2017年11月8日水曜日

11月歌舞伎公演「坂崎出羽守(さかざきでわのかみ)」「沓掛時次郎(くつかけときじろう)」

2017-11-08 @国立劇場


平成29年度(第72回)文化庁芸術祭協賛

山本有三生誕百三十年
山本有三=作
二世尾上松緑=演出
坂崎出羽守(さかざきでわのかみ)四幕
   中嶋正留=美術
第一幕       茶臼山家康本陣
第二幕       宮の渡し船中
第三幕(一)駿府城内茶座敷
   (二)同 表座敷の一室
第四幕       牛込坂崎江戸邸内成正の居間
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長谷川伸=作
大和田文雄=演出
沓掛時次郎(くつかけときじろう)三幕
   釘町久磨次=装置
序幕    (一)博徒六ッ田三蔵の家の中
    (二)三蔵の家の外
    (三)再び家の中
    (四)再び家の外
    (五)三たび家の中
二幕目    中仙道熊谷宿裏通り
大詰    (一)熊谷宿安泊り
    (二)喧嘩場より遠からぬ路傍
    (三)元の安泊り
    (四)宿外れの路傍

中村梅玉⇒徳川家康/沓掛時次郎
中村魁春⇒三蔵女房おきぬ
尾上松緑⇒坂崎出羽守成正/六ッ田の三蔵
中村松江⇒南部左門/大野木の百助
坂東亀蔵⇒本多平八郎忠刻/苫屋の半太郎
中村梅枝⇒家康の孫娘千姫
中村歌昇⇒松川源六郎
市村竹松⇒坂崎の小姓
市川男寅⇒松平の使者
中村玉太郎⇒坂崎の小姓
尾上左近⇒三蔵倅太郎吉
市村橘太郎⇒三宅惣兵衛/安宿の亭主安兵衛
中村歌女之丞⇒安兵衛女房おろく
嵐橘三郎⇒本多佐渡守正信
河原崎権十郎⇒本多上野介正純
市村萬次郎⇒刑部卿の局
坂東楽善⇒八丁徳
市川左團次⇒金地院崇伝
   ほか

新歌舞伎2本立て。僕としては国立劇場では初めての経験。
竹本も三味線もなし。戦場のざわめき、風、雨、波などの自然音の録音(あるいは効果音?)が使われる。

幕は、普通は定式幕だが、今回はすべて暗転と緞帳が上ったり降りたり。

見得はない。
色々と普段の歌舞伎とは勝手が違うので、拍手のタイミングも難しく、僕は声を掛けたりしないけど、大向こうも出番に窮していたようだ。

かわった出し物であるせいか、今日の客席はせいぜい半分ほどしか埋まっていない。これじゃ役者も気合いが入らないだろう。

坂崎出羽守
無骨にして直情径行の男が、焼け落ちる大阪城天守から自らの顔面の半分を焼きながらも千姫を救い出す。家康が救いだせば嫁にやろうと言われ、急に恋心が芽生える。一旦芽生えると激しい性格ゆえに、千姫一途となるが、肝心の千姫は無骨な坂崎に振り向こうともせず、祖父の家康に縁談を断る。千姫は仏門に入るという理由で縁談を断り、その際、誰にも嫁がないという確認をとってなんとか承知したが、後日、恋敵に嫁ぐことを知ってその行列に狼藉に及ぶという話だ。
まったく、戦場でしか役に立たない男ゆえの悲劇だが、あまりに初心なので彼に感情移入できないのは残念。松緑は祖父のために書かれた芝居を父に次いで今回ようやく初役で勤めるので思い入れもあるだろうし、良い味を出しているけど、現代人が観るには芝居に無理があるなあ。

沓掛時次郎
うーむ。これはイマイチ良さが分からなかった。第一、梅玉のような品のある役者にヤクザものは似合わない。物語もピンと来ない。時次郎は一宿一飯の義理で、土地の博徒の頭を斬り捨てるが、その博徒には妻と幼い子供が居た。今際の際に「女房、子供を頼む」と言われた時次郎はそれを引き受けて以後3人で旅が始まる…。もう、この設定が理解不能だ。後は、人情噺としてそれなりに分からないでもないけど、とても共感できる話ではなかった。
演技のスタイルも、歌舞伎というより新派とか新国劇風だ。国立劇場向きとは思えない。

♪2017-173/♪国立劇場-17