2017年6月30日金曜日

東京都交響楽団 第835回 定期演奏会Bシリーズ

2017-06-30 @東京オペラシティコンサートホール


大野和士:指揮
弦楽四重奏:アルディッティ弦楽四重奏団
東京都交響楽団

ブリテン:歌劇『ピーター・グライムズ』より 「パッサカリア」 op.33b
細川俊夫:フルス(河)~弦楽四重奏とオーケストラのための(2014)(日本初演)
スクリャービン:《神聖な詩》op.43(交響曲第3番ハ短調)

この日は午後イチで国立劇場の文楽公演に行ったので2つめのステージだったこともあり、文楽ではほとんど素振りもなかった疲れや睡眠不足がどどっと出てきて、3曲とも睡魔との闘いだった。
いや、疲れなどのせいだけではない。このプログラムでは混乱するのは必定。

まずはブリテンの「パッサカリア」。眠くなるようなメロディーが続くので寝かせてくれるかと思いきや突如安眠を妨害するような不協爆音で、寝ることもできない。

続く、細川作「フルス」は弦楽四重奏を独奏?部分に持つ協奏曲のような作品だが、単一楽章にしては20分近い。現代の作曲家が作った超現代音楽だ。プログラムについては作曲家自身の解説が書いてあったが、ほとんどお経のようなもので、どこがありがたいのか分からない。日本初演(世界初演は2014年)だったそうで、細川氏も僕の斜め後ろの方で聴いていた。
こういう作品は現代美術と同じで、ほとんど書いた者の自己満足にすぎないのじゃないか、という不満に加え、眠いのに眠れないイライラと闘った。

スクリャービンの「神聖な詩」はまだ調性を保っているので実は聴きやすい。ちょうど1年前にも大野和士+都響で「法悦の詩」(交響曲第4番ハ長調)を聴いているが、彼の5つの交響曲の中で4番までは調性があるので、体調さえ良ければ結構面白く聴くことができる。しかし、残念なことに、この辺まで来るとほとんど船を漕いでいたような気がする。

ま、夥しくコンサートに出かけているのでこういう日があってもやむを得まい。

♪2017-111/♪東京オペラシティコンサートホール-03

国立文楽劇場文楽既成者研修発表会 第5回(17回) 文楽若手会

2017-06-30 @国立劇場


●寿柱立万歳 (ことぶきはしらだてまんざい)
 豊竹睦太夫・豊竹靖太夫・竹本小住太夫
 鶴澤寛太郎・野澤錦吾・鶴澤燕二郎・鶴澤清允
 (人形役割)
 太夫⇒吉田簑太郎
 才三⇒桐竹紋臣 

●菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
◎車曳の段
 竹本小住太夫・豊竹咲寿太夫・豊竹睦太夫・
 豊竹亘太夫・豊竹靖太夫/鶴澤清丈
◎寺入りの段
 豊竹亘太夫/鶴澤清公
◎寺子屋の段
 豊竹芳穂太夫・豊竹希太夫/鶴澤清馗・豊澤龍爾
 (人形役割)
 梅王丸⇒吉田簑太郎
 桜丸⇒吉田玉誉
 杉王丸⇒吉田簑之
 松王丸⇒吉田玉翔
 左大臣時平⇒吉田文哉
 よだれくり⇒吉田玉路
 菅秀才⇒桐竹勘昇
 女房戸浪⇒桐竹紋吉
 女房千代⇒吉田簑紫郎
 武部源蔵⇒桐竹紋秀
 春藤玄蕃⇒吉田玉彦
      ほか

「文楽若手会」って初めて存在を知ったが、東京では今年が第5回目で、本場大阪では17回目だそうだ。
「若手」の定義がどこにも書いてない。公演チラシには副題で「文楽既成者研修発表会」とある。これもよく分からない。
太夫の中で最高の格にある豊竹咲太夫のイケメン弟子で例示すると、咲甫太夫は非若手、咲寿大夫は若手に名を連ねているのでこの辺が区切りらしい。

出演者の顔ぶれを見ると、太夫、三味線、人形遣いとも、本公演でも見かける顔が並んでいるので、研修発表会と言いながら結構本格的なものだ。特に文楽に関しては昨年12月に初めて舞台を経験したド素人の僕からはみんな大した技量を備えているように思える。

内容は、5月文楽公演と基本的に同じで、「茶筅酒の段」、「喧嘩の段」、「訴訟の段」、「桜丸切腹の段」が省略され、冒頭に「車曳の段」が加わっていた。
好みで言えば、「車曳の段」はカットしてもいいが「桜丸切腹の段」がなかったのは残念だ。これが演じられることで、「寺子屋の段」、とくに終盤の松王丸夫妻の嘆きが広がりを見せるのだと思っている。

5月の本公演での呂太夫の襲名披露「寺入りの段」や唯一人<キリ>を務める、咲太夫の「寺子屋の段」を思い浮かべると、多分、まだまだ大きな違いがあるのだろうが、僕の鑑賞眼では十分に面白く楽しめた。

♪2017-110/♪国立劇場-11

2017年6月27日火曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2017前期 ≪モーツァルト ホルン協奏曲 全4曲≫シュテファン・ドールHr &アカデミッシュアンサンブル

2017-06-27 @みなとみらいホール


シュテファン・ドール:指揮&ホルン
アカデミッシュアンサンブル

<オール・モーツァルト・プログラム>
ホルン協奏曲第2番変ホ長調 K417
 交響曲第17番ト長調 K129
ホルン協奏曲第4番変ホ長調 K495
ホルン協奏曲第1番ニ長調 K412(R・レヴィン補筆完成版)
 交響曲第33番変ロ長調 K319
ホルン協奏曲第3番変ホ長調 K447

シュテファン・ドールという人はベルリン・フィル首席であり世界最高のホルン奏者と言われている…そうだ。
オーケストラの中で最重要な楽器だと思うが、これが結構難しそうだ。プロでも音がひっくり返ることが珍しくない。


しかし流石に世界の最高峰。次元の違うホルンだった。と言っても素人に分かる「違い」というのは、音量にゆとりがあること。決して大音量ではないが、肺活量やタンギングの巧さか、ダイナミックレンジが広く音が軽やかだ。

音色については、日本人の奏者だってきれいな音を出す人はいくらでもいるから驚かなかったが、自在に楽器を扱うという点で優れているのかな。

この日はモーツァルトの作品ばかり。ホルン協奏曲が4本、交響曲が2本。

俄拵えのような室内管弦楽団には洗足の指揮者がおらず、協奏曲ではドールが吹き振り?し、交響曲ではホルンを置いて指揮をした。
オケは、プログラムの表記では28人記されていたが、当然曲毎に楽器の出入りがあった。

いずれも短時間の作品だが、それにしても、協奏曲4曲を吹くだけではなく、交響曲まで聴かせてくれるとは大サービスだ。
協奏曲の作曲順は2431だが演奏は2413と行われた。なるほど3番がトリにふさわしい重みがあった。

これは、3番がいちばん聴き馴染んでいるせいもあると思う。
1番が最後の協奏曲であるだけでなく、モーツァルト最後の作品かもという研究もあるそうな。これだけが2楽章しか無くそれも未完成で後世の補筆版で演奏された。

交響曲は、ハイドンに遠く及ばないとしても番号がついているものだけでも39曲あるから、これだけあれば若い番号の作品はどれもこれも同じように聴こえてしまう。個人的には普段35番以降しか聴かないし聴き分けられない。

今回の17番は16歳のときの作品だそうで、軽快な面白さが素通りした感があったが、33番はおそらく初めて意識しながら聴いた。23歳作だからこれも若い時期だが構造が立体的で全然出来栄えが違うのに感心した

♪2017-109/♪みなとみらいホール-25

2017年6月25日日曜日

N響第1862回 定期公演 Aプログラム

2017-06-25 @NHKホール


パーヴォ・ヤルヴィ:指揮
河村尚子:ピアノ*
NHK交響楽団

デュティユー:メタボール(1964)
サン=サーンス:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 作品22*
ラヴェル:優雅で感傷的なワルツ
ラヴェル:「ダフニスとクロエ」組曲 第2番
---------------
アンコール
クープラン:バッハの名による即興曲*

P・ヤルヴィ指揮で仏音楽集。デュティユーはつまらないから気持ちはパス。4曲演るのだから1つくらい気合を入れなくとも良かろう。
楽しみはサン=サーンスのピアノ協奏曲2番だ。これは生では初聴き。だからというより河村尚子がお目立てだ。

1月に音楽堂でクレメンス・ハーゲンとのデュオをほぼかぶりつきで聴いた時、ピアノの腕前は当然として、豊かな表情が実にキュートでその弾きっぷりがまさに音楽的、音楽そのものと感じた。彼女の演奏は初めてではなかったが、遠くからは気づかない。

ほかにも上手なピアニストはたくさんいるが、弾きっぷりを観ていて楽しくなるピアニストはこの人ぐらいか。
今日も定席からなので、舞台までは結構遠いが、幸い中央からやや下手の席なので、よく見える単眼鏡で表情や華麗な鍵盤上の乱舞を堪能した。

曲自体は通常の協奏曲とは異なって、ほぼ全曲ピアノが主導権を持つ。オケはピアノを補強したり、あるいは完全に伴奏に回って、両者の丁々発止のやり取りはない。
全体的に軽ろやかな印象だが、独奏部分は叙情的で時にメランコリックで親しみ易い。

後半はラヴェルの「優雅で感傷的なワルツ」と「ダフニスとクロエ」組曲第2番で(この組合せは何度か経験済)、オケの規模も大きく楽器も多彩で、これぞ管弦楽という世界だ。いずれも聴き慣れた作品だが、同じ仏ものと言っても前2曲とは随分違う。

「ダフクロ」は本来ヴォカリーズが付いていたが、ラヴェル自身がその部分を管弦楽に置き換えた版も編曲したそうで、今回はその版だった。と言うより過去に何度か聴いているがヴォカリーズ付きは経験がない。また、組曲第1番というのも多分未経験だ。

N響の技が発揮されたのは後半のラヴェル2曲。というか、管弦楽の精妙さが際立つ音楽だからそのように感じたということだが、特に管楽器がきれいな音を出していた。逆に弦の美しさが発揮される場面が少なかったのは、そういう音楽だからし方がない。

2017-108/♪NHKホール-05

2017年6月21日水曜日

劇団民藝:熊楠の家

2017-06-21 @紀伊國屋サザンシアター

「熊楠の家」

作=小幡欣治 演出=丹野郁弓 
出演
南方熊楠(植物学者)千葉茂則
  松枝(熊楠の妻)中地美佐子
  熊弥(熊楠の長男)大中耀洋
  文枝(熊楠の長女)八木橋里紗
喜多幅武三郎(熊楠の友人。眼科医)横島 亘
佐武友吉(石屋)吉田正朗
金崎宇吉(洋服屋)平松敬綱
毛利清雅(牟婁新報社主)安田正利
小畔四郎(熊楠の弟子)齊藤尊史
文吉(熊楠の助手)平野 尚
油岩(生花の師匠)齊藤恵太
久米吉(床屋)梶野 稔
相原(役場の吏員)天津民生
馬場(牟婁新報の社員)本廣真吾
汐田政吉(熊楠の従兄弟)境 賢一
那屋(田辺町長)山本哲也
江川(宿屋の主人)大野裕生
奥村(町の有力者)天津民生
大内(町の有力者)梶野 稔
お品(手伝いの老婆)別府康子
つるえ(南方家の女中)望月香奈
看守相良英作
女行商人大黒谷まい
人夫1保坂剛大
人夫2大野裕生

久し振りの民藝で「熊楠の家」。でも、どんな演目を観ても「民藝」ぽいのは当然といえば当然だけど、三越劇場はもちろん、サザンシアターでさえ観客はほぼ老人会の如し。ちょっとは冒険しないと客層が拡がらないのでは、といつも思う。

南方熊楠の生誕150年に当たることもあってか、彼の学者としての半生を描いたものだ(22年ぶりの再演)。

明治時代の生物学者、程度の知識しかなかったが、観劇を機に調べると、生物・博物・民俗学など広範囲に活躍した人らしい。

この先生、相当奇人だったようだが、この芝居では、それほどエキセントリックには描かれず、精神を病んだ息子を抱えて悩む普通の良き家庭人のようだ。
まさしく表題のとおり「熊楠の家」を舞台にしたホームドラマと言うべきか。

プロットは分かりやすい。
見落とした、と思った点もないのし消化不良もなかったと思うが、あまり気持ちが乗れなかった。
全2幕でそれぞれが5場。ということは全10場もあると目まぐるしく各場毎の挿話が深まらないのも原因かも。

英米で学び、語学も堪能で近代思想を学んだ学者にしては神社合祀令への抵抗もあっさり描かれ、昭和天皇へのご進講もすんなり受け入れてホームドラマの枠を出ない。
知の巨人と言われた人物の途方もない大きさを感じさせてほしかった。

♪2017-107/♪紀伊國屋サザンシアター-01

2017年6月19日月曜日

平成29年度6月中席

2017-06-19 @国立演芸場



落語 桂夏丸⇒四宿の屁
曲芸 鏡味よし乃
落語 桂幸丸⇒吉田茂伝  
音曲 松乃家扇鶴
落語 春風亭昇乃進⇒お血脈      
~仲入り~ 
奇術 プチ☆レディー
落語 山遊亭金太郎⇒替り目
漫才 新山ひでや・やすこ
落語 三笑亭茶楽⇒三年目

中入りまでの中で、桂夏丸・幸丸は落語の芸ではなかった。
曲芸にも色々あるが、この日の鏡味よし乃の傘の曲や五階茶碗の曲がどれほど難しいのかよく分からない。
音曲・松乃家扇鶴に期待したが面白くない。
昇乃進の落語・お血脈もまだまだだな。


仲入り後の奇術・プチ☆レディーは、楽しめる。
山遊亭金太郎の落語・替り目は名人が演れば面白いけどイマイチに終わった。
漫才・新山ひでや・やすこは初めてだった。熟年夫婦コンビだが仲が良さそうで楽しい。
トリの三笑亭茶楽・三年目、まずまず。

2017-106/♪国立演芸場-10

2017年6月18日日曜日

NISSAY OPERA 2017『ラ・ボエーム』

2017-06-18 @日生劇場


園田隆一郎:指揮
伊香修吾:演出
新日本フィルハーモニー交響楽団

ミミ⇒砂川涼子
ロドルフォ⇒宮里直樹
マルチェッロ⇒大山大輔
ショナール⇒池内響
コッリーネ⇒ デニス・ビシュニャ
ムゼッタ⇒柴田紗貴子
パルピニョール⇒岸浪愛学
アルチンドロ⇒相沢創
ベノア⇒清水良一

作曲:ジャコモ・プッチーニ
台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイジ・イッリカ
「ラ・ボエーム」全4幕


砂川涼子のことは1月の新国立のカルメンまで意識したことはなかったが、その時の彼女のミカエラにとても惹かれた。後日調べると既に藤原歌劇団のオペラで観ていたし、その「ラ・ボ」公演でまさにミミを演じたビデオも持っているのに最近気づいた。

ミミの娼婦性をどのように描くかは演出家の考え方だけど、砂川涼子のミミでは汚れなき薄幸美人と設定するしかないな。それはそれでいいし、初めてロドルフォの部屋に入った時わざと自分の部屋の鍵を落として誘惑するミミも悲しいさがとも解釈できる。

前回の日生オペラ「セビリアの理髪師」からちょうど1年ぶりだった。前回の舞台装置は簡素だったが、今回は本格的に作ってあってこれも見応え十分。また、見せる演出も心憎いものがあった。冒頭は墓石以外何もない暗い舞台に人物4人。背景は真っ白。

暗転して第1幕屋根裏部屋。最終幕も再び同じ屋根裏部屋。
ミミがついに息を引き取りロドルフォらがミミが横たわるベッドの回りで悲しみに沈む。オペラはここで幕切れだが、同時に舞台が暗転し部屋のセットは分割されて両袖に引き取られた。

舞台中央のベッドもミミを乗せたままセリの下に埋もれ代わりに墓石が現れ、背景が真っ白という冒頭と同じ情景が出現して、ドラマが見事に円環を閉じた。おお、味な演出だなあと感心したものである。

歌手たちも新日フィルも素晴らしい。

ところで、今回は日本語上演だったにもかかわらず、その言葉どおりの日本語字幕も付いた。これで良かった。もし、字幕がなければアリアでも半分以上、2重唱・3重唱ならほとんどすべての<日本語>を聴き取ることができなかったろう。

文字としての日本語は漢字という表意文字があるおかげで表現力に富むが、旋律に乗せた歌は表音文字でしかないので無駄に文字数を使ってしまい表現力が激減する。だから、最初から日本語で作曲された作品は別として、オペラは原語・日本語字幕に限る。

♪2017-105/♪日生劇場-01

2017年6月17日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第330回

2017-06-17 @みなとみらいホール


カーチュン・ウォン:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

松田華音:ピアノ*

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ長調 作品18*
ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 作品27

シンガポール出身のカーチュン・ウォンもPf独奏の松田華音も多分神奈フィル初めての客演だと思う。僕もお初。
前者31歳、後者21歳?若い。いずれも小柄。
プログラムはラフマニノフ2曲。
Pf協奏曲も交響曲も2番尽くし。

Pf協奏曲の冒頭は左手10度の3〜4重音なので、プロでも手が小さい人は分散和音として弾く。松田華音もそうだったが、前打音風に弾く人もいる。ま、とにかく、冒頭から難しそうだが、聴いている分には実に美しい。オケも良かった。

弦に透明感があって、きれいな響だ。オケもピアノも不満なし。が、第1楽章の中盤でピアノがオケに埋もれてしまう個所があった。指揮者としても初めてのオケ、初めてのホールだから、客席での響具合まで確認できなかったのかも。

メインの交響曲第2番。
これまでも何度も聴いているし、調べたらアマオケ時代に自分でも弾いている!
それほど聴いているはずなのに、どうも馴染めない。無駄に長いと思ってしまう。そう思った先人がカット版を作ったそうだ。やっぱり。

どおりでYoutubeやCDで演奏時間を見ると45分〜60分と大きな差があるのは第1楽章提示部反復省略の差とは思えないから、現在でもカット版が演奏されることもあるのだろう。今日の演奏はプログラム記載どおり60分の神業。つまり完全版。

Pf協に比べてツメが甘いような気もしたし、弦も少しざわつきを感じた。が、熱演ではあった。第3楽章は旋律良し。
終楽章の、特に終盤の盛上がりはゾクゾクさせてくれた。
終演後、遠来の客演にいつになく大きな拍手喝采が続いた。

一番の収穫。
Pf協奏曲でも交響曲でも、ホルンのソロの聴かせどころがある。
両曲で奏者は異なったが、いずれも見事に美しい音色だった。
前者は首席だから当然といえば当然だが、後者の女性は新入団らしかったが、実に頼もしい。

♪2017-104/♪みなとみらいホール-25

2017年6月15日木曜日

N響午後のクラシック第3回

2017-06-15 @ミューザ川崎シンフォニーホール


トン・コープマン:指揮
カール・ハインツ・シュッツ:フルート*
シャルロッテ・バルツェライト:ハープ*

NHK交響楽団

モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲ハ長調 K299*
モーツァルト:交響曲 第41番ハ長調 K551「ジュピター」
------------------
アンコール
イベール:間奏曲*
モーツァルト:「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」K525 第1楽章

指揮は古楽の第一人者、トン・コープマン。元ウィーン・フィルのソロ・フルートのK・H・シュッツ。現ウィーン・フィル首席ハープのC・バルツェライトでオール・モーツァルトプログラム。
と言っても古楽器を使うのではなくモダンなオケ。
編成は中規模。モーツァルトの時代にしては弦が多いのかもしれない。そのためか、管弦楽はしっかり!と音が出る。フルートとハープ協奏曲ではソロフルートは音が際立っていたが、ハープが少し弱かったかな。異種格闘技はバランスが難しいな。

メインは交響曲41番「ジュピター」。
やはり、これが一番トン・コープマンの丹精ぶりが伝わった。普段のN響とはまったく別の味わいで、見事に刈り込まれた盆栽のようなアンサンブルだ。弱音でもきちんと統制されている。行き届いている。

もし、この演奏をモーツァルトが聴いたら吃驚したろうと思う。自分の作品に自信は持っているだろうが、当時の演奏水準からして、自分の書いた楽譜がこんなにも美しい響を奏でるとは思ってもいなかったろう。モーツァルトに聴かせたかった。

♪2017-103/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-11

2017年6月14日水曜日

楽劇「ニーベルングの指環」第二日〜ジークフリート〜

2017-06-14 @新国立劇場


ワーグナー:楽劇「ニーベルングの指環」第2日〜ジークフリート〜

指揮:飯守泰次郎
演出:ゲッツ・フリードリヒ


東京交響楽団

ジークフリート⇒ステファン・グールド
ミーメ⇒アンドレアス・コンラッド
さすらい人⇒グリア・グリムスレイ
アルベリ⇒ヒトーマス・ガゼリ
ファフナー⇒クリスティアン・ヒュープナー
エルダ⇒クリスタ・マイヤー
ブリュンヒルデ⇒リカルダ・メルベート




一昨年の秋に始まったシリーズも愈々「ジークフリート」を迎えた。手持ちのビデオを観たり、CD全曲盤を聴いたり、解説本を読んだりと、随分事前の勉強をし、加えて、新国立劇場が公演したハイライト版も鑑賞して、もう頭の中はパンパン状態。

「ジークフリート」はハイライト版を別にすれば演奏会形式を含め生舞台は初めてだったが、猛勉強のお陰でプロットはこれまでになくよく消化できて没入度が高かった。
ただ、2幕2〜3場の短時間の小鳥の声を除けば終盤まで女声は登場しない。それまでは専ら男たちの会話劇に終始する。ひたすら延々3時間小難しい対話が続き、音楽も暗いのであまり面白いとはいえない。
劇的な期待は(人にもよるが)もっぱら3幕後半、ブリュンヒルデとジークフリートが初めて会う瞬間までおあずけだ。

「恐れを知らぬ」ジークフリートが、火の山で眠り続けるブリュンヒルデを覚醒させ、初めて女性にまみえて「恐れ」を知る。神性を失ったブリュンヒルデもここで初めて自分の女性としてのアイデンティティーに目覚め、両者の熱狂愛のほとばしり。

ここにきてドラマが頂点を貫く。2人は伯母と甥という近親関係。「ワルキューレ」で描かれたようにジークフリートの両親も兄妹かつ不倫愛という刺激的関係の中で結ばれるのだが、その子もまた人倫の道を踏み外すように運命付けられている。

「指環」は恐ろしく壮大で複雑で不可解な点の多い物語だが、ほぼ鳴り止まない音楽も同様に壮大でかつ緻密に作られていて、否応なしにこの世界に取り込まれてしまう。
それにしてもタイトルロールを歌う歌手は全幕通じて出番が多いので体力勝負。ジークフリート役のステファン・グールドなど、最後まで声も枯らさず歌い切った。それだけでもう凄いものだと感心する。今回出番が少なかったブリュンヒルデ役のリカルダ・メルベートは、「神々の黄昏」に出演しないのが残念だが、新国立劇場の来季の「ばらの騎士」、「フィデリオ」を楽しみにしておこう。

♪2017-102/♪新国立劇場-06

平成29年6月歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)」

2017-06-14 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた 中村隼人 
                                 
歌舞伎十八番の内 「毛抜」一幕 小野春道館の場

(主な配役)

粂寺弾正⇒中村錦之助
腰元巻絹⇒片岡孝太郎
八剣玄蕃⇒坂東彦三郎
小野春風⇒尾上右近
八剣数馬⇒大谷廣太郎
秦秀太郎⇒中村隼人
錦の前⇒中村梅丸
小原万兵衛⇒嵐橘三郎
秦民部⇒坂東秀調
小野春道⇒大谷友右衛門
 ほか

中村隼人が女性に人気があるとは知っていたけど、女子高生までにも人気があるとは知らなかった。
その隼人が「歌舞伎のみかた」の解説を努めた。流暢に口が回るがもう少しゆとりが必要。間合いを取らなくちゃ聴いていてもせわしない。

幕が上がると写真撮影禁止は常識だが、今回は撮影タイムが設けられた。スマホで写真を撮って「歌舞伎見たよ」のタグを付けてSNSで発信してくださいという意図だ。良いアイデアで、若い人達に歌舞伎を観ようという気運が出れば良し。

さて、本篇。「毛抜」は前にも観ているので内容は理解しているつもりだったが、今回はプログラムの説明で気がついたのだけど、これが劇中劇という構成だということだ。尤も前回観たのは一番最近でも3年前なので演出には記憶がない。

今回の国立劇場の演出と同じだったかどうか。
ともかく、今回は舞台上に黒い額縁が作ってあり、それが芝居小屋を表している。上手の柱には演目「歌舞伎十八番の内毛抜一幕」、下手には「中村錦之助相勤め申し候」と大書してある。

錦之助演ずる粂寺弾正が若衆や腰元にちょっかい出しては袖にされると「面目次第もござりませぬ」と客席に向かって言い、幕切れのセリフも「〜然らば、お開きといたしましょう」と見得を切って揚幕に消えるのも劇中劇ならではの演出だ。

歌舞伎十八番に入っているだけあって、歌舞伎の多様な見処(弾正の荒事・色気と愛嬌・連続する5つの見得など)が多い。
毛抜が場面に応じて小から大に変化するのも面白い。
筋書きも滑稽味ある推理劇としても楽しめる。

♪2017-101/♪国立劇場-10

2017年6月11日日曜日

読響第97回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2017-06-11 @みなとみらいホール


ダニエル・ブレンドゥルフ:指揮
読売日本交響楽団

宮田大:チェロ*

シベリウス:組曲「レンミンカイネン」から"トゥオネラの白鳥"
ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番変ホ長調 作品107
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35
---------------
アンコール
サン=サーンス:「白鳥」チェロ無伴奏*

今季のラインナップが発表されたのは昨秋。今年6月のプログラムにショスタコのチェロ協奏曲1番を発見して小躍りした。大好きな作品だが生で聴いたことがない。
指揮はD・ブレンドゥルフ。日本デビューらしい。
独奏の宮田大は大いに期待できる。

1曲めのトゥオネラの白鳥、冒頭の弦の透明感に惹きこまれ、今日の自分の体調の良さがオケの響で分かる。
2曲め。待望のショスタコVc協1番。

入魂の演奏だった。
元々宮田大のチェロの音はいつも良い響だ。特に第2楽章など繊細で美しい。

ハーモニクスもきれいに決めて、愈々第3楽章はまるごと独奏チェロのみによる5分近い長大なカデンツアだ。第1、2楽章の主題を織り込んであらゆるテクニックを駆使しながら緊張が高まり、その頂点で終楽章になだれ込み脂を飛ばして快走する。

宮田大のチェロが素晴らしかっただけでなく、読響のバックも見事だった。

最終曲の「シェエラザード」は華麗でダイナミックな管弦楽技法が楽しめる名曲だが、管楽器だけではなく、弦各パートにも1、4、6人のソロ?が登場し、花を添える。管弦楽を生で聴く喜びに溢れている。

今日の指揮者、ダニエル・ブレンドゥルフはスウェーデン生まれでチェロ出身。この演奏会が日本デビューだったそうだが、宮田大、読響との呼吸もぴったり。記憶に留まる名演奏で素晴らしい日本デビューを飾ったと思う。

♪2017-100/♪みなとみらいホール-24

2017年6月10日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第328回横浜定期演奏会

2017-05-20 @みなとみらいホール


アレクサンドル・ラザレフ:指揮[桂冠指揮者兼芸術顧問]
日本フィルハーモニー交響楽団

山根一仁:バイオリン*

チャイコフスキー:バイオリン協奏曲ニ長調 作品35*
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調 作品47
-------------
アンコール
イザイ:無伴奏バイオリン・ソナタ第2番から「メランコニア」*
ショスタコーヴィチ:組曲「馬あぶ」から第3曲「祝日」

先月のN響が指揮も独奏もロシア人によるオールロシア・プロだったが、今月の日フィルもロシア人ラザレフの指揮でチャイコフスキーのバイオリン協奏曲とショスタコーヴィチの交響曲第5番というロシアものの鉄壁プログラム。
バイオリンソロは俊英21歳の山根一仁くん。彼は…ロシア人ではないな。

指揮者にとってもオケ(+ソリスト)にとっても、演奏し慣れた作品ばかりというせいもあるのだろうが、軽やかなものだ。

バイオリン1本の微細な響からショスタコーヴィチ終楽章の爆裂音まで。このダイナミックレンジの大きさに浸るシアワセ。

いつものように、終演後のラザレフ・パフォーマンスが音楽会の興奮を一層高めてくれる。
大きな身体を揺すって拍手しながら舞台を歩き回り、客席にも拍手を促し、素晴らしい演奏だった!とアピールしてくれるので、みんな笑顔で満足して万歳。


♪2017-088/♪みなとみらいホール-20

ミューザ川崎ホリデーアフタヌーンコンサート2017前期 ≪4Cellos!≫

2017-06-10 @ミューザ川崎シンフォニーホール


横坂源、辻本玲、伊藤文嗣、上森祥平:チェロ

J.S.バッハ:コラール集から「まぶねのかたわらに立ちて/われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ」*
クレンゲル:4つの小品 作品33 「無言歌」、「ガボット」、「子守唄」、「マーチ」*
ポッパー:演奏会用ポロネーズ 作品14*
ハイドン:チェロ協奏曲第1番ハ長調*
マルコ・ストロッパ:それが厄介なのだ<上森solo>
オッフェンバック:チェロ二重奏曲イ短調 作品53-2<辻本&伊藤>
ヨセフ・ヨンゲン:4本のチェロのための2つの小品 「伝説」、「ダンス」*
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第2番BWV1004から第5曲「シャコンヌ」*
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アンコール
パッヘルベル:カノン*
*印はチェロ四重奏

海外の人気グループ2CELLOSの向こうを張った訳ではないらしいが気鋭の若手4人のチェリスト(横坂源、辻本玲、伊藤文嗣、上森祥平)によるアンサンブル。
「4Cellos」という名前は正式なものではなく、主催者側が便宜的に付けたものらしい。このメンバーでの公式な演奏会は2回めだそうだが、今回ミューザという一流の大ホールで「4Cellos」のリサイタルができることをみんなとても喜んでいた。

チェロ4本用に編曲されたバッハコラールなどで始まったが、やはり、低弦ばかりの4重音は美しくないな、と思っていたが、ハイドンのチェロ協奏曲第1番から面白くなった。独奏部分はそのままに3人がオケ伴に回って、協奏曲を1曲完奏した。
この4人協奏曲が、編曲が良いのだろうな。最初からこういう作品かと思えるほど違和感なく楽しめた。

その後、ソロや二重奏を挟んで最後もバッハだった。

これまでとは逆に独奏の原曲を4人用に編曲した作品だ。無伴奏バイオリン組曲第2番の第5曲「シャコンヌ」。
これを1本のバイオリンならぬチェロで聴くのは経験済みだが、複数楽器での演奏は初めて。
4人で分割している分、30回も続く変奏の構造が分かりやすく、新鮮な感覚で興味深く聴くことができた。
欲を言えばアクロバティックなのにも挑戦してほしいな。

♪2017-098/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-10

2017年6月5日月曜日

平成29年度6月上席

2017-06-05 @国立演芸場


落語 春風亭朝太郎⇒真田小僧
落語 春風亭一左⇒鈴ヶ森
落語 春風亭三朝⇒粗忽の釘
奇術 マギー隆司
落語 隅田川馬石⇒安兵衛狐
落語 柳家小里ん⇒不動坊
~仲入り~ 
講談 宝井琴調⇒寛永三馬術
落語 林家彦いち⇒反対俥
紙切 林家正楽
落語 春風亭一朝⇒井戸の茶碗

言うまでもなく前座は下手だ。二ツ目だってあまり感心できるのはいない。真打ちだって面白いとは限らない。
同じ話なのに何故面白くないのか。
せめて技量に合った話し方をすりゃいいのに、ひよこが親鶏のように鳴こうとするからお客も乗れない。

とは言え、前座〜二ツ目〜真打ちと進むに連れ、まあ、だいたい腕は良くなる。
今回も小里んから調子が出てきた。

林家彦いちの「反対俥」は初めて聴いたが元気の良い人力車夫が上野までの客を勢い余って青森県五所川原まで乗せてゆく途方もなさに大いに笑った。
何故、五所川原なのか明らかではないけど、五所川原というのが実におかしい。

林家正楽の紙切りはいつもながら感心する。
お客のリクエストにも答えてくれるので、いつか大きな声で注文してみたいものだ。


トリは春風亭一朝がいつものように「イッチョウ懸命に努め」てくれた。
演目が「井戸の茶碗」となると、志ん朝の名人芸には及ばぬ。

及ばぬながら、一朝の噺もしみじみ良かった。
いずれも正直者の屑屋・浪人親子・若侍が我が身にふりかかった思いがけない大金を巡ってそれぞれがバカ正直で見事に誠実な意地の張り合いをするのがおかしくて笑いながらも、彼らの心持に感動する良い噺で、清々しく演芸場を後にした。

2017-097/♪国立演芸場-09

2017年6月3日土曜日

モンテヴェルディ生誕450年記念特別公演 「聖母マリアの夕べの祈り」

2017-06-03 @県立音楽堂


リナルド・アレッサンドリーニ指揮
コンチェルト・イタリアーノ

モンテヴェルディ:聖母マリアの夕べの祈り
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アンコール
同第1曲「レスポンソリウム」

モンテヴェルディの「聖母マリア〜」を初めて聴いたのは、40年以上前のFM放送で、あまりの美しさに衝撃を受けた。
以来、LP〜CDでは数え切れないくらい聴き込んでいるが、ナマを聴く機会は長く巡ってこなかった。

が、遂に望みが叶った。

音楽堂が事前に開催した講義も聴いて準備万端で臨んだ。

演奏はアレッサンドリーニ指揮コンチェルト・イタリアーノ。
イタリア古楽の代表的なアンサンブルだという。
管6、弦4、オルガン1、テオルボ2、女声2、男声8という編成だ。
楽器と奏法はモンテヴェルディの時代の様式で初版譜どおりに演奏された。
各パート(声部)1人ずつというこれ以上切り詰められない最小編成。


まずは、冒頭の短い聖句の詠唱、続く華やかなファンファーレを聴いて衝撃!天にも登る気分!
各パートの発声・発音が極めて明瞭で透明。
素晴らしい音楽は一層の輝きをもって神々しいくらいだ。
これまで電気的再生音しか聴いたことがなかった音楽が直接、目の前のステージからクリアに聴こえてくるのは信じられないような幸せだ!

曲数の数え方は色々あるようだが、今回のプログラムでは詩篇・コンチェルト等12曲とそれに続くマニフィカートで構成されていた。
休憩含み130分。これが至福の時間。
言葉は介さないが舞台と客席は感動を共にした悦びで通じ合った。

今年はモンテヴェルディ生誕450年だそうで、おかげで関連企画がいくつか開催されるがまずは今回がその一つ。
秋にはオペラ「ポッペアの戴冠」も同じ音楽堂で上演されるので既にチケット入手済み。
目下BDで勉強中だが大いに楽しみだ。

♪2017-096/♪神奈川県立音楽堂-04