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2023年7月31日月曜日

東京フィル第989回サントリー定期シリーズ ヴェルディ:歌劇「オテロ」

2023-07-31 @サントリーホール



チョン・ミョンフン:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団

オテロTn:グレゴリー・クンデ
デズデーモナSp:小林厚子
イアーゴBr:ダリボール・イェニス
ロドヴィーコBs:相沢創
カッシオTn:フランチェスコ・マルシーリア
エミーリアMs:中島郁子
ロデリーゴTn:村上敏明
モンターノBs:青山貴
伝令Bs:タン・ジュンボ

ヴェルディ:歌劇「オテロ」(リコルディ版)(演奏会形式)
全4幕 原語(イタリア語)上演 日本語字幕付き
原作: ウィリアム・シェイクスピア「オセロ」
台本: アッリーゴ・ボーイト
指揮:チョン・ミョンフン

公演時間:約2時間50分(幕間/CCを含む)
 第1幕 城壁の外側 …35分
 第2幕 城内の1階の広間 …40分
 休憩       …20分
 第3幕 城の大広間 …40分
 第4幕 デズデーモナの部屋 …35分



今日の発見というか、最大の驚きは、演奏会形式だというのに、本舞台のオペラ以上に迫ってくるものが大きく強かったという事だ。

歌手達の相乗作用か、いずれも演唱の入魂ぶりが激しかったこと。
何といってもノースコアで東フィルの実力を目一杯引き出したチョン・ミョンフン指揮の音楽がただならぬものあり。
それは畢竟ヴェルディの70歳越えの作品とも思えぬエネルギッシュで工夫に満ちた音楽の凄さの片鱗を、今回初めて味わったということでもあるが、とにかく冒頭から鷲掴みにされた。
過去に、「オテロ」でこんなに気持ちを持ってゆかれたことは一度もない。

よく聴いていると、所謂ナンバーオペラを脱して、まるでワーグナー作品のように、音楽が連綿と続き、アリアらしいものは、最終幕のデズデーモナの「柳の歌」〜「アヴェ・マリア」くらいだ。今日は、しみじみとこの10分を超えるナンバーを初めて味わい深く聴いた。それでも、ここで拍手する訳にもゆかない。深刻な人間ドラマはハナから緊張を孕んで、緩む時がないのだから。

二重唱や四重唱も、よく聴いていると複雑な仕掛けになっていて、心理の駆け引きというドラマ性を帯びている。

これまで僕は何を聴いていたんだろう、という反省もあり、それは「オテロ」だけでなく、オペラ全般、ひいては音楽全般に対して「ちゃんと聴いているかい?」という自問を投げかけられることになって、お金払って楽しみを得ようとすることも、なかなか容易ならざるものだなあ、といささか自虐的になってしまった。

まだ7月が終わったばかりだけど、今日の「オテロ」は、今年のベスト5に入るだろうと思った。

余談①:サントリーホールの天井から、大型のスピーカーセットが降りてきていた。記憶が曖昧だが、これまでに見たことがなかったような気がする。
東フィルのお姉さんにあれはいつ何のために使ったのか?と聴いたら、第1幕と第3幕に登場する大砲の音をこのスピーカーから流したようだ。その音源はシンセサイザーによる合成音だったようだ。
演奏中はオケの音が十分迫力があったので気が付かなかったよ。
余談②:弦の編成は14型だった。普通、弦の各プルトは指揮者に向かって、2人が並行して並ぶ。しかし、今日は60度くらい客席側に開いて並んでいた。そんなふうに並んだところで、音が大きく聴こえるようになるとも思えないので不思議に思ったが、暫くしてその理由が分かった。
演奏会形式といっても、演唱効果を高めるために、舞台上のオケはまるでピットに入っているかのように照明がぼんやりとしか当たらない。
その為に、譜面台に照明がついているのだけど、通常の形で並ぶと、客席上手・下手からはその照明が目に入ることになる。それを避けるべく、客席に向かって角度をつけて広がるように並んだのだろう。
…とこれは僕の推測で、東フィルのお姉さんに確認した訳ではないので間違っているかもしれない。

♪2023-135/♪サントリーホール-16

2021年6月25日金曜日

NISSAY OPERA 2021「蝶々夫人」

2021-06-25 @日生劇場

台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ
作曲:ジャコモ・プッチーニ
歌劇「蝶々夫人」全2幕(イタリア語上演・日本語字幕付)


指揮:鈴木恵里奈
演出:粟國安彦
再演演出:久恒秀典
振付:立花寶山

テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
藤原歌劇団合唱部

蝶々夫人⇒小林厚子
ピンカートン⇒澤﨑一了
シャープレス⇒牧野正人
スズキ⇒鳥木弥生
ゴロー⇒松浦健
ボンゾ⇒豊嶋祐壹
ヤマドリ⇒相沢創
ケート⇒𠮷村恵
神官⇒立花敏弘


3月の新国立劇場「ワルキューレ」でジークリンデ役の小林厚子がとても良かったので「蝶々夫人」はとても楽しみだった。

オペラは演出次第だが、藤原歌劇団の粟國安彦版はこれまで観た中で(海外ものも含め)一番具体的・写実的で全く違和感がないので入り込みやすい。


小林も良かったが、観劇前は眼中になかった他の歌手達もいい。

ピンカートン(澤﨑一了)、は知らない歌手だったし、シャープレス(牧野正人)も初めてではなかったもののこれまで記憶には残っていなかった程度だったが、この2人が予想外に良かったし、何よりスズキを歌った鳥木弥生の巧い事。これ迄、新国立のオペラや「第九」等で何度も聴いていたが、良い役での彼女の演唱に出会えて良かったよ。


「蝶々夫人」にはいつも感心するが、プッチーニの日本風・味付けの巧さ。台本がいいのだろうけど、和のセンスをよく理解した人物造形。

一方で、気楽には聴いておれない。

無垢な15歳の少女の夢を踏み躙ったのは誰なのか。


終幕近くになると鼻を啜る音がそこここに。

僕とても、毎回泣かされてしまうよ。


♪2021-061/♪日生劇場-04