東亀蔵

坂東家の襲名披露(楽善←彦三郎←亀三郎/亀蔵←亀寿/新・亀三郎初舞台)も兼ねていたせいか、どの演目も熱気があった。
特に「寿曽我対面」は初めてこの芝居の面白さが分かった気がする。血気にはやる五郎役の彦三郎の気合がいい。

十郎・五郎を彦三郎・亀蔵の実兄弟で演ずるのかと思い込んでいたが、十郎役は時蔵だった。菊五郎の祐経に対峙するには時蔵の貫禄が必要なのかも。

終盤に彦三郎(前亀三郎)の長男、新・亀三郎が登場し館内どよめく。まるで福助人形の如く可愛い。
基本的に、芸以前のちびっこには興味ないのだけど、この子に限っては、昼の部に強力ライバルの初お目見えもあって、ちょいと影が薄いが、ご本人はなかなか立派なお勤めぶり。その健気さに心打たれた。こういう子供達を応援するのも歌舞伎観客の勤めだものなあ。

「伽羅先代萩」。今回は「御殿〜刃傷」で見応えあり。
前半は政岡の菊之助、後半は勝元の梅玉と仁木弾正の海老蔵が見せる!
菊之助は、さあ、どうだったか。あまり情感が伝わってこなかったな。海老蔵は見る度に痩せてゆくような気がするが、目力は怖いほどだ。
最後、松緑と亀蔵で「石橋」の2人獅子が見事な美しさ。
<舞台写真は松竹のホームページから>


♪2017-81/♪歌舞伎座-03

2017年2月16日木曜日

江戸歌舞伎三百九十年 猿若祭二月大歌舞伎

2017-02-16 @歌舞伎座


田中青滋 作
一、猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)
猿若⇒勘九郎
出雲の阿国⇒七之助
若衆⇒宗之助
若衆⇒児太郎
若衆⇒橋之助
若衆⇒福之助
若衆⇒吉之丞
若衆⇒鶴松
福富屋女房ふく⇒萬次郎
奉行板倉勝重⇒彌十郎
福富屋万兵衛⇒鴈治郎
  
初代桜田治助 作
  戸部銀作 補綴
二、大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)
「黒髪」長唄連中
正木幸左衛門実は源頼朝⇒松緑
地獄谷の清左衛門実は文覚上人/北条時政⇒勘九郎
おます実は政子の前⇒七之助
清滝⇒児太郎
熊谷直実⇒竹松
畠山重忠⇒廣太郎
佐々木高綱⇒男寅
三浦義澄⇒福之助
下男六助⇒亀寿
家主弥次兵衛⇒團蔵
女房おふじ実は辰姫⇒時蔵
  
河竹黙阿弥 作
三、四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)
四谷見附より牢内言渡しまで
野州無宿富蔵⇒菊五郎
女房おさよ⇒時蔵
伊丹屋徳太郎⇒錦之助
浅草無宿才次郎⇒松緑
寺島無宿長太郎⇒菊之助
黒川隼人⇒松江
頭⇒亀三郎
三番役⇒亀寿
下谷無宿九郎蔵⇒萬太郎
ぐでんの伝次⇒橘太郎
下金屋銀兵衛⇒松之助
穴の隠居⇒由次郎
数見役⇒権十郎
石出帯刀⇒秀調
生馬の眼八⇒團蔵
隅の隠居⇒歌六
うどん屋六兵衛⇒東蔵
浜田左内⇒彦三郎
牢名主松島奥五郎⇒左團次
藤岡藤十郎⇒梅玉
    
四、扇獅子(おうぎじし)
鳶頭⇒梅玉
芸者⇒雀右衛門

1★★★…いわば、江戸歌舞伎の発祥を祝う長唄に乗せた所作事(舞踊)中心。華やかでいい。

2★★…この幕は寝てよし。

3★★★…これは菊五郎と梅玉が双方いい味出すのだけど、世話物として物足りない。牢屋の仕組みを知らなかった当時の普通の生活者にとって、このリアルさに惹きこまれたのかもしれないけど。

4★★★…清元による所作事。鏡獅子ならぬ扇獅子。四季の移り変わりを愛でる舞踊。梅玉と雀右衛門。ここでの雀右衛門はいいと思った。

勘九郎、七之助はいい。優れたDNAを受け継いでいると思う。
菊之助、松緑は出番少なし。

♪2017-024/♪歌舞伎座-01

2016年12月23日金曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第三部 四幕八場

2016-12-23 @国立劇場


竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第三部 四幕八場
国立劇場美術係=美術

八段目   道行旅路の嫁入
九段目   山科閑居の場
十段目   天川屋義平内の場
十一段目 高家表門討入りの場
    同  広間の場
    同  奥庭泉水の場
    同  柴部屋本懐焼香の場
    花水橋引揚げの場


2日の初日鑑賞に続いて2回目だ。
前回は、めったにない事だけど、1階4列目中央やや上手寄りから観たが、今回は3階最前列席中央だったが、むしろこのチケット代の安い席の方が見通しが良くて楽しめた…ともいいきれないか。
なにしろ2回目なので筋が頭に入っているという利点もあったのだろう。
特に十一段目の高家表門の場では46名の居並ぶ迫力は高い場所から見下ろしていた方が迫力を感じた。

全3部を2回ずつ観て、この間に文楽版も観たのでいよいよ全篇が終わってしまうと寂しくもある。
単なる<仇討ち事件>を描くのではなく、殿様の短慮に巻き込まれた多くの、いろんな立場の人々の忠義やそれ故の悲劇を描く人間ドラマとなっているのが素晴らしく、良くできた話だと感心する。

この公演は当然録画は行われたはずだからNHKが放映してくれると嬉しいが、何しろ大長編であるから無理だろうな。

♪2016-183/♪国立劇場-010

2016年12月2日金曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第三部 四幕八場

2016-12-02 @国立劇場


竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第三部 四幕八場
国立劇場美術係=美術

八段目   道行旅路の嫁入
九段目   山科閑居の場
十段目   天川屋義平内の場
十一段目 高家表門討入りの場
    同  広間の場
    同  奥庭泉水の場
    同  柴部屋本懐焼香の場
    花水橋引揚げの場

(主な配役)
【八段目】
本蔵妻戸無瀬⇒中村魁春
娘小浪⇒中村児太郎

【九段目】
加古川本蔵⇒松本幸四郎
妻戸無瀬⇒中村魁春
娘小浪⇒中村児太郎
一力女房お品⇒中村歌女之丞
由良之助妻お石⇒市川笑也
大星力弥⇒中村錦之助
大星由良之助⇒中村梅玉

【十段目】
天川屋義平⇒中村歌六
女房お園⇒市川高麗蔵
大鷲文吾⇒中村松江
竹森喜多八⇒坂東亀寿
千崎弥五郎⇒中村種之助
矢間重太郎⇒中村隼人
丁稚伊吾⇒澤村宗之助
医者太田了竹⇒松本錦吾
大星由良之助⇒中村梅玉

【十一段目】
大星由良之助⇒中村梅玉
大星力弥⇒中村米吉
寺岡平右衛門⇒中村錦之助
大鷲文吾⇒中村松江
竹森喜多八⇒坂東亀寿
千崎弥五郎⇒中村種之助
矢間重太郎⇒中村隼人
赤垣源蔵⇒市川男寅
茶道春斎⇒中村玉太郎
矢間喜兵衛⇒中村寿治郎
織部弥次兵衛⇒嵐橘三郎
織部安兵衛⇒澤村宗之助
高師泰⇒市川男女蔵
和久半太夫⇒片岡亀蔵
原郷右衛門⇒市川團蔵
小林平八郎⇒尾上松緑
桃井若狭之助⇒市川左團次
ほか


長大な芝居が遂に終わってしまった。
ま、今月中にもう一度観ることにしているけど、この先、<全段完全通し>は生きているうちには観られないだろうから良い経験ができた。

この芝居に関しては、第2部から(第1部も遡って)初めて台本を購入した。もちろん第3部も購入したので、今日は第3部の1回目でもあるので、台本と照らし合わせながら舞台を観たので非常に良く分かった。しかし、月内の次回鑑賞時は一切の解説本無しで舞台に集中しようと思う。

八段目道行は舞踊劇(竹本の伴奏による。セリフはない。)だが、加古川本蔵の妻(戸無瀬=魁春)と娘(小浪=児太郎)の東海道を京都山科にいる小浪の許嫁である力弥の屋敷までの嫁入りの旅で、不安な要素もないではないが全段中一番平和な話だ。
背景の景色が変化することで2人の道中が運んでゆくのが分かるようになっていて、他家の嫁入り行列なども紙人形で作ってあってユーモラスでもある。

九段目山科閑居の場では加古川本蔵の一家の物語が胸を熱くする。本蔵の幸四郎、由良之助の梅玉は芝居のタイプが全然違うけど、そんなことにはお構いなしが歌舞伎の面白さでもある。

由良之助の妻お石を演じた市川笑也という役者のことは全然知らなかった。多分、これまで一度も芝居を観たことがなかったのではないか。しかし、冷徹で筋目を通そうとする武士の妻お石を実に好演したと思う。厳しいばかりではなく、情の人でもあるところをさり気なく見せるところが良かった。今後楽しみな役者だ。
小浪は一部で米吉が演じて実に可愛らしかったので今回も力弥より小浪を演じたら良かったが、しかし、今回の児太郎の小浪も実に良かった。この人の芝居を始めていいと思ったよ。

講談・浪曲では「天野屋利兵衛は男でござる。」で知られる天川屋義平の十段目は筋に無理があるが、ここにも義理と人情の板挟みで苦しむ町人の物語が殺伐とした仇討ち物語に良い味付けではある。

いよいよ十一段目。
幕が開くと広い舞台に拵えられた高家の表門。その前に所狭しと46人の赤穂義士が居並ぶ様にまずは圧倒される。
こんなに大勢の役者が揃って同じ場面に立つという芝居がほかにあるだろうか。

このあとの討ち入りの様は、いわゆる歌舞伎風の踊りのような立ち回りではなく、時代劇映画の殺陣を観るようなかなりリアルな厳しいものなので驚いた。

ようやく師直の首を打ち取り、判官の位牌の前に供えた由良之助は、まずは師直に一矢を報いた矢間(やざま)重太郎(中村隼人)に手柄として最初の焼香を命ずる。次に足軽でありながらその忠義心から義士の連判状に名を連ねてもらった寺岡平右衛門(錦之助)に対し、勘平の遺した財布を手渡して妹婿の代わりに焼香させる。もう、ここでかなり目頭が熱くなる。

その後亡君の菩提寺まで引き揚げる途中の花水橋でそもそもこの事件の発端を作った若狭之助(左団次)に呼び止められ、あっぱれの本懐を讃えられ、義士の姓名を我が胸に刻みたいという申し出に応じて由良之助以下46人(これに勘平を加えて47士)が高らかに、誇らしげに名乗りを上げ、花道に消えてゆく。

芝居興行の世界では「忠臣蔵にはずれ無し」と言うそうだが、300年にわたって庶民に愛されてきたのもなるほ納得。いやはや面白い芝居をたっぷりと観せてもらった。

♪2016-166/♪国立劇場-09

2016年10月27日木曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第一部 四幕九場

2016-10-27 @国立劇場


平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)第一部四幕九場
国立劇場美術係=美術

大序   鶴ヶ岡社頭兜改めの場
二段目  桃井館力弥使者の場
       同 松切りの場
三段目   足利館門前の場
            同 松の間刃傷の場
            同 裏門の場
四段目   扇ヶ谷塩冶館花献上の場
            同 判官切腹の場
            同 表門城明渡しの場

(主な配役)⇒10/03のノート参照

初日に観たが、いよいよ第2部の公演も近づいて、復讐と予習を兼ねて千秋楽にも出かけた。

すっかり、頭に入っていたつもりだけど、見逃していた部分などもあって良い勉強になった。

やはり、4段目の判官切腹の場からの緊張感がいい。役者陣も1ヶ月近く演じてきただけに息が合ってきたのだろう。
観ている側の気持ちも、劇中にシンクロしてゆくようだった。
由良之助の幸四郎も、初日に感じたほどにはクセを感じなかった。
初日には足元がふらついた團蔵もシャキッと有終の美を飾った。

第2部が楽しみだ。
第2部も第3部も2回観ることにしている。
めったに観られない全段完全通しを全身全霊で味わいたいものだ。

♪2016-148/♪国立劇場-06

2016年10月3日月曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第一部 四幕九場

2016-10-03 @国立劇場



平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)第一部四幕九場
国立劇場美術係=美術

大序   鶴ヶ岡社頭兜改めの場
二段目  桃井館力弥使者の場
      同 松切りの場
三段目   足利館門前の場
            同 松の間刃傷の場
            同 裏門の場
四段目   扇ヶ谷塩冶館花献上の場
            同 判官切腹の場
            同 表門城明渡しの場

(主な配役)
【大序】
塩冶判官⇒中村梅玉
顔世御前⇒片岡秀太郎
足利直義⇒中村松江
桃井若狭之助⇒中村錦之助
高師直⇒市川左團次

【二段目】
桃井若狭之助⇒中村錦之助
本蔵妻戸無瀬⇒市村萬次郎
大星力弥⇒中村隼人
本蔵娘小浪⇒中村米吉
加古川本蔵⇒市川團蔵

【三段目】
塩冶判官⇒中村梅玉
早野勘平⇒中村扇雀
桃井若狭之助⇒中村錦之助
鷺坂伴内⇒市村橘太郎
腰元おかる⇒市川高麗蔵
加古川本蔵⇒市川團蔵
高師直⇒市川左團次

【四段目】
大星由良之助⇒松本幸四郎
石堂右馬之丞⇒市川左團次
薬師寺次郎左衛門⇒坂東彦三郎
大鷲文吾⇒坂東秀調
赤垣源蔵⇒大谷桂三
織部安兵衛⇒澤村宗之助
千崎弥五郎⇒市村竹松
大星力弥⇒中村隼人
佐藤与茂七⇒市川男寅
矢間重太郎⇒嵐橘三郎
斧九太夫⇒松本錦吾
竹森喜多八⇒澤村由次郎
原郷右衛門⇒大谷友右衛門
顔世御前⇒片岡秀太郎
塩冶判官⇒中村梅玉
ほか


今年は国立劇場会場50周年ということで記念の大型企画が各分野で並んだが、中でも、「仮名手本忠臣蔵」の3ヶ月連続公演による全段完全通し上演というのが画期的らしい。

全段通し上演と称した公演は度々行われているようだが、国立劇場が昭和61年に開場20周年記念で今回と同じく10月~12月の3回に分けて上演したものは本物の「完全通し上演」だそうだが、他の「全段通し」は実際にはいくつかの場面が省略されているらしい。

50周年記念の今回も、上演可能な場面はすべて網羅するという「完全通し上演」だと言うから、今回を逃したら次の機会に生きている保障はないかも…と思って、「あぜくら会」会員向けの3公演セット券を迷わず買った。歌舞伎鑑賞はたいてい3階席だが、今回は特別席と1等A席しかセット販売されないので1等Aを選んだ。

人形浄瑠璃からの移行作品の全段完全通しなので、一段目は「大序」と呼ばれるそうだが、この「大序」の前には定式幕の前に文楽人形が出てきて配役を紹介する。これを「口上人形」という。滑稽な表情とセリフがおかしく、かしこまった作品かと思っていたが楽しく出鼻をくじかれた。

口上が終わって幕が開くと鶴岡八幡宮の場面だが、ここでも役者たちは目を伏せうなだれたまま微動だにしない。そしてどこからか役者の名前を告げる声がしてそれに応じて一人ずつ精気を得たように「人形」から「人間」に生まれ変わる。

こういう演出はいずれも、原典の人形浄瑠璃に敬意を表するものだそうだ。

物語は、映画やテレビドラマなどでよく知っている「忠臣蔵」とはかなり異なるので驚きの連続。
しかし、省かれた場面がないので物語の連続性は分かりやすい。
なるほど、これが本物の「仮名手本忠臣蔵」なのか。

人形浄瑠璃として1748年に初演され、同年末には早くも歌舞伎に移行されて以来、270年近い歴史の中で、上演すれば必ずそれなりのヒットが見込まれたそうで、もはや日本人のDNAに刷り込まれているのかもしれない。

塩冶判官を演ずる梅玉はいつもながら渋い。
4段目になってようやく登場する由良之助の幸四郎は、やや、芝居が大仰ではないかと思うけど如何にもの幸四郎節で、やはり舞台の求心力は大きい。
左団次が演ずる加古川本蔵という登場人物のことは知らなかった。これまで映画やTVドラマなどではこの人に相当する人物は出てこなかったように思う。そもそも本蔵が仕える桃井若狭之介(錦之助)という殿様の存在も知らなかったが、どうやら、本蔵の存在が全段の物語の中で大きな役割を占めることになりそうだ。

「大序」も伝統に則った珍しい演出だったが、4段目切腹の場も古来「通さん場」と呼ばれ、お客の出入りを禁じたそうで、国立劇場でも踏襲された。

こんなところにも、格調を感じさせる大芝居だ。
この壮大な物語があと2回も続くというのはとてもワクワクする。


♪2016-132/♪国立劇場-05