指揮:山田和樹
演出:宮城聰
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:東京混声合唱団
ルサルカ⇒竹多倫子
王子⇒大槻孝志
ヴォドニク(水の精)⇒妻屋秀和
イェジババ(魔法使い)⇒与田朝子
外国の公女⇒秋本悠希
料理人の少年⇒守谷由香
森番⇒加藤宏隆
森の精1⇒松原典子
森の精2⇒梶田真未
森の精3⇒池端歩
狩人⇒松原友
ドボルザーク作曲 オペラ『ルサルカ』全3幕
(チェコ語原語上演・日本語字幕付)
アンデルセン童話の「人魚姫」によく似たメルヘンだ。
水の精ルサルカは一目惚れをした王子様の済む人間界の住人になりたくて魔法使いに人間にしてほしいと頼むが、代わりに声を失う。また、恋人の裏切りは二人の死を意味するとも告げられる。
最初はそのルサルカを愛おしいと思っていた王子も物言わぬルサルカから他の女性に心が移ろう。
かくして、2人には悲劇が待っている。
声を失うヒロインの物語を、よくぞドボルザークはオペラにしたものだと思うが、第2幕の最初から殆どの場面、ルサルカは無言で苦しい胸の内を演じなければならない。
この「声を失う」には、当時のヨーロッパの政治・文化の中心(ドイツ語圏社会)に入ればチェコ語が通じなくなるという厳しい現実を童話に託したという説明も読んだが、社会風刺劇ではなさそうだ。
物語は、納得できるかどうかは別として単純で分かりやすい。
音楽は、流石にドボルザークだ。西洋音楽の枠組みの中に民族的な旋律もまぶしてあって、楽しめる。有名なアリアは「月に寄せる歌」しか無い(と思う。これしかなくともこれだけでも聴けば満足、というほどに美しい。)が、それほど有名ではない歌もしみじみと共感できる。
オーケストラの規模がかなり大きいのでピットに収まりきらず。舞台の上手(管・打の一部)と下手(木管全員)の両側方に別れて陣取った。その為に、オケが一体化するようにピットも底上げしてあった。普段なら、ピットの中の演奏家は頭ぐらいしか見えないのだけど、今回は客席とほとんど同じ高さぐらいまで底上げしてあった。指揮者も指揮台に乗り立ったままの演奏だった。でなければ演奏家たちによく見えないからだ。
そんな変則オケ配置だったが、観劇に特段支障はなかった(これは僕の席がGSの中央最前列だったからかもしれないが、お陰で山田和樹の入魂の指揮ぶりがよく分かって感心した。)。
さて、すばらしかったというのはオケの配置ではない。これはむしろ苦肉の策だろう。しかし、それを逆手に取った舞台美術や演出が舞台と客席の一体感を高めた。
舞台の両側方から円弧を描いた背景の壁は日生劇場の独特の壁面と同じようなデサインにしてある(もっと徹底して欲しかったが。)ので、劇場の客席と舞台は繋がっているかにも見える。
1幕終盤の女声合唱は1階席後方の両側に陣取り、2幕冒頭では客席前方が舞台となり、ここにも舞台と客席の一体化は成功していた。
また、舞台装置が全幕を通して変わらないので、その分、照明やスモークなどが工夫されて、本来は異界の地をそれなりにイメージできたのも良かった。
あるいは、この公演がチェコ語(原語)で行われたというのも、意義が深いかもしれない。歌手たちは大変だったろう。
NISSAY OPERA近年のヒットではないか。
♪2017-176/♪日生劇場-03